‘10 06月号
 #59 女神の嫉妬 


 立ち上がった大統領。
そして握った鉄球を見つめて何かを思うジャイロ。
ジャイロと大統領の対決の場へ急ぐジョニィ。
「……半分だけ…年をとっている…」「だが…立ち上がった……」
「ヴァレンタイン……」
「ヴァレンタイン……ジャイロと再び…もう一撃…」「もう一撃だけ……」
「激突する…」

 立ち上がった大統領は再び『スキ間』の中に入り込む。そして歩を進める。
忘れていた…ジャイロの腹部の銃痕が移動を始める。
「その傷…心臓へ向かってるぞ…」
「傷が心臓につく前にルーシーから出てる『光のヒビ』の中へ入れるといい…フフッ」
「『悪いもの』はどっかに吹っ飛んで地球のどこかの誰かがその不幸をおっかぶってくれる」

「ジョニィ!『LESSON5』だ…そう…確か」
「次は『LESSON5』だ」
 ビックリするジョニィ。
「……え?何?」
「オレはこのSBRレースでいつも最短の近道を試みたが『一番の近道は遠回りだった』」
「『遠回りこそが俺の最短の道だった』」
「この大陸を渡ってくる間ずっとそうだった。そしておまえがいたからその道を渡って来れた」
 突然の話しのようでしばし呆けるジョニィ。
「何…?」『急に何をしゃべっているんだ?なぜ今頃そんな事を言う?』

 ジャイロがヴァルキリーを疾駆させる。再び鐙回術(回転+馬のパワー)を始動させる。
大統領はジャンプ一番!空中からジャイロを襲う!!
光り輝く空間の『スキ間』に居る大統領にジャイロの投擲した鉄球が向かう。
しかし『スキ間』からD4Cが身を乗り出しジャイロに手刀を繰り出している。
『スキ間』に阻まれた鉄球だが、そこから先程も顕れた小人が断絶されたはずの空間に身を侵入させる。
そしてその手を大統領の顔面へ近づけてくる。
「これはスタンドなのか…『何というエネルギーだ…』」
「恐ろしい現象だ…鉄球の無限回転エネルギー!!」
「これは自然界の真理なのか……それとも忘れられた人類の智慧なのか…」
「この世に異次元の壁を超える『技術』が存在するとはな…」
「だがジャイロ、ここが限界だ!」

おまえ自身も自分ですでにさっき気付いていたはずだ…
この『鉄球』を自分で『手で触れた』時


 D4Cの攻撃がジャイロを貫通したようにみえる。
しかしそのままヴァルキリーは大統領の横を走り抜ける。
 大統領の残り右半分も老化している。
「…恐ろしい……」しかし膝まづいていた大統領が立ち上がる。「恐ろしいな……」
「だが…すでに女神を味方につけたこのヴァレンタインだったようだ」
「やはり『一手』…上を行ったのは……」
 大統領の老化に伴ってD4Cのヴィジョンも砕けるように変化していく。
「そのルーシーから始まる異次元への壁のヒビは…」
「ここにある草や木や大地や海岸さえも『引き寄せ』…この地球の他のどこかの土地へ『不幸な』ものだけを飛ばしている」
「…おまえはそのルーシーの『光のヒビ』でさっきわたしの隠れる方向を読み『D4C』の攻撃の位置を知ったが」
「おまえがさっき、わたしに向けて投球したその『鉄球』は……」
「ちょうどその光のヒビのライン上を通過した」

「正直に告白しよう、それは偶然だった……計算でここまでは読めない」
「おまえの投げた鉄球が空中でルーシーの光のライン上を通過しなければ、その完全なる回転のエネルギーに『D4C』は負けていたのだからな……」
「やはり女神は…」「存在した…わたしに味方してくれる『女神』がな」
 一手の意味が解説される。計算ではない、偶然、運命、混沌…。
「光のヒビの上を通過した鉄球はD4Cに激突する直前」
「その一部を少しだけけずって、この地球のどこかへ飛ばした…」
「馬の力を利用した『回転』は完全なる『回転』ではなくなったッ!」
「鉄球は光のヒビに一部をけずり取られた『楕円』だッ!」

『真球』ではなく『楕円球』の回転になって激突したッ!


「『楕円球』だッ!不完全ッ!おまえは『楕円球』を投げたのだ」
「ジャイロ……おまえは…(ルーシーを救うために)ルーシーを『馬に乗せてたがゆえに』このわたしとD4Cを敗北ギリギリまで追いつめたがルーシーを『馬に乗せてたがゆえに』完全に敗北したのだ」
 事態を掴めないジョニィ…いや、無意識的に把握するのを拒否しているのだろう。
「何だ?何…」「いったい……何なんだ?…」
 しかしジャイロの胸には大きな傷が刻まれていた……。
帰還して来る鉄球を右手で受け止めようとするジャイロ。
「おまえは鉄球を手に受けた時に自分でもそれに気付いていたのだがな」「勝った」
「その回転がもし『真球』だったのなら…D4Cの『次元の壁』は…おそらくおまえの『鉄球』に完璧に破壊されていたのだろう」
 鉄球を受け止める直前、仰向けに馬から落ちて倒れるジャイロ。
波がその身体にかかる。
「何?……何なんだ?」
 ジョニィの全身が震えだし…呼吸も荒くなる。
そして走馬灯の如くジャイロとの日々が頭を駆けていく。

黄金長方形の軌跡だぜ…そこには
無限に続く『回転』があるはずだ…

 サンドマン(スタンド:イン・ア・サイレント・ウェイ)との死闘で明かされた回転の秘密

なあ…ジャイロ
さっき君は女性を自分の『鞍の上』には乗せないって言ったけど…
理由は何だ?
なぜ女の子を馬に乗せないんだ?……迷信か?


こうして眺めてみると……おまえさんの馬の上にはまったく見えね〜ようだが
オレの鞍の上にはすでに『勝利の女神』が乗っている
他の女の子なんか乗せたりしてみろ!『女神』が嫉妬するだろう…
勝利に見放されるぜ

そーゆーものなのか?
じゃ、ぼくはこのルーシーが女神かな

おまえがそー思うならそれでいいんだぜ…理論的だ
お…見ろ!河の水がひいたようだな。あそこから渡るか

 ブラックモア(スタンド:キャッチ・ア・レインボウ)の追撃をかわしてルーシーとカンザス・シティに戻る時のエピソード

結局のところだ……
結局のところネットにはじかれたテニスボールはどっち側に落ちるのか誰にもわからない
そんな時こそ…居て欲しいのが『女神』だ…
そうすりゃあボールがどっち側へ落ちたとしても……
納得がいくからな

 ウェカピポ(護衛官式鉄球術の使い手)との因縁で語られたボールの行方の逸話

「そして次はおまえだ…」「ジョニィ・ジョースター」
 ダメージを受けながらもジョニィの方へ歩みを進める大統領。
地面に倒れたジャイロに徐々に激しく波が被ってきている。
「ハアッハアッハアーハアーハアー」「ハアッ」
「ハアーッ」「ハアーーッ」
「ハアーッ!!」

 残された鉄球を固く握りしめるジョニィ。
「うあああああ…あ」「ああっあああ」
うあああああああ……あああ……ああ


今週のめい言

「一番の近道は遠回りだった」

LESSON5――「遠回りすることこそ近道だった。日本の諺に「急がば回れ」というものがあるが、J&Jの旅路を振り返るとこの言葉は正しいのかもしれません。『遺体』探索に巻き込まなければもっと早くゴールを駆け抜けられたはず……果たしてそうでしょうか。試練は人を強くする。幾つも重なった障害を乗り越えることによるJ&Jは強くなり、その強さは乗り越えられないはずだったレースの壁を跳び越える結果をもたらしました。例えばマキナック海峡のウェカピポとの闘いは遠回りなれども「原住民のルート」にJ&Jを導き、『遺体』争奪でもたらされた能力はリタイア必至だったクレパス越えを可能にした。

○そして「LESSON5」をジョニィに伝えたジャイロ、この訓示は果たして活かされるのでしょうか?「遠回り」……大統領を倒すためにはまずD4Cを攻撃せよ、そんな単純な解釈ではないでしょう。

○ジョニィをも始末すべく、ジャイロから受けたダメージ(老化)を残しつつも歩みを進める大統領。平行世界に行くとその間に逃げられると考えているのか、肉体の交換やD4Cの禅譲はしないようです。まぁ、ジョニィは鐙回術ができないと考えているので『スキ間』に入っていれば大丈夫と考えているのかもしれませんが。

○次元の壁、空間の溝、光の塹壕――凶事を関係ない人物に 跳ね飛ばす『スキ間』を貫通して大統領にダメージを与えた鐙回術であったが、その貫通したエネルギーは人型を為しスタンドのようにも見える。その効果が単純な打撃痕ではなく「老化」という特殊さもスタンド能力っぽい。もしスタンド能力だとしたら『遺体の右目』からもたらされたスタンド能力と合わせて2種になるが気にすることはない。原則は1人一能力だとしても、能力を複数持っているスタンド使いは少なくない数いる。

○ジャイロの敗因は何か?鐙回術は完全な体勢(フォーム)で行われたが、鉄球が『スキ間』のとある角度を通過してしまった結果、鉄球の一面を削ってしまい『真球』から『楕円球』になってしまったことです。鉄球の中心からあらゆる方向の半径が等しかったのに、一面を削られた鉄球には不等の箇所が出来てしまったのです。もちろん重心も僅かかもしれませんが狂ったでしょう。しかし、その「僅か」が勝負の分かれ目となってしまいました

○もし…完全版鐙回術が『真球の鉄球』で命中したのならば、大統領は老化どころか白骨になって吹き飛んでいたかもしれません。

○そういえば、老化した大統領に呼応してD4Cのデザインが変わっています。なんか丸顔になっているなぁ〜。これはD4Cが禅譲されるとスタンドのデザインが元に戻るかは興味あります。

○『遺体』のパワーを手に入れて『スキ間』に居て無敵に近くなった大統領に対して絶望感を抱いていたジョニィだが、ジャイロが精神的支柱となることで勇気を振り絞って大統領に立ち向かっていましたが、ジャイロが倒されたことで精神は崩壊寸前です。敵前逃亡するのか?それともジャイロの意志を継ぎ再び大統領に立ち向かうのか?例えこの場から逃げられたとしても大統領は追手を差し向けるだろうし、1戦や2選ほど勝ったとしてもいつかは負けるだろうし勝利自体に意味がないです。

○ジョニィが大統領に立ち向かうとしたら、何がジョニィを立ち直らせるのか?ジョニィが握りしめた鉄球がジャイロと共に過ごした記憶を思い出させて欲しいものです。ジャイロがこのレースに参加したのはマルコの理不尽な境遇をブッ壊したかったからです。ルーシーも同様であり、無理矢理に『遺体』にさせられしかも命を閉じさせられようとされています。

○ジョニィは『遺体』を手に入れることで自分の「マイナスの人生」から脱出したいと願っている。しかしジョニィは『遺体』を手放すことでジャイロを救ったこともある。『遺体』だけがマイナスを失くす方法ではないことをジョニィは気付いているはずです。『遺体』収拾が不可能になったという絶望感を「ジャイロの意志を継ぐ」という信念で乗り越えて欲しいです。

○もしジョニィが大統領に立ち向かうことになったら、どんな攻撃法が有効なのか?やはり弾爪と鉄球のコラボ攻撃法となるのでしょうか?直接的に大統領を狙うのではなく、ビリヤードのように鉄球と弾爪を繋いでブチ当てる…さてどうなることでしょうか。

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