< 作用素の定理と対称性 >
< π/3代入 <-> 5π/3代入 >
< π/2代入 <-> 3π/2代入 >
< 冒頭2式の究極の姿を求めて >
「その1」から「その3」で、上の作用素の定理(定理3)を用いて様々な級数を導出してきた。
とくに、次のフーリエ級数
(π-x)/2 =sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・
( 0 < x < 2π)
を用いた「その2」(or「その1」)の場合は、明示的な式を求めることができた。
2π代入、π代入では単体の級数の値が出たが、π/2代入、π/3代入では「二つの級数の和=・・」という式が出て
いた。私はこの「二つの級数の和=・・」の式がもどかしく、なんとかそれぞれの単体の級数の値を求められないか?と
思った。ある工夫を加えることによって単体を求めることができたのでそれを紹介したい。
”ある工夫”とは次のようなものである。
例えば、π/3代入を例にとると、π/3代入の結果と5π/3代入の結果が連立方程式となってうまく一個ずつの式が求まる
のである。
これはp代入の場合は(2π-p)代入を組み合わせればよいということであり、それがここのタイトルの対称性の意味で
もある。
よって、π/2代入の場合は3π/2代入の組み合わせとなり、2π/3代入は4π/3代入と組み合わせればよいことになる。
これらの結果から、次のような驚くべき式が導出された。
1/(1^3+1) - 1/(2^3+2) + 1/(4^3+4) - 1/(5^3+5) + 1/(7^3+7) - 1/(8^3+8) + 1/(10^3+10) - 1/(11^3+11) +・・・ =π/(3√3) - (π/√3){e^(4π/3)-e^(2π/3)}/(e^(2π)-1) 1/(1^3+1) + 1/(2^3+2) - 1/(4^3+4) - 1/(5^3+5) + 1/(7^3+7) + 1/(8^3+8) - 1/(10^3+10) - 1/(11^3+11) +・・・ =2π/(3√3) + (π/√3){e^(π/3)-e^(5π/3)}/(e^(2π)-1)
いずれも分母は3の倍数を飛ばした数となっている。二つ目は、++ -- ++ -- ++ -- ・・という符号の並びである。
これらとともに三角関数類似関数の部分分数展開から直接に出る式も同時に顔を出すが、上の2式は公式集の公式から
すぐ出るような感じのものではないので、重要度の高いものといえる。
上式のうち、上の方は2π/3<->4π/3代入から出て、下の方はπ/3<->5π/3代入から出る。
これらの導出を以下、π/3代入<->5π/3代入、2π/3代入<->4π/3代入、そしてπ/2代入<->3π/2代入の順番
に見ていくことにしよう。
まず「その2」のπ/3代入の結果を記す。そこでは次の結果が導出された。
3{1/(3^2+1) - 1/(6^2+1) + 1/(9^2+1) - 1/(12^2+1) + 1/(15^2+1) - 1/(18^2+1) + ・・・}
- √3{1/(1(1^2+1)) + 1/(2(2^2+1)) - 1/(4(4^2+1)) - 1/(5(5^2+1)) + 1/(7(7^2+1)) + 1/(8(8^2+1))
- 1/(10(10^2+1)) - 1/(11(11^2+1)) + 1/(13(13^2+1)) + 1/(14(14^2+1)) - ・・・}
= 3/2 - 2π/3 - π(e^π+2e^(π/3))/(e^(2π)-1) ----@
または萩L号で表現すると次のようになる。
3(n=1〜∞) (-1)^(n+1)/{(3n)^2+1)}
- √3(n=0〜∞) (-1)^(n+2)・[1/{(3n+1)((3n+1)^2+1)} + 1/{(3n+2)((3n+2)^2+1)}]
=3/2 - 2π/3 - π(e^π+2e^(π/3))/(e^(2π)-1) ----@-2
A=(n=1〜∞) (-1)^(n+1)/{(3n)^2+1)} 、 B=(n=0〜∞) (-1)^(n+2)・[1/{(3n+1)((3n+1)^2+1)} + 1/{(3n+2)((3n+2)^2+1)}] とおくと、@(または@-2)は、次のようになる。 3A - √3B=3/2 - 2π/3 - π(e^π+2e^(π/3))/(e^(2π)-1) ----B 次に5π/3代入を行うことにする。フーリエ級数
(π-x)/2 =sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・
( 0 < x < 2π)
に作用素の定理(定理3)を適用して、π/3代入と同様にして5π/3代入の場合を計算すると、次のような式が導出され る(途中は略)。 3A + √3B=3/2 + 2π/3 - π(e^π+2e^(5π/3))/(e^(2π)-1) ----C BとCを並べる。 3A - √3B=3/2 - 2π/3 - π(e^π+2e^(π/3))/(e^(2π)-1) ----B 3A + √3B=3/2 + 2π/3 - π(e^π+2e^(5π/3))/(e^(2π)-1) ----C この連立方程式を解いて、 A=1/2 - (π/3){e^π+e^(π/3)+e^(5π/3)}/(e^(2π)-1) B=2π/(3√3) + (π/√3){e^(π/3)-e^(5π/3)}/(e^(2π)-1) とA、Bが求まった。まとめておこう。
この下側が冒頭で掲げた2式の内の下側の式である。(分母を少し変形したが)
この優雅さ、不思議さを味わっていただきたい!
全く同様にして、フーリエ級数
(π-x)/2 =sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・
( 0 < x < 2π)
に定理3を適用して2π/3代入と4π/3代入を考えると、この場合も連立方程式がたって、解くと次の二つの式が出る。
まとめておこう。
下側の式が、冒頭で掲げた2式のうちの上側の式になっている。(分母を少し変形したが)
同様にしてπ/2代入と3π/2代入を調べると、この場合も連立方程式がたって、それを解くと次の二式が出る。
1/(2^2+1) - 1/(4^2+1) + 1/(6^2+1) - 1/(8^2+1) + ・・・= 1/2 - (π/2)(e^(3π/2)+e^(π/2))/(e^(2π)-1) ---@
1/(1(1^2+1)) - 1/(3(3^2+1)) + 1/(5(5^2+1)) - 1/(7(7^2+1)) + ・・・
=π/4 - (π/2){e^(3π/2)-e^(π/2)}/(e^(2π)-1) ---A
右辺第2項は、e^(π)で分母分子を割るとさらに対称性な形にできるが、webでは字数を少なくしたいのでこのままとして
おく。
@はcschx=2/(e^x-e^(-x))の部分分数展開からも直接的に出るし、またAは、sechx=2/(e^x+e^(-x))の部分分数展開
の式からも直接出る。後者に関してなぜそれが言えるかというと、Aは
1/(1(1^2+1)) - 1/(3(3^2+1)) + 1/(5(5^2+1)) - 1/(7(7^2+1)) + ・・・
=1/(1^2(1^2+1))- 3/(3^2(3^2+1)) + 5/(5^2(5^2+1)) - 7/(7^2(7^2+1)) + ・・・
=1{1/1^2-1/(1^2+1)}-3{1/3^2-1/(3^2+1)}+5{1/5^2-1/(5^2+1)}-7{1/7^2-1/(7^2+1)}+・・・
={1 - 1/3 + 1/5 - 1/7 + ・・} - {1/(1^2+1) - 3/(3^2+1) + 5/(5^2+1) - 7/(7^2+1) + ・・・}
と変形できて、後の{}がsechxの部分分数展開からすぐに出るからである。
すなわち、
1/(1^2+1) - 3/(3^2+1) + 5/(5^2+1) - 7/(7^2+1) + ・・・=(π/2){e^(3π/2)-e^(π/2)}/(e^(2π)-1)
となる。
まとめておこう。
冒頭での2式、すなわち2π/3代入<->4π/3代入 と π/3代入<->5π/3代入から出た式を再掲する。
1/(1(1^2+1)) - 1/(2(2^2+1)) + 1/(4(4^2+1)) - 1/(5(5^2+1)) + 1/(7(7^2+1)) - 1/(8(8^2+1))
+ 1/(10(10^2+1)) - 1/(11(11^2+1)) + 1/(13(13^2+1)) - 1/(14(14^2+1)) + ・・・
=π/(3√3) - (π/√3){e^(4π/3)-e^(2π/3)}/(e^(2π)-1) ----@
1/(1(1^2+1)) + 1/(2(2^2+1)) - 1/(4(4^2+1)) - 1/(5(5^2+1)) + 1/(7(7^2+1)) + 1/(8(8^2+1))
- 1/(10(10^2+1)) - 1/(11(11^2+1)) + 1/(13(13^2+1)) + 1/(14(14^2+1)) - ・・・
=2π/(3√3) + (π/√3){e^(π/3)-e^(5π/3)}/(e^(2π)-1) ----A
これらも一つ上でやったのと同じようにさらに余分な贅肉をそぎ落とすように、もっと本質的な姿に変形できる。
[まず@から]
1/(1(1^2+1)) - 1/(2(2^2+1)) + 1/(4(4^2+1)) - 1/(5(5^2+1)) + 1/(7(7^2+1)) - 1/(8(8^2+1))
+ 1/(10(10^2+1)) - 1/(11(11^2+1)) + 1/(13(13^2+1)) - 1/(14(14^2+1)) + ・・・
=π/(3√3) - (π/√3){e^(4π/3)-e^(2π/3)}/(e^(2π)-1) ----@
一つ上の場合と同様に変形していくと、
1/(1(1^2+1)) - 1/(2(2^2+1)) + 1/(4(4^2+1)) - 1/(5(5^2+1)) + 1/(7(7^2+1)) - 1/(8(8^2+1))
+ 1/(10(10^2+1)) - 1/(11(11^2+1)) + 1/(13(13^2+1)) - 1/(14(14^2+1)) + ・・・
={1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + ・・・}
- {1/(1^2+1) - 2/(2^2+1) + 4/(4^2+1) - 5/(5^2+1) + 7/(7^2+1) - 8/(8^2+1) + ・・・} ----B
とできる。
ここで、前の{}の級数
1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + ・・・ ----C
は、ゼータ関数
LA(s)=1 - 1/2^s + 1/4^s - 1/5^s + 1/7^s - 1/8^s + ・・・
のs=1の場合の値である。
LA(s)は「a≡0, 1, 2 mod 3に対し、それぞれχ(a)=0, 1, -1」というχ(a)をもつディリクレのL関数L(χ,s)の一種であり、
また虚2次体Q(√-3)の代数体に対応するゼータでもある。当サイトでこれまで何度も出てきた。
虚2次体の類数公式
L(χ,1)=2πh/(w√N)
を使ってCすなわちLA(1)を求めることができる。hは類数、wは虚2次体Q(√-3)に含まれる1のベキ根の個数、Nは
導手である。LA(s)はh=1、w=6、N=3となることが知られているので、上記の類数公式より、
LA(1)=1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + ・・・=2π・1/(6√3)=π/(3√3) ----D
とCが求まった。
よって、@、B、Dより、
1/(1^2+1) - 2/(2^2+1) + 4/(4^2+1) - 5/(5^2+1) + 7/(7^2+1) - 8/(8^2+1) + ・・・
= (π/√3){e^(4π/3)-e^(2π/3)}/(e^(2π)-1)
と出た。これが最終地点といえる。
[2π/3代入<->4π/3代入]対称性より導いたわけだが、よく見ると右辺の分子に2π/3、4π/3が見えている!
[次にA]
1/(1(1^2+1)) + 1/(2(2^2+1)) - 1/(4(4^2+1)) - 1/(5(5^2+1)) + 1/(7(7^2+1)) + 1/(8(8^2+1))
- 1/(10(10^2+1)) - 1/(11(11^2+1)) + 1/(13(13^2+1)) + 1/(14(14^2+1)) - ・・・
=2π/(3√3) + (π/√3){e^(π/3)-e^(5π/3)}/(e^(2π)-1) ----A
ここでも左辺を変形していく。@の場合と同様にして、
1/(1(1^2+1)) + 1/(2(2^2+1)) - 1/(4(4^2+1)) - 1/(5(5^2+1)) + 1/(7(7^2+1)) + 1/(8(8^2+1))
- 1/(10(10^2+1)) - 1/(11(11^2+1)) + 1/(13(13^2+1)) + 1/(14(14^2+1)) - ・・・
={1 + 1/2 - 1/4 - 1/5 + 1/7 + 1/8 -1/10 - 1/11 + 1/13 + 1/14 - ・・・・}
- {1/(1^2+1) + 2/(2^2+1) - 4/(4^2+1) - 5/(5^2+1) + 7/(7^2+1) + 8/(8^2+1) - ・・・} ----E
と、ここまでは簡単に到達する。
問題は前の方の{}の級数である。はたして、これはどのような値になるのであろうか?
じつはLA(1)の2倍の値になるのである!
その理由を次に示す。ここでもゼータは究極の秩序を用意してくれている。
1 + 1/2 - 1/4 - 1/5 + 1/7 + 1/8 - 1/10 - 1/11 + 1/13 + 1/14 - ・・・・
={1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + 1/10 - 1/11 + 1/13 - 1/14 + ・・・}
+ {2/2 - 2/4 + 2/8 - 2/10 + 2/14 - 2/16 + ・・・}
=LA(1) + {1 - 1/2 + 1/4 - 1/5 + 1/7 - 1/8 + ・・・}
=LA(1) + LA(1)
=2LA(1)
と、このように変形ができるのである!
LA(1)=π/(3√3)であるから、
1 + 1/2 - 1/4 - 1/5 + 1/7 + 1/8 - 1/10 - 1/11 + 1/13 + 1/14 - ・・・・=2π/(3√3) ----F
となる。
よって、A、E、Fより、
1/(1^2+1) + 2/(2^2+1) - 4/(4^2+1) - 5/(5^2+1)
+ 7/(7^2+1) + 8/(8^2+1) -10/(10^2+1) - 11/(11^2+1)+ ・・・
=(π/√3){e^(5π/3)-e^(π/3)}/(e^(2π)-1)
と求まった。
[π/3代入<->5π/3代入]対称性より導いたわけだが、やはりここでも右辺分子にπ/3、5π/3が見えている。
まとめておこう。
これらは数値検証も行ったがもちろん正しい。
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