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最近読んだ本
2001年−7


夏と花火と私の死体
puzzle
黒猫館の殺人
白馬山荘殺人事件
天国への階段
(乙一)
(恩田陸)
(綾辻行人)
(東野圭吾)
(白川道)
石ノ目
九つの殺人のメルヘン
世にも珍妙な物語集 
QED東照宮の呪
(乙一)
(鯨統一郎)
(清水義範)
(高田崇史)

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(注)【 】内はネタバレ。すでに読んだ方は反転させて読んでくださいね。


QED東照宮の怨」(高田崇史)講談社カッパノベルズ

事件の内容は三十六歌仙絵が盗まれ、持ち主が切り刻まれて殺されるという連続殺人なのですが、小説のほとんどは三十六歌仙絵と東照宮の呪いの謎解きです。

ということで、この謎解きが面白いかどうかが評価の分かれ目なのですが、書かれている説は、最近発表されてマスコミなどで話題になったものばかりなので、特に驚きもないし、新しいアレンジもないので、ちょっと退屈でした。

東照宮の呪については、もっと大胆な説を描いてる小説もあるので、平凡な気がしてしまうのは仕方がないかもしれません。小説なのだから、もっと思いきった嘘を書いてもいいと思いますし、ある程度学説に忠実に描くのなら、もう少し新しい視点が欲しかったところです。


九つの殺人のメルヘン」(鯨統一郎)光文社

9つのグリム童話をもとにしたミステリーの中に、9つのアリバイトリックを並べた連作集。有栖川有栖氏がある小説の中で、アリバイ・トリックを9つのパターンに分類したそうですが、そのすべてのパターンを使って作られています。
 
舞台となるのは渋谷区にある日本酒バー。そこのマスターと常連客2人、週に1度現れる謎の美女が、未解決の事件の謎と解いていくという内容。マスターと常連客の日本酒談義や昔のTVやCM、映画、ヒット曲の話も懐かしいです。

トリックはほとんど有名なミステリーで使われたもので、いくつかはわかりました。
「赤ずきん」は、あの分厚いミステリー【姑獲鳥 の夏】の真相に迫るもの(?)かも(^^) 
「シンデレラ」も懐かしいトリックでした。


世にも珍妙な物語集清水義範講談社

おなじみパスティーシュから人生スケッチまで13編を収録。

お薦めは
「トイレット・シンドローム」
・・・旅先でつい気になるのがトイレのこと。それも海外旅行で長い移動があるとなれば、トイレのある場所が気になる。その結果「バス旅行はスリルとサスペンスに満ちていた。(略) 雄大なアタルクの高原地方をひたすらバスで行きながら、常に、次のトイレはどこだという問題を抱えているのだ。」となってしまう。だれでもちょっとは思い当たる、旅のトイレ騒動記。

「算数の呪い」・・・小学校の算数の文章問題は謎に満ちている。ある問題は「私は12歳です。あるとき、北山、南川、東野の3家族の子供3人づつ合計9人が私の家に集まりました。あともうひとりいたら、私の12歳をいちばん上にして3歳までのすべての年齢がそろうところでした。各家の子供の年齢の合計は・・・(略)」 これに対して問いが「私はどの家の子供ですか?」(笑) 「自分の家に集まってるんだからわかるだろうが〜」というようにおかしな算数問題が紹介されてます。 ここに載っている問題のひっかけは根性悪い(笑)

「一見の価値」
・・・マスコミで話題になることがあると、必ず現場に行って、実際に見てみないと気がすまない男の話。ふつうは近くならちょっと見に行くけど、遠くまで行くことはないですね。でも、縄文遺跡に何十万人と集まるのはすごいパワーだと思う。なにしろ、普段縄文遺跡の話をする人に出会わないのに、あれだけ集まるんだから。

「町営博物館」・・・40億円もかけて博物館を作ったのはいいが、展示するものが何もなく、おまけに予算が25万円しかない町の博物館会議の様子。最後の使い道は・・・?ある意味ハッピーエンド(^^;)

「CM歳時記」・・・
季節感がなくなった現代。いちばん季節感がはっきり出ているのがCMだった。CMで季節を知ることってありますね。



天国への階段(白川道)幻冬社

 柏木圭一の父親は北海道で牧場を経営していたが、大切にしていた牧場を隣の牧場の経営者に騙し取られ、非業の死を遂げた。騙し取った相手は圭一の恋人の父親でもあり、その恋人は資金を提供した政治家と結婚してしまう。絶望して上京した柏木は、ある事件に関わったことから大金を手にし、実業家として成功する。成功した柏木が考えたことは牧場を取り戻し、政治家に復讐することであった。しかし、自身が成功して有名になったことから、過去の事件が暴き出されそうになる。

 それほど期待していなかったのですが、面白かったです(*^_^*)
たしかに美男美女ばかり出てくるし、甘いと言われれば甘い話なんですが、そこがまたいいんですよ。言ってみれば、50年代のハリウッドサスペンスの雰囲気があります。または時代小説。主人公が「社長」と言うより「殿!」って感じの人なので^^

 主人公の柏木は、父親が牧場を騙し取られ、自分も恋人に裏切られて復習を誓ったという人物なのに、妙に人が良いというのか、勘が鈍い。「こんなんで大丈夫か?」と思っていると大丈夫じゃなくなります。でもその悲劇も良いのです。

「もう一度誓う。○○、俺はおまえといっしょに築いたものを決して崩壊させはしない。そしてもうひとつ約束しよう。決しておまえをひとりにはしない。俺はもう一度、いや何度生まれ変わったとしても、おまえとともに歩む」このセリフ、個人的に気に入ってます(*^。^*)


石ノ目(乙一)光文社文庫

「石ノ目」「はじめ」「BLUE」「平面いぬ」の4作が収録されてます。

 なんと言っても「はじめ」が面白い。この作家さんは小学生を描かせると本当に素晴らしいし、怖い。子供の見ている世界というのを思い出させてくれますね。社会の仕組みというものがまだ見えてない不安定な世界を。

 踏み殺したヒヨコをポケットにしまってしまうあたり、そしてその後、夢ではないかと探る場面、リアルでした。こう考えると大人は以外に単純な世界で生きているのかもしれません。複雑にしているのは大人自身の雑念なのかもしれないですね。


白馬山荘殺人事件東野圭吾光文社文庫

大学生の原菜穂子と沢村真琴は、冬休みを白馬のペンション「まざあ・ぐうす」で過ごすことにした。というのも菜穂子の兄の公一がちょうど1年前、この「まざあ・ぐうす」で自殺したからであった。兄の死に疑問を持つ菜穂子は友人を誘って同じペンションに滞在し、真実を探ろうとしていた。ところが滞在中に新たな殺人事件が起こる。

 雪の山荘ものというより、密室と暗号、特に暗号解読がメインです。暗号解読ものって苦手なんですよね。だいたい読んでて解けるはずがない。資料も必要だし、たくさんのパターンを試さなくてはならない。「勝手にやってね」という感じで読んでしまいました。密室の方もアンフェアだと思うな。本格ではなく、ドラマ性に重点を置いた作品でした。

「誰が殺したコックロビン」で何を思い出すか? 
『僧正殺人事件』『そして誰もいなくなった』が定番でしょうね。
私は一番はやっぱり『僧正』です。でも『パタリロ』を思い出したあなた!お仲間です(^^)


黒猫館の殺人(綾辻行人)講談社ノベルズ

推理作家の鹿谷門実のもとに、記憶を失った老人からの依頼が舞い込んだ。唯一の手掛かりは老人が大切に持っていた鮎田冬馬手記で、その手記には、黒猫館という不思議な館で起こった殺人事件の記録が書かれていた。

 中村清司設計の館シリーズ第6弾です。著者の言葉にもあるように、今回は思いっきり変化球ですね。6作目だから出来る内容でしょう。手掛かりがすべて公開されてるから、注意深く読めば球すじくらいは読めるかもしれないですよ。手記と現在の調査の進行状況とが交互に出て来ますが、この仕掛けに騙されるんですよね。

ネタバレ【特にプロローグは引っかけ。この先入観が他の記述を誤解する元になっている訳です。でも北海道というお誂え向きの場所があってよかったよね。雄大な自然で納得できるるから。私が最初に疑問を持ったのは「訛りで苦労する」というあたり。北海道で訛りで苦労する事はあまりないでしょう。被害者のバックを調べて本籍地と身長がわかること疑問を持つところですよね、でも、白と黒に気付いた人はどのくらいいるのかな?



夏と花火と私の死体(乙一)集英社

『夏と花火と私の死体』『優子』の2作品が納められてます。

『夏と花火と私の死体』
 夏休みのある日、9歳の“私”は同級生の弥生に木から突き落とされて死んだ。弥生とその兄の健は、“私”の死体を隠すことにした。最初は使っていない水路に隠したが、不自然な足跡から発見されそうになる。そこでさらに死体を移動させる事にした・・・。

 死体移動は古典的なパターンで、いろいろな作品がありますが、子供が主人公というのはなかったかもしれないですね。絶対に隠し通さなければならない秘密を持ってしまった人間の、極限の心理というだけで恐ろしいものですが、子供の場合は社会的視野の狭さがあるから大人以上に追い詰められてしまう。また行動半径も狭いので、隠し場所も限られる。その分リアルな恐怖感が迫ってきます。
と言っても全体の雰囲気は淡々としています。特に“私”を含めた子供の視点は冷めきってます。微笑みながら言う「五月ちゃん、死んでるじゃないか」は怖いです。

 最後に気になるのが結末ですが、そこにもう一つのミステリーが隠されているというのがまた怖いかも。

『優子』
 清音は父親の友人である鳥越家にお手伝いとして住み込むことになった。鳥越家は主人の政義とその妻の優子の二人だけの家族であった。夫人の優子は病気で部屋から1歩も出ずに生活していたので、清音はまだその姿を見たことはなかった。優子のことが気になった清音は、政義の留守に思いきって部屋に入ってみることにした。そこで清音が見たものは予想通りのものだった。

 結末が一捻りしてありますが、正統派の因縁話ですね。こちらの人物はけっこう感情的。大人は感情的に描かれているんですね。


ネタバレ【でもちょっとドリフのコント思い出してしまった。石垣のシーンもそうだけど、特に押入れに隠していた時の母親とのやり取り。母親がいかりやさんに思えてた。母親は本当に気付いていないのかな?



puzzle(恩田陸)祥伝社

無人島となった廃墟で3人の男が死んでいた。3人はそれぞれ離れた場所で、一人は餓死、一人は墜落死、一人は感電死していたのだったが、ほぼ同時に死んだと思われた。3人の共通点ははそれぞれにコピーした奇妙な記事を持っていたことだけなのだが。

いきなり「さまよえるオランダ人」の解説が書いたあったりするので、かなり期待してしまいましたが、あくまで内容は「パズル」でした。でも無人島に上陸した2人の検事の推理は面白かったです。ちょっとした時間つぶしにはちょうどいい作品ですね。

ネタバレ【でも、コピー記事の謎が「名前が入ってる」だけというのは弱い。もう少し捻って欲しかったですね。数字を合計したら自分の名前が出てきたというのもこじつけのような・・・。 世の中には数字がたくさん出ている文章は数限りなくあるはず。この人は日夜計算で疲れてししまい、それでこんな所に来たんだろうか??(笑)



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