ゼロから始める かんたんメンテ 原付編

駆動系チューン

予備知識:スクーターが走るという事は?

 駆動系のセッティングの前にまずはスクーターが走る段取りを文章にしてみましたのでご一読ください。写真撮影の為にクランクケースカバーを開けたままエンジンを回していますが、危ないので良い子は真似しないで下さい。

エンジン始動〜アイドリング

アイドリング時

 エンジンが回転し、クランクシャフトを回します。クランクシャフトと繋がっているドライブフェイス(前側プーリー)も回転します。 さらに、Vベルトで動力が伝わりドリブンフェイス(後ろ側のプーリー)も回ります。ドリブンフェイスと繋がっているクラッチインナー(穴から見えるのがそうです)も写真では判りづらいですが回っています。クラッチインナーはプレートと3枚のクラッチシューで構成されており、クラッチスプリングの力でシューは閉じています。この時点ではクラッチが繋がっていないので動力はそこで途切れ、アウター(指で触っているやつ)は回転していません。

クラッチ裏側

クラッチを外して裏側から見たところです。3枚のクラッチシューはスプリングの力によって閉じています。シューとアウタとーの間に隙間があるのが判るでしょうか。これがクラッチが切れている状態です。遠心力でシューが外側に開いてくるとアウターと密着します。

クラッチイン〜発進時

発進時

 アクセルを開けるとエンジンの回転数が上がります。エンジンの回転数が上がり、クラッチの回転が速くなってくると遠心力でクラッチシューが開き始めます。シューを閉じていたスプリングの力が遠心力に負けた時、シューは完全に開きクラッチアウターと密着します。動力はクラッチアウターからギヤを経てタイヤへと伝わり、マシンが動き出します。

変速の仕組み〜Vベルト無段変速のドライブ側

 走り出したばかりのスクーターはドライブフェイス側の径が小さく、ドリブン側が大きい「ローギア」の状態です。ムーバブルドライブフェイスとランププレートの間にはウェイトローラーがあり、走行中は遠心力によって外へ飛び出そうとしています。ウェイトローラーが外へ行こうとする力でドライブ側の2枚のフェイスの隙間が狭まり、Vベルトが外周へと押し広げられます。

変速の仕組み〜Vベルト無段変速のドリブン側

 一方ドリブン側では、クラッチセンタースプリングの力により、2枚のフェイスは密着しています。Vベルトは外周に位置しています。ドライブ側の径が広がってくるとベルトの引っ張り合いになります。回転数が上がりウェイトローラーに遠心力がついてくるとドライブ側の径を広げようとする力が増し、ドリブン側フェイス2枚を密着させようとするセンタースプリングの力を上回ります。すると、ドリブン側ではフェイス間に隙間が生じ、Vベルトは徐々に内周へと落ち込んでいきます。

全開時

全開時

 全開走行時はセンタースプリングの力は完全に押さえられ、ドライブフェイス側の径が大きくドリブン側が小さい「ハイギア」の状態です。発進時の写真とベルトを見比べてください。しかし、アクセルを離しエンジン回転数が落ちてくるとウェイトローラーに勢いがなくなるのでセンタースプリングの力でドリブン側のフェイスが再び密着しローギア状態に戻ると言うわけです。

パーツの持つ意味

クラッチスプリング

 クラッチミートのタイミングを決定するパーツです。スプリングの力が強くなればミートのタイミングを遅く出来ますが、あまり強くしすぎるとミートした時にシューとアウターの密着度が足りず、クラッチが滑ったりします。私見ですがエンジンパワーがノーマルのままの場合はむやみやたらとスプリングの力を上げないほうが良いと思います。

クラッチセンタースプリング

 変速のタイミングを決定するパーツです。スプリングのパワーを上げると変速開始までの時間が長く(変速が始まるのが遅く)なります。また、ローギアに戻ろうとする力が強くなるので、コーナーなどでの立ち上がりが良くなります。これも極端に強くするといつまでたっても変速しない(ずっとローギアのまま走る)という事態になります。

ウェイトローラー

 変速のタイミングを決定するパーツです。ローラーの重量を重くすると変速開始のタイミングが早くなり、軽くすると遅くなります。ウェイトローラーの重量が重い=発生する遠心力が強い=ドライブ側の径を広げる力が強くなるので、センタースプリングの力を上回るタイミングが早くなるということです。よく「重くすると加速アップ・軽くすると最高速アップ」などという記述を見かけますが、そんな単純な話ではなく駆動系をトータルで考える必要があります。

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