失踪宣告(失踪の宣告)と行政処分としての「認定死亡」
2021(令和3)年7月6日
- 第一 失踪の宣告
- 1 従来の住所又は居所を去った者を「不在者」と言います。(民法25条1項)
- 2 「不在者」の生死が7年間以上明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、「失踪宣告」をすることができます。(民法30条1項)
- 3 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないときも、家庭裁判所は、利害関係人の請求により失踪の宣告をすることができます。(民法30条2項)
- 第二 失踪の宣告の効力
- 1 不在者の生死が7年間明らかでないことを理由になされた失踪の宣告により、失踪者はその7年間の期間が満了した時に、死亡したものとみなされます。(民法31条前段)
- 2 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者に対する失踪の宣告により、失踪者はその危難の去った時に死亡したものとみなされます。(民法31条後段)
- 3 失踪の宣告により、失踪者が死亡したとみなされた時に、失踪者について相続が開始します。
- 第三 失踪の宣告の取消し
- 1 失踪者が生存すること又は前項に記載した民法31条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければなりません。(民法32条1項前段)
- 2 失踪宣告の取消しの審判が確定すると、はじめから失踪宣告がなかったと同一の効力を生じます。(遡及効)
- 3 失踪の宣告の取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼしません。(民法32条1項後段)(遡及効の制限)
- 4 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失うことになります。(民法32条2項本文)
- 5 前項の場合に、失踪の宣告によって財産を得た者は、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負います。(民法32条2項但書)
- 第四 行政処分としての「認定死亡」
- 1 行政処分としての「認定死亡」は、水難、火災その他の事変(航空機事故、震災、炭坑爆発など)によって、被災者の死亡が確実と見られるが死体が確認できない場合に、取調べにあたった官公署の報告に基づいて戸籍上死亡の記載を行うものです。(戸籍法89条、91条)
- 2 行政処分としての「認定死亡」は、簡易な失踪宣告手続としての機能を営んでいます。
- 第五 関連事項
- 1 なお、「不在者」に関しては、
2008(平成20)年6月30日不在者の財産管理人と取得時効による所有権移転登記手続請求訴訟
でご紹介しています。 - 2 また、「失踪宣告」により生ずる「相続」に関しては、
2008(平成20)年3月31日相続について
でご紹介しています。
但し、これは善意の直接取得者に限られるべきであります。
悪意の直接取得者については、一般原則から、得た財産をすべて返還する義務があると解すべきと考えます。
参考文献
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・新注釈民法(1)総則(1)
山野目章夫 編
株式会社有斐閣 発行