FM DXのビギナーズガイド

FM DXとは

「FM」はFM放送、「DX」は遠距離受信。
広義では「遠くのFM放送を受信する事」を意味します。
「遠距離受信」と聞けばなんとなくハードルが高く感じるかもしれませんが、「普段は聞こえないFM放送を聞いてみる」程度で気軽に始めてみませんか?

楽しみ方

通常、FM放送の電波は見通し範囲内しか届かないので、基本的にはAM放送や短波放送と違って近隣の放送しか聞こえません。
ところが外部アンテナを設置したり、高い山に登ると状況が一変して驚くほど広範囲のFM放送が聞こえるようになります。(ローカルFM局の受信リストを参照)
場所によっては300km以上離れた地域の放送が聞こえるケースもあるようです。
またEスポ等による異常電波伝搬によって、さらに遠方の電波がキャッチできるかもしれません。
受信設備を整えて東南アジアやオセアニアの海外FMを追いかけるもよし。
カーラジオで遠方の民放FMを聞きながらドライブするもよし。
旅先でコミュニティFMを探すもよし。
自分のライフスタイルに合わせて「聞く」FM DXを楽しんで下さい。

さらに、もう一つの楽しみはベリカードの収集です。
当サイトを訪れるビジターの7割以上が「ベリカード」を含むキーフレーズで検索されており、未だに根強い人気があるようです。
その昔、日本の民放FMは50数局でした。
ところが今やコミュニティFMだけで300局超。
あっという間に国内のAM放送やTV放送の局数を大幅に上回り、コレクター魂をくすぐられる大きなカテゴリになっています。
更に2021年6月には、北海道内のAMラジオ2局(HBCラジオ・STVラジオ)とABS秋田放送を除く44局が、2028年秋までに順次AM放送を停波または補完運用に変更してFM局へ転換する事を発表しました。
国内FM局の完全制覇を目指しながら「集める」FM DXも楽しんでみてはいかがでしょうか。

受信設備

とりあえず高価なラジオやアンテナは必要ありません。
Eスポのシーズンなら手持ちのポータブルラジオやカーラジオでも、かなりの頻度で遠方のFM放送を聞く事ができるでしょう。
ただし海外のFM局は主に88~108MHzで放送されていますので、国内外のFM放送を幅広く聞きたいのであれば、この周波数をカバーしているラジオが必須です。
2012年のTV放送地上デジタル化に伴って一時姿を消していたワイドバンド対応のFMラジオ(76~108MHz)が、2015年からのFM補完放送開始に合わせて再発売されています。

また、近年は海外メーカーから発売されているDSPラジオの評判が良いようです。
これらは総じてFMバンドの感度やS/Nに優れたモデルが多いと言われ、前述のワイドバンドも受信できます。
価格も国産メーカーに比べると割安で、管理人は迷わず購入してしまいました。

その他、管理人のおすすめは通称「ドングル」と呼ばれるUSBワンセグTVチューナーです。
これをSDR#等のフリーソフトで作動させると広帯域受信機(25~1700MHz程度)として使用できるようになります。
受信帯域幅は2MHz程度ながら、屋外アンテナとの組み合わせにより、かなり本格的な海外FM DXが楽しめます。(海外FM局の受信記録を参照)
安価なタイプはAmazonにて1000円以下での入手が可能ですが、搭載されるチップによっては受信周波数に違いがあるようです。

用語解説

スポラディックE層の略称。さらに略して「Es」と表記されます。これは主に春から夏にかけて上空約100km付近に突発的(スポラディック)に発生する電子密度の高い電離層(E層)の事で、通常は電離層を突き抜けてしまうVHFの電波が反射して地上に戻ってくるという異常電波伝播現象を引き起こします。これによって1000~2000km離れた遠方のFM放送が受信できるようになるのです。ちなみに「NICT 'fxEs'」で日本各地のスポラディックE層の状況が確認できます。これは沖縄・山川(鹿児島県)・国分寺(東京都)・稚内(北海道)上空の臨界周波数を示しており、この数値がEs発生の目安になります。
"Verification Card(ベリフィケーションカード)"の略語。放送局がリスナーからの受信報告書に対して発行するカード式受信確認証の事です。各放送局は趣向を凝らしたカードを作成しており、「BCL」と呼ばれる放送受信愛好者にとってもこの収集が楽しみの一つとなっています。これに対して文書のみの確認証を発行している放送局もあり、こちらは「ベリレター」と呼ばれています。これらはあくまでも放送局側の厚意であり、義務ではありません。それを踏まえて節度ある収集を心掛けたいものです。
AMラジオ局がFM放送用の周波数を使用した放送の事。難聴取・外国波混信・災害対策に使用されています。以前から使用されていた沖縄のAMラジオ局のFM中継波等も、このFM補完放送としてカウントされるようです。基本的に周波数は90~95MHzが割り当てられるため、ワイドFM対応のラジオか、過去に販売されていたアナログTVの1~3chの音声が受信できるラジオでしか聞く事ができません。なお、各局共に独自の愛称やキャッチコピーを使用するなどして、一般的な普及を目指しています。
DSPとは"Digital Signal Processing"の略語で、DSPラジオは電波の同調・検波・増幅をマイクロプロセッサでデジタル処理する方式のラジオです。従来のアナログラジオに比べてS/N・歪率・セパレーション等の基本特性が優れています。部品点数が少ないためにローコストで小型・軽量化が可能。また、コイル等の調整箇所がないので経年変化がありません(アナログは再調整が必要)。