江戸&幕末

 

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新選組脱走録

大垣在の百姓岩田弥市は武士になりたい一心で新選組に入隊、ところがそこでの過酷な隊務と訓練、そして何より人を殺すのが任務であることに耐えきれず、脱走を決意。だが、脱走は切腹という局中法度書が彼の前に立ちふさがる。しかも、これまで脱走を企てた人々は、ことごとく追っ手に追いつかれ、連れ戻されて処刑されている。そこで弥市は、脱走を成功させるための妙案を思いついた。

    

ガリヴァー渡来記

長崎のオランダ語通詞横山仁左衛門が、鹿児島に上陸したイタリア人宣教師シドッチのことを注進するために江戸に上っていたときに、琉球船に乗ってあるオランダ人が観音崎に上陸してきた。交易国のオランダの人でもあるし、琉球国王の親書を携えていたために六代将軍になったばかりの徳川家宣に謁見。その後、そのオランダ人は長崎奉行の行列と共に長崎に送られることになり、横山が護衛についたが、そのオランダ人はなんとも奇妙な航海の経歴を持っていた。

高台寺党始末

伊東甲子太郎がいつかは言い出すであろうと思っていた新選組分派を言い出した。近藤と土方はいろいろと善後策を練るが、常に後手後手に回ってしまう。伊東のほうも隊士のほとんどを引き抜こうと、宣伝活動に躍起だ。そんな時、会津侯からある策を授けられたが……。

海 猫

(この作品は、公開版はありません。高台寺党始末の後半部分の付録としてついています)

動乱の中で生き、叫び、散っていった男たちの群像の影で

江戸が東京に、慶応が明治に、そんな時勢はみちのくの漁村・宮古へも押し寄せてくる。
逆巻く時流の中で、恋しい男を待つ女が一人
薩長と戦うため、蝦夷地へ行った彼
そんなある日、一艘の外国船が……

「トシさんね?」
「何も言うな!」
「帰ってきてくれたのね!」

白い北の大地〜蝦夷共和国の幻影〜

最後まで薩長新政府に抵抗して、蝦夷地の箱館に立て籠もった榎本武揚ら旧幕臣たち。彼らの真の目的は何だったのか?  本当に彼等は蝦夷地を独立させて、日本とは別の共和国を作ろうとしていたのか……?

 

          コラム

江戸時代はよく現代と対比して語られ、その共通点がややもすればクローズアップされがちです。確かに平和という意味では、相似点は多いでしょう。しかしその分、歴史小説の題材としては描きにくく、エンタテーメント的な時代劇(それもホームドラマ的な)の題材の方には向いているようです。江戸時代を舞台としたある時代劇で、妻が夫を「あなた」と呼んでいるのには閉口しました。その点、江戸時代の中でも書きやすいのが幕末でしょう。NHK大河ドラマで取り上げられる時代でも、戦国時代や忠臣蔵と並んで幕末はダントツです。筆者も大学の卒論は幕末でしたし、中学生の頃からいわゆる新選組ファンとして京都の壬生寺、日野石田の土方歳三の墓、専称寺の沖田総司の墓(当時は誰でも自由に入れました)に、ノート書き込みのために通ったものです。今でも石田寺のノートにはあの頃の自分と同じような年齢の人、つまり私がノートとに書き込んでいた頃には生まれてもいなかった人々が、あの頃の私と同じようにノートに書き込んでいるので不思議な感じです。作家を目指す人々は一般的に、幕末それも新選組などという書き尽された題材を書いていては駄目で、誰も書いていないテーマを書いて一旗挙げようと思いがちですが、ある出版社の編集者が私に言った言葉によると、「歴史小説の作家になりたければ、まず太閤記を書け、それから忠臣蔵、新選組を書け」ということでした。書き尽くされた素材を書いて、そこにいかに今までにない個性を発揮できるかどうかが、作家として成り立つための要素だということだそうです。

    

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