日本の送信管 その1〜ガラス管(プレート損失100W未満)

マツダ(東芝)の小型直熱5極管のP535です。後に傍熱の3P50Aに移行してしまいました。ジルコニウム塗布の板プレートで、ゲッターはありません。小型ですが、とても丁寧な作りの綺麗な送信管です。

東芝通信のT-304です。戦時中の小型軍用送信管です。このサンプルは昭和20年1月の製品で、時代的には大変状態の良いものです。詳しい規格はわかりませんが、実測してみました。ヒーターは12V、0.28Aです。Ep=250V、Eg=-15V、Ip=7.8mA、Eg=-11V、Ip=24mA、Gm=4.05mA/Vでした。プレート損失は10Wということですが、Ip>30mAで不安定になったのでその点は不明です。

メーカー、規格共に不詳のP-503Aです。戦時中から戦後にかけて作られた直熱5極管です。バンタムステムの堅牢な造りの送信管です。

戦時中の送信管、川西機械製のUX865E(D-865E)です。プレート損失10Wの直熱4極管で、大きさは807と同じです。フィラメントは、7.5V2Aでセラミックスぺーサーとマイカを組合せてタンタル製プレートを支えたとても丁寧に作られた真空管です。おなじみの川西真空管とロット番号と製造月が記載されています。また、帝国海軍の錨のマークと検印ラベルが貼ってあります。製造は、昭和16年10月で真珠湾攻撃に行く少し前に生産されたものです。米国の865と同規格です。

戦時中の送信管、川西機械製のE511Bです。セラミックスぺーサーとマイカを組合せてタンタル製プレートをリベットで組合せたとても丁寧に作られた真空管で、おなじみの川西真空管とロット番号と製造月が記載されています。昭和18年4月です。プレート損失は40Wらしいですが、詳しい規格は全く判りません。直熱5極管で、ベースは一回り大きいUYです。

理研のTKS5(刻印)です。規格はまったく判りません。12Aような電極が入っています。小型の送信管だと思います。上部はプレートとグリッドです。

戦時中の川西機械製のUY-807Aです。おなじみの川西真空管のロゴはありません。後述のUY-807同等ですが、直管で金属ベースでステムも短い通称「バンタムステム」になっています。

東芝のUY807です。おなじみのアマチュア向けの送信管です。今では、オーディオ用としてもっぱら使われているようです。6L6のトッププレート版ともいわれています。ウエスタンの350Aと同等ですが、ヒーターは807が6.3V0.9Aで350Aは6.3V1.5Aと異なります。プレート損失は、30Wで、60MHzまで使用できます。NECの807はセラミックスペーサーを組み合わせた電極構造など、東芝のものとは異なっています。また、ステムと電極の間にもシールドを設けています。

東芝の小型ビーム送信管の2E26です。比較的低電圧で出力が取れるので音声増幅にも使われています。通常のGT管の大きさなので、どうしても送信管としては物足りなさを感じます。製造時期の違いで茶色ベースと黒ベースがあります。またプレートの材質(処理)も異なるようです。

UY807同様、アマチュアにもよく使われた6146(2B46)です。画像のものは日立防衛庁納品のNDS規格ものです。プレート損失は20Wで後に改良されて6146B→S2001(松下)になりました。右の画像は、RCAのパルス対応用に特殊管理で製造された6146P(2B46P)です。一般使用の規格は、6146同等です。東芝の2B46Pが入手できたので追加します。NDS規格で、自衛隊の施設からの放出品です。

東芝の2T11です。プレート損失100W以下の3極管です。811Aの和名と思い入手したのですが、全くの別物でした。傍熱管でカソードが2本あり、内部で並列に接続されています。グリッドは金メッキです。

双ビーム管の2B32(832A)です。200MHzまで使用できるプレート損失15Wの真空管です。プレートのみが独立であとはすべて共通になっています。この真空管は、希少なJRCの新品でNTTの放出品です。一回り規格を大きくした真空管が、2B29でこちらの方は市場でよく見かけます。

双ビーム管の2B29(829B)です。比較的高い周波数まで使用できますが、AB級音声増幅もメーカー奨励動作として記述されています。プレートのみが独立であとはすべて共通になっています。この真空管は、希少なJRCの新品でNTTの放出品です。同パルス対応のRCA3E29(=2B29P)と並べてみました。見た感じでは、差異は判りません。

松下のUHF用双ビーム管の2B52(6252)です。ジルコニウム塗布のプレートのみが独立であとはすべて共通になっています。

双ビーム管の2B94(5894)です。2B29よりも高い周波数まで使用できる送信管ですが、B級音声増幅もメーカー奨励動作として記述されています。ジルコニウム塗布のプレートのみが独立であとはすべて共通になっています。この真空管は、東芝製です。

こちらは小型移動用のUHF帯域用の双ビーム管、6939です。500MHzまで使用できます。一見受信管のように見えますが、ジルコニウム塗布プレートのれっきとした業務用送信管です。マイカに接触する位置のガラス面が4方向から絞り込んであります。耐震対策と思われます。プレートのみが独立であとはすべて共通になっているのは2B94と同じです。

松下の6360です。小型移動用のVHF帯域用の双ビーム管で200MHzまで使用できます。プレートのみが独立であとはすべて共通になっているのは2B94と同じです。AB1級の音声増幅の場合、単管プッシュプル構成で10kΩの負荷で12Wの出力が得られます。この真空管は、先端部がくびれた面白い形をしていますが、通常のMT管形状のものもあります。