簡易裁判所の「訴え提起前の和解」(起訴前の和解・即決和解)
2015(平成27)年2月5日
訴訟上の和解に関しては、2011(平成23)年6月18日訴訟上の和解についてでご説明しています。
訴訟上の和解に類似する制度で、訴訟係属を前提としない簡易裁判所における「訴え提起前の和解」(起訴前の和解・即決和解)(民事訴訟法275条)・(以下「訴え提起前の和解」と言います。)があります。
「訴訟上の和解」と「訴え提起前の和解」を総称して「裁判上の和解」と言います。
「訴え提起前の和解」の概要は以下の通りです。
- 1)管轄
原則として、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所が管轄裁判所です。
例外として、上記の管轄裁判所以外の簡易裁判所を管轄裁判所とする書面による合意が当事者間であれば、その簡易裁判所にも管轄権が生じます。
- 2)申立の方式
「訴え提起前の和解」の申立は、書面または口頭で出来ます。
「訴え提起前の和解」の申立書の実質的記載事項は、請求の趣旨、請求の原因、及び争いの実情です。
通常は、その外に和解条項案などの合意内容を記載した書面を提出します。
- 3)互譲が不要であること
「訴え提起前の和解」では、実体法上の請求権について当事者双方の互譲を必要条件とせず、従って、相手方の主張を全部容認していても有効に和解を成立させることができます(大判昭15・6・8、大審院民事判例集19巻13号975頁)。
- 4)執行力
「訴え提起前の和解」が成立すると、和解調書が作成されます。
その和解調書は、確定判決と同一の効力を有するので(債務名義になります。)、その和解調書に基づき強制執行することが出来ます。
なお、強制執行をなすことが出来る債務名義については、2004(平成16)年5月8日強制執行するにはー不動産差押・債権差押・動産差押などをするために必要なもの(債務名義)で説明しています。