「……のだめはどうしたらいいんですか?千秋先輩……」
エリーゼの突撃依頼説明はのだめに困惑をしている。
「いいんじゃないのか?お前のためだと思うし……。むしろオレが行きたいぐらいだ」
「ぎゃぼ、先輩、うらやましいんですか?」
「当たり前だ」
のだめへ依頼してきたのはジジイじゃなくって、オレが尊敬してやまないヴィエラ先生。
ヴィエラ先生がのだめをピアノのソリストとして指名したのだ。
「むきゃあああああ、見てください、千秋先輩〜〜パリの町が一望ですよ」
何でこんな所に……。
「お前は峰と上ったんじゃないのか?」
「それは、何言ってるんですか先輩、何回上ったって楽しいですよ。ふはははっは、みろ、ひとがごみのようだぁ」
ってそれ、東京タワーに上ったときも言ってなかったか?
だいたい、なんでそんなに元気なんだよ。
つい一昨日まで、どうしようってさんざん言ってたじゃねえか。
のだめはヴィエラ先生とヴィエラ先生が常任指揮をしているM響と一緒に世界中へとツアーに回る。
交響楽団の世界公演となれば数ヶ月では終わらない。
その話をエリーゼから聞かされたのが1ヶ月前。
ヴィエラ先生とじじいが仲が悪くても、きちんと分ける当たり、エリーゼはやっぱり有能なマネージャーなんだろう。
まぁ、あのジジイの我が儘ぶりを思えば有能ならざるを得ないだろうが。
「凄いですよねぇ、遠くまで景色見えますよ。東京タワーとの眺めと全然違うっ」
あたりまえじゃねえか、ココは東京じゃなくってパリだ。
無理にはしゃいでるのかそれとも本気なのかオレはよくわからない。
明日からのだめはヴィエラ先生のいるイタリアへと向かう。
ツアーの準備の為だ。
これまでで一番長い時間を離れる事になる……。
今更ながらに気がついた。
のだめが行方不明になったときでさえ、半年ぐらいだ。
……今回はそれ以上だ。1年近くなる。
「のだめ、」
「先輩、セーヌ川沿い、歩きませんか?」
のだめの問いにオレは頷いた。
「なんで、って聞かないんですか?」
セーヌ川沿いで突然のだめが口を開く。
「聞いて、言うのかよ」
のだめは聞いても言わない。
聞かないとますます言わないけど。
「言いますよ。先輩じゃあるまいし」
「って、オレは言ってるじゃねえか」
むしろ、オレの方が言ってるはずだっ。
「で、何でだ?どうやって何が決め手だったんだ」
「はい……昨日、ヨーダに話してきたんです」
そういえば、昨日はコンヴァトに行くって言ってたな。
「そしたら、いろんな指揮者、いろんな楽団と競演する。それは勉強になるよって言われたんです。その通りだなって思いました。『恵の夢には必要、かもしれない』って……。だから覚悟決めたんです。真一君と1年以上離ればなれになることを、寂しいですけど」
「のだめ……」
その言葉にオレは何も言えなかった。
音楽家は旅する者だ……。
それは、世界中に自分の音楽を広めるためだ。
だから音楽家は旅をする。
世界中を。
求められれば身一つで向かう。
家族を置いてでも……。
それが音楽家だ。
と分かっていても、理不尽だと思ってしまう。
だから、のだめはオレとゴールデンペアになると言い出したのだ。
一緒にいようとするために。
あの時、のだめは本能的に分かっていた、音楽家は旅をする者だと。
もし、オレがウィーンに留学していたら離ればなれになっていた。
すぐに逢えない距離にいたはずだ。
もっともあの時のオレはそれを望んでいたとしても……。
だから1年なんてまだ短い方だ。
「のだめ、元気でやれよ」
のだめを抱きしめてオレはそう言った。
シャルル・ド・ゴール空港でのだめを見送る。
飛行機を見るくらいは平気なった。
オレは今は見送る方だ。
次はオレが行く方かもしれない。
そうやって離ればなれになりながらも、オレ達は音楽でつながっている。
そうしていつかは一緒に世界中を旅することができたのならば、それはとても幸せなのかもしれない。
ともかく「のだめカンタービレ」です。
というか、おざけんです。
Lifeに収録されてない痛快ウキウキ通りとか未収録の曲を収録したアルバムが出て欲しいです。
本当はね、この話、のだめじゃなくってコナンで書くつもりだったんですけどね。
設定だけ出来てて、蘭がイギリス留学するっていう設定で。
書かず仕舞いで、この続きが「きらめく星になっても」で書こうと思ってたんですけど、この音源がないのであきらめた次第です。
のだめでは予定ではあと2本書きます、「アレグロ・カンタービレ」と「こんなに近くで」で。
アニメ主題歌ですね。
とりあえず、そんなところですか?