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時の話題
2001-3〜2
2003-07-22
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◇印は《日々雑感》より転載
「新しい歴史教科書をつくる会」教科書批判(3/26筆) ◆国籍条項奈良県職も撤廃なるか?(3/12筆) ◆日本相撲協会が「女人禁制」解除を検討(3/2筆)

書きたいことは山ほどあるのですが、落ち着いて作文する余裕がなく、滞っています。

●ハンセン病訴訟についても、書けずじまいでした。
●大阪・池田の小学校乱入事件については、事件の真相がまだ十分に解明されていませんが、当方の掲示板においても、様々な貴重なご意見が寄せられています。当面は、そちらをご覧ください。(2001/6/12)

●小泉純一郎自民党総裁と首相公選制限定憲法改正問題
●中川昭一衆院議員の差別発言
●指紋押捺訴訟控訴審で大阪高裁が一審の賠償命令を取り消す判決
●奈良県警汚職問題
●ケニヤでの原始人骨発掘・鳥取での弥生人の脳の発掘
●キトラ古墳壁画
●外務省機密費の内閣官房(首相官邸)への「上納」問題
●薬害エイズ訴訟で安部英被告無罪判決
●無所属の堂本暁子千葉県知事誕生
etc.取り上げたいテーマは多々ありますが、公私ともども余裕がなく、資料をそろえて作文するまでに至っていません。GW明けには何か書きたいと思っていますが、どうなることやら。(2001/4/24)


【「新しい歴史教科書をつくる会」教科書批判】vol.8
 現行の歴史教科書を「自虐史観」だと非難する「新しい歴史教科書をつくる会」の中心メンバーが執筆し、現在申請中の、中学校教科書(歴史・公民)は、韓国併合や大東亜戦争を肯定し南京大虐殺事件を否定するなど問題のある内容だが、文部科学省からの137カ所の修正を求める検定意見を受け入れて、これらを修正し、この3月末、同省の教科用図書検定調査審議会で合格する見通しである。また、この教科書に対して、韓国や中国から批判が出て外交問題となっている。一方、この教科書採択をねらって不公正な宣伝運動が繰り広げられていると、上杉聰(関西大講師)・高嶋伸欣(琉球大教授)両氏が公正取引委員会に提訴している。

 数年前、「教科書が教えない歴史」という本が流行ったが、よくもまあ、あんな嘘八百を上手に書くもんだと感心させられるようなデタラメ本であった。すっかり騙された人も少なくないようで、学校の教員の中にも真に受ける者がおり、学校図書館に入れようとしたり、人に勧めたりするものもいた。本屋に山と積まれた同シリーズについ手を出した人も少なくないと思われるが、その内容たるや、歴史歪曲・我田引水・針小棒大の笑止千万もので、差別を煽り、独善的軍国主義への復古を目論み、日本の国際的孤立を引き起こす悪質なものである。「自由主義史観」を名のる彼らこそ「売国的」「自虐的」と言われるべき、確信犯である。真摯に歴史を学べば、彼らの悪意に怒りを覚えるのは当然だ。

 当時、注目作を出し続けていたものの思想的に固まっていなかった漫画家小林よしのりが「新ゴーマニズム宣言」を描き出して、この動きに取り込まれてしまった。ありもしない事実をデッチあげて人を攻撃し、歴然とした事実にイチャモンつけてあり得ない話に仕立て上げる手法のこのマンガ本に、これまた騙された教員が「これは分かりやすい」などと言い出すありさまであった。軍人手記を資料に与えられ、ホテルに缶詰で描かされたから、一方的になったかな、と小林自身が述懐しているように、残念ながら彼はまんまと利用されたのである。職員室用書架に日露戦争を再評価するなどという書籍を置く学校が出はじめたのも、このころであった。彼らの書籍が矢継ぎ早に出版され、書店に並ぶようになった。彼らのスポンサー企業が大量購入・無料配布して、見せかけの売り上げを伸ばしていたようである。

 1980年代後半、日本のかつての侵略戦争を肯定する発言をしたことによる閣僚罷免が続き、1993年の細川首相の「侵略戦争発言」(日本がかつてしたことは侵略戦争であったことを認める)に至るわけだが、 これへの反動として奥野誠亮元法相らのグループが国会議員の学習会を企画し、1995年に藤岡信勝(東京大教授)らが「自由主義史観研究会」を結成、1996年には、自民党116名の国会議員による「明るい日本・国会議員連盟」・西尾幹二(電気通信大教授)らによる「日本を守る国民会議」・藤岡や小林による「新しい歴史教科書をつくる会」が結成され、フジサンケイグループ(産経新聞社等)や大企業経営者を取り込んで、一連の動きを作っていったのだ。

 彼らは、まず「従軍慰安婦」問題を矮小化し争点をそらして、あげくの果てには「カネ目当てにウソをついている」などと言い出す始末だったが、論争は完全に彼らの破綻で終わった。ただ、一般社会の意識には、彼らが流布した歪んだ解釈が残っているのが気掛かりである。次に、彼らは南京大虐殺はデッチ上げだという、すでに決着がついている論争を蒸し返している。あきれかえるが、生徒達はどこからかそんな話を吹き込まれているのである。本当の歴史教育を守らなければならない。

 日本だけが悪事を働いたわけではないが、ナチスドイツよりも日本軍の方がはるかに捕虜死亡率が高い事実をどうとらえるか、と言いたい。また、正確さに欠けた理論や資料の誤用を指摘することは大いに意義あることだが、それをもって日本の近代史をすべて美化する情に訴えた話や、単なる理屈好きの好奇を煽るだけのようなトリックだらけのつくり話はやめてもらいたい。そして、歴史研究者には、日本軍の罪と天皇の戦争責任を不問にした英米との政治的取引を明らかにし、日本陸軍の細菌戦研究班と薬害エイズを引き起こしたミドリ十字や厚生省(当時)との関係も暴露するなど、本当に平和で健康な暮らしを守るための活躍を期待する。

 現在、「新しい歴史教科書をつくる会」は、教科書採択を教育委員会にさせろという請願を、「適正化」などの言葉でカモフラージュして各自治体で採択させる活動をさまざまな団体名・個人名で展開している。それと連動して、「産経新聞社」「扶桑社」「新しい歴史教科書をつくる会」が、教科書採択に関する法を破る活動をしているとして、公正取引委員会に提訴している上杉聰(関西大講師)・高嶋伸欣(琉球大教授)両氏を、kurochanは支持するものである。(2001-3-26筆、同日微再修正)[→3月目次][→日本の戦争責任資料センター(上杉さん運営)]※4/3検定合格。中国・韓国から批判。【この項→その2


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