(2018/3/24修正)
小島彗星 その1他や高見沢彗星 その3他で、ゼータ関数の香りの漂う公式を導いた。それらは「数論T」(加藤和也、
黒川信重、斎藤毅 著、岩波書店)p.93で「ζのかおりが漂っている」と書かれて紹介されているものだが、その本の導出は大 変難しいものであった。小島彗星や高見沢彗星では、それらを初等的に導くことに成功した。
とくに高見沢彗星では一般的な式としてゼータの香りの漂う公式を見出した。それらをまず再掲しておこう(少しわかりやすく
表現し直した)。
これらは息をのむような美しさであり、深いものを感じさせる。
例えば一番上の式はリーマンゼータζ(s)=1/1^s + 1/2^s + 1/3^s + ・・の形をしている。またπ/4代入や3π/4代入の式
は、ディリクレのL関数L(χ,s)という巨大なゼータ関数族の中のゼータ(次のもの)に対応していることはすぐわかる。
(注記:L1やL2は、わかりやすくするためこのサイトで用いている呼称である)
L2(s) = 1/1^s + 1/3^s - 1/5^s - 1/7^s + 1/9^s + 1/11^s - 1/13^s - 1/15^s + ・・・
(虚2次体Q(√(-2)ゼータ、導手N=8, a≡0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 mod 8に対し、それぞれχ(a)=0, 1, 0, 1, 0, -1, 0, -1)
L1(s) = 1/1^s - 1/3^s - 1/5^s + 1/7^s + 1/9^s - 1/11^s - 1/13^s + 1/15^s + ・・・
(実2次体Q(√2)ゼータ、導手N=8, a≡0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 mod 8 に対し、それぞれχ(a)=0, 1, 0, -1, 0, -1, 0, 1)
さて、まず2π代入の式に着目する。
1/(1^2+a^2) + 1/(2^2+ a^2) + 1/(3^2+ a^2) + 1/(4^2+ a^2) + ・・=-1/(2a^2) + (π/(2a))・(e^(2aπ)+1)/( e^(2aπ)-1) --@ これはζ(2)=1/1^2 + 1/2^2 + 1/3^2 + ・・に類似したものだが、高見沢彗星で導いたときは、当然ながらこのaは任意の実 数として導いた。事実、上表でも”(aは任意の実数)”と断っている。
右辺に自然対数の底 eという数学で本質的なものが現われていることから、ふと「aを複素数で置き換えたらいったいどう
なるのだろう?」と思った。
そこでaに複素数のi/4を代入したら(iは虚数単位)、なんとL(χ,s)の一種のL(s)が現れたのである!つまり、s=1での特殊値
L(1) = π/4 が出た。@はaが複素数でも成立しているのであった。次のライプニッツの公式とも呼ばれるこのL(1) = π/4は有 名な結果であるから読者もご存知であろう。
L(1)= 1 - 1/3 + 1/5 - 1/7 + 1/9 - 1/11 + 1/13 - 1/15 + ・・・=π/4
L(s)を一般的に書くと、次の通り。
L(s) = 1/1^s - 1/3^s + 1/5^s - 1/7^s + 1/9^s - 1/11^s + 1/13^s - 1/15^s + ・・・
(虚2次体Q(√(-1)ゼータ、導手N=4, a≡0, 1, 2, 3 mod 4に対し、それぞれχ(a)=0, 1, 0, -1)
では、早速、上の@式からL(1)を導出することにする。
[導出過程] 1/(1^2+a^2) + 1/(2^2+ a^2) + 1/(3^2+ a^2) + 1/(4^2+ a^2) + 1/(5^2+ a^2) + ・・・
=-1/(2a^2) + (π/(2a))・(e^(2aπ)+1)/( e^(2aπ)-1) --- @
aにi/4を代入する。
左辺
= 1/(1^2-(1/4)^2) + 1/(2^2-(1/4)^2) + 1/(3^2-(1/4)^2) + 1/(4^2-(1/4)^2) + 1/(5^2-(1/4)^2) + ・・・
= 2[{1/(1-1/4) - 1/(1+1/4)} + {1/(2-1/4) - 1/(2+1/4)} + {1/(3-1/4) - 1/(3+1/4)} + {1/(4-1/4) - 1/(4+1/4)} +
{1/(5-1/4) - 1/(5+1/4)} + {1/(6-1/4) - 1/(6+1/4)} + ・・・]
= 2{1/(3/4) - 1/(5/4) + 1/(7/4) - 1/(9/4)+ 1/(11/4) - 1/(13/4) + 1/(15/4) - 1/(17/4) + 1/(19/4) - 1/(21/4) +
+ 1/(23/4) - 1/(25/4) + ・・・}
= 8{1/3 - 1/5 + 1/7 - 1/9+ 1/11 - 1/13 + 1/15 - 1/17 + 1/19 - 1/21 + 1/23 - 1/25 + ・・・}
= -8{-1/3 + 1/5 - 1/7 + 1/9 - 1/11 + 1/13 - 1/15 + 1/17 - 1/19 + 1/21 - 1/23 + 1/25 - ・・・}
= -8{-1 + 1 -1/3 + 1/5 - 1/7 + 1/9 - 1/11 + 1/13 - 1/15 + 1/17 - 1/19 + 1/21 - 1/23 + 1/25 - ・・・}
= -8{-1 + L(1)}
= 8 - 8L(1)
右辺 = -1/(2(i/4)^2) + (π/(2(i/4)))・(e^(2π(i/4))+1)/( e^(2π(i/4))-1)
= 8 - 2πi×{cos(π/2)+i・sin(π/2)+1}/{cos(π/2)+i・sin(π/2)-1}
= 8 - 2πi×(i + 1)/(i - 1)
= 8 - 2πi×{(i + 1)(i + 1)}/{(i - 1)(i + 1)}
= 8 - 2πi×(i^2+ 2i + 1)/(i ^2- 1)
= 8 - 2πi×2i /(-2)
= 8 - 2π
左辺の変形では、L(1)を出すために赤字の工夫を加えた。 左辺=右辺として、L(1)=π/4が得られた。
[終わり]
このように、ζ(s)を感じさせる@式から、ディリクレのL関数L(χ,s)の一種のL(s)の特殊値L(1)が出たのである。
高見沢彗星で上表の式を導いたときはその美しさに満足し、aに対し実数以外のことなど考えなかったのであるが、ゼータの
香りの漂う公式は想像以上に深いものを秘めているといえる。これらはaに関し実数だけでなく、複素数の世界にまで接続され ているようである。
冒頭で言及した「数論T」p.93では、ゼータの香りの漂う公式の特殊な場合のみ記されていて上表のような一般的な形では
表現されていない。しかもその導出が難解である。
また「数学公式 U」(一松他著、岩波書店)のp.48には次の二式が出ている。
1/(n^2+a^2)=-1/(2a^2) + (π/(2a))coth(aπ) ---A
(-1)^(n-1)/(n^2+a^2)=1/(2a^2) - (π/(2a))cosech(aπ) ---B
Aは上表のトップの式と同じであり、Bは上表の[π代入]からすぐ出るので[π代入]の二式と同じである。「数学公式 U」でも
aは実数として扱われているようである。なお、「数学公式 U」でのゼータの香りに関しては10年前にスワン彗星 その4でも 指摘した。
ここで、ディリクレのL関数L(χ,s)のことをすこし説明しておこう。
************************************************************
ディリクレのL関数L(χ,s)はディリクレ(1805-1859)によって発見された、リーマンゼータζ(s)を含む一般的なゼータ関数で、
次のようなものである。
L(χ,s) =Σχ(n)/n^s = χ(1)/1^s + χ(2)/2^s + χ(3)/1^s + χ(4)/1^s + χ(5)/1^s + ・・・
ここで、χ(n)はディリクレ指標と呼ばれ、次の性質をもつ。
[χ(n)が満たす性質]
(1) a≡b mod Nならχ(a)=χ(b)
(2) χ(ab)=χ(a)χ(b)
(3) aとNが共通の素因数をもつときに限りχ(a)=0
a≡b mod NとはaをNで割った余りとbをNで割った余りが等しいことを表す。すなわち、これはa - b がNで割り切れることを表
している。
L(χ,s)は上記の性質を満たすものであり無数にあるが、いくつか例をあげると、次のようなものがある。
L(s)= 1 - 1/3^s + 1/5^s - 1/7^s + 1/9^s - 1/11^s + ・・・ -----A
(虚2次体Q(√(-1)ゼータ、導手N=4, n≡0, 1, 2, 3 mod 4に対し、それぞれχ(n)=0, 1, 0, -1)
L2(s) = 1/1^s + 1/3^s - 1/5^s - 1/7^s + 1/9^s + 1/11^s - 1/13^s - 1/15^s + ・・・ ----B
(虚2次体Q(√(-2)ゼータ、導手N=8, n≡0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 mod 8 に対し、それぞれχ(n)=0, 1, 0, 1, 0, -1, 0, -1)
L1(s) = 1/1^s - 1/3^s - 1/5^s + 1/7^s + 1/9^s - 1/11^s - 1/13^s + 1/15^s + ・・・ ----C
(実2次体Q(√2)ゼータ、導手N=8, n≡0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 mod 8 に対し、それぞれχ(n)=0, 1, 0, -1, 0, -1, 0, 1)
LA(s)=1 - 1/2^s + 1/4^s - 1/5^s + 1/7^s - 1/8^s + 1/10^s - 1/11^s + ・・・ ----D
(虚2次体Q(√(-3)ゼータ、導手N=3, n≡0, 1, 2 mod 3に対し、それぞれχ(n)=0, 1, -1)
これらが性質(1), (2), (3)を全て満たしていることはすぐにわかるであろう。
導手Nとは、ディリクレ指標χ(n)の値のnに関する繰り返しの最小の単位のことである。例えばAのL(s)では
a≡0, 1, 2, 3 mod 4に対し、それぞれχ(a)=0, 1, 0, -1であり、そのmod 4の4が導手N=4と考えればよい。さらには
L(s)=(1 - 1/3^s) + (1/5^s - 1/7^s) + (1/9^s -1/11^s )+ ・・・
というような()の単位を表していると考えるとわかりやすいと思う。
なお、リーマンゼータζ(s)=1/1^s + 1/2^s + 1/3^s + 1/4^s + ・・は、導手N=1で、全てχ(n)=1とした場合のL(χ,s)となって
いる。
さらに、ディリクレのL関数L(χ,s)は次のようなオイラー積表示をもつことが知られている。
L(χ,s) =Π(pをわたる) 1/(1 - χ(p)p^(-s))
ここにpは、Nを割り切らないすべての素数をわたる。Πは積の記号。
例えば、導手N=4なら、pは3, 5, 7, 11, 13・・・をわたる。導手N=12なら、pは5, 7, 11, 13・・・をわたる。
ζ(s)もオイラー積表示をもつが、L(χ,s)もこのような形のオイラー積表示をもっているのである。
L(χ,s)を用いることで、次の驚くべきことをディリクレは証明した。
「4で割ると1余る素数も、4で割ると3余る素数も無限に存在する。もっと一般に、N, aを自然数, a < Nとし、aとNは共
通の素因数をもたないとする。この時、Nで割った余りがaとなる素数は無限に存在する。」
素数が無限に存在することはギリシャ時代にユークリッドによって証明されているが、その後、オイラーがζ(s)を用いて「素数
が無限に存在する」ことの別証明を与えた。
その後、4で割ると1余る素数が無限に存在するかどうかなど人類は知る由もなかったが、ディリクレはL(χ,s)の力を借り
て、「4で割ると1余る素数が無限に存在する」ことを証明したのである! この辺は名著「解決!フェルマーの最終定理」(加藤 和也著、日本評論社)に詳しい。
著者で世界的数学者の加藤和也さんは、「これは、古代ギリシャの数学者によって素数が無限に存在することが証明されて
以来の進展でした」と記している。また、同書では、その証明がどのようなものであったかも補足で示されている。
参考文献:「解決!フェルマーの最終定理」(加藤和也著、日本評論社)
************************************************************
L(χ,s)の解説が長くなったのでこんなところにしておこう。
さて、今回は@のaにi/4を代入した結果を示したが、aにi/3を代入したらどうなるのだろうか? その場合また別のL(χ,s)の一
種のゼータが飛び出すのであるが、それは次回示すことにする。 1/(1^2+a^2) + 1/(2^2+ a^2) + 1/(3^2+ a^2) + 1/(4^2+ a^2) + ・・=-1/(2a^2) + (π/(2a))・(e^(2aπ)+1)/( e^(2aπ)-1) --@
今回は上式のaに複素数 i/3を代入した結果を示すことにする。結論を先に示すと、次が出た。
1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + 1/10 - 1/11 + 1/13 - 1/14 + 1/16 - 1/17 + ・・・=π/(3√3) ---A
なんと優雅な式であろうか。左辺を計算すると、右辺になるのである!
これは一つ上でも見たが、L(χ,s)の一種の次のゼータLA(s)のs=1の場合の特殊値である。
LA(s)=1 - 1/2^s + 1/4^s - 1/5^s + 1/7^s - 1/8^s + 1/10^s - 1/11^s + ・・・
(虚2次体Q(√(-3)ゼータ、導手N=3, n≡0, 1, 2 mod 3に対し、それぞれχ(n)=0, 1, -1)
LA()という記号は本サイトだけで使っているものなので注意されたい。LA(1)がπ/(3√3) になることは、虚2次体の類数公式
からも出るが、そのような高級なものを使わずとも、本サイトで開発したテイラーシステムを使って初等的に簡単に導出できる。
そして今回、ゼータの香りの漂う公式@から、aにi/3を代入するだけでAが、すなわちLA(1)=π/(3√3) が出たのである。
テイラーシステムとはまたちがう別の登山ルートが見つかった!
では、導出過程を見てみよう。
[導出過程] 1/(1^2+a^2) + 1/(2^2+ a^2) + 1/(3^2+ a^2) + 1/(4^2+ a^2) + 1/(5^2+ a^2) + ・・・
=-1/(2a^2) + (π/(2a))・(e^(2aπ)+1)/( e^(2aπ)-1) ---- @
aにi/3を代入する。
左辺
= 1/(1^2-(1/3)^2) + 1/(2^2-(1/3)^2) + 1/(3^2-(1/3)^2) + 1/(4^2-(1/3)^2) + 1/(5^2-(1/3)^2) + ・・・
= (3/2)[{1/(1-1/3) - 1/(1+1/3)} + {1/(2-1/3) - 1/(2+1/3)} + {1/(3-1/3) - 1/(3+1/3)}
+ {1/(4-1/3) - 1/(4+1/3)} + {1/(5-1/3) - 1/(5+1/3)} + ・・・]
= (3/2){1/(2/3) - 1/(4/3) + 1/(5/3) - 1/(7/3)+ 1/(8/3) - 1/(10/3)
+ 1/(11/3) - 1/(13/3) + 1/(14/3) - 1/(16/3) + ・・・}
= (9/2){1/2 - 1/4 + 1/5 - 1/7 + 1/8 - 1/10 + 1/11 - 1/13 + 1/14 - 1/16 + ・・・}
=- (9/2){-1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + 1/10 - 1/11 + 1/13 - 1/14 + 1/16 - ・・・}
=- (9/2){-1 + 1 -1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + 1/10 - 1/11 + 1/13 - 1/14 + 1/16 - ・・・}
= (9/2){1 - LA(1)}
右辺 = -1/(2(i/3)^2) + (π/(2(i/3)))・(e^(2π(i/3))+1)/( e^(2π(i/3))-1)
= 9/2 - (3πi/2)×{cos(2π/3)+i・sin(2π/3)+1}/{cos(2π/3)+i・sin(2π/3)-1}
= 9/2 - (3πi/2)×(1/2 + i√3/2)/(-3/2 + i√3/2)
= 9/2 -π √3/2
左辺の変形ではLA(1)を出すために赤字の工夫を加えた。 左辺=右辺として、LA(1)=π/(3√3) が得られた。
[終わり]
こんなにも簡単な計算で
1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + 1/10 - 1/11 + 1/13 - 1/14 + 1/16 - 1/17 + ・・・=π/(3√3)
という高級な結果が出るのである!
ゼータの香りの漂う公式は、いったいどれほどの可能性を秘めているのだろうか。
これまでの結果をまとめておく。
1/(1^2+a^2) + 1/(2^2+ a^2) + 1/(3^2+ a^2) + 1/(4^2+ a^2) + ・・=-1/(2a^2) + (π/(2a))・(e^(2aπ)+1)/( e^(2aπ)-1) --@
一つ上では、上式のaに複素数 i/3を代入したとき次の結果になることを示した。
1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + 1/10 - 1/11 + 1/13 - 1/14 + 1/16 - 1/17 + ・・・=π/(3√3)
では、aに複素数2i/3を代入したら、どうなるだろうか。結論を言えば i/3代入の場合とまったく同じ結果(上式)が得られる。
その導出過程を以下に示す。
[導出過程] 1/(1^2+a^2) + 1/(2^2+ a^2) + 1/(3^2+ a^2) + 1/(4^2+ a^2) + 1/(5^2+ a^2) + ・・・
=-1/(2a^2) + (π/(2a))・(e^(2aπ)+1)/( e^(2aπ)-1) ---- @
aに2i/3を代入する。
左辺
= 1/(1^2-(2/3)^2) + 1/(2^2-(2/3)^2) + 1/(3^2-(2/3)^2) + 1/(4^2-(2/3)^2) + 1/(5^2-(2/3)^2) + ・・・
= (3/4)[{1/(1-2/3) - 1/(1+2/3)} + {1/(2-2/3) - 1/(2+2/3)} + {1/(3-2/3) - 1/(3+2/3)}
+ {1/(4-2/3) - 1/(4+2/3)} + {1/(5-2/3) - 1/(5+2/3)} + ・・・]
= (3/4){1/(1/3) - 1/(5/3) + 1/(4/3) - 1/(8/3)+ 1/(7/3) - 1/(11/3)
+ 1/(10/3) - 1/(14/3) + 1/(13/3) - 1/(17/3) + ・・・}
= (9/4){1/1 - 1/5 + 1/4 - 1/8 + 1/7 - 1/11 + 1/10 - 1/14 + 1/13 - ・・・}
= (9/4){1/1 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + 1/10 - 1/11 + 1/13 - 1/14 + ・・・}
= (9/4){1/2 + 1/1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + 1/10 - 1/11 + 1/13 - 1/14 + ・・・}
= (9/4){1/2 + LA(1)}
右辺 = -1/(2(2i/3)^2) + (π/(2(2i/3)))・(e^(2π(2i/3))+1)/( e^(2π(2i/3))-1)
= 9/8 - (3πi/4)×{cos(4π/3)+i・sin(4π/3)+1}/{cos(4π/3)+i・sin(4π/3)-1}
= 9/8 - (3πi/4)×(-1/2 + i(-√3/2)+1)/(-1/2 + i(-√3/2)-1)
= 9/8 + π √3/4
左辺の変形ではLA(1)を出すために赤字の工夫を加えた。 左辺=右辺として、LA(1)=π/(3√3) が得られた。
[終わり]
このようにa=2i/3代入では、a=i/3代入と同じ結果が得られた。
1/(1^2+a^2) + 1/(2^2+ a^2) + 1/(3^2+ a^2) + 1/(4^2+ a^2) + ・・=-1/(2a^2) + (π/(2a))・(e^(2aπ)+1)/( e^(2aπ)-1) --@
二つ上では、上式@のaに複素数 i/4を代入したとき次の結果になることを示した。
L(1)= 1 - 1/3 + 1/5 - 1/7 + 1/9 - 1/11 + 1/13 - 1/15 + ・・・=π/4
では、aに複素数3i/4を代入したら、どうなるだろうか。結論を言えばi/4代入の場合とまったく同じ結果(上式)が得られる。
その導出過程を以下に示す。
[導出過程]
1/(1^2+a^2) + 1/(2^2+ a^2) + 1/(3^2+ a^2) + 1/(4^2+ a^2) + 1/(5^2+ a^2) + ・・・
=-1/(2a^2) + (π/(2a))・(e^(2aπ)+1)/( e^(2aπ)-1) --- @
aに3i/4を代入する。
左辺
= 1/(1^2-(3/4)^2) + 1/(2^2-(3/4)^2) + 1/(3^2-(3/4)^2) + 1/(4^2-(3/4)^2) + 1/(5^2-(3/4)^2) + ・・・
= (4/6)[{1/(1-3/4) - 1/(1+3/4)} + {1/(2-3/4) - 1/(2+3/4)} + {1/(3-3/4) - 1/(3+3/4)}
+ {1/(4-3/4) - 1/(4+3/4)} + {1/(5-3/4) - 1/(5+3/4)} + {1/(6-3/4) - 1/(6+3/4)} +・・・]
= (4/6)[{1/(1/4) - 1/(7/4)} + {1/(5/4) - 1/(11/4)}+ {1/(9/4) - 1/(15/4)}+ {1/(13/4) - 1/(19/4)}
+ {1/(17/4) - 1/(23/4)} + {1/(21/4) - 1/(27/4)} +・・・]
= (4^2/6)[{1 - 1/7} + {1/5 - 1/11}+ {1/9 - 1/15} + {1/13 - 1/19} + {1/17 - 1/23} + {1/21 - 1/27} + ・・・
= (8/3){1 + 1/5 - 1/7 + 1/9 - 1/11 + 1/13 - 1/15 + 1/17 - 1/19 + 1/21 - 1/23 + ・・・}
= (8/3){1/3 + 1 -1/3 + 1/5 - 1/7 + 1/9 - 1/11 + 1/13 - 1/15 + 1/17 - 1/19 + 1/21 - 1/23 + ・・・}
= (8/3){1/3 + L(1)}
= (8/3){1/3 + L(1)}
右辺 = -1/(2(3i/4)^2) + (π/(2(3i/4)))・(e^(2π(3i/4))+1)/( e^(2π(3i/4))-1)
= 8/9 - (2πi/3)×{cos(3π/2)+i・sin(3π/2)+1}/{cos(3π/2)+i・sin(3π/2)-1}
= 8/9 - (2πi/3)×(-i + 1)/(-i - 1)
= 8/9 + 2π/3
左辺の変形では、左辺の最初の太字の級数が収束することは容易にわかるから、青字箇所の項の入れ替え(収束する交代
級数への変更)は問題ない。またL(1)を出すために赤字の工夫を加えた。 左辺=右辺として、L(1)=π/4が得られた。 [終わり]
このように、i/4代入の場合と同様に、3i/4代入でもディリクレのL関数L(χ,s)の一種のL(s)の特殊値L(1)が出た。
これまでの結果をまとめておく。
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