日本の真空管(受信管〜出力管)

マツダ(現東芝)のUX-112Aです。初期のナス管で珍しい茶色ベースの刻印です。作りも米国の112Aを凌駕する大変丁寧な造りです。日本製でもこのような112Aが存在するのですが、残念にも後述のST管のものが12Aの代名詞になってしまいました。

マツダ(現東芝)のUX-171Aです。初期のナス管です。作りは米国の171A同様の丁寧な造りです。日本ではこの171Aよりも電気的に一回り小型の112Aが良く使われたため、あまりポピュラーではありませんでした。

12Aは、アメリカの112Aと違って一回り小さい形で、並3ラジオの出力段によく使われました。出力は1W以下で、高能率のマグネチックスピーカーを使用することで実用化されていました。

6ZP1も並3ラジオの出力段に良く使われた5極管で、1W程度の出力が得られます。日本独自の出力管です。

戦時中のマツダのUT-6A6です。昭和19年5月製です。オーディオでは電圧増幅管としてよく使いますが、軍用ではB級プッシュプルで出力管として使われていました。ガラスが青みを帯びた質素なものですが、電極は丁寧に作られています。

家庭用電蓄で良く使われた42です。左からマツダ、松下、NECです。A1シングルでEp=250Vの時、3.2Wの出力が得られます。また、3結で45に似た音色になるとも言われ、最近ではドライバーとしても良く使われます。

NECのCZ-504Dで通信用の42同等管です。ヒーター電圧が5.5V1Aと異なります。

TEN(現富士通)の6F6GTです。42のGT管です。

小型ビーム管の6V6GTです。6F6と似た特性ですが、6F6に比べるとヒーター電力が少なくて出力が取れるため業務用に良く使われました。

TENの6L6Gと東芝の6L6Gです。TENのものは、管壁がラッカー仕上げになっていて内部がわかりませんが、光に透かして注意深く観察すると、東芝と同様の形状のようです。

NECの6L6GCです。6L6GCは6L6の最終版です。

日本固有というより、東芝のみが生産したの6GB8です。6GB8は、ロットによってベースの大きさやプレートの材質、ゲッターの数が異なります。民生用最大級のビーム出力管で、プレート損失35Wです。業務用にも広く使われました。アメリカの8417が良く似た特性です。

松下の最初期の6CA7です。通称メタルベース(フィリップス同等)と言われている物です。真鍮製のメタルにニッケル鍍金が施されています。ステムは近代的なボタンステムです。ゲッターは上部で電極が汚れないように金属板が設けられています。

その後の松下の6CA7、2タイプとNECの6CA7です。欧州のEL34同等管で、たぶん6L6と並んで最も良く使われた真空管です。メタルベースの後に左端の偏平トップのものが出て、後期にはトップにパーティングラインが入った中央の画像のようなものになりました。スマートな感じがしますが、5極出力管でプレート損失27.5Wと堂々としたものです。B級PushPullで100Wの音声出力が得られます。

6GA4はご存知、TV用真空管の6BX7の1/2の傍熱型3極管です。A1シングルでEp=250Vの時、2.2Wの出力が得られます。良く似た特性に6CK4があります。

有名な8045Gです。これは、LUXがNECに作らせた傍熱3極管で、LUXのアンプに採用されていました。今では、良品は入手が困難で幻となってしまいました。大型のビーム管を3極管接続した構造で、プレート損失は45Wあります。スクリーングリッド、コントロールグリッドのいずれにも放熱翼が付いています。AB級PPでの使用が前提のようです。

LUXのアンプ用に作られたといっても過言ではないNECの50CA10です。故武末氏が「最高の真空管」と絶賛した真空管です。12ピンでフィラメントが50Vです。カラーテレビ用の水平偏向出力管を3極管接続として、オーディオ用に使えるようにした真空管です。プレートは、炭化処理した通称「ブラックプレート」とアルミクラッド鋼板の「グレープレート」があります。

松下の6BM8ですが、当時はペアチューブとしてこんな箱に入っていました。

東芝の50RP25でトランスレスの電蓄などに良く使われた出力管でヒーターが50Vになっています。低電圧で比較的大出力が取り出せます。

NECのレギュレーター用傍熱3極管の6RA3です。この真空管は、内部抵抗が低いので複数本並列にしたOTLアンプにもよく使われました。

OTL用として開発されたNECの6RA2です。4極管構造で補助電極が内部でプレートに接続されています。OTLでは、4本で16Ω負荷のアンプができますが、特性の揃ったものはNECだけが生産していた面もあって、なかなか入手できません。

MT管のNECの6RA8です。6RA8は5極管構造で内部で接続された3極管です。ちょうど6BQ5のような感じです。かつてのラックスのアンプに使われていました。