Tetanurae

テタヌーラ

テタヌーラの定義

ケラトサウルスよりも鳥に近いネオテロポーダ

Definition of Tetanurae : All neotheropods more closely related to Neornithes than to Ceratosaurs. ( Padian et al 99, pp72 )

   

 右の映像の中でわらしちゃんが持っているのはアロサウルスの尻尾の骨。かなり後ろの方の骨で、お互いに連結するための突起が前後に長く伸びています。

 テタヌーラに束ねられる動物たちはこの特徴が発達しているので尻尾が比較的”硬い”状態になっています。

 わらしちゃんの背景は、アロサウルスの骨盤とそれぞれ第2尾椎、第14〜16尾椎、そしてより後ろにある尾椎です。いずれも国立科学博物館に所蔵されているもののスケッチ。旧館入り口ホールの右に入れば実物を見れます。

 アロサウルスは獣脚類の中でも比較的鳥に近い動物で、生命の樹を作り上げるとティラノサウルスや鳥とともにひとつの枝を構成します。テタヌーラとは”この枝”につけられた名前ですね。

 テタヌーラとは?:

 テタヌーラ(Tetanurae)という名前には”硬い尻尾”という意味があります。現在、イエール大学の教授であるジャック・ゴーティエが1986年に定義した名前です。(参考:Gauthier 1986 . Memoirs of the California Academy of Sciences Number 8 . Saurischian Monophyly and the Origin of Birds )硬い尻尾を持つので硬尾類という訳があてられたこともあります。

 

 テタヌーラの系統:

 テタヌーラにはメジャーな肉食恐竜がいっぱい含まれています。トルボサウルス、バリオニクス、スピノサウルス、メガロサウルス、エウストレプトスポンディルス、アロサウルスやティラノサウルスなどがそうです。

 もっとも、アロサウルスやティラノサウルスなど、アヴィテロポーダの恐竜以外は、断片的で良く分かりません。例外的に分かっているのはスピノサウルスの仲間ですね。

 

___========トルボサウルス、バリオニクス、スピノサウルス 

   | ?_____メガロサウルス

   | ?_____エウストレプトスポンディルス

   |

   |_______アヴィテロポーダ 

          (アロサウルス、カルカロドントサウルス、

           ティラノサウルス、ディノニクス、鳥など)

 

 テタヌーラとはいったい何か?:

 テタヌーラに限ったことではありませんが、現在の恐竜学における”分類群”の名前とは実のところ分類学=Taxonomy に基づいたものではありません。Phylogenetic Taxonomy という方法論に基づいてつけられた呼び名です。これは、

”系統をいかに正確に表現して、呼び名をつけ、コミニケーションに役立てるか”

という目的のために提案されたもので、系統に名前をつける方法論であると考えればよいでしょう。

 ですからPhylogenetic Taxonomy は分類学ではありません。

 このHpでしばしば指摘しますが、分類とは系統を(漠然とですが)反映したものです(「種の起源」下 岩波文庫 pp170~171 を参考のこと)。逆にいえば分類とは系統を正確に反映した方が望ましいものなのですが、分類階級を使ってそれを完全に行うのは困難です。

 そこで分類階級を放棄して生命の樹にいかに名前をつけるか?、それだけを追求した方法が提案されました。それが Phylogenetic Taxonomy であると理解してください。

 ここで注意してください。テタヌーラというのは生命の樹のある部分を呼ぶ名称です。それは例えば、乞田川というのが多摩川のある支流につけられた名称であるということと同じです。忘れてはいけないのは支流があるから乞田川という名前がつけられた、ということです。乞田川という名前のために川が作られたわけではありません。

 テタヌーラは分類するための分類群である、そう勘違いする人がいますが、これ、おかしいと思いませんか?。実際、それではテタヌーラという名前のために分類が作られたということになります。これじゃあ私達が神様みたいじゃないですか。

 そうではなくて、まず進化の歴史(生命の樹)があって、それにつけられた名前がテタヌーラなのです。ようするに、テタヌーラが分類群であるというのは間違いです。テタヌーラは生命の樹のある部分につけられた名前でしかありません。

 

 テタヌーラの特徴:

 1:しっぽの関節突起という部分が長くのびている

 などが上げられます。テタヌーラではこの突起が前後の骨とかみあって、しっぽが補強されていました。ですから”インターロッキングされたしっぽ”と表現されることもあります。つまり尻尾の骨が前後にかみあって”硬い”わけですね。

 その極端なものがヴェロキラプトルのしっぽです。彼らのしっぽは関節突起などが非常に長く伸びて、まるで1本のしなやかな棒のようになっていました。

 

ヴェロキラプトル

国立科学博物館・新館地下1階

 ヴェロキラプトルはテタヌーラの中でも鳥に非常に近い動物です。

彼らのしっぽは、長い関節突起がからみあって、全体が1本の棒のようになっています。

 

 もちろん、すべてのテタヌーラがそうした特徴を持っているわけではありません。事実、始祖鳥などを抜かすと大部分の鳥類はこの特徴を二次的に失っています。生物の進化において、祖先の持っていた特徴が世代と時間とともに変化するということに注意してください。ですから、このHPで取り上げている”その系統で見られる特徴”を丸暗記することはお勧めできません。なぜなら、生き物の特徴は変化してしまうからです。

 つまり、その系統に属するのに、その系統を象徴するかのような特徴を失った生き物がいる場合もありうるというわけです。テタヌーラがインターロッキングされた尻尾を持っている動物たちだと暗記した人は、鳥はテタヌーラでないと勘違いしてしまうでしょう。

 系統の特徴を丸暗記すればよい、というのは進化を考慮しない考え方ですね。系統を考えるのに進化を仮定していないのはまずいでしょう。

 生物の特徴は系統を知るてがかりにはなりますが、系統を定義することにはあまり使えません。

 

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