北京 ~1day~  頤和園 景山公園 天安門 故宮 大鐘寺 
 新世紀の初日の出を探して……
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まずは…
 四泊五日と銘打ってはいるが、まず初日は移動only。中国地方在住の我らは午後、関空から飛んだ。
 上海経由便。――しかし、さすがは中国(?)この
「経由」というのが曲者。中国では最初に降り立った地で入国審査をしなければならない…らしい。風魔とちゅん太、訳がわからないまま飛行機を降り、とりあえず「transfer」の表示を探すが……何故か「開いていない」……。「ど、どうして!?」と思いながら、皆が並んでいる列へととりあえず同じように並んでみるが、そこには、「入境」の二文字が燦然と輝いていた……。(しーん) しかも、周囲は上海への旅行客ばかり!
「入国していいの!?ただの帰港なんだよ!?」と焦る我ら二人!ちょっと英語のできるちゅん太が色々と聞きまわったが、
人によって言うことが違いよく分からない。そんな我らを見かねたのか、後ろにいた、いかにもビジネスマン風の中国人の方が話し掛けてくださった。(よっぽど、情けなく見えたんであろう…)彼は流暢な日本語で、細かく説明をして下さり、(どうやら乗り継ぎも同じ場所でOKだった模様)我らは無事、再び飛行機へと戻れたのであった……。
 そして、
北京新国際空港。さすがにOPENしたて、何処もかしこもピカピカ!近代的でシンプルな造りに少しビックリ。夜遅かったので、その日はそのままホテルへ。

市内風景
写真1  観光初日の朝。
 初めて見る北京市外は、巨大な高層ビルが建っているかと思えば、その足元にはごみごみした小さな建物がうずくまっている、なんとも不思議な感じのする街だった。
 飲食店はやはり赤を基調とした華やかな装飾が目立ったが……
年末だというのに未だにどの店にもクリスマスの飾りつけがしてあるのは何故だろう…。(窓にはサンタの絵が吹き付け、デパート入り口にはモミの木の模型が!!)
 この謎は帰国した今も解ける事がない。(どなたかご存知の方はぜひ教えていただきたい)
 道路事情。
 北京といえば、あの「
イナゴのようだ」と例えられる、道いっぱいに湧き出す自転車たち!!それを期待していったが、さすがに休日。自転車は少なかった。残念。一年ほど前にその光景に遭遇した知人の談によると、バスの最前列には怖くて座れない程らしい。今にもぶつかりそうで見ていられないとか…。(ぜひ、これから行かれる方は平日に訪れてその恐怖体験リポートして欲しいものだ…)
 それでも、道の真中を悠然と歩き去る人々の度胸には脱帽ものである。車が来ていようがいまいが、平然と、
渡る、渡る、渡る…!!走っている車の間を縫うようにしながら、まるで静止物を避けるかのようにひょいひょい歩く。曲芸師のようなその見事な身のこなしに、我らはただただ目を見張るばかり。
 最終日に、果敢にもちゅん太がチャレンジ。「楽勝、楽勝~」などと言っていたが……風魔には挑戦する勇気はナシ。ガイドさんが
ニッコリと、「死んでもいい方はどうぞ試してみてください」と仰ったのが忘れられない……。(よく渡ったものだなあ、ちゅん太。ちょっと尊敬)
写真2
車窓から見た街の様子。
建築途中の高層ビルが沢山目に付いた。
一般商店や平屋建ての住宅との
落差は激しい。


頤和園
 まず最初に訪れたのは頤和園。清代を代表する西太后御用達のの広大な庭園である。総面積290万㎡、その3/4を池が占めている為、庭の造詣というよりも、水面の青が美しく目に焼き付けられる瑞々しい庭だった。
写真3
正面入口。
中国らしい鮮やかな赤の柱と、程よく風化した瓦の取り合わせが実に見事。中国の建物というと派手なものを想像していたが、全く良い意味で予想を裏切ってくれた。落ち着いた雰囲気を醸し出しながらも、流麗な瓦の稜線と色彩に感嘆。
写真4
 建物の前には青銅製の彫像がいくつも据えられている。
狛犬に良く似た獅子、孔雀のような鳥、香炉などがモチーフ。胸元の羽根の感じが細かく表現されいる鳥の像は、首からの曲線が綺麗。
園内を掃き清める人。
身を切るような冷たさの中で
静かな朝日を一身に浴びて
その様子はなんだかひどく清々しい……。
写真niwa


拡大
凍りついた池の表面に

長く細い柳の枝が幾重にも重なって降り注ぎ

朝日を受けて、まるで黄金の帳のよう…
写真4
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 庭園の殆どを占める昆明湖。遠くに見える万寿山の上には仏閣堂。観音仏が
納められている。ここに立つと、庭園の前景が見渡せるとのこと。今回時間がなくて登れなかったのが悔やまれる。
 冬だったので、昆明湖は見事に全部凍っていた。スケートを楽しむ人々の姿がちらほら。春~夏には舟遊びが出来るらしい。
 緑を楽しむのなら春がベストシーズンだとか。でも、朝日を受けて輝く巨大な氷の湖は、日本ではなかなか見ることの出来ない素晴らしい光景だ。
万寿山の南(湖の北)にある長廊は長さ728mもある。まっすぐに伸びるその回廊は、真中に立ってじっと見つめていると、果てがなく、吸い込まれてしまうような感覚に陥る。緑と青の色彩が特に鮮やかに残っている。欄干に描かれた絵はひとつとして同じものは無く、目にも面白い。
 でも、中国の故事にはそこまで詳しくなかったので、分かったのは孫悟空くらい。(苦笑)

景山公園
 故宮の北に位置する小高い公園で、故宮が一望できる。
 北海を掘った折の土砂と、紫禁城の外堀を掘った折の土砂とを積み上げて造られたらしい。
 高さは43m。さすがは大陸。やることの規模が違う……と妙な感心してしまった。
 公園内は地元の人たちで賑わっていた。正月に何処かで披露するのだろうか、数十人単位の盛大な合唱が聞こえてきた。(練習中らしい)一糸乱れぬ見事な歌いっぷりに、何故か党大会のイメージが浮かんだ。
 階段を登り終えると、眼下に広大な瓦の群が!―――
故宮全景である。
 数え切れない程の建物と屋根の連なりは、まるで映画のワンシーンのよう。凄すぎて、逆にセットか何かのように感じてしまうほど。 まさに、圧巻…
だ。
写真7
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重なり合い
霞みの向こうに消えゆく
果て無き瓦の群たちは
かつての権力者たちの夢見た
  『永劫』
――そのもの……
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天安門~故宮
写真10
かの有名な天安門
テレビニュースで見ていたそのままの姿だ。当たり前か…(笑)でも、あまりに「そのまんま」だったので、逆に
「ああ、ここまで来たんだ」という感慨が沸いた。
広場の方からずっと歩いてきたのだが、近づくにつれ、その予想外の大きさに目を見張る。特に、中央にかけられている毛沢東の肖像は大きく、しかもテレビで見るよりもずっと精巧な良い絵だったのは新発見だ。今から行かれる方は、ぜひじっくり観察してみて欲しい。(すぐ真下を通れるので)
門上に限らず、天安門広場自体やそれを囲む人民大会堂など、随所に
赤い旗がはためいているのがとても印象的だ。(北京TOPページの写真もこの広場を撮影したもの) この国の誇り高き国民意識というものが、ぎゅっと凝縮されている気がして、我知らず背筋がしゃんとした。50万を収容できると言われる広場の感想は……語彙の少ない風魔はただただ口をポカンと開けていただけだったが、ちゅん太が一言。
「確かにこの門の上に立って、下を埋め尽くす民衆を見たらさあ、独裁者になったような気になるだろうなあ。特にそれが自分の一声で動いたりしたら……」
 うん、確かにそうかもしれない。それ程の広さと脅威を持つ場所だった。
 もっとも、普段は地元の人にとっては、広くて便利な憩いの場なのだろうか。
凧上げをする人々で賑わっていた。観光客でごったがえす中、他人の凧にも、もちろん道行く人々にも絡ませることなく見事に糸を操る彼ら。子供よりも大人の方が多かったように見えてなんだか微笑ましい。残念ながら我らは門上で独裁者気分を味わうことなく門をくぐって故宮へ。


写真チケット2
故宮入場のチケット二枚。
あまりに広すぎて大きすぎて、あまりいい写真が撮れなかったので、これでご勘弁。(汗)

写真チケット3

三大殿のひとつ。
写真10-2
 故宮は広かった……。って、そんなことは最初から分かっていたんだが(笑)、自分の足で歩くと改めて実感。
 ひとつ門を潜り、ひとつの殿に出会い、そこを通りぬけるとまた次の殿が……と、延々繰り返した。とりあえず何も見ずに通りぬけるだでも一時間かかる。収蔵品やら内廷に多数存在する宮までひとつひとつ見て回りたいなら丸一日の滞在をお勧めする。

 ラストエンペラーの即位式で知られる『太和殿』には、玉座が残されている。残念ながら、薄暗くてちょっと見難かった。もっとも、個人的には、
『保和殿』に立った時が一番感慨深かった。科挙試験の最後の関門「殿士」が行われた場所だ。時代は全く違うが、杜甫を思いだし、綿々と継がれてきた制度の中に、この国の長い歴史を想わされた。

 建物のは全て茶色がかった黄色。
 中国ではこの色は皇帝を表す。最高色は紺碧だが、これは天(神)の色なので、その息子である皇帝は、青は使えなかったのだそう。
 行く前に読んでいたガイドブックにはただ、「オレンジ色」とだけ書かれていたのであまり期待していなかったのだが、とんだ誤解だった。青い空に映える落ち着いた色彩は、茶色とも黄色とも燈色ともつかぬ複雑な色で、見ていて飽きない。
 敢えて言うなら、黄土の色……いや、「大陸の大地そのもの」を表した色、といった感じだ。

 
一の色は「空の紺碧」
 
二の色は「大地の黄」

 広い大陸で自然と共に生きてきた人々らしい素敵な発想だ……。
 本当は違うのかもしれないが、勝手ながら、そんな感想を持った風魔だった。


 ホテルに戻り、夕食。年越し蕎麦と称して(ツアー案内にはそう書いてあったが…笑)中華風のうどんを食べる。ちょっと「どんべい」を彷彿とさせる懐かしい味はなかなかイケる。
 その後、除夜の鐘を聴きに行くというので、二時間ほど仮眠……。

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大鐘寺
 正式名称は覚生寺。 高さ6.75m直径303m重さ46.5t大鐘、永楽大鐘がある為、大鐘寺と呼ばれている。
 ここで除夜の鐘を聴こうと訪れたのであるが、到着したのは11時よりも前だったので、古鐘博物館を見て回る。この寺には、古今東西の様様な鐘が集められているとのこと。中国にいながら西洋の鐘を見るのも奇妙な気がするなあ、と思いながら一通り観察。
 そして、大晦日ということで、特別に、講堂で鐘の演奏会が行われていた。
音色の違う数十もの鐘が幾重にも響き合って生み出される音色はとても心地よく神聖な気分にさせてくれた。日本人観光客が多かったせいか、「さくら、さくら」も演ってくれた。風魔はうろうろしていて聴けなかったが、最後の「第九」は本当に見事だったらしい。
 境内は所々に黄色い灯りが点されていて、いい雰囲気。日本のように「思いっきりスポットライト」とか、「昼間かと思うほどの照明」は無く、足元は少々危ないが、
建物の輪郭がぼんやり金色に浮かび上がって綺麗だ。
 ただし、トイレへ行くのはご用心。比較的奥まったところにあったらしく、足元は暗く、柄の良くない方々がたむろしていて、ちょっと怖かったらしい。女性一人では行かない方が良さそう。
写真チケット7 大鐘寺の大晦日限定特別入園チケット。
「新年好」と透かし彫りされた立派な暗赤色の台紙を捲ると、中は赤梅の水墨画が印刷されたチケットが。裏面にまで竹の絵が印刷された凝った造りだ。
「恭賀新年」の文字と日時などが書かれている。
「新世紀鐘声晩会」の文字に、ようやくそういう「会」に参加していることになるらしい、と気づいた。(勉強不足でした…… 苦笑)
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写真11
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祈念せよ――
全ての人よ

性別も 年齢も
国籍も 思想も
異なるもの全てを越え

ただ 新しい年の
しあわせを

同じ天
(そら)に向け
祈念 せよ――
 大鐘寺、本堂。柔らかな光に照らされ、黄褐色に夜空に浮かび上がるその姿は荘厳だ。
 午前0時前。本堂正面入口に据えられた壇上から短いスピーチ。何を言っているのか全然分からない(泣)が、周囲がワッと沸いた。そして、10秒前からカウントダウン。集った人たちが一斉に口を揃えて数え上げていく。さながら本堂前の人波がひとつの巨大な生き物のように感じられる瞬間だ。
 そして――
0時一度だけ、大鐘が打ち鳴らされた。
  一瞬静まり返った境内に響く重い
――。
  
歓声と共に、年が明けた。
 
 新たな年。
 
 そして、新たな世紀。
 誰もが、「良いことがありますように」と、
 異国の天を振り仰ぎ、
祈った――。


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