御存じ「リビング・デッド=ゾンビ」の創始者である。
『バイオハザード』を監督するとの噂が流れ、ゾンビ・ファンは狂喜したが、それはぬか喜びに過ぎなかった。やはり彼はハリウッドの大作には向かなかったようだ。ピッツバーグの田舎街で自主製作することを選んだのだ。
彼の映画人としてのキャリアはヒッチコックの『北北西に進路を取れ』から始まったという。大学生時代、撮影現場でバイトしていたらしい。そこで目の当たりにした「ハリウッド流の映画作り」に疑問を持ち、地元で自主製作を始めたというから、元来ハリウッドには向かない人なのだ。
大学を卒業後、CMや産業映画の製作会社を設立したロメロは、週末を利用して『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』を製作。公開時は惨々な入りだったが、TVの深夜放送でカルト的な人気となり、77年のリバイバル上映で大当たりを取る。気をよくした彼は、ダリオ・アルジェントの協力を得て、続編とも云える『ゾンビ』を製作。これが世界的な大ヒットとなり、今日の地位を築くことになる。
ゾンビといえばロメロ、ロメロといえばゾンビというぐらいの影響力を誇るが、その反面で「非ゾンビ映画」には冴えないものが多い。
まず、『悪魔の儀式』。『ナイト・オブ〜』の興行的失敗に懲りたのか、非ホラー路線の「女性映画」に挑んだが、これがまったく面白くない。
続く『ザ・クレイジーズ』や『マーティン』は、『悪魔の儀式』の失敗の反省を踏まえた上での佳作に仕上がったが、『ナイトライダーズ』は2時間25分もある「旅芸人もの」で、どうしてロメロがこれを撮る必要があるのかと首をひねった。
ハリウッドに招かれて撮った『モンキー・シャイン』や『ダーク・ハーフ』もどうってことなく、結局、「この人、ゾンビもの以外は凡庸」との印象を拭えない。
続くハリウッドでの企画『THE MUMMY』は往年のミイラ映画『ミイラ再生』のリメイクで、ゾンビもの以外の決定打になるかと思われたが(それでも、死人が蘇る映画に変わりはないのだが)、スタジオ側と意見があわずに決裂。ファンとしては誠に残念であった。
(なお、この企画はスティーヴン・ソマーズに受け継がれて、『ハムナプトラ』の邦題で公開された)。
ハリウッドと決別したロメロの久々の新作『URAMI』も「う〜ん」と首をひねる出来で、いやはやなんともだ。
もうイイ歳のじじいだが、「おおっ、これは!」と唸らされる「非ゾンビ映画」を撮って欲しいものである(註1)。
註1 久々のゾンビ映画『ランド・オブ・ザ・デッド』の公開が控えているので、「非ゾンビ映画」などもうどうでもいい。このままゾンビ一筋で突っ走って欲しい。
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