{さあああー――ッ、ジャイロ・ツェペリ余裕の走りッ!}
{なめらかにGOAAA〜〜〜〜L!!それに続いてジョニィ・ジョースター!!}
先月ラストの嵐の中の激闘から一転、カンザス・シティのゴールを駆け抜けるジャイロ&ジョニィ。
{遅れて後方にモンゴルのドット・ハーンがカンザス・シティに入ってきたぁ}
{走行距離約1250qのこの4th.STAGE昨晩に飛来した嵐のおかげで大変な事が起こっています!}
{スタート当初1918名いた参加選手のうち1450名以上がリタイヤの様相を呈しております…とすると残りの選手数の予想はわずか4百数十名以下、当初の4分の1まで減ってしまっている!!}
凄まじい情報がもたされる!1450名以上がリタイヤッ!!!
{大陸横断も半ばにしてなんと過酷なステージ!!なんと予想不可能な現実ッ!}
{しかしご覧ください!それとは逆にゴール前の群衆の数は初めの何十倍にも膨れ上がっていますッ!!飛び交う『賭け』の倍率(オッズ)もものすごい金額が動いている模様ッ!}
「ジョニィッ!オレらは何着だ?オレの順位は何番目なんだ!?」
「君たちわたしの妻を見なかったか?昨夜、疲れたから先に寝るといってひとりでホテルに帰ったきりわたしもこの準備に忙しかったから今朝はまだ会ってないんだが……」
ジャイロとスティール、それぞれの探しもの。そして探しものをしているのがもう1人…
「屋上の『鳩小屋』にいたヤツが問題なのだ…マウンテン・ティムなぞ取るに足らない!もうひとりの『何者』かだ……」
「あの『遺体』の各部位はいずれ我々の『総取り』となるが……重大なのは……いいかッ!」
「許されないのは『裏切り者』だ!」
「この群集の中のどこかにいてこのわたしを見ているのか!我々の威信の乱れは将来の力の弱さとなるッ!!必ずッ!!絶対に見つけ出してそいつを処刑しなければならないッ!!」
その時、ルーシーがスティールの元に駆け寄った。ルーシーは無事である。
「だから何着なんだよォォ、オレらはよォ!?くそッ!あれを見ろッ!『ホット・パンツ』とか『サンドマン』がすでにあそこに入って来ているぞッ!」
「ポコロコもいるぞッ!補給所で水を飲んでやがるッ!」
{さああ〜〜〜〜!ここにおいて4th.STAGEの着順が続々と確定して来ておりますッ!掲示板をご覧くださいッ!!}
貼り出された順位表リストを目の前にして悔しそうな顔をするジャイロ。
「やっぱりかよ……またもやだ…。オレはまた勝てなかった……」
「くり返すようだが勝ったのは君だ……。北へ遠まわりしたし嵐を乗り越えたんだ。この現在、それ以上何を望む?」
「くそ……あの1位の野郎…何者ンだ?『ヒガシカタ』?なんか前に下っ端の方にいたヤツだな」
「あそこにいるよ…あの男だ。日本人だ。日本人は礼儀正しいからそれが逆に不気味だ」
ジャイロの質問に答えるジョニィ。バケツを持って給水場に向かう1人の男を指す。
「しかも彼はサムライというわけでもないらしい。背中にしょってる武器の種類が違う」
魚鱗型のチェーンメイルのような物を纏っている男。
「おっと…失礼いたした。貴方が先ですな…水を飲むのに着順はまったく関係ないですからのォ……ちなみに拙者は1位でしたけど」
「……本当まったく水を飲む順番には関係ない。貴方は何着?」
タッチの差で給水にたどり着いたホット・パンツに話し掛けるノリスケ。回りくどい言い方ですなァ(笑)。
「オホンッ、どうぞお先に…」
ここでヒガシガタ・ノリスケ(この名前が第四部主人公・東方仗助を意識しているのは言うまでもない)のヴィジュアルが明らかになる。
ジジィィィィ!!!
なんと老体…でも嵐の4th.STAGEを1位なのである。
「かたじけない……お若い人。ところで新聞の記事には興味あるかの?読みたくない?どう見てみない?」
答えを聞かずガサガサと記事を取り出す。
「ここ読んでみて……ここ、赤い線で囲んであるとこ」
記事のタイトルは『世界ビックリ大探検 ヘソが2つある男』といって2つあるヘソを見せている記事である。
「イタリアの新聞記者に取材されてのォ…それ拙者。新聞にのったのよん。見る?本物!興味ある?指入れてみたい?」
さすがにしつこいと思ったのかホット・パンツも拒否する。
「近寄るなジジイ…桶に水くんだんなら早くどきなよ。さっさと馬に飲ませて休ませなッ!」
「そりゃ正解。貴方が男のヘソに指なんか入れたら下品だからの」
「!?」
真意を測りかねるセリフを言うノリスケ翁。チョコンとのせた鼻めがねもミステリアス、油断できない人物であろう。
「おいジョニィ!あれを見ろォォ……」「くそォォ〜〜〜」
「やはりだぜ…言ったとおりだ…。あの時オレが…」
ジャイロの視線の先には今ゴールを通過したDioの姿があった。
{おおー――っとッ!ここで入場して来たのはディエゴ・ブランドーですッ!『帝王Dio』がゴールに入って来ましたッ!}
{しかし相当、嵐によるダメージを受けてる模様ですッ!着順はなんと54着!!54着で確定ッ!!獲得ポイントは当然このステージはありません!}
Dio、愛馬共にガックリとうなだれている。
「リタイヤなんかじゃあ全然なかったな、ジョニィ」
「嫌な野郎だぜ…ああゆーのが一番嫌なタイプだ…。あいつは本当にムカつくぜ」
私が予感したとおり、Dioとの決着はまだついていない。近くはないがまた戦闘が起きるのは必須である。
ドドドドドドドドドドドド…
「ジャイロ!何だ!?一体何が起こっている!?ぼくの背中がどうしたんだ!!」
時間は巻き戻り、ジョニィに『遺体の脊髄』が入り込んだ直後である。
「この『遺体』はおめーを選んだって事だな…」
「見ろ…どこかの地形だぞ。文字もあらわれてなんか読めるぞ。地面の中にある砂鉄がおまえに引き寄せられて形を作っていると考えるべきか!」
「おっとこの形は知ってる!『湖』だ……五大湖!こりゃミシガン湖だ」
5th.&6th.STAGE
『イリノイ・スカイライン』 『ミシガン・レイクライン』
5th.STAGE カンザス・シティ ―→ シカゴ ミシガン湖畔
(走行距離 約780q) (推定日数 約14日) (参加者数 441人)
6th.STAGE シカゴ ミシガン湖 ―→ マッキーノ・シティ ヒューロン湖
(走行距離 約690q) (推定日数 約12日) |
「しかも何だこりゃあ」「示されている印はひとつじゃあねえぞ」
「2ヶ所じゃあねーか!?『印』は何か『2つ』に見えるぞ。こりゃ『2つ』だ。次の遺体は『1ヶ所近く』に『2つ』寄りそってあるんだ!文字も2つ」
「『右腕』と『両耳』!」
「次のゴール付近!ミシガン湖畔に『2部位』あるんだ」
「そ……そうじゃなあい!あわてるなジャイロ…良く見ろ…これがもし次の地図でその位置というなら、ぼくの体のすぐ下を見て…」
「3か所だッ!!」
「印は『3つ』あるッ!ヒューロン湖との境目ッ!第6ステージのゴールと一致するぞッ」
地面に描かれる五大湖の地図。印と部位が書かれている。
「『両脚』ッ!!」「おいおいおいおいおい」
「オメーの『脊椎』これ1部位で!!あともう3か所の部位がそろうって事かッ!!」
『Dexter Brachium』 『DUO Auris』 『DUO Pespedis』。それぞれのラテン語はそのままの意味である。
「それは一体何?何なの…?大統領も探している…今…『遺体』が動いてあなたの背中に入っていくのが見えた」
まだ全てを把握しているわけではないルーシー。
「逆にぼくらの方が君に聞きたい事がたくさんある。君が大統領のところで何をしていたのか?どんな状況になっているのか情報が知りたい」
ジョニィ…そしてジャイロも訊ねる。
「つまりあんたは知ってるのか?……大統領が集めてるこの『遺体』が一体何者の遺体なのか?」
「……それはあたしも知らない…。そこまでは知りません」
「大統領たちはとても『古い地図』を持っていてそれを元にこのレースを行い探してる…夫はそれに利用されている」
「大統領は『スタンド使い』か……?つまり何か『能力』を持っているのか?」
「知らない。本当に何も知らない…ごめんなさい」
「でも『遺体』というなら大統領は『心臓』を持っている。あれは……そう!『心臓』の遺体が大統領の胸に入っていたわ…!!そえが全ての始まり……」
「……『心臓』………」
新たな情報に目を細めるジョニィ。
「じゃあ〜〜〜間違いなく『スタンド使い』だ。おたくの国の最高司令官は…」
「スタンドには『力(パワー)』があるんだ……。君は大統領の能力をほんの少しも見てはいないのか?どんな『力』の能力なのか?」
「ええ…そんな事、全然知らない。何も知りたくなんかなかった!これからも見たくない!ゾッとする…」
やはりルーシーと接触できたのは大きい。黒幕が「ファニー・ヴァレンタイン大統領」というだけではなく、『心臓』を所有しているスタンド使いということが解った。
「そこの『追跡者』はおたくをここまで追って来てるが…あんたの存在は大統領側にバレてはいないのか?つまりオレらの所にあんたが『脊椎』を持って来たって事を……?」
「……ブラックモアはまだこの大草原地帯から連絡していないはず。電柱の電話線がなぜか切断したから…」
何故か…?そう、正体不明の聖人の起こす『奇跡』である。
「いいえ…!!もし知られてたら終わりよ…。大統領に知られてたらあたしの夫は今この時点ですでに処刑されている!」
「でも、それはもう時間の問題……うううう…。いずれあたしはつきとめられるわ!」
「なるほど…そういう事か。ところで最後にひとつ聞くがその馬はあんたのか?」
「…いえ、政府の馬…。……そういえば出る時見られた!!」
あの小太りの役員のことである。
「じゃあ、こっち来な」
ルーシーの奥襟をムンズと掴み、引っ張り、ジョニィの馬に強引に移動させる。
「オレの馬(ヴァルキリー)には女はのせねえって決めてるから、ジョニィのとこへ2人で乗れ!これであんたがここへ来たって『足跡』は消える!」
そしてルーシーの乗ってきた馬を放逐する。
「いずれ大統領側はこの場所をつきとめてくる。だが、あの『馬』は『ブラックモアがカンザスからここまで乗ってきた』……」
「馬の足跡は一方向!あれを見りゃあそう思う…」
「『ブラックモア』が空を歩けると知ってたとしてもあの馬に乗って来たのはブラックモアだ。つまりあんたはここに来ていない!」
「あんたはカンザス・シティから一歩も外には出ていない。いいな!」
ジャイロの画策。
「ちょこっと部屋から買物行って帰ってそして朝まで寝た…それだけだ」「馬に乗るのを見られたとしてもそういう事だ」
「……」「つまりあたしに『あそこへ戻れ』…と言うの?い…嫌です」
再びルーシーの眼から涙がこぼれる。
「カンザスへは戻りませんッ!あたしがあなた方にお願いしているのはあたしの『夫』を大統領から救い出してやつらの来ないどこか遠くの国へ逃がして欲しいという事ッ!そのためにあたしはここまで来たッ!!」
「それは出来ない!断るッ!」「オレたちは今このレースを抜けるワケにはいかないんだからな!」
ハッキリと断るジャイロ。
「オタクが助かる道は……いいか……もはやひとつしかない。このまま何食わぬ顔でカンザスへ戻り…」
「普段どおりこのレースといっしょに自分の夫に付き添い……そしてだ」
「大統領に近づき…その『心臓部』をヤツから盗み取れッ!おまえがそれをやるんだ…ミセス・スティール」
耳を疑うジョニィとルーシー。
「だから盗めと言ったんだ…あんたがやるんだよ」
「ヤツらの所へ戻って逆に奪い取れ!助かりたきゃあ自分でそれをやるしかない」
「ジャイロ!何をさせようとしているんだッ!?彼女はまだ14なんだぞッ!」
「うっせェーぞッ!てめえーは黙ってろォオー――ッ」
ルーシーに話し掛けるジャイロ。
「おまえさん、自分たちを国外へ逃がせって言ったな?仮に逃げたあとどうするつもりだ?北極の穴ぐらで夫と仲よくオーロラ見ながらいつまでも暮らすのか?知り合いもいねえどこかの砂漠で追っ手におびえながら毎日朝日を拝むというのか?」
「誓いを立てて結婚したなら夫のために守り続けろォー――――ッ!!」
正当性があるがあまりにも困難な仕事に泣きじゃくるルーシー。
「それは大したもんだぜ、だから……あんたにこれをやるよ」
右目に手を伸ばすジャイロ……まさか!?
ルーシーに投げて渡したのはやはり『遺体の右目』!!『右目』に曳かれてジョニィの左腕から『左腕』がにじり出る。
「その『右目』がありゃあ……『遺体』は『遺体』を引きつける…。スタンド能力のないあんたでも近づけば『心臓部』をヤツから奪い取れるだろう」
「オレのスキャンの能力はなくなるがな。だが鉄球の『技術』はある」
「くそッ!」「君よりもぼくの方が『遺体』が欲しいッ!!だからおもいっきり君をののしってやれないぼくも存在する…」
正直だなぁ、ジョニィ(笑)。
「だが可能性が低すぎるッ!君が彼女に行けと言っているのは『敵』だらけのド真ん中!!…もし失敗したら…大変な事になる」
「その時、誰が彼女を救出できるというんだ?」
「ヒドイ事を考えるヤツだ!ヒドすぎるぞッ!ジャイロ・ツェペリッ!」
ジョニィの言い分にも一理ある。
「やるわ…あたし…」「やり…ます」
「やります…」「それ…しか…ないなら。言うとおり確かに…」
再び愛しい顔を両手に埋め、滂沱の涙を流す。
草原に描かれた地図を足で消し、愛馬にまたがるジャイロ。
「ジョニィ!彼女を泣きやます必要はないが…すぐにカンザスに出発だ。次の目的地はオレらしか知らねえ!」
『気に入ったぜミセル・ルーシー・スティール…。スティール氏とあんたら2人の幸運を祈る…。もっともオレの馬には決して乗せたりしねえがな』
「『目玉』あとで返せ!落っことしてなくすなよ」
結局返すのかいッ!
時間は再び4th.STAGEゴール直後に戻る。
喧騒が遠い裏路地に座り込んでいるDio。彼に近づく男がいる。
「『話がある』……とは一体何かね?えーと…君の本名は…ディエゴ・ブランドー…だったかな」
「ああ…単刀直入に行こう。オレは『左眼球部』の遺体を持っている……。これをあんたらにやるよ」
Dioに近づいた男は大統領の側近であった。
「おっと!あわてるな。オレは大統領と直接話をしたいと頼んだはずだぞ」
「わかったよ…わかった!待て!行くな!戻って来てくれないか!」
「あんたと話すよ。オレは君らの大統領と取り引きがしたい」
さて、話の内容とはなんだろうか?
「我がシルバー・バレット(馬)の筋肉にダメージがある。リタイヤはしないが次のステージでトップグループにからむのは不可能になった。馬のために5th.と6th.はゆっくり休みながら進みたい」
「…とはいえだ…」
「ジャイロ・ツェペリとジョニィ・ジョースターは次の『遺体』の場所を間違いなくつかんで知っている…。どんな『遺体部位』かオレは知らないが…とにかくあの2人から奪い取りたい。君らもだろ?お互い協力し合わないか?」
その時、Dioの鼻がある情報を得る。
Dioの後方の建物の上階にこちらを窺(うかが)っている人間がいる。
そして、その人物は大統領と側近である。
「『遺体』とは何の事かな?さっぱりだが…」
白々しい嘘をつく側近。
「今さらゴマかさなくてもいい…。別に多くの事も話さなくてもいいし…」
「オレは最初から『遺体』なんか欲しいわけではななかったんだからな」「君らにこの『目玉』を』含めて『遺体』は喜んでさし出すよ」
「そのかわりオレが欲しいのは最終的に…そうだな」
「『金』だ……」
「オレは『金』が欲しい……わかりやすいだろ?」
「このDioがジャイロどもから次の『遺体』を手に入れ…大統領に売る!それが取り引きだ…」
大胆な要求。
「ちなみにその『眼球』は…(彼が買うかどうかは知らないが)…一体いくらで売るつもりだね?」
「ニューヨークの『マンハッタン島』……」
予想を裏切る回答!
「…とかはどうだ?オレはいずれ政治家としての地位が欲しい。いずれニューヨーク市長にしてくれ。次の遺体も含めてその値段で売るよ」
「図に乗るな……!!おまえなんか…いいか!ディエゴ・ブランドー。この場所ですぐにでも『処刑』できるんだぞ!」
再び踵を返す側近。話は物別れに終わる…。
「『裏切り者』がいるんだろう!?あんたらの身内の中にさ……知ってるぞ」
極秘事項であることを知られているッ!!
「オレが通過した大草原で『ブラックモア』という男が死んでたが…」
「彼を倒したのは君らはジャイロとジョニィの2人だと思っているだろう?」
「ところが実際はあそこに『3人』いた…もうひとりいたんだ。馬の『体重』でわかるんだよ、足跡からな…。オレはジョニィの『馬』の足跡を良く知ってるからな」
「あの場所で誰かがひとりジョニィの馬に乗ったんだ。馬の『体重』が増えてる」
「なぜだ?」
五感をアップさせたDioの恐るべき情報収集能力。
「そいつがあんたらの中の『裏切り者』だからだ。足跡をひとつにし、何食わぬ顔でこのカンザスに戻る必要があったから……ジョニィの馬に『相乗り』したんだ…違うか?」
悔しそうな大統領の顔。今にも歯軋りが聞こえてきそうである。
側近が尋ねる。
「なるほど」「……君はそいつが何者か分かると言うのか?」
「知りたいか?知りたいだろうな……オレならつきとめられる。『体重』の数字を完璧に知ってるからな。顔まではまだわからないがすぐにでもだ……」
「だが今はまだ教えないぜ」
「ジャイロどもから『遺体』を奪い、『大草原』での復讐が終わってからだ!どうする?このDioと取り引きするか?」
「なあいいだろう!取り引きしようぜ!損はないだろォ!!オレにマンハッタン島をくれッ!!」
両手を広げ天に叫ぶDio。それは、ビルの高みからDioをうかがっている大統領にうったえているのだ。
「貧乏人のカスがァ〜〜〜〜」
憎憎しげにつぶやく大統領。
「……具体的に何をしたいのだ?」
尋ねるのは側近の役目。
「『スタンド使い』がひとり欲しい。このDioに忠実な『部下』としてだ。くり返すぞ、『部下』だ」
「オレの馬は今『2人』に追い付けないわけだからな」
「チームでジャイロどもを始末する」
側近がチラリと大統領を見る。頷く大統領。
「傲慢な性格だ…。だが…いいだろう、『許可』が出た。実は今…君を始末する為に待機させておいたんだ」
「勘付かなかったか?そこに潜んでいる…そこだ…。あれを君の『部下』にしたまえ…」
スッ
壁に深い角度で立てかけられたドアの残骸。その狭い空間から全身を影で表現された男(あるいは女)が顕れる。
「…………………………」
驚くDio。
「まさか…ウソだろ。こいつなのか?おまえが?おまえなのか?さっきからずっとそこにいたのか?」
「おまえが『スタンド使い』だと?おまえ…」
「彼と会話とかした事はあるのかね?」
「……さあ…どうだったかな…。だがそこでついさっき一緒に『水』を飲んでたさ」
「役に立つのか?こんなヤツが…」
それに触発されたのかいきなり軒下にぶら下がっていた蜂の巣を手刀で攻撃する。
すると地面に落ちた蜂の巣が2つの赤子のようなものに変化する。そしてその表面には男が蜂の巣を攻撃した時の音…「ザクザク」という文字が描かれている。
しかもDioの方向にコロコロと転がってくる。
「おい…何だこれは…?そこの蜂の巣をどうした?何が起こっている?」
「わたしもよく知らないが…後ろに下がった方がいいぞ…。そのころがっているものに触れない方がいいと思う……」
と言われて素直に従うDioではない。一応空き瓶を使って、謎の物体を叩き壊す。
「『触るな』と忠告したのに…Dioくん、そのビンを手から放した方がいい!すぐにビンを放せ…」
その時!ビンを持った方の手首がザクザクという音とともに切り裂かれる。
しかし幸いなことに破壊されたのは腕時計のみであった。
「なるほど……ほんのちょっぴり気に入ったよ。ところで頼みがある……今、何時か教えてくれないか?」
「ディエゴ・ブランドーに心を許すな。今は…『利用する』だけだ。『眼球』は後で取り上げる。『裏切り者』捜しもあんなヤツに頼るな…」
痛烈な言葉を放つ大統領。
そしてルーシーにも近く迫るであろう追手。それぞれの思惑が動き出す。
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