海外FM放送の遠距離受信の楽しみ方

Let's FM DXing

「FM」はFM放送。「DX」は遠距離受信。広義では「遠くのFM放送を受信する事」を意味します。
基本的にFM放送の電波は見通し範囲内しか届かないので、AM放送や短波放送とは違い通常は近隣の放送しか聞こえません。

ところが山に登れば状況が一変。カーラジオでもかなり広範囲のFM放送が聞こえます。(地元FM局の受信リストを参照)
場所によっては300km以上離れた地域の放送が聞こえるケースもあるとの事。

「遠距離受信」と聞けばなんとなくハードルが高く感じるかもしれませんが、Eスポ等による異常電波伝搬以外の直接波ならFM放送の電波は非常に安定しており、不快なフェージングや混信がなく聞きやすいと思います。

「普段は聞こえないFM放送を聞いてみる」程度で気軽に始めてみましょう。

Equipment

とりあえず高価なラジオやアンテナは必要ありません。5~8月のEスポシーズンなら手持ちのポータブルラジオやカーラジオでも、かなりの頻度で遠方のFM放送を聞く事ができると思います。

ただし海外のFM局は主に88~108MHzで放送されていますので、国内外のFM放送を幅広く聞きたいのであれば、この周波数をカバーしているラジオが必須です。

2012年のTV放送地上デジタル化に伴って一時期姿を消していたワイドバンド(76~108MHz)に対応したラジオが、2015年からのワイドFM開始に合わせて再発売されていますので新規での購入も簡単になりました。今ではカーラジオも標準装備でワイドFMに対応しているようです。

余談になりますが、私の所有するOLYMPUSのボイスレコーダーは購入後にファームウェアのアップデートがあり、FMラジオの受信周波数が95MHzまで拡大されました。

近年は海外メーカーから発売されているDSPラジオの評判が良いようです。これらは総じてFMバンドの感度やS/Nに優れたモデルが多いと言われ、ワイドFMも受信できます。

ネットでは「SANGEAN」「DEGEN」「TECSUN」等のいわゆる中華ラジオが多く紹介されており、価格も国産メーカーに比べると割安だと思います。

おまけにLW・MW・SWバンドにも対応しており、1台で何役もこなす優れもの。私はTECSUN PL-380を購入してUltralight DX仕様にしました。

PL-380の画像

その他、通称「ドングル」と呼ばれる海外製のUSBワンセグTVチューナーが、SDR#等のフリーソフトで広帯域受信機(25~1700MHz程度)として使用できるようになります。瞬時帯域幅は2MHz程度ながら安価な製品もあり、屋外アンテナとの組み合わせによってかなり本格的な海外FM DXが楽しめるでしょう。(海外FM局の受信記録を参照)

※ 搭載されるチップによって受信周波数に違いがあり、製品によっては広帯域受信機として使えない個体もあるようなので注意が必要です。

アンテナの設置については多様な住宅環境に絡んできますので、別の機会での説明とさせていただきます。
現在販売されている国内メーカーのFMアンテナはラジオと同様にワイドFMに対応しており、海外FM放送の受信用としても使用できるという事だけお伝えしておきます。

Ways to enjoy

現在あなたがお住まいの地域での受信状況はいかがでしょうか。
拙宅は瀬戸内海から10km程度内陸にあり、四方を山に囲まれています。
さらに南から北東にかけて小高い山が迫っており、地デジアンテナは4m以上のマストを使って設置されているという地域。お世辞にも良いロケーションとは言えません。

このような環境でも隣県を越えた福岡や香川のFM放送は普通に聞こえています。地域的なアドバンテージがあるとはいえ、年に数回はトロッポで韓国のFM放送も聞こえます。
ひょっとしたらあなたの地域でも、さらに遠方の電波がキャッチできるかもしれません。

PL-380の画像

受信設備を整えて東南アジアやロシアの海外FM局を追いかけるもよし。カーラジオで遠方のFM放送を聞きながらドライブするもよし。旅先でコミュニティFM局を探すもよし。

まずは自分のライフスタイルに合わせた「聞く」FM DXをおすすめします。

もう一つの楽しみはベリカードの収集でしょう。
当サイトを訪れるビジターの7割以上が「ベリカード」を含むキーフレーズで検索されており、過去のBCLブーム以降も未だに根強い人気があるようです。

その昔、日本の民放FMは50数局でした。ところが今やコミュニティFMだけで300局超。あっという間にAM放送やTV放送の局数を大幅に上回り、コレクター魂をくすぐられるカテゴリになっています。

NHK高知のベリカード画像

2021年6月には一部AMラジオ局を除く44局が、2028年秋までに順次AM放送を停波または補完運用に変更してFM局へ転換する事が発表されました。それに向けて2024年2月1日からのAM放送の運用休止、減力等のスケジュールが実施され始めています。

今後もFM放送はますます充実すると思われ、もし将来的に95~108MHzの周波数が割り当てられるとすればFM局の数はさらに増える見込みです。

国内FM局の完全制覇を目指して「集める」FM DXも楽しんでみませんか?

Glossary

Eスポ
スポラディックE層の略称。さらに略して「Es」と表記されます。これは主に春から夏にかけて上空約100km付近に突発的に発生する電子密度の高い電離層の事で、通常は電離層を突き抜けてしまうVHFの電波が反射して異常電波伝播を引き起こし、これによって1,000~2,000km離れた遠方のFM放送が受信できるようになります。ちなみに「NICT 'fxEs'」で日本各地のEスポの状況が確認できます。これは沖縄・山川(鹿児島県)・国分寺(東京都)・稚内(北海道)上空の臨界周波数を示しており、この数値がEs発生の目安になります。

ワイドFM(FM補完放送)
AMラジオ局がFM用の周波数を使用する放送の事です。これまでは難聴対策・外国波混信対策・災害対策として使用されてきましたが、2024年2月から民放AMラジオ局の多くがAM放送の廃止を目的としてワイドFMへの転換を進めています。今のところ90~95MHzの周波数が割り当てられていますが、民放連加盟各社とNHKは空き帯域となっている95~108MHzまでの拡充を求めています。

DSPラジオ
DSPとは"Digital Signal Processing"の略語で、DSPラジオは電波の同調・検波・増幅をマイクロプロセッサでデジタル処理する方式のラジオです。従来のアナログラジオに比べてS/N・歪率・セパレーション等の基本特性が優れています。部品点数が少ないためにローコストで小型・軽量化が可能。また、コイル等の調整箇所がないので経年変化がありません。(アナログは再調整が必要)

ドングル
FM放送の受信用として大きく分けると、特定のチップを搭載した海外向けワンセグTVチューナーと、SDR専用に設計されたカスタムドングルの2種類があります。ワンセグTVチューナーの方は本来の使用目的を外れて広帯域受信機として流用されており、瞬時帯域幅は2MHz程度です。SDR用として販売されているドングルはメーカーによって受信できる周波数や価格がまちまちで使用できるソフトも違います。中には瞬時帯域幅が20MHzを超えるモデルが存在するようです。

トロッポ
対流圏(地上約10~16kmまでの大気の層)の気象状況によって発生する異常電波伝播のことです。FM DXでは対流圏散乱とラジオダクトをまとめてトロッポと呼んでいます。春から秋にかけて多く発生し、条件が揃えば1,200km辺りまで聞こえるようです。Eスポに比べると長時間かつ安定して受信できることの多いのが特徴。

ベリカード
"Verification Card(ベリフィケーションカード)"の略語。放送局がリスナーからの受信報告書に対して発行するカード式受信確認証の事です。各放送局は趣向を凝らしたカードを作成しており、「BCL」と呼ばれる放送受信愛好者にとってもこの収集が楽しみの一つとなっています。これに対して文書のみの確認証は「ベリレター」と呼ばれます。これらはあくまでも放送局側の厚意であり義務ではありません。それを踏まえて節度ある収集を心掛けたいものです。