角が2本あるPの付く5極送信管
私の好きな送信管に、「P」のつくプレートとサプレッサーグリッドが管頂に引き出された自然空冷の5極管があります。主に船舶無線機に使われていた大型のガラス管です。
型番 | フィラメント電圧 | フィラメント電流 | フィラメント型式 | 最大陽極損失 |
P112 | 12V | 0.75A | 傍熱 | 12W |
2P22(2E22) | 6.3V | 1.5A | 直熱 | 30W |
3P40 | 12V | 傍熱 | ||
3P41 | 12V | 1.25A | 傍熱 | 65W |
3P50 | 12V | 1.25A | 傍熱 | 60W |
3P50A | 10V | 1.5A | 傍熱 | 60W |
4P55 | 6.3V | 2.6A | 傍熱 | 120W |
4P56 | 12V | 1.6A | 傍熱 | 120W |
4P60 | 10V | 3.25A | 直熱 | 125W |
P220 | 12V | 4.25A | 直熱 | 230W |
P250 | 12V | 直熱 | ||
P250A | 12V | 8.5A | 直熱 | 420W |
P256A | 直熱 | |||
5P70 | 12V | 10A | 直熱 | 420W |
P270 | 12V | 18A | 直熱 | 600W |
6P80 | 12V | 20A | 直熱 | 600W |
6P80A | 12V | 20A | 直熱 | 600W |
東芝とNECの2P22(=2E22)です。プレート損失30Wの直熱5極管で、移動用無線機に主に使われました。大変丁寧に作られています。東芝のもののプレートは、色からして送信管に良く使われるタンタルだと思います。米国の2E22同等管です。2本角ではありませんが、分類上こちらにUPします。
日本無線のP-112です。プレート損失12W、ヒーター:12V0.75A、Ep<450V、Esg<200Vの送信管です。電極は同心円構造でドイツのRS289などの類似管と思われます。通常のST管タイプもあります。
JRCの3P40です。3P41の改良前の真空管です。トップシールでひだ付きプレートの丁寧な造りの真空管です。3P40、3P41、3P50と並べてみました。オーディオの軽い動作なら差し替え可能です。
JRCの小型傍熱型5極管、3P41です。プレートは同社の大型管のP250Aや6P80同様に「ひだ」を設けてリベットがふんだんに使われています。とても丁寧な造りの真空管です。ベースは3P50同様のドイツ(テレフンケン)のRS237用のソケットが、ぴったり適合します。トップにプレートとサプレッサーグリッド(G3)が引き出されていて、グリッド変調が出来る構成になっています。プレート損失は、65Wです。
東芝の3P50です。小型傍熱型5極管で、ベースはちょっと特殊です。ドイツ(テレフンケン)のRS237用のソケットが、ぴったり適合します。トップは、赤ラインの方がプレートで、もう一方がサプレッサーグリッド(G3)で、グリッド変調が出来る構成になっています。プレート損失は、60Wです。
東芝の3P50Aとそのソケットです。ヒーター以外の規格は3P50同様です。外観も電極構造もほとんど同じで、ベースが異なります。この真空管は、P535の代替管として東芝真空管規格表で示されています。
4P55は、日本独自の傍熱5極管です。プレート損失は120Wで、ヒーターは6.3V2.6Aと電流は少なめです。カソードが2本並列で入っていて、その他の電極は共通になっています。スクリーングリッドが400Vまで印加できるので3極管接続でオーディオアンプに使えます。かつて1980年代初期にトランス結合で製作した記事をMJ誌のサイドワインダー(読者のコーナー)に掲載していただきました。動作例としては、AB1音声増幅の例がメーカーより発表されています。ヒーター違いに4P56(ヒーター:12V,1.6A)があります。
TENの4P60です。プレート損失は125Wでフィラメントは10V3.25Aです。40MHzまで使える自然空冷の日本独自の直熱5極管です。A1シングル、Ep=800V、Esg=500Vで25W程度の音声出力(RL=16kΩ)が得られます。ベースが特殊ですが、腕に自身のあるアマチュアなら自作可能なタイプです。
JRCのP220です。これは日本独自の直熱5極管でジルコニウム塗布プレートでゲッタはありません。とても丁寧な作りになっています。プレート損失は230W、フィラメントは12V4.25Aです。上部にはプレートとサプレッサーグリッドが引き出されています。ソケットは横から差し込むような特異な形をしています。AB1級増幅または発振などに使われていました。板プレートです。いくつかのバリエーションがあるようで、製造番号がサプレッサーグリッド上部に付いているものとないものが有ります。変わり種では、トップシールでちょうど角が3本の画像のものがあります。並列にPT15と印字されていますが、英国のPT15とは似ても似付かぬ規格と形状です。なぜこの名称が併記されたのか判りません。3極管接続で、A1シングル、プレート電圧500Vで8W程度の出力が得られます。世間では4B38が高価にもてはやされていますが、この真空管はもっと注目されても良いと思います。
JRCのP250です。Aは付きません。P250Aは時々見かけますが、このP250はめったに見かけません。外見ではベースが違う程度で、電極構造は全く同じです。
JRCのP250Aです。これは日本独自の直熱5極管でジルコニウム塗布プレートでゲッタはありません。とても丁寧な作りになっています。プレート損失は420W、フィラメントは12V8.5Aです。ちょうど先のP220を2本入れたような構造です。上部にはプレートとサプレッサーグリッドが引き出されています。この真空管もソケットは横から差し込むような特異な形をしています。B級増幅または発振などに使われていました。
JRCのP256Aです。規格はわかりません。電極構造は同じようなので、類似管だと思います。
東芝の5P70です。これは日本独自の直熱5極管でジルコニウム塗布プレートです。画像では判りにくいかもしれませんが、1箇所にゲッターが飛ばされています。東芝の大型送信管では珍しいです。上部の碍子にスプリングを組み合わせた形でV字型のフィラメントが同心円になるように張られています。プレート損失は420W、フィラメントは12V10Aです。上部にはプレートとサプレッサーグリッドが引き出されています。ソケットは横から差し込むような特異な形をしています。船舶用送信機の終段によく使われていました。全長約22.5cm、直径約12.3cmで自然空冷です。JRCにも5P70はありますが、前述のP250Aと非常によく似た形状です。
JRCのP-270です。日本独自の直熱5極管でジルコニウム塗布プレートでゲッタはありません。P-250Aの兄貴分で、プレート損失は600Wです。フィラメントは3組の並列張りで12V18Aです。とても丁寧な作りになっています。上部にはプレートとサプレッサーグリッドが引き出されています。ソケットは横から差し込むような特異な形をしています。船舶用送信機の終段によく使われていました。全長約30cm、直径約16cmで自然空冷です。
JRCの6P80です。これは日本独自の直熱5極管でジルコニウム塗布プレートでゲッタはありません。とても丁寧な作りになっています。プレート損失は600W、フィラメントは12V20Aです。上部にはプレートとサプレッサーグリッドが引き出されています。ソケットは横から差し込むような特異な形をしています。船舶用送信機の終段によく使われていました。全長約30cm、直径約18cmで自然空冷では最大級の真空管です。東芝でも同型の真空管を作っていますが、こちらは7T40のような同心円筒状のプレートのもので、作りも簡素になっています。
東芝の6P80Aです。6P80を第3グリッド変調できるように改造した真空管です。外観は、同社の6P80と同じです。JRCのものと違って、こちらには2箇所にたっぷりとゲッターが飛ばしてあります。さらに、プレートはジルコニウム塗布になっています。電極構造は、前述の5P70をそのまま一回り大きくしたような形です。フィラメントは、円周上に4組が並列に張られています。非常に面白い構造の真空管です。前述のP-270と並べてみました。6P80A(または6P80)の方が、直径が2cmほど太いですが、ベースの厚さの関係でしょうか、見た目の差異は判りません。