遺留分

2008(平成20)年3月26日
2011(平成23)年5月2日改訂
2018(平成30)年6月15日改訂
2019(平成31)年2月22日改訂
2019(平成31)年4月19日改訂

 

 民法が改正され,2019年7月1日から,「遺留分減殺請求権」が「遺留分侵害額請求権」という金銭支払請求権に改正されます。

 

 被相続人が遺言でその遺産を法定相続分と大幅に相違して相続分の指定をしたり,生前贈与等をした場合,相続人が直系尊属だけの場合は相続財産全体の3分の1,その他の場合は相続財産全体の2分の1が対象となり,それに法定相続分を乗じて遺留分割合が決定されます。

 

 兄弟姉妹には遺留分減殺請求権(遺留分侵害額請求権)はありません。

 

 遺留分は,被相続人が相続開始の時に有していた財産の価額に,被相続人が生前既に贈与している財産の価額を加算し,その合計額から債務の全額を差し引いて計算します。

 

 遺留分の算定において,相続人の1人ないし数人が被相続人から受けた贈与等の特別受益は相続開始の1年以内にされたものに限らず,それ以前の贈与等でも遺留分算定の基礎財産に算入されます。

 

 但し,2019年7月1日に施行される改正民法1044条3項により,相続人に対する特別受益に該当する贈与については,相続開始前の10年間にしたものに限り,その価額を遺留分算定基礎財産に算入されることになります。

 

 しかし,寄与分は遺留分について考慮されず算定されません。

 

 遺留分減殺請求権(2019年7月1日からは「遺留分侵害額請求権」となります。)は,遺留分権利者が,相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈等があったことを知ったときから1年間行使しないときは時効により消滅します。

 また,相続開始のときから10年を経過したときにも消滅します。

 遺留分減殺請求権(遺留分侵害額請求権)は,相続開始後はいつでも放棄できます。

 

 相続開始前の遺留分減殺請求権(遺留分侵害額請求権)の放棄は家庭裁判所の許可を要します。

 

 これを利用して事業承継をうまくすることが考えられます。

 

 事業承継は,被相続人の財産の生前贈与ないし生前売買又は遺言を活用する方法により行なうことが有効です。生前贈与や遺言と遺留分減殺請求権(遺留分侵害額請求権)の生前放棄の許可を組み合わせることがポイントです。

 

 遺留分減殺請求権(遺留分侵害額請求権)の具体的行使方法は,

2014(平成26)年6月6日遺留分減殺請求権の実務的な行使方法とその効果

でご説明しています。

 

 遺留分減殺請求訴訟(遺留分侵害額請求訴訟)を,被相続人の最後の住所地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所等に提起する前に(民事訴訟法5条14号等),相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に遺留分減殺請求調停(遺留分侵害額請求調停)を申立てる必要があります。(調停前置主義・家事事件手続法257条1項)

以上

 

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