思いつくまま印象記 旅体験あれこれ その37
    中味の濃いパックツアー
  四川省・絶景紀行 九寨溝・黄龍・都江堰・峨眉山・楽山
成都周辺5つの世界遺産を巡る8日間〈2016年9月15日〜22日〉 
はじめに…中国の自然遺産の筆頭、九寨溝へ行きたい 
 
民族的にも多様でとてつもなく広い中国大陸、これまで北京から洛陽、西安、上海等を巡る旅(パック、妙・弘志)、大連・旅順の旅(マイレージ利用、恵子・弘志)、江南十都市の旅(パック、恵子・弘志)をして来ました(西矢はボランティア仲間と教育支援の学校訪問等で長春北方の村を数度訪れたりしています)。
 その経験から、中国を個人旅行するのはチョッと難しいかなという印象でした。パックツアーを眺めていて、自然遺産としての九寨溝の素晴らしさには惹かれていました。このゾーンは高度が3000m級になるし、距離的にも中国大陸の内陸部だし、年齢的に早めに行っておきたいなぁと考えていました。同じ行くなら、近くの楽山大仏とかにも立ち寄れたらよりいいとも思っていました。
 旅行者が考えることは同じようで、そういうプランのパックツアーが宣伝され始めました。しかも、関空から成都への直行便、訪問地も「5つの世界遺産を巡る」と銘打ったもので、都江堰なんて全く知りませんでした。天候も比較的いい時期(紅葉を狙うと割高ですが)で探すと、今回はHISが圧倒的に安かったのです。同行した方は「他社より4万円は安かったのでキャンセルしてこちらへ来た」と言われていました。因みに一人12万7千円でした(諸費用別)。
 安い理由の一つは日本からのツアコンが付かないことかも知れません。現地係員=ガイドさんが成都で待っているパターン。余程の初心者でなければこれで十分ですし、今回は日本語に堪能な中国人ガイド王さんでしたから、文句無しでした。

@出発は関空発午後6時でゆったり、直行便で成都迄約5時間〔@は1日目、以降同じ〕
A九寨溝へ移動の日ですが、先に立ち寄ったパンダ繁育研究基地は見応えあり

 今年3月の台湾同様、関空夕方出発で午後2時ごろ高槻を出てゆったりでした。成都迄直行便、時差も1時間(マイナス)なので慌てることは何もありませんでした。さすがに中国内陸部なので所要時間は4〜5時間かかりますが、機内食で夕食を頂いたらもう成都近くでした。現地時間で午後10時に成都着、バスでホテル直行、団員の数は17名といい人数でした。
 この旅の大半は[6時モーニングコール、6時半朝食、7時半出発]でしたが、この日も早朝出発は正解で、最初に訪れたパンダ繁育研究基地は駐車場に着いた時と出る時のバス・車の量の違いにビックリしました。パンダは成都のセールスポイントですから、訪れる人の数も半端ではありません。しかも、ニュージーランドの時のような春節や10月の国慶節程ではないのですが、9月15〜17日は中秋節で中型連休なのでした。
 パンダにはあまり興味関心が無かったのですが、王さんの解説でその希少性とかを学び、日本では上野、白浜、天王寺の動物園にしかいないことも初めて知った次第です。この基地の長ったらしい名前もその辺の事情のようですね。
 ここは、動物園のように檻に閉じ込められているのではないので、自然も豊かで良い雰囲気の繁育研究基地でした。
▲繁育研究基地のゲート ▲カートで園内を移動 ▲早速、パンダ君に出会える
▲彼等の好きな笹を食べるパンダ達 ▲前にはたくさんの観光客 ▲赤ちゃんパンダも
パンダ基地を出て、高速を終え、片側1車線の道をバスでひたすら北上、九寨溝へ向かう
 パンダ基地を出て暫くは高速道路でしたが、やがて片側1車線の道を北上、時々トイレ休憩を取りながら、そして、茂県で昼食、夕刻にはきのこ料理の夕食も取って、実質8時間、九寨溝に到着。相当な道のりでした。狭い道路ですが運転手さんは遅い車の後に来ると追い越すので、対向車とぶつかりそうになり怖い思いもしばしばでした。
 途中、山沿いに工事が進行中だったのですが、王さんが「何を作っていると思いますか?」と聞くのですが、答はまさかの鉄道建設でした。2、3年後には完成するそうで、これは凄いことだと感嘆しました。国家的事業なんでしょうがスケールが大きいですね。何年かしたら、この大変な距離のバス旅は語り草になるんでしょうね。
 夕食を取る辺りは高度も3000mを超すので、高山病的な症状も現れます。ペルーのクスコやチチカカ湖の島で罹病体験があるので心配でした。三上は少し頭痛がしだして、慌てて対策を考え出しました。17人中3人ほどが少し体調が悪くなったようでした。スマホの便利なところで、ホテルに入るとWIFIフリーになるので、ネットで調べられるので良かったです。
 こんな山奥の辺鄙なところだから、ホテルはスーペリアクラスと言っても大したことないだろうと期待もしていなかったのですが、なかなかの設備でビックリしました。
▲トイレ休憩のみやげ物屋さんと私達のバス。 ▲鉄道建設、進行中でした ▲チベット仏教寺院
▲夕食のきのこ料理 ▲チベット族村の塔(マニ車風) ▲九寨溝のホテル=千鶴国際大酒店  
Bいよいよ九寨溝見学へ。小雨交じりでしたが、景観に大きな影響はなし、かな。
 移動日の昨日は快晴だったのに、残念ながら本番の日は曇り時々雨。でも、湖面の色にまで影響は無さそうでした。期待通りの美しい湖面が見え、鏡のように林や森を映していました。
 パンダ基地同様、九寨溝の入口も人人で大変な混雑ぶりでした。普通に入って観光したら、この人の波に弾き飛ばされそうでしたが、バスで駐車場へ着き、そこからシャトルバスで入口へ、入口からはチャーターバス(フロントガラスに「専用車」と簡体字で書かれていました)でポイント地点を回ってくれるので、随分スムーズに動けたようです。
▲人で溢れる九寨溝の入口ゲート ▲歩いて次のポイントへ進む人も ▲チャーターバス=専用車が待機してくれる
▲諾日朗瀑布 ▲鏡海 ▲五花海で全員集合  
▲五花海パノラマ
▲一番大きい長海 ▲一番透明度の高い五彩池 ▲昼食の諾日朗センター
午後も、引き続き湖水、瀑布を巡る。ガイドさんの工夫凝らしたルートで
 九寨溝の中にはレストランもあり、簡易なものでしたがビュッフェスタイルの昼食が付いていました。
 九寨溝には100を超える湖、滝が点在していますが、ここは外せないと思われる湖水・瀑布があり、事前の計画書にも明記されています。ただ、王さんも「混雑具合、天候等を考えて、ベストなコースを組ませて頂きます」と言い、それはいい選択だったようです。
 昼食の後も残っている見所を丁寧に回って行きました。
 九寨溝に連泊でしたから、雨も上がり、ゆっくりホテル近くを散策できましたが、ホテルシェラトン前の広場では民族芸能の披露も行われていました。
 
▲箭竹海瀑布 ▲箭竹海 ▲パンダ海  
▲パンダ海の標識と ▲珍珠灘、下から  ▲珍珠灘瀑布、上から
 
▲珍珠灘瀑布、下から ▲マニ車のような水車
 
▲水を綺麗にする赤い根 ▲2連泊した千鶴国際大酒店 ▲ホテルシェラトン前の広場で
C九寨溝からバスで2時間程戻り、九寨溝と世界遺産同時登録の黄龍へ
 黄龍は、トルコのパムッカレに似た棚田が緑の中に7kmにわたって続く広大な世界遺産です。高度が高く、上りだけロープウェイを使うのですが、最高地点の五彩池は3600m、ロープウェイ乗り場が3150mと、全体が3千m級なので、高山病の心配があります。HISも、ここでは酸素ボンベを配ってくれました。二日目の夜からスマホで情報収集し、対策を考え万全の態勢(笑)で臨みました。・ゆっくり行動すること、・水を飲みトイレへ行くこと、・深呼吸を30回以上すること、・飴を舐めること。
 残念ながら天候は回復せず小雨交じりが続き、寒さも厳しかったので色々着込みました。でも雨脚はきつくないのがせめてもの救いでした。ガスっている訳でもないので、景色も悪くありませんでした。ロープウェイ乗り場近くのホテルで昼食を取り、そこに午後4時に再集合するのですが、約3時間、最初はゆっくりと心掛けていたのですが、間に合わなくなりそうで、最後の方は駈足気味でした。それでも高山病には罹らなかったので自信回復(笑)。もちろん、酸素ボンベも使わず。 
▲ロープウェイ ▲ロープウェイ降り場で王さんと ▲3500m級の道を2.7k歩く
▲五彩池と黄龍古寺(右下)
▲五彩池と黄龍古寺(左端)  
▲黄龍古寺 ▲黄龍中寺 ▲争艶彩池  
▲明鏡倒映池  
▲段差が大きい池も ▲黄金色、金の龍  ▲黄龍出口到着、午後4時
D山岳地帯を離れ、成都方面。古代水利施設・都江堰へ
 前日は高山病にかかる人も無く4時半頃に黄龍を出発、岷江沿いの茂県のホテルに着いたのは夜8時過ぎでした。夕食はホテルでのテーブルバイキングでした。朝、窓の外を見ると山肌に館が見えるので、何かなぁ…と思っていたら、団のメンバーが「茶馬古道だ!」と言われていたので、慌ててホテルの横からシャッターを切りました。バスの中で王さんが東西の交易の話で茶馬古道の話をしていたのです。
 いよいよ今日はバスで約4時間かけて成都方面に戻り、古代水利施設・都江堰を訪れます。はじめにも書いたように、こんな世界遺産は全く知りませんでした。岷江(やがて、長江にそそぐ)の氾濫に苦しむ人々のために、そして、水不足に苦しむ人々のために、水の流れを調節する施設を、紀元前250年頃に当時の知事が作ったとか。山の上部(秦堰楼)から見渡せるので、観光地としても人気があるようです。
 中州とかが色々あるのですが、楼から下って、吊り橋を渡って水利施設を見て回りました。
▲橋の向うに茶馬古道の庵 ▲こういうスローガンには漢字がうってつけ(笑) ▲途中の屋台でヤクのジャーキーを買う
▲秦堰楼 ▲展望台から ▲岷江の上流方向
▲都江堰全景パノラマ  
▲天下愛情第一橋。愛の誓いがぶら下がる ▲吊り橋の案欄橋 ▲案欄橋を戻る。上に秦堰楼  
成都市内へ向かい、昼食、お決まりのショッピング(寝具)、早目の夕食。ゆとりあり、地下鉄で少し探訪
 バスで小一時間、成都中心部の錦里で昼食。飲茶料理、日本のそれとは違っていましたが、ワンランク上の料理という印象でした。その後、ショッピングに出かけましたが、今回のツアーでは意外と少なく、宝石とこのラテックスの寝具だけでした。時間はタップリあったので、夕食会場に早く着いてしまい、そのホテル周辺を散策したほどでした。パックツアーならではのことですが、日本料理店(5つ星の老舗ホテルにある)でした。茶碗蒸し、関西風うどん、天丼等でまあまあでした。
 ホテルから10分ほどで地下鉄の駅(人民北路駅)があるので、是非乗ってみようと、小雨の中でしたが出かけました。僕達の持って行った『地球の歩き方』は最新版(発行は2015年秋)だったのですが載っている地下鉄路線図は1・2号線だけ。ところが、もう4号線までできています。間もなく7号線まで開通するらしく、後で王さんが言うには、最終的には18号線までできるとか。そのスピードにはビックリです。
 1、2号線がクロスする駅が天府広場、3駅南なので、そこへ向かいました。片道2元(35円程)でした。もちろん券売機は問題無し、車両も真新しく問題無し。なのですが、警備が厳重で、改札で荷物検査・身体検査があるのです。夜に乗りましたが、ラッシュアワーにはどうするんでしょうね?天府広場駅を出て驚いたのは、毛沢東の巨像が科技院前でライトアップされていることでした。他方、人民北路駅の近くの壁面には中国共産党のポスターが掲げられていて、そこの毛沢東の顔は破られていました。人々の彼に対する気持ちはどんな具合なんでしょうね…。
 
▲12のスローガンと五星紅旗 ▲老舗ホテルで日本料理 ▲真新しい地下鉄車両  
▲地下鉄駅への道、壁面のポスター ▲天府広場北側の科技院前、毛沢東像  ▲地下鉄・天府広場駅の夜景
E成都の南西へ。再び3千m級の仏教聖地・峨眉山へ。雲の中で視界開けず
 バスで約3時間、そこから乗り合いバスに乗り換え急坂を2時間。更にロープウェイで登り、歩いて金頂へ、という相当な強行軍でした。高度が3100m近くもあるので、晴れれば眺望も素晴らしいところですが、あいにくの曇天で視界は限られていました。
 金頂には、華蔵寺という寺院と共に高さ48mの十方普賢像があるのですが、最近修復されたとかで、金ぴかで何だか違和感がありました。ロープウェイの駅周辺には1元で竹の棒が売られているのですが、杖または猿撃退用だと王さんが言っていました。なかなか猿が現れなかったのですが、ロープウェイ駅直前に数匹で登場、態度がデカく、成る程と納得。
 峨眉山が今日の宿泊地で、こんな所にホテル?と思っていたら大間違いでした。麓は何かの国際会議も誘致するくらいの街で、豪華ホテルで温泉(と言っても、温水プールでしたが)までありました。水着持参は6人だけだったのですが、一緒に入ったメンバーには旅の色々(近々行く予定のヒマラヤとか)を聞かせて貰い、体がふやけるほどでした。 
▲眉山へ向かう片側4車線の道も大渋滞 ▲ロープウェイ乗り場の建物  ▲ロープウェイ到着  
 
▲こんな山奥に「派出所」 ▲十方普賢像へ
   
▲金頂から普賢像 ▲華蔵寺正面
 ▲華蔵寺内部の仏像。ここもキンピカ
▲十方普賢像の周りをお参りする信者 ▲普賢像の横に象の列 ▲猿たち登場
 
▲ロープウェイから雲海?でも晴れないなぁ ▲かつぎ屋さんも休憩 ▲温泉の外観  
F最終日、遊覧船からの楽山大仏と武侯祠博物館(諸葛亮殿)
 峨眉山から更に南西へバスで小一時間、有名な磨崖仏の楽山大仏へ。楽山港には50人程度の小さな遊覧船が幾つも繋がれていて、適当に人が集まれば出港。港からは大仏は角度的に見えないのですが、その辺りに来ると回転してくれて、停まってくれます。
 高さ71m、肩幅28mの大仏は、近くで見学する人々の小ささでその壮大さがうかがえます。そこの前が岷江で川の流れも大きく、その氾濫を鎮めるために唐の時代に90年もかけてつくられたそうです。船からだけでなく大仏横を登り、降りるのも経験したかったのですが、また半日以上かかるそうで無理でした。昼食は楽山港のレストランで豆腐料理でした。 
▲楽山へ向かう車窓から。教会も ▲楽山港。左の奥に大仏  ▲ライフジャケット着用  
 
▲左の側面から下りて来る人も見える ▲奥のジグザグの上り道も見える
   
▲振り返ると涅槃像の如くという ▲面白い豆腐料理の昼食
 
成都市内へ戻り、三国志の英雄の世界へ。武侯祠博物館博物館を見学
 旅の最後になったのは中国でも日本でもファンの多い三国志絡みの博物館でした。特に四川省は蜀の国ですから、劉備、諸葛孔明の展示が中心でした。多くの団員からの要望で最後の30分ほどはフリータイムにして、すぐ横の錦里散策に出かけました。
 夕食は、四川料理の代表的な麻婆豆腐で締めくくられましたが、よくやってくれたガイドの王さんにみんなで感謝の言葉と心付けをまとめて渡しました。この辺りは旅慣れた6人グループの代表格の方が世話してくれました。
 ホテルで少し時間の余裕があったので、人民北路駅まで出かけました。この駅地下に大型のスーパー、駅上にワンダデパートがあり、買い残しの品物をゲットするのにピッタリでした。
▲武侯祠博物館の中を進む ▲劉備像 ▲諸葛亮像
▲長岡京を思い出させる博物館内の通り ▲古い街並みを再現した錦里 ▲締めは四川の麻婆豆腐  ▲王さんに有り難う!
 
▲人民北路駅のワンダ広場 ▲駅前広場では、みんなでダンス!  ▲ワンダ・デパートの内部  
G成都の市街中心部を縦断して、空港へ
 ホテルは成都市の北方にあるので、空港へは市の中心部を縦断して南下する必要があります。渋滞が心配されますが、これまで通らなかった所を通過、車窓観光になります。三日前に行った天府広場とかを通過、予想以上の繁華街でした。四川大学も通りましたが、でっかい大学なようでした。
 一時に比べるとウンと少なくなっているようですが、バイク通勤等も元気です。少なくなった分だけ、車の渋滞が酷くなっていて、曜日ごとにナンバーによる乗り入れ規制があるようです。
▲成都の芙蓉麗庭酒店 ▲四川大学  ▲交差点のバイクの群れ  
 
▲料金所のチャイナドレス ▲空港に到着
 ▲エアーチャイナに搭乗(実質4時間で関空)  

意外と、この地域には日本人観光客はあまり来ていない印象
 最近の日本人海外旅行事情はテロ等の心配でヨーロッパやトルコ等のパックツアーは激減、激安になっているようですね。中国も上海、北京、香港等は手頃感があるのでしょうが四川省への日本人観光客は、そう多くない印象でした。成都の空港でも九寨溝や四川省の世界遺産でもあまり日本人のパックツアーとは遭遇しませんでした。
 はじめにも書いたように、実際は直行便で正味4時間という近さなんですが、バスで10時間近くの九寨溝ということになれば話は別かも知れません。なので、このパックの参加者は、それなりに旅慣れた方が多く、海外旅行体験も色々で、その情報交換に花が咲いたりしました。個人的にも、2か月少し先に計画しているヒマラヤに行かれた方も居られ、色々聞かせて貰い参考になりました。逆に、ミルフォードトラック、メキシコのセノーテ、マチュピチュのワイナピチュの話とか、聞かせて欲しいという話も多かったので、結構楽しい会話になりました。
 リタイア後の夫婦が(間もなくも入れて)6組、女性二人が2組、一人参加の女性が1人、計17名。3組のご夫婦は阪神間にお住まいで互いにお知り合いでしたが、後の2組の男性はいずれも中国で仕事(商社とか)された方で、中国の実情とかもお聞きし面白い話も色々ありました。 
またしても自分達の認識不足を痛感、現地に来て知る色々なこと
 驚いたのは、成都とその周辺の都市の発展ぶりです。中国の格差問題は相当深刻だと思っていました。歪んだ見方なのかも知れませんが、それは、沿岸部・その周辺と内陸部・奥地との格差の大きさと捉えていたように思います。成都は後者の代表的な地域になります。ところが、この都市の発展ぶりは凄いものでした。しかも中心部だけの話ではないのです。そして、その周辺の都市も凄いのです。例えば、上にも書いたように、都江堰の都江も、峨眉山も楽山も周辺都市として大きく発展しています。九寨溝だって、そこへ向かう岷江沿いの地域はそこそこの整備がされているのです。単に観光だけではない地域になっている印象です。支えている産業とかは分かりませんでしたが、どこでも超高層のマンション群があるのです。不動産バブルが一部にあるとしても、凄いことだと思いました。
 考えたら、三国志の一つの極だった蜀の中心部が成都なのだから当たり前なのかも知れません。その上、王さんが言っていましたが、かのケ小平がこの地域の出身でもあるので、軽視するはずがないとも言えます。西部開発と呼ばれる事業が進んでいるのかも知れません。トヨタの工場は中国に4つあるらしいですが、その一つは成都だそうです。小都市と付近の農村との格差問題はあるでしょうが、距離的にも分散していて平準化が進みやすい構造ではないかと思えます。
 格差と平準化という点では、中国の人々の買い物や旅行の人の多さにも関係しそうです。今年のニュージーランドなんかの旅で溢れんばかりの中国人に会ったりしたのですが、ここは中国ですから中国人いっぱいは当然です。15〜17日が中秋節なのですが、18日は日曜日でも振り替えで休日ではなくなるそうです。でも、18日も中国人観光客で人いっぱいなのです。王さんに尋ねると「それは普通の光景で、休みをずらしたり、年休のようなものを使って旅行に来ている」と言うのです。だから、日本人と同じように中国人も旅行好きなのでしょう。復路のエアーチャイナ機は成都から関空への直行便です。普通なら日本人CAが居てもおかしくないし、アナウンスも日本語があると思いきや、全く無し。それもそのはず、乗客の大半は中国人なのです。隣のカップルもそうだと思って、中国の人では共通の言語は無理っぽいので、食事も終えて本を読み始めたら「九寨溝に行って来られたんですか?」と日本語で話しかけられビックリ。何と個人旅行で四川の旅に行かれてたとか(仕事柄USへの出張が多いらしくマイレージ利用だったのですが)。詳細は割愛しますが、これからの旅のスタイルについて思うところを色々話すことになりました。ツアーの団員には仕事のこととかは話さないのですが、ここだけの話なので、自分の元の仕事も伝えました。そこで、彼が「社会科の先生なら、丁度、お聞きしたかったことがあるのですが」と言われるのです。
大きな隣国を知ること、近くて遠いのかどうかわからないけど、難しいですね
 「最近、中国が急激な発展を進めている理由は何なんでしょう?」という質問でした。
 上の印象記の中でも書いた事例から、自分でも考えていたことでした。九寨溝へ向けて成都から敷設される鉄道、成都の大渋滞を解消するための地下鉄建設、成都の中心部の商業施設の大胆な広がり、どれを見ても、その規模やスピードには驚きます。
 USの大学で6年間勉強し、バイオテクノロジーの世界で活躍されているカップルの方に答えたことは次のようなことでした。
「ことの評価は色々あるだろうけど、結果的には社会主義的な手法が今の中国には適切であったのではないか。表現はよくないかも知れないが、若干独裁的であっても、必要なことはスピード感を持って進める、それが功を奏しているのではないか。昔、開発独裁という言葉もあって、一緒くたにしてはいけないだろうが、あれこれ議論をしたり、民意を聞いたりしていては間に合わないというようなことがあるのではないか。社会主義なので土地が国有だから、こういう事業が進めやすい面もある。賄賂が横行しているとか、一部特権を持つ共産党官僚層は酷いことをしているとしても(その撲滅のために色々やっているし)、民衆は当面の生活改善を目の当たりにして、反乱・反革命を起こすようなことにはならないのではないか。もちろん、人民政府や都市、共産党の決定のあり方、共産党の位置付け等、今後の問題は山積なのでしょうが。」
 お二人からは中国を個人旅行しての興味深いあれこれを聞いたのですが、チョッとだけ書くと、九寨溝の入口で英語が通じず、一時間かかったとか、成都から九寨溝へは飛行機を使ったけど二人で10万円かかったとか、…。今研究されている分野の話も「唾液でその人の今後の病気の可能性(確率)が判定できる」とか色々あったのですが割愛。こういうこともあると思ったのは飛行機の便の都合で、関空で乗り換え羽田へという東京在住の人でした(生まれは何と高槻)。
 ただ時代を感じたのは、彼らが電子ブック持参だったことです。横の座席でタブレットを見て、どうもそれが日本語らしかったのでアレ?日本人?と思ったのでした。確かにこれならかさ張らないですね。タブレットを見せてくれるので何かな?と思ったら、それは電子書籍の四川ガイドブックでした。
 話が前後しますが、成都到着の翌日、もやっているようだったので、MP2.5か?「成都、お前もか!?」と思ったのですが、王さんが「これは、霧です。四川は盆地なので、こういうことはよくあります」と言っていました。それと、以前中国に来た時は町が汚れている印象が強かったのですが、今回は随分綺麗な感じがしました。それはカーキ色の服を着た年配の方が掃除をされているからのようでした(印象記の最終日のホテル前の写真にも写っています)。多分北京オリンピックからのことではないかとのことでした。
 総じて、中国の変化の速さは相当なもので、何かの中国での出来事を議論する時に「それはいつのこと?」と確かめなくてはならないようですね。





Copyright © 2016MIKAMI HIROSHI