ドイツ軍用管(大型送信管)

RSで始まるドイツ送信管のうち、プレート損失100W以上のものを紹介します。

まづ、有名なテレフンケンのRS237です。RS237は、プレートにジルコニウムが塗布されていてゲッタはありません。プレートの温度が上がるとジルコニウムが活性化してガスを吸着する仕組みになっています。3タイプあり、よく知られているのは画像のメッシュプレートと呼ばれているもの(タイプU、1940年製)ですが、正確にはパンチプレートです。またフィラメントはフック吊りのM型になっています。

こちらは、1942年製のタイプVです。プレートがフィン付きの板になり、さらにフィラメントも冶具を用いることでグリッドに対して平行になるように改善されています。このほかにも211のようなカーボンプレートものもあるそうですが、現物を見ていないのでなんとも言えません。プレート損失は100Wですが、貴重な真空管ですので70W未満に押さえておきたいです。

タイプUとタイプVを比較しました。各所が改善されていることが判ります。右端はRS237のオリジナルソケットです。側面の3つの突起が真空管のベースの溝に勘合するようになっています。211などのUV型ではありません。

テレフンケンの初期の送信管、RS69(タイプW)です。純タングステンフィラメントの3極直熱管で、パンチングプレートにジルコニウムを塗布したダブルエンドの構造です。1930年代前半の送信管で、カイザーの鷲のマークが管壁にエッチングされています。プレート損失は20Wと小型ですが、こちらで紹介します。フィラメントは逆V型でスプリングで上部より吊るされています。驚くべきことは、そのスプリングを支持している部材がなんとガラス細工で作られているところです。現存する希少な真空管です。

テレフンケンのRS282です。これは、傍熱型3極管で30cmを越える大型管です。プレートを上から吊るしカソードとグリッドを下から立ち上げて間隔を微妙に維持しています。この構造をダブルエンドといいます。規格は211に良く似ていますが、形はまったく違っています。管の両サイドにカソードとグリッドが引き出されています。この形状は使いにくい印象を受けますが、送信管ではよく見かける構造です。製造時期によって電極構造が微妙に異なっています。手持ちは、タイプX(1930年代後半3月、Nr.5799/016)、[(1940年5月、Nr.110650/0140)、](1942年、Nr.408294/1241)の3本で、タイプXのみプレート接続部分のターミナルが一方向にしか引き出されていません。また、タイプXと[は炭化処理をしたニッケル板ですが、タイプ]はアルミクラッド鋼板です。タイプXは旧ドイツ帝国の鷲のマーク入りで、タイプ[は「BAL]のマーク、タイプ]はハーケンクロイツのマークが入っています。→3本の比較画像

RS282のオリジナルの箱です。4方からバネで吊るしてある大きな箱に入っています。大戦中(1942年、タイプ])の軍用BOXです。

テレフンケンのRS291です。傍熱4極管です。これも30cm級の大きな真空管です。RS282同様ダブルエンド構造になっています。

テレフンケンの大型送信管、RS329です。RS237よりも二周りほど大きな直熱3極管です。ゲッターはありません。いろいろなバージョンがあるようです。画像のものは比較的後期に生産されたものです。プレートの形状とジルコニウム処理からそれは推測できます。全長は約35cmで直径は9cmもあります。フィラメントは、23V13.5Aで並列で11.5V27Aで使うことも可能です。ドイツ特有のメス型ベースでフィラメントのみが下方に引き出されています。側面には上がプレートで下がグリッドが引き出されています。プレート損失は500Wと私の手持ちのドイツ管の中では最大です。類似管はありませんが、オーディオ用に限定すると米国の450THあたりが近いです。

テレフンケンの直熱5極管、RS337Yです。プレート損失150Wで、ジルコニウム塗布プレートでゲッタはありません。とても丁寧でがっしりした造りで、1942年製の軍用です。

テレフンケンのRS612です。大変近代的な構造で、50MHzまで使用できる直熱3極管です。プレート損失は150Wでゲッターはありません。フィラメントは、5V8.5Aと大変大飯食らいです。