Home<
時の話題2001-2
LAST UPDATE 2001-04-05 7:47

総目次 タイトル索引 テーマ別索引 2000-12
2001年2月の目次
高橋尚子選手と南昇竜選手(2/21〜22筆) ◆KSD事件と外国人労働者(2/17筆) ◆「克己」という言葉を贈ろう(2/15筆) ◆「えひめ丸」沈没事件(2/14筆)


【高橋尚子選手と南昇竜選手】vol.5
 Qちゃんこと、シドニーオリンピック女子マラソン金メダリスト高橋尚子選手(28)が、CM出演で収入を得ることができるようにしたいと、小出監督と積水化学は2月20日、JOC(日本オリンピック委員会)に対して、肖像権一括管理対象からの除外申請をすることになった。同じ20日、ベルリンオリンピック男子マラソン銅メダリストの南昇竜[ナムスンヨン]さん(88)が、ソウル市内の病院で死去した。

 アマチュアリズムを美化する時代ではなくなったのだろう。そもそもアマチュアリズムと言っても、19世紀イギリスで、貴族趣味のスポーツ大会から労働者を排除する差別制度として成立、これまでそれを引きずってきたと言える。現在、1974年のIOC(国際オリンピック委員会)総会で、アマチュア規定は消えており、当該競技団体が管理することを条件に、選手がギャラや経費を受け取れるようになっている。賞金レースは、実は欧米ではかなり前からあったのだが、これを追認し、今や「スポーツはビジネス」になった。これまでも、有森裕子選手などが、プロ化しているが、問題は、IOC・IAAF(国際陸上競技連盟)・FIFA(国際サッカー連盟)などが利権団体と化し、選手を管理支配し、マスコミとつるんで選手の努力を吸い上げていることにあると思う。放映権のみならず、スポーツイベントへの「協賛企業」や「公式○○」というものにも、莫大なカネが動いているのであり、それらは商品価格に転化されている。

 1932年、ベルリンオリンピック男子マラソンに出場した南昇竜選手は、世界最高記録保持者として堂々優勝した孫基禎[ソンギジョン]選手に続き、3位に入賞した。彼らは朝鮮半島出身だが、当時は日本の朝鮮植民地時代。彼らは「日本人選手」として、「日の丸」を胸につけさせられていた。「日の丸」の裏には「大極旗」が縫いつけてあったという話も聞いたことがある。日本人選手団の中でも差別があり、選手交代が画策されていたという。彼らは、レースが終わり、日本側が準備した祝賀パーティーを欠席し、ベルリン亡命朝鮮人の小さな店で、祝杯をあげた。その店とは、朝鮮に多大の犠牲と苦痛を与えた伊藤博文(初代韓国統監=初代総理大臣)を暗殺した安重根[アンジュンクン]の従弟がベルリンに亡命して経営していたものであった。後に、朝鮮の「東亜日報」は、表彰台に立つ孫基禎選手の写真から胸の「日の丸」を消して新聞掲載したとして、9ヶ月もの発行停止処分を受けたのである。「日の丸」にどんな感情を持たざるを得なかったかを、深く考えたい。また、ベルリンオリンピックも、ナチスドイツの国威発揚と、聖火リレーによる敵地情報収集がねらいであった。

 選手個人の経済的利益追求・競技団体と関連企業の利権構造・国威発揚と、いずれも「スポーツをスポーツとして楽しむ」んではなく、他の目的にスポーツを利用しているのである。国体の開催県優勝システムもこれに通じる。サッカーワールドカップ2002の名称に関する川淵副会長の「国の威信に関わる」発言に、とても失望し、敗戦直後の日本占領軍3S政策についても、機会をみて訴えたいと思っている元長距離ランナーのkurochanである。(2001-2-21〜22筆)[22日・語句修正][2月目次]※高橋選手のプロ化は4/2正式申請され、日本陸連・JOCともに承認


【KSD事件と外国人労働者】vol.4
 KSD(ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団)の古関忠男前理事長が、小山孝雄参院議員に対し、ものつくり大学」設立に有利な国会質問への謝礼として2000万円を渡していたとされる件で、先月29日に小山議員は議員を辞職した。今度は小山議員が元々秘書を務めていた村上正邦参院議員に対し、同様の依頼をする見返りに5000万円を渡していた疑いが浮上、村上議員の証人喚問の見通しである。

 「ものつくり大学」は、日本の製造業を支える中小企業の熟練工の後継者育成のために、働きながら学べる職人大学として、KSDが構想。ここまではいいが、その後があくどい。100万人の会員をかかえるKSDは、会員を勝手に自民党員にしたて、党費立て替えによる水増しまでして、1994年頃から、自民党との関係を深める。有力議員を顧問に受け入れ、省庁の天下りを準備し、88億円の補助金を手中に。この間の疑惑報道によって、「ものつくり大学」はKSDとの関係を絶つことを条件に設置許可されたが、補助金の行方や政界工作費の真相はまだまだ闇の中だ。

 また、中小企業にとって「景気の調節弁」として都合がいい外国人労働者受け入れに関わり、法務省・労働省へ食い込むことで、入管法「改正」(1990年)による「研修」枠を新設させ、「技能実習制度」という「ザル」検定試験新設(1993年)によって滞在期間を延長させてきた。こうして、多くの外国人労働者は、低賃金で身分保障も不安定なまま、「労働者」としての位置づけも曖昧なままに、いいように使われてきたのだ。「研修費用」も国に4分の3を出させている。パスポートを取り上げたり、強制貯金をさせたり、労災を認めず病院にも行かせなかったりと、まさに現代版「じゃぱゆきくん」じゃないか。
 彼・彼女らの子どもが、小中学校に増えている。学校の無理解から登校できない子も多い。我々の課題である。(2001-2-17筆)※3/1受託収賄容疑で逮捕[2月目次]

【「克己」という言葉を贈ろう】vol.3
 2月14日の党首討論の後、「えひめ丸」の事故の連絡を受けた後もゴルフを続けた事への批判に反論して、森首相が「ゴルフは悪いことじゃないでしょ。単なるスポーツじゃなくて、私の場合健康管理ということもありますから」と記者団に述べたという。

 中国春秋戦国時代の思想家である孔子の教えに「克己」という言葉がある。kurochanはこう解釈し、人にも話すことがある。
 学校帰りに友達と自転車で並んで走っていたとしよう。4時からのテレビドラマを観たくて二人とも急いでいた。ところが友達が転けてしまい、ケガをしてしまった。痛そうで動けない様子だ。さて、ここでどうしらいいいか?可哀相だし、友達だから介抱しようか?しかし、そんなことをしていたら4時からのテレビドラマが観られない。だいたい、4時からテレビを観ること自体は自由だし悪いことじゃない。

 簡単な話じゃないか。人間関係=信頼を維持するには、悪いことでなくても我慢しなくちゃならないこともある。「己」のわがままに「克」つことができない人間は、信頼を失う。4時からテレビを見ること自体は悪いことではないが、そんなことをしている場合ではないのだ。
 kurochanも、そんなエライ人間じゃないけど、一国の首相がこれでは困るじゃないか。9人が行方不明との第三報が入った時点でゴルフ場からの引き揚げを決めたということだが、犠牲者が出るまで人の気持ちがわからん奴に教育を語ってもらいたくないものだ。どうやら彼は、もう一つの「こっき」がお好きなようだが。(2001-2-15筆)[2月目次]


【「えひめ丸」沈没事件】vol.2
 2月9日(日本時間10日)、ハワイ・オアフ島沖で、アメリカ海軍の原子力潜水艦「グリーンビル」が緊急浮上訓練中に、愛媛県立宇和島水産高校の実習船「えひめ丸」に衝突する事故があった。実習船は沈没し、生徒や教員など9名が未だ(2/14現在)行方不明である。

 先の稲嶺沖縄県知事への中傷に対する対応にしろ、今回の実習船沈没事故に対する対応にしろ、アメリカ軍人の人権意識が大いに問われるべき出来事である。
 森首相に期待など何もしていないが、のんびりと横浜でゴルフを続け、いつものように開き直っているのは、見苦しいだけではなく有害である。在京の秘書官がゴルフ場で待機するよう指示したようだが、「下手に騒いでアメリカ政府を追いつめたくない」と考えたからではないのか、と勘ぐってしまう。案の定、ブッシュ大統領も「黙とう」でお茶を濁そうとしているように思える。軍関係者の支持を維持する材料にしか考えていないのではないか。
 「人の命をなんと思っていたんだ!同じ人間と思っているのか!」と叫びたくなる。
 また、軍とは攻撃と保身の権化だということは、日本の歴史が証明することでもあり、この叫びは、現代日本に対しても向けられていることにも気づくべきである。内容のある謝罪と補償こそが求められているのだ。

 帰国した生徒達も気がかりだ。1ヶ月の実習で苦労をともにしてきた仲間が行方不明のままだし、恐怖の体験は今後心のトラブルを引き起こしかねない。 マスコミは彼らをも襲うだろう。米軍関係者が帰国する生徒に小遣いを渡したとも聞くが、こんなことで子ども達が米軍を巻き込んだ日米補償交渉に翻弄されないことを願う。
 宇和島水産高校のホームページへのアクセス急増とのニュースがあったが、それにしても、イヤな展開になった。掲示板へのいたずら書きが相次ぎ、削除が追いつかずに掲示板は閉鎖したという。どうして、こんなに心が貧しくなってしまったのだろうか。人の痛みを感じる力をいろんな方面で取り戻したい。(2001-2-14筆)[2月目次]

   





















<アンカージャンプ用の画面余白です>