Panarthropoda

パンアルスロポーダ

節足動物+カギムシ+クマムシ

 カンブリア紀の海をゆくパンアルスロポーダたち。一番上はアノマロカリス・サロン(Anomalocaris saron)。体の脇にヒレのようなものを持ち、さらに脚を持っていたらしい。こうした構造は、おそらく節足動物が持つ二肢形付属肢に対応するものと思われる。ただ、彼らの体は柔らかく、化石を見ても不明瞭な点が多いため、本当に脚を持っていたのかについて異論がある。中段はオパビニア・レガリス(Opabinia regalis)。こちらは足が見つかっているが、それはカギムシが持つ葉状肢のようなものであった。体の側面にあるヒレが二肢形付属肢に対応すると思われるのはアノマロカリスと同じ。下段のハルキゲニア・スパーサ(Hallucigenia sparsa)はヒレを持たず、足も頼りないふにゃふにゃしたもので、ひどく原始的な動物だった。しかし、比較的丈夫なトゲが等間隔に生えているように、体が体節化するのみならず、堅い組織をすでに持っていたことが分かる。

 

 節足動物、およびそれに類縁が近い動物達:

 この系統の内、主に知られている動物は昆虫やエビ・カニ、サソリ・クモのような節足動物です。節足動物以外で存続しているのは、カギムシとクマムシです。化石動物ではアノマロカリスやオパビニア、ハルキゲニアなどがここに含まれます。

 

 節足動物+カギムシ+クマムシが持つ派生的な特徴:

:キチン質のクチクラで身体を覆われていること(マルグリス&シュヴァルツ 1987を参考)

:節がある脚を持つ(Budd 1993)

:節のある脚がずらずら(反復するように)並ぶ

:脚の末端に爪がある

 しかし、昆虫のような真の節足動物と、そうでないカギムシとの間には大きな違いもあります。例えばカギムシの身体には体節と呼べるものがありません。またカギムシの脚は柔らかくて、あまりはっきりしない細かい節があるだけです。それに脚全体の形も円錐形をしています(下の図を参考のこと)。

このような構造の脚は葉状肢と呼ばれていて、昆虫やエビ・カニの”まさに節足”という脚とはずいぶん違います。

 言い換えると昆虫+甲殻類+多足類+鋏角類はより派生的な特徴を共有しているということ、彼らはおそらく単系統群で真の節足動物と呼べるグループであること、カギムシやクマムシ、アノマロカリス、オパビニア、ハルキゲニアなどは節足動物の姉妹グループであると考えることができます。

 

 

 節足動物+カギムシ+クマムシの系統:  

_____________________クマムシ

   |__________________カギムシ 

      |_______________ハルキゲニア 

      |_______________マイクロディクティオン 

      |_______________ケリグマケラ

      |_______________オパビニア 

         |____________アノマロカリス 

         |____________Arthropoda あるいはEuarthropoda 節足動物(あるいは真節足動物) 

 

備考:文献や研究者によってはアノマロカリスやオパビニアも節足動物として扱われることがあります。そういう場合、昆虫+甲殻類+多足類+鋏角類は節足動物ではなく真節足動物と呼ばれることもあります。

  

 参考文献:

 Budd 1993. A Cambrian gilled lobopod from Greenland. Nature. Vol 364. 19, pp709~711

 Budd 1996. The morphology of Opabinia regalis and the reconstruction of the arthropod stem-group. LETHAIA, pp1~14

 マルグリス&シュヴァルツ 1987 「五つの王国」 日系サイエンス社

 P.ウィルマー 無脊椎動物の進化 蒼樹書房

 Wills, Briggs, Fortey 1994. Disparity as an evolutionary index: a comparsion of Cambrian and Recent arthropods. Paleobiology, 20(2), pp93~130  

 

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