過去の歴史に仮定をしいて 過去を推定する しかし、その仮定は正しいのだろうか? ちょっと考えたい仮説2: 鳥は樹の上でくらす生物から進化した 提案者:アラン・フェドューシア教授
1:教授のアイデアをもっと詳しく:
フェドューシア(あるいはフェデューシア:Feduccia)教授はノース・カロライナ大学の教授です。彼は鳥類学者ですが、鳥類は樹の上でくらす生物から進化したと主張しています。つまり樹の上でくらし、枝から枝へ飛び移っている爬虫類から、ムササビのように空中を滑空する生物が産まれ、そして最終的に大空を飛ぶ鳥類が進化したと考えたのです。
また、そうした樹の上にすむ鳥の祖先の候補としてロンギスクアマやメガランコサウルス、コセサウルスといった動物を上げました([The Origin and Evolution of Birds 1996 Yale University Press ])。
そして、さらに彼は、鳥類は恐竜(<ここでいう恐竜とは鳥は含まない意味ですね)から進化したわけではない、そう主張しています。フェデューシア教授たちの主張のよりどころとなる系統樹は次ぎのようなものです。
_______====メガランコサウルス/コセサウルス
| |_A1___ロンギスクアマ
| |___鳥
|
|________トリケラトプス
|_____アパトサウルス
|___ディノニクス
2:問題点
しかしながらこの系統樹をつくり出した方法論/あるいはアルゴリズムというか根拠はかなりユニークなものです。
このような系統樹を作成した根拠とは、先に取り上げた教授の著作や同じような主張を持つ研究者の論文などからするとだいたい次ぎのようなもののようです。
1:ロンギスクアマと鳥には羽毛のような構造という共通の特徴が見られる(ただし恐竜が羽毛を持つという事実は無視)
2:羽毛という複雑な構造は生物の歴史では1回しか進化しなかっただろう、という仮定
3:あるいは羽毛は鳥の特徴であり、羽毛を持つものは鳥である、という前提
に基づいています(以上の著作やJones et al 2000, Science Vol.288, pp2202~2205 を参考) 。
しかしこれらの仮定やら前提やらが正しいのかどうか?、それは分かりません。例えば羽毛が生物の歴史では1回しか進化しなかったって、どうして分かるのでしょう?。ようするに彼らの系統樹は正しいのか正しくないのか分からない仮定に基づいたアルゴリズム(というか根拠)で作り上げられているわけです。
また、恐竜と鳥の共通の特徴を、すべて収斂とみなさなければこの系統樹は成り立ちません。つまり、羽毛が1回しか進化しなかったという仮定のもとに、鳥と恐竜のみが持つ独特な共通点をことごとく無視しているわけです↓。
_______====メガランコサウルス/コセサウルス
| | ↓A1で羽毛/あるいは羽毛に似た器官が発達した
| |_A1___ロンギスクアマ
| |___鳥
| ↑↓鳥と恐竜の間にある非常に多くの共通の特徴は収斂ということで無視
|________トリケラトプス
|_____アパトサウルス
|___ディノニクス
ようするにこのアイデアが成り立つためには相当な無理をしなくちゃあいけないのですね。これではまるで持論を正当化させるためだけの言い逃れのようにも聞こえます。
さて、こういった問題を抱える教授の系統樹やアイデアですが、さらに教授の系統樹は新発見によって補強されない、という欠点も持っています。
ようするに彼らの考えの通りだとすると、彼らのアイデアをサポートする新発見の動物の化石がみつかり、そして彼らの系統樹で次ぎのような位置に取り込まれるはずです。
_______====メガランコサウルス/コセサウルス
| |_A1___ロンギスクアマ
| |_===新発見の動物(<彼らのアイデアをサポートする証拠)
| |__鳥
|
|________トリケラトプス
|_____アパトサウルス
|___ディノニクス
ようするに教授の意見が正しいのならば、彼らの系統樹やアイデアは以上のような形で検証されるわけです。つまり、
1:ロンギスクアマと鳥が近縁であるという教授のアイデアが正しいのならば
2:ロンギスクアマのような原始的な特徴を持つ一方で鳥のような特徴を持つ動物がいたはずだ
3:そしてそうした動物の化石が見つかるだろう
ということになるはずなのです。
ところが!!、
そんな化石は見つかっていません。
このように教授たちのアイデアは、
1:アイデアを導き出した方法論/あるいはアルゴリズムが正しいのかどうか分からない
2:そしてアイデア自体が新しい証拠によってサポートされない
という問題を抱えています。
つまるところ、根拠が正しいのかどうか分からないというだけでなく、化石の証拠によってサポートされないのだから実際的にこりゃ怪しい、というわけですね。スタンダードな研究者から支持されないのも無理もない話ではないでしょうか。