アイデアは検証されなければいけない では アイデアのもとになった系統樹は どのくらい確からしいのだろう? ちょっと考えてみたい仮説1 ディノニクスは飛べない鳥である 提案者:グレッグ・ポール 1:ポールのアイデアを詳しく
グレッグ・ポールは恐竜アーティストとして有名な人物ですが、じつはジョン・ホプキンス大学を卒業した研究者であり、Journal Vartebrate paleontorogy や Nature に論文を書いています。
彼は自分の本、[Predatory Dinosaurs of The World 1988]( 日本語では[肉食恐竜事典 河出書房新社 1993])の中で一部の肉食恐竜が空を飛ぶのをやめた動物だと主張しました。
たとえば彼の考えによると映画にも出てくるヴェロキラプトルやディノニクスは、いわば”飛べない鳥である”ということになります。これは非常に魅力的な仮説です。
では、魅力はともかくとして、このアイデアはどのくらい確からしいのでしょう?。
まず、彼はコンプソグナトスや始祖鳥、ディノニクスや現代の鳥の骨格を詳しく観察して、彼らが次ぎのような血縁関係にあると考えました。
ポールの系統樹:
____________コンプソグナトス
|__A1______始祖鳥
|______ディノニクス
|___現代の鳥
この系統樹は一般に受け入れられている系統樹とくらべるとかなりユニークで、そしてまた、実際にディノニクスが鳥であることが示されます。
2:問題点があるとしたら・・・・
これにたいして、ほとんどの研究者がつくり出した系統樹では次ぎのようになります。ようするに現代の鳥にたいしてディノニクスが始祖鳥よりも遠い位置にあらわれます。ようするに多くの研究者が作る系統樹(正確には分岐図)に従うとディノニクスは鳥ではないわけです。
一般的な系統樹(セレノ、パディアン、チアッペ、ホルツなど):
____________コンプソグナトス
|_________ディノニクス
|__A2___始祖鳥
|___現代の鳥
さらに詳しく考えていきましょう。
この一般的な系統樹ではA2の位置で”飛行”が進化したと考えます(より正確にいうとこの系統樹から最節約に考えるとA2の位置にいる動物が”飛行”という能力を持っていたのだろうなあ、ということが推測される)。
もちろん、先にいったようにポールの系統樹ではそうはなりません。ポールの系統樹から最節約に考えると、まずA1で飛行が進化したと推測することができます。
____________コンプソグナトス
|__A1______始祖鳥
| A1の位置でまず空を飛ぶという能力が進化する
|____A3→ディノニクス
| ↑A3の位置で空を飛ぶという能力が退化する
|___現代の鳥
そして以上のようにA3で飛行が退化したと推測することができます。この場合、ディノニクスは鳥であり、飛ぶことをやめた動物であるということになります。つまり、ポールの系統樹からはディノニクスが飛べない鳥であるという結論を最節約に導くことができるわけです。(注:厳密にいうと始祖鳥と現代の鳥でそれぞれ独立に飛行が進化したと考えることも、またできます。この場合、ディノニクスは一度も空を飛んだことがない鳥になる。そういえばダチョウがそういう生き物だっていう仮説、昔、ありましたね・・・。)
ではディノニクスは飛べない鳥なのでしょうか?。
もしポールの系統樹が他の研究者たち(セレノ、チアッペ、パディアン、ホルツなどなど)の作った系統樹よりも確からしかったら、彼のアイデアが正しい、あるいは他の研究者の説よりも有利な説になるでしょう。
では、ポールの系統樹は確からしいでしょうか?。
残念ながらポールの系統樹をサポートするデーターは他の研究者のものよりも少なく、今のところポールの系統樹も、また彼のアイデアも積極的に支持するわけにはいかないというのが現実です。
こういう問題に興味のある人は「系統分類学入門」 文一総合出版 を参考のこと。
以下に過去のこのコンテンツにおける文章の一部と訂正が掲載されています↓
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