目次 . 掲示板 つれづれ日録 あーとだいありー 展覧会の紹介 ギャラリーマップ
リンク集 スケジュール ギャラリー日程 道内美術館の日程 アート本情報 その他のテキスト

展覧会の紹介

2004年 春陽会道作家展(絵画部) 2004年1月19日(月)〜24日(土)
札幌時計台ギャラリー
(中央区北1西3)

 毎年ゴールデンウィークの時期に上野公園の都美術館で展覧会をひらく、有力公募展のひとつ。
 1922年(大正11年)に梅原龍三郎らが結成した古参団体です。在野(非日展)系ですが、旗揚げ直後に前衛美術運動が盛んになり、ほかにも多くの団体が生まれたという歴史的な事情もあってか、日展系の穏当なリアリズムでもなければ前衛絵画、抽象画でもない、独特の雰囲気があります。

 絵画、版画の2部があり、版画部にも多くの道内在住作家がいますが、毎年会員、会友、出品者が一堂にあつまって展覧会をひらいているのは絵画部のほうです。
 ベテラン会員の八木伸子さんが
「ことしはいままででいちばんいい展覧会になったと思うの」
と話していましたが、3年ぶりに道内の会員5人全員がそろいました。会友の飯田辰夫さんや西田四郎さんなど、姿の見えない会友もいるのが惜しまれますが、全体としては見ごたえのある展覧会になったと思います。

 その八木さん(札幌)「雪野」は、石狩灯台の附近とおぼしき雪野原を描いています。
 おなじみのモティーフですが、以前は全体にピンクがかった色を帯びていたのにたいし、有彩色の部分がますます減り、水墨画のような風情を感じさせます。もちろん、塗りは厚いですから、その抵抗感というか物質感は、油彩ならではのものですが。

 昨秋2度の個展で健在ぶりをしめした谷口一芳さん(同)。「北の対話」は、フクロウが題材です。近年めだった、フクロウのモニュメントのようなもので風景を異化する作品ではなく、横に並んだ2羽が話し合っているというもの。いつになく平面的な構図で、羽根模様が装飾的な効果も生んでいます。

 ひさしぶりの登場となった宮西詔路さん(函館)は長年とりくんでいる「馬」。といっても、いろいろな色彩が画面を覆い、馬の姿が見分けられないほど、いつになく抽象的な作品です。

 安田完さん(網走管内美幌町)は、キリスト教に材を得たイラスト調の作品を、1999年ごろから発表してきましたが、今回の「空・空・空」は98年以前の画風にもどったかのようです。石の詰まった地中に、ロープのようなものでぐるぐる巻きにされた人間が横たわっており、死を濃厚にただよわせる重苦しい画面になっています。題は、旧約聖書の「伝道の書」からきているのでしょう。

 折登朱実さん(札幌)「旧市街」は、これまでと同様モノクロームの空気のにじむなかに、黒い線が走り、かろうじて古い街並みをとりまく空間のようなものを感じさせます。

 会友。
 大塚富雄さん(函館)は、一般入選からの昇格です。
 分厚い塗りで焼却炉を描いていましたが、昨秋の新道展で佳作を得た「破戒」で、ついに炉が壊れ、木片のようなものがばらばらに画面に散乱する絵になりました。といって、画面が散らかっている印象はなく、厚く重ねた絵の具の効果が出ています。
 なぜ「破壊」でなく「破戒」なのか、画面上部にかきいれられた「poison」という文字の意味はなにか等々、聞いてみたい気もしますが。

 新出リエ子さん(札幌)「続く」「相」
 ヒマワリをモティーフに生命感あふれる絵を描く新出さん。今回の2点とも、背景がフラットかつ鮮烈な赤になりました。あえて平坦な塗りにすることでモティーフを浮かび上がらせる意図があるようです。

 居島恵美子さん(苫小牧)「春の音」
 こちらもフラットな塗りの、中間色の茶が画面の過半を占めています。色が生っぽくならず、画面全体が凡庸なデザインにも堕さず、よくもこれほどむつかしい条件の抽象画をまとめているものだと感服します。画面の下方には白で木のシルエットが描かれており、今後の画風の転換を予告しているのかもしれません。

 中井孝光さん(札幌)「石切り場」「石の山」。しばらくのあいだ、欧州の町を俯瞰して描いていた中井さんは、この数年さかんにモティーフを変えています。ただ、輪郭があいまいで、白を基調とした描法は、変わっていません。
 また、横浜美術館の内部を描く石畑靖司さん(函館)が「ミュゼ Y−01」を、ひさしぶりに出品しています。佐藤愛子さん(札幌)はことしから会友。「新たな歩み」「中庭の光」で、あいかわらず元気なところをみせています。

 なまいきなことを言わせてもらうと、会友や一般のかたは、長年おなじテーマでがんばっているせい人が多いか、細部に拘泥するあまり画面全体でどういう絵にしたいのか、よくわからなくなっている例が少なくないように思えてなりません。離れてぱっと一瞥したとき、どういうふうに見えるのか、いま一度考えてとりくまれることを希望します。

 一般では、荒川敬子さん(札幌)「「大地 風」T」「13月の風」がおもしろいと思いました。白っぽい色で描かれた人物の背景に、茶や黒で風をあらわす渦が描かれ、むつかしい構図にもかかわらず空間を適切に処理しています。

 その他の出品者はつぎのとおり。
 ■会友
 安達ヒサ(旭川)「春を待つ」「霙降る頃」
 崎山かづこ(札幌)「作品1(よあけ)」「作品2(よあけ)」
 佐藤かずえ「新たな歩み」「中庭の光」
 豊嶋章子(同)「陽だまり」「冬・窓」
 小黒雅子(函館)「景」
 片野美佐子(同)「テラス」 
 高野弘子(同)「壊れた楽器」
 山形和子(同)「市の女」
 米沢史子(同)「古城(擁布拉康)」
 友井勝章(胆振管内鵡川町)「河原風景」

 ■一般・研究生
 札幌…落合輝美「樹T」「樹U」
     加藤薫「何処へ2004」     
     佐藤史奈「春へ(T)」「春へ(U)」
     山本周子「春の音」
 函館…加藤卓司「森のカーニバル 祈り」
     川真田美智子「uramado」
     吉本勝子「たわむれ」「夢想」
     和嶋和子「ひまわり」
     江端康子「山の古城」
     川股正子「鳥来る日」「鳥来る日」
 渡島管内上磯町…奥田順子「工場」
 同森町…小原敦美「冬林T」「冬林U」
 十勝管内新得町…斉藤啓子「風の残照」
 根室…柴田郁子「2つの刻 T」「2つの刻 U」
 登別…田中春陽「知・感・情」「介護」
 旭川…平間文子「冬の花」
春陽会ホームページ

春陽会道作家展…2001年
2002年
2003年