オンケルツ歌集――その2(B〜C)(高橋秀寿訳)

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★『誰もどうして起こったのか知らない』

「誰もどうして起こったのか知らない/突然、オンケルツがそこにいた/一夜にして、成功がやってきた/神様はそれを望んではいなかった/手に手を取った暗い諸力で/俺たちはこの国全体を台無しにした/邪悪な人間、邪悪な歌/ベーゼ・オンケルツ・・・

誰もどうして起こったのか知らない/突然、オンケルツがそこにいた/そして俺たちを見たものは誰も/俺たちを忘れることはできない

誰もベーゼ・オンケルツに再会することはできない/ベーゼ・オンケルツを見ることはできない/ベーゼ・オンケルツは災いをもたらす/ベーゼ・オンケルツは死をもたらす/手に手を取った暗い諸力で/俺たちはこの国全体を台無しにした/邪悪な人間、邪悪な歌/ベーゼ・オンケルツ・・・」

※発禁処分になったころの歌。社会からの憎悪とその悪のイメージを自虐的に負っている。

★『醜く、野蛮で、暴力的で』

「俺たちはみんな鉤十字を身につける/スキンヘッドには暴力だけが意味がある/それがおまえたちが聞きたいことなんだろう/俺たちが低脳な暴れ者だってことが

暴力、暴力、暴力/むき出しの暴力、暴力/俺たちは醜く、野蛮で、暴力的だ/俺たちは何にもたじろがない/俺たちは醜く、野蛮で、暴力的だ/俺たちはまったく狂っている

メディアでくり返し言われている/俺たち、暴れ者はナチスに賛成しているって/だけど俺たちは非難されることはない/だっておまえたちのお喋りはウソ臭いのだから

ウソ、みんなウソ、ウソ/みんなウソ、ウソ」

※ネオナチ呼ばわりするメディアへのはじめての批判

★『憎悪』

「やつらはおまえをできるかぎり妨げている/おまえの道を歩むことを/われわれの支配者、政治家は/やつらはおまえを理解しようとしていない

俺は憎い、こんなに憎い/俺は憎い、憎い!

やつらは語るだけ、そして語って/何の成果もない/言葉が多く、行動はない/さらに何のためにも拍手喝采をしない

俺は憎い、こんなに憎い/俺は憎い、憎い!

失業している青少年/今日ではもう普通のことだ/富めるものはますます富み/ほかのすべてのものはどうでもいい

やつらを俺は軽蔑する/俺はやつらをもはや理解することはできない/自由を語り/その力にならない人間どもだ」

※社会に対するすさまじい憎悪が歌われている。

★『俺の中の獣』

「俺はよく、自分が悪の使徒だと思う/俺のやることは痛みと苦悩に満ちているからだ

俺の感覚をつかさどり、俺の心を混乱させるのは俺の中の獣だ/それは俺の中の獣だ、それは俺の中の獣だ/俺の中の獣、俺の中の獣

 異常性は時代のしるし/これは単なる夢なのか、それとも現実なのか

俺の感覚をつかさどり、俺の心を混乱させるのは俺の中の獣だ/それは俺の中の獣だ、それは俺の中の獣だ/俺の中の獣、俺の中の獣

 壁に背を向けては考えられ/生き残れない/天国は英雄のために、地獄は俺のために

俺の感覚をつかさどり、俺の心を混乱させるのは俺の中の獣だ/それは俺の中の獣だ、それは俺の中の獣だ/俺の中の獣、俺の中の獣

※ここではすさまじい破壊衝動が表現されている。

★『どの腕にも女』

「俺は何か特別ものなのだといつも思っていた/だけど今は確信している/思慮分別は俺とは関係のないこと

俺はもっと、ますます多く望んでいる/俺はもっとセックスしたい/限りなく飲んだくれたい/限りなく飲んだくれたい/おまえとセックスしたい

どの腕にも女/雲の上で、そしてますます青く/それはとても素晴らしいことだろう

朝目覚めても、仕事には行きたくない/ただ何でもしてみたい/おまえたちはそれを理解できるかい

俺はもっと、ますます多く望んでいる/俺はもっとセックスしたい/限りなく飲んだくれたい/限りなく飲んだくれたい/おまえとセックスしたい」

※スキンヘッドのもう一つのライフスタイル、セックスと性差別主義がここでは描き出されている。

★『ストリートの法則』

「思っていることを言え/したいことをやれ/面目を失うな/弱みを見せるな/不安を見せるな/敗者になってしまうから

 ストリートの法則は暴力の命令/ストリートの法則はアスファルトの血

 スタジアムでの闘い/ストリートでの闘い/限りなき暴力は/貧困と失業の表現」

※単なる乱痴気騒ぎではなく、暴力に意味が与えられているのが興味深い。逆にいえば暴力行為の自己正当化でもある。

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