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[No.70]化粧花瓶火襷 価格 ●5000 円(箱なし送料別) '09. 4. 1 up
( 20 x 14.5 cm )
最近、テレビのコマーシャルで飛びっきりの美人俳優さんがねじり鉢巻、ステテコ、腹巻・・あの”天才バカボン”をけな気に演じる
のを見かけます。その美しいお顔には例のマジックラインで髭と額のしわ。
まあ、それにあやかるわけではありませんが私の作品の花瓶にも”火襷”様の模様が化粧釉薬の下に現れました。
そもそも火襷は多分、備前の鉄分を多く含む土で造った花瓶などを重ね焼きしたとき作品同士の釉着を防ぐために荒縄で縛りその縄跡が
美意識として作為的に描かれるようになったと・・理解していました。
ですからそういった意味では”火襷”ではありません。
この作品は窯の中の雰囲気を還元(温度を上げて燃料を充分にし、酸素の供給を絶つ)にしたときに、土の中のわずかな鉄分に反応して
火色が文様になりました。
私の窯では未だそのコントロールが充分ではありません。もっと窯の中の炎の通り道や棚板の並べ方、作品の置き方を知り尽くさない限り
このような火色を自由に扱うところまではまだ行き付けません。
次回の更新は 5月1日です
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[No.69]弁柄花器 価格 ●5000 円(箱なし送料別) '09. 3. 1 up
( 24 x 12.5 cm )
”弁柄”・・と言うのは化学的には鉄の化合物の一種、詳しくは酸化第二鉄(Fe2O3)で表されますが鉄を化合物とする色相は結構幅が広く黄色から
黒色までその酸化形態によって大きく変化します。インドのベンガル地方に多く産出することで・・と言う説明も聞かれます。
焼き物で窯の中の雰囲気を十分な酸素の供給をするか・・、または空気の供給を絶って温度を保つかにより着色顔料に与える色相の変化が顕著に表れる
金属に「鉄」が在ります。黄、茶、赤、青、こげ茶、黒・・、焼成雰囲気によりかなりの色相幅を有するようです。
私は絵を描く上でもこの弁柄(BROWN)をこよなく愛し使っています。
着色、下絵の段階において素焼きの花瓶は手回し轆轤の上に載せられます。ゆっくりと回転し私の創作イメージは回転の中に一つのリズムが湧いてきます。
そしてたっぷりと弁柄顔料を含ませたダボ筆が滑らかに素焼きの肌をなぜて円周をたどります。
そしてその空間を軽やかにクイック、クイック、ツイ!、ツイ!っと筆先が走り抜けます。「いやー!、陶芸ってホンットウニ面白いですね・・」
次回の更新は 4月1日です
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[No.68]粉吹き様碗 価格 ●3000 円(箱なし送料別) '09. 2. 1 up
( 7 x 11.5 cm )
粉吹き(粉引き)はもともと白化粧土という原料を使って鉄の成分の強い土色を白く見せるために考えられた技法です。
唐や明、清を代表とする中国磁器、そして朝鮮の磁器、それらと比較して日本で焼かれる鉄分の多い土色の陶器類にとって白い色は
あこがれの的でありました。
しかし、その化粧掛けの技法も単に白く見せると言うことを乗り越えて地肌との競合を図り調和の美しさを求めるようになってきました。
つまり、透けるような白い磁器の持つ特性はいくら厚化粧したところで及びもつかないことは目に見えたことです。
日本の女性はおのずとその違いの中に”薄化粧をすることによる魅力のup”という技法を編み出したように、陶芸においてもむしろ薄化粧することによる
魅力を引き出す方向に向かったのでした。
もともと詫び、寂の世界の器です。化粧することのはかなさは火を見るよりも明らかな行為ですがある意味思春期の少女の気持ちも詫び寂の世界のような気がします。
次回の更新は 3月1日です
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[No.67]花器 価格 ●5000 円(箱なし送料別) '09. 1. 1 up
( 19 x 12.5 cm )
新しい配合による釉薬にやっと光が見えてきました。[No.63]のときにはこの配合の釉薬は私には向かないんではないでしょうか・・と。
窯の扉を開けたときの落胆は相当なものでした。しかし、その失敗した作品の中にもどこかに良い肌がありはしないかと探しました。
時として薬の掛け方の差によって、あるいは窯の中の置く場所によって、炎の通り道の差によって・・しかし、取り出すすべてが一様に
大失敗なのでした。
いやー、陶芸って実に面白いですね〜、最高到達温度は同じですが到達時間をずらすことによって天国と地獄の両方を楽しめるんです。
以前までは燃焼効率にばかり気を使って必ずしも陶器が気持ちよく「イイ〜風呂だ〜!」と喜んでくれなかったことが原因でした。
私のような小さな窯はただでさえ温度上昇の効率は大きい窯に比べ格段に良すぎます。急がずあわてずじっくり待つと素直な良い子が育つようです。
次回の更新は 2月1日です
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[No.66]化粧茶碗 価格 ●3000 円(箱なし送料別) '08. 12. 1 up
( 9.8 x 8.2 cm )
”幸三郎陶芸の変遷”と言うことでもし仮に1000年の後、調べたい方がおられましたら(皆無、ありゃせん!)このページを探し当ててください。
まっ、私にとっては光明、しかし崇高な方向ではなくほんの足元に光を当てることのできる道しるべ・・でしかないかも知れません。
大きな「登り窯」や「穴がま」のような窯は一週間近く燃料を燃やし温度の上昇や下降も比較的穏やかにコントロールすることができます。
しかし、我が家の窯はたびたび写真でご存知のように小さく、しかも焼成時間は14〜5時間であります。
温度変化に敏感な長石と土灰を主成分とする釉薬での挑戦を続けてきましたが度重なる失敗の末、不溶鉱石の混入により一つの器肌が得られました。
その釉薬の施釉方法、焼成温度などがこの作品に含まれています。次からは間違いなくこれを原点とした作品ができるものと確信しています。
次回の更新は 1月1日です(お楽しみに・・イエ、私にです)
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[No.65]抹茶ワン「柵」 価格 ●3000 円(箱なし送料別) '08. 11. 1 up
( 9.5 x 7.0 cm )
茶の世界では詫び寂を重んじ世事をはなれて心を自分の内面に強く意識することにより新たな世界観を得ようとします。
作為が見透かされてしまう
茶の湯の作法においては立ち居振る舞いのみならず生活の中のどこから物欲にこだわらない精神性を保つことが可能であるか茶人にとって非常に大切な
ことと思うのです。
そのような茶事に供される道具とは一体どんなものが好まれるのでしょうか。言って見れば”気違い”に近い精神状態の人がすんなり受け入れてくれる
器でなくてはなりません。
手になじみ、出しゃばらずしかし、しっかりと手の中に心を包み込む想いで振る舞ってくれれば役目として合格点ではないでしょうか。
そんなおもいから楽茶碗がひとしきり大変好まれるようになりました。当然作陶においては「手捻り」により歪であったりデコボコであったりして
そこから醸し出される風情が心を慰め遠大な風景と見立てられ喜ばれました。
それに比べ轆轤による整形は左右均等にしか作ることができずしかも量産を目的としたいわば近代工業品の製造機と言っても過言ではありません。
しかし、多くの陶芸家はみなこぞってその機械を使い手造りの味を出そうと苦心するところです。でも、なんとなく作意がどうしても見え見えになって
その奥の深さをしみじみ感じるところです。
次回の更新は 12月1日です
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[No.64]独居杯 価格 ● '08. 10. 1 up
( 6.3 x 5.0 cm )
若山牧水の歌、「白玉の歯にしみとおる秋の夜の酒は静かに飲むべかりけり」
秋と言ってもまだ日中の日差しはきつくて日向で酒なんか飲む気にもなりません。しかし、このごろ日が短くなって4時半ともなれば
かなり落ち着きを取り戻します。
仙台萩の藪から白とピンクそれぞれの一枝づつ折って酒の肴にするもよしでしょう。
ぐい呑みは、今年最後の作、集大成としておきます。釉薬はうっすらと地肌を隠す品の良い失透を狙った土灰の基礎釉薬です。
酒は、私の田舎信州諏訪の地酒です。この地で生まれた真澄酒造の7号酵母はこの蔵に住み着いた清廉潔白な酒精として愛好家の中でも人気が
あります。
赤い片口は3年ほど前、福島県で開催された「日本伝統的工芸展」を鑑賞した折、会津若松市内の老舗漆器工芸店で買い求めました。
こうして庭のテーブルは信州の酒、会津の器、仙台の花、滋賀の土が寄り集まっての宴です。今、炭火コンロから安房銚子のカタクチイワシの
香ばしい匂いが。
次回の更新は 11月1日です
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[No.63]失敗作3点 価格 ● '08. 9. 1 up
( 9.0 x 9.5 cm ・・・他)
誰しもが多少なりとも涼しい夏を望んでいる矢先、どこかの気違いが真っ赤な火の玉をバーナーで煽っていたら頭にきます。
そんな怨念がこもった作品を窯から取り出すときの私の気持ちが少しでもわかってもらえたら・・と、あえて失敗作3点です。
人生には山もあれば河もあります。物事真剣になればなるほどその先には高い山がありきわめて深い谷が存在します。
以前、みち草で焼成前の施釉薬で新たな挑戦・・・と書いたことがありました。
今まで一連の釉薬の基本的組成は雑木を燃やして造った灰・・土灰と長石の配合によるものでした。ここでは透明から僅かに泡立つ
ことにより失透し、柔らかな白さを求めました。
しかし、この組成では鮮やかな色相を求めようとすると少し無理があります。強烈なコバルトの青も、白で薄めてあげると爽やかな
空色になるように・・。
そこで溶けない鉱物を混入して白くすることを試みました。ここまで大きく失敗を振らせると次への手がかりも出てきそうです。
次回の更新は 10月1日です
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[No.62]分骨のための骨壷 価格 ● '08. 8. 1 up
( 9.0 x 9.5 cm )
墓所について誰しもが思うことでしょう、明るく開放的でなお叶うことなら見晴らしのよい場所を・・・。
とは言えあまりにもかけ離れた場所では墓参のために難儀をします。まあ比較的近くで・・・と、出来るだけのことは尽くしてみました。
いよいよ納骨の当日になりました。今まで気温は低め、何時になったら夏らしくなるんでしょう・・と思っていましたが7月12日
いきなりの真夏日です。これでは妻も日に焼けてしまいそうです。もう少し暗くても多少日陰になったほうが涼しそうなのに・・。
今まで実際に父や実兄の納骨の際、感じたことですが骨壷を墓所の内部に納め蓋をするときの一抹の寂しさ・・・漠然と”分骨”って、できないものかなーと思いました。
さっそく他の人はどうやっているんだろう?。インターネットで調べてみると近頃では加工してペンダントに封入したり、ブローチにしたりと若い人たちは奇抜なことを
考えるものだと思いました。法的にも「尊厳が守られるならば・・」とそこまでは立ち入っては居ません。
私の技量では磁器製は今のところ無理です。それに比較的近く白い焼き上がりと、蓋物の歪みが少ない「特濾信楽土」という半磁器粘土を使いました。
高台と蓋のつまみ根元に紐通しを施し、いつでも身近に会うことも出来るようにしました。そんな訳で納骨のときでも平静に執り行うことが
でき気持ちも安らぐ想いでした。
次回の更新は 9月1日です
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[No.61]抹茶碗「山寺」 価格 ●5000 円(箱なし送料別) '08. 7. 1 up
( 9.5 x 6.5 cm )
梅雨の中休みに眩いばかりの真っ白なアジサイが咲き乱れています。太古から続く地球の営み・・四季の移ろいをひと際感じさせてくれます。
鎌倉にあじさい寺と呼ばれている瑞泉寺があります。この時期のとあるひ、キャンバスを抱えてこの寺にたどり着いたとき桟敷で抹茶を振舞われました。
桟敷に座りそのあじさいの花に隠れるように見える庫裏のたたずまいは急にここを絵に描いてみたい・・と言う衝動に駆られました。
毎週、毎週、通ううちにあじさいの花は幾つにもその色を変えてまるで古寺、瑞泉寺がそのつど衣替えをしている錯覚にとらわれたものでした。
遠い昔のことでした。今でも桟敷で抹茶を振舞ってくれているでしょうか。
作法もなにも知らない若い私に「どんなお飲みかたをされても結構ですよ・・。」と、行く度に親切にしてくれた、恐らくもうその奥様はとっくに亡くなられたかと・・。
後日、その時の絵は100号の作品に仕上げ、上野の美術館で奨励賞、準会員推薦を頂いたことが・・・。
次回の更新は 8月1日です
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