2019/01/07 研究発表禁止事件で LET関東支部に 説明を申し入れ
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ミント音声教育研究所の田淵は、昨年12月20日付けで、外国語教育メディア学会(LET)関東支部長見上晃氏、同運営委員会、及び各運営委員に対して、研究発表中止処分に関する説明会の開催を求める申し入れ書を送付した。
LET 関東支部が抱え続けている TED 検索エンジン著作権問題を解決することが緊要な課題ろなっているからである。
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もくじ |
- TED 検索エンジン著作権問題の解決に向けて
- 資料 1 申し入れ書
- 資料 2 LET関東支部による 研究発表中止に関わる通知
- 資料 3 TED との交渉記録
- 資料 4 採択された研究プログラムの企画書
- 資料 5 研究プログラム最終報告に対する不採択通知
- 資料 6 著作権問題の研究発表申し込み概要
- 資料 7 著作権問題の研究発表に対する不採択通知
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TED 検索エンジン著作権問題の根幹には、LET関東支部による研究発表中止処分がある。これは、一昨年(2017年)11月に予定されていた研究発表(田淵龍二・山口高領)を中止に追い込んだ事件である。
大会では白紙のままの見開きページの発表要項が配布された。
そこには、事務局名で以下の2点が明記されていた。
- 著作物利用の可否について確認を取る必要が生じましたため,確認が取れた場合は,大会当日に原稿を配布します。
- 支部研究大会以降に著作権問題がクリアされた場合は,来年度の支部研究大会あるいは,支部主催で臨時の発表の機会を設ける
今回の申し入れはこの事務局通達に基づいたものである。
最初の文章(a)にある「確認」、及び文章(b)にある「クリア」を誰が確認するのかは記されておらず、事務局が確認を取るのか、LETにワーキング・グループを設置して行うのか、また第三者委員会に委ねるのか不明である。しかし、いずれにしても、今日に至るまでLETが確認作業をおこなったとの連絡も告知も噂もない。
他方、処分された当事者である田淵と山口はすみやかにTED と連絡を取り、意見交換を行ってきた。その経緯は詳細にレポートされている。
ところで、処分から1年が経とうとしているなかで、LET関東支部から「クリア」についての連絡も問い合わせもなかった。
そうしたなか山口氏と田淵は、中止された研究発表について内容を更新して、昨年秋の関東支部大会に再度発表申し込みを行った。表題は「英語字幕付き動画サイトのコーパス開発(最終報告)」であった。最終報告となっているのは、この研究が、LET関東支部2016年度採択プロジェクト「TED Talksを対象とした検索システム開発を目指したコーパスの構築(代表:山口高領)」であり、成果報告が義務付けられているからである。
この発表申し込みに対する査読結果は不採択であった。その理由を査読者は
- 本研究の最終報告は、TEDからの正式な許諾をLET関東支部事務局にご報告いただいた後にお願いいたします。
とした。
LET が正式な文書で「TEDからの正式な許諾」に言及したのは始めてである。資料 2 で見たとおり、LET は「著作物利用の可否について確認」としていた。
ところで、こうした山口・田淵共同発表申し込みとあわせて、田淵は「検索サービスと著作権 - 著作権者とのやり取りはいかに行われたか」と題する発表申し込みを行っていた。「著作物利用の可否について確認を取」ったことの報告を兼ねた研究報告であった。
ところが、査読結果は不採択であった。査読結果通知には以下のような理由が書かれていた。
- 内容的には当学会よりも、著作権に関する学会や外国語に限らないe-learning学会等での報告がふさわしいように思われます。
これら査読者の立場と見解が、LET関東の考えと合致するかどうかは不明だが、学術団体の性格からすれば、LETの公式見解と考えるのが普通である。
今回の著作権問題と、TED コーパス研究発表禁止事件には、LET 関東支部の不可解で不自然かつ不適切な運営と言動が多く、しかも、運営委員会と事務局で何が行われているのか不透明である。そうしたことから、見上支部長、運営委員会及び各運営委員に説明の機会を持つように求めたものである。
以上が、TED コーパス研究発表禁止事件の解決を求めて申し入れを行った経過である。
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研究発表中止処分に関する説明会申し入れ書
外国語教育メディア学会 関東支部長 見上 晃 殿
私は外国語教育メディア学会会員です。私は2017年11月18日関東支部大会において研究発表(表題:2016年度関東支部研究支援プログラム成果報告/リーダビリティ,語彙レベル,発話速度を手掛かりとして,日本の英語学習者レベルにあったTED Talksを選び出すウェブコーパス開発;発表者:田淵龍二・山口高領)を行う予定でした。すでに発表要項原稿も提出し、プログラムにも記載されて会員に配布されていました。にもかかわらず前日の17日に外国語教育メディア学会関東支部正副委員長より、「TEDから著作権違反であると指摘されることを恐れており・・・TEDからの許諾を得たのちであれば発表可,許諾を得られるまでは不可」との通知を受けました。また発表要項冊子の該当ページは空白で印刷されており、タイトルの直下に「著作物利用の可否について確認を取る必要が生じた」ので「著作権問題がクリア」されるまで延期すると公告されていました。これらの措置には一片の正当性も合理性もありませんでしたが、その後粘り強く活動を続け、著作権問題が解決しましたのでお知らせします。つきましては以下記載の点に関する説明会を開催されるよう申し入れます。
なお、本件申し入れへの回答期限は来年(2019年)1月31日までとします。また、説明会は今年度中(2019年3月30日以前)に行えるよう望んでいます。
記
説明会の主題
- 貴関東支部が主張する「著作権問題がクリア」したことの田淵からの説明。
- 貴関東支部が主張する「著作権問題」について、具体的にTEDコーパスのどこがどのように問題なのかについての貴関東支部からの説明。
- 貴関東支部は、TEDコーパスを公開しているサイト・Talkiesを閉鎖すれば発表を許可すると強要しました。しかしこのサイトは貴関東支部とは無関係です。そして、一般の先生や生徒が授業などに日常的に使用しています。どのような権限あるいは理由で貴関東支部が私にサイトの閉鎖を要求したのかについての貴関東支部からの説明。
- 貴関東支部は2017年10月21日の運営委員会において上記「著作権問題」を初めて議論し「発表中止」を決定したと聞いていますが、その討議内容が討議資料とともに即日のうちに外部団体に通知され、慶応義塾日吉キャンパスで予定されていた一貫教育校フォーラム(主催:慶應義塾大学外国語教育研究センター)の担当責任者に伝えられ、田淵を講師からはずすことを強要する働きかけが始まりました。この働きかけを行ったのは貴関東支部運営委員であると聞いています。貴関東支部とは無関係の外部団体主催教育研究活動に貴関東支部が介入したことについての貴関東支部からの説明。
以上
2018年12月20日(木)
外国語教育メディア学会会員、関東支部所属、ミント音声教育研究所 田淵龍二
補足
- 運営委員会 及び各運営委員への申し入れもほぼ同文なので省略した。
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外国語教育メディア学会(LET)関東支部第139回(2017年度秋季)研究大会 発表要項 P.16-17.
本研究発表の内容の一部に,著作物利用の可否について確認を取る必要が生じましたため,確認が取れた場合は,大会当日に原稿を配布します。なお,支部研究大会以降に著作権問題がクリアされた場合は,来年度の支部研究大会あるいは,支部主催で臨時の発表の機会を設けるものといたします。以上,ご不便をお掛けいたしますが,ご理解の程宜しくお願い申し上げます。
関東支部研究大会事務局
補足
2017/11/18 ET関東支部第139回大会 レポート
- 英文概要理解問題の妥当性の検証
- ⇒★ LTED Talks を選び出すウェブコーパス開発
- TED コーパスサイト停止騒動
- 会場が異様な空気に包まれた瞬間
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著作権をめぐる紛争は、通常、著作権者からの苦情や告発を受けて始まり、侵害とされる事実の確認から協議が行われる。しかし、今回の事件に関して LET 関東支部が TED とやり取りをしたとの話はひとつもない。行われていないようである。つまり、著作権者の意向とは無関係に処分が執行されたと推察される。
他方、非処分者の田淵と山口は、すみやかに TED と連絡を取り、そのやり取りを公開してきた。公開は、トーキーズ・メルマガを主としたのでそれらの主だったものを以下に示す。No. は メルマガの号数である。全体像との関係で閲覧できるように各号の目次を示しつつ、関係見出しに ★ 印を付けてリンクを張った。
No.71 1 TEDコーパス研究発表の報告
第13回 テキストアナリティクス・シンポジウム
認知科学とテキスト解析に焦点
2 Talkies 字幕対応 TED Talks が 2,700本越え
最新作品は How I'm using LEGO to teach Arabic
3 ⇒★ コーパスをめぐる TED との経過報告(続)
返答と返信
No.70 1 TEDコーパス研究発表のお知らせ
認知科学とテキスト解析に焦点
2 外国語教育メディア学会(LET)全国大会研究発表報告
配布文書・アンケート集計結果など資料公開
3 ⇒★ コーパスをめぐる TED との経過報告
返答と返信
3週間 返答なし
No.69 1 改正著作権法成立と教育 (2) 柔軟な権利制限
2 改正著作権法成立と教育 (3) フェアユース
3 著作権とTEDとクリエイティブ・コモンズ
4 ⇒★ コーパスをめぐる TED との経過報告
5 外国語教育メディア学会(LET)全国大会で研究発表(再掲)
No.67 1 スティーブン・ピンカー講演集
2 ⇒★ LET会長に被害救済と運営改善の申入書 全文
回答期限は7月10日
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LET関東支部 研究支援プログラム研究計画書
題名:
TED Talksを対象とした検索システム開発を目指したコーパスの構築
概要:
田淵は、22本の映画を対象に、テキスト音声映像コーパス・セリーフ(2015 LET機関誌 No.52, LET教材開発賞受賞)を作った。このコーパスは、映画中の音声を含む動画像と、そこで使用されているテキストから成り立っており、検索語により、該当する動画像を提示する。また、このコーパスを分析することで、対象とした映画の中での発話長、語彙の難易度、リーダビリティを計算することが可能となった。ただし、上記のコーパスはあくまで映画の会話データであるため、スピーチにおける特徴まで述べているとは言えない。近年、TED Talksを外国語教育に利用した教育実践が行われている。本研究では、TED Talksがwebで公開している英語のスピーチのテキストデータと音声データのコーパス構築を目的とする。このコーパスによリ、TED Talksの音声的・語彙的・統語的特徴を明らかにし、学習者の望む言語レベルのスピーチ題材を選ぶことを可能にすることが期待できる。コーパスは無料公開を予定しており、広く英語学習や英語教育に資することが波及効果の一つである。研究1年目ではデータ収集を目指し、2年目にてTED Talksの言語的特徴を明らかにし、教育的利用法を提案する予定である。
期間: 2年間(2016年4月〜2018年3月)
代表: 山口高領(早稲田大学)
共同研究者: 田淵龍二(ミント音声教育研究所)
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From: 外国語教育メディア学会(LET)企画委員
Date: 2018年9月28日(金) 16:53
Subject: 2018年LET関東秋季研究大会 査読結果のお知らせ
ご応募頂いたタイトル:
英語字幕付き動画サイトのコーパス開発(最終報告)
発表形式:研究発表
査読結果:不採択
なお、査読者から下記のコメントが寄せられております。今後のご研究の参考にしていただけますと幸いです。
以前よりお願いしている通り、本研究の最終報告は、TEDからの正式な許諾をLET関東支部事務局にご報告いただいた後にお願いいたします。
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申込者: 田淵龍二(ミント音声教育研究所)
本発表は、検索サービスと著作権の研究報告である。事例として「外国語教育メディア学会関東支部 2016年度研究支援プログラム」に採択された「TED Talks を対象とした検索システム開発を目指したコーパスの構築」(山口代表)の最終報告をめぐって生起した「TEDの許諾がないので研究発表を中止する」事案におけるその後のTEDとのやり取りなども取り上げる。
著作権処理をめぐり研究発表が禁止される事例は探し出せなかったが、コーパス構築とその検索サイト公開についての事例を調査した。また、検索サービスに関する法整備がすすんだことから、検索サービスと著作権の今日的関わりについて明らかにしていく。また、著作物へのリンクを利用した検索サービスとは異なり、著作物を利用したe-ラーニング授業やウェブサービスなどにおいて、筆者がこれまで出版社や事業者(ディズニーやノーベル財団)などと行ってきた著作権処理の実態も紹介する。また、同様の検索サービスサイトが世界でどのように行われているかの実態調査も報告する。
TEDとのやり取りは主にメールで行われ、当初は支援プログラム代表である山口氏が行ってきたが、途中から報告者に交代した。やり取りは、外国語教育メディア学会関東支部事務局からの通知があった直後から始まり、現在までの約10ヶ月間に10回以上の送受信が行われた。現在はTEDからの応答待ちである。TEDの窓口は Media Request Team である。この部門は、ビデオなどのビジネス利用受付を本業としているところであり、本件のような検索サービスは対象外である。このことが、やり取りを長引かせている原因のひとつと思量される。しかし、一般には著作権をめぐる紛争処理(たとえばYouTubeなどへの不適切コンテンツ報告)には数ヶ月以上かかるとされていることから、特段に時間がかかっているとは言えない。
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From: 外国語教育メディア学会(LET)企画委員
Date: 2018年9月28日(金) 16:50
Subject: 2018年LET関東秋季研究大会 査読結果のお知らせ
ご応募頂いたタイトル:
検索サービスと著作権 - 著作権者とのやり取りはいかに行われたか
発表形式:研究発表
査読結果:不採択
なお、査読者から下記のコメントが寄せられております。今後のご研究の参考にしていただけますと幸いです。
概要からは、研究発表ではなく研究発表をめぐる説明となってしまっているように読み取れます。
また、内容的には当学会よりも、著作権に関する学会や外国語に限らないe-learning学会等での報告がふさわしいように思われます。
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2019.01.07 田淵龍二 TABUCHI, Ryuji
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