「簡単ですよ。解けない謎なんて無いんです」
　そう言う幼なじみに恋して１０年近いなんて…。
　探偵やってる相手はわたしの気持ちなんてすぐに気づくのよ。
「オメェが考えてる事なんて全部お見通しってな」
　はぁ、ばれててもおかしくないのよね。 「人が作った謎で解けないモノなんて無い」
　それがオレの持論だ。
　でも、蘭の気持ちだけは、どうにもこうにも困る。
　オレは、蘭がオレの事をどう思っているのかを知らない。
　好きなのか、それともただの幼なじみとして見ているのか。
　蘭の為なら何でもしてやりたいし、蘭が願うなら何でもかなえてやりたい。
　けれど、幼なじみの範囲は案外にも狭い。
　だったら、蘭に好きだと言えばいい。
　そう思っても、高校に行く傍らで、探偵業をやってるオレは、いわゆる恋愛事に現を抜かしている場合じゃないのだ。
　なんて偉そうに言ったって、オレが直接解決することのできる事件は早々あるわけではなく、そんなときは高校に行くわけで。
　高校に行けば…蘭も同じ高校なわけで。
　つまり、蘭が居るわけで………。
　そうしたら、蘭のそばに居てえじゃねえか。
　たとえ、おじゃま虫園子がいようがいまいが、蘭の側に入れるならそれでもいいし。
　夫婦とからかわれようが、それはもう小学校の頃からな訳だし。
　じゃあ、告白すれば良いじゃん。
　なんて、のんきに言う奴が。
　オレが蘭の事を好きだと知っている奴が少なからずいる。
　園子がその筆頭な訳で。
「だからね、さっさと告白しなさいよ」
「その告白のタイミングをことごとくつぶしてくれてるのはどこの誰だぁ？」
「まぁ、気にしないでさ」
　なんてのんきなこと言ってくれるしさぁ。
「新一、どうしたの？なんか隠し事？」
「んなんじゃねぇよ」
　当の本人はのんきに至近距離で人の顔をのぞき込んでくれる。
　頼むよ、そうやって顔近づけてくるなよ。
　なんて言えるはずなんて無く、俺たちの距離を蘭に任せてしまう。
「ねぇ、ねぇ、蘭」
「なぁに、園子」
　そう言ってほほえんで蘭は園子の近くに行く。
　蘭にいつかは、言うつもりだ。
「蘭が好きだ」
　と。
　そりゃ、いつになるかわかんねぇけどな。
　なるべく早いうちにできますようにと、小さく祈って。

　そのときのオレは、まだ何も知らなかった。
　まさか、そのタイミングに自分が全く姿を変え、ひょんな事から蘭の気持ちを知るようになるだなんて思いもよらなかった…。