歩いて元気に
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−健康づくりのための運動指針−

まずは平成5年4月12日に出された,「健康づくりのための運動指針」をご紹介.
これは公衆衛生審議会健康増進栄養部会ってところで審議され,厚生大臣に意見として出されたものなんだよ.いろんな本にも出てるんだけど,ここでも予備知識として眺めてみてください.

策定の趣旨

 科学技術の進歩とそれに伴う自動化・機械化は国民の生活を豊かで水準の高いものにしてきました.しかし,一方では,家庭,職場,地域における国民の生活活動や生活様式を大きく変えてきました.
 すなわち,家事は軽減され,職場でも軽い作業が主体となり,生活全般における歩行などの身体を動かすことが減少してきました.その結果,いわゆる運動不足が原因となる肥満,高血圧,高脂血症,糖尿病など成人病の増加や体力の低下が新しい社会問題となってきています.そこで,生活の中での活動量を増したり,生活の中に運動をとり入れて,健康を維持増進することが重要になってきました.
 このような状況を背景にして,平成元年に「健康づくりのための運動所要量」を作成しました.今般これに加え,運動をもっと普及させ,親しみやすいものにすることによって,明るく,楽しく,健康な生活を創造することを目的として,「健康づくりのための運動指針」を策定しました.

指針の基本的な考え方

 運動には健康・体力づくりや成人病予防などの種々の効果があるといわれています.健康づくりのための運動とは,息切れするようなものではなく,話をしながらでも楽にできる「はや歩き」のような運動をさします.このような運動は特別に時間をつくらなくても,生活の中で無理なく継続して行うことによって,安全で効果的な健康づくりができます.
 健康づくりのための運動は性や年齢によって若干の違いもありますが,「健康づくりのための運動指針」では最も基本的で男女はもちろん幅広い年齢層のだれにでもあてはまる重要なことがらについてまとめました.
 運動のやり方はその人の健康状態や体力によって異なります.この「健康づくりのための運動指針」では,健康な人や,健康診断の結果,生活指導程度でよいとされた人を対象としました.治療中の人や何らかの自覚症状のある人はまず医師に相談してください.
 健康づくりのための運動を行うときには,体調や栄養にも注意する必要があります.「健康づくりのための運動指針」を利用する場合には,平成2年に示された「健康づくりのための食生活指針」も参考にして,総合的な健康づくりを行うことが大切です.

生活の中に運動を

 歩くことからはじめよう
 生活の中に運動をとり入れるには,まず「歩く」ことからはじめよう. 季節のうつりかわりを見たり,家族や友人と話をしながら歩くのはとても気持ちのよいものです.
 歩いても車や電車を使っても時間がそう変わらない場合や,近くへの買い物などはできるだけ「歩く」ようにし,階段とエスカレーターがあったら,自然と階段の方に足が向くように習慣づけましょう.
 「歩く」のは,いつでも,どこでも,一人でもできる最も身近な運動であり「健康づくりのための運動」のまさに第一歩です.
 1日30分を目標に
 1日30分,起きている時間の約3%,意識して身体を動かしましょう.いちどに30分続けるのが無理なら,何回かに分けてもかまいません.まずは合計30分を目標にはじめましょう.運動をする時間がない場合には,職場や家庭でもこまめに身体を動かすなど,生活の中で意識して身体を動かせばよいのです.
 それには「歩く」ことが最も簡単であり,1日30分意識して速く歩くことを心がけるとよいでしょう.
 また,1日の合計歩数は1万歩を目標にしましょう.
 息がはずむ程度のスピードで
 「歩く」時には息がはずむ程度のスピードで歩きましょう.
 さっさと歩くような,息がはずむ程度の運動は大変安全で,気持ちよく,健康づくりに最も有効です.
 「歩く」以外の運動やスポーツをする場合にも,「歩く」場合と同様に,息がはずむ程度の強さが健康づくりに最も効果があります.
 息のはずむ程度の運動を続けていると,身体を動かすライフスタイルが身につき,活動的な生活が送れるばかりでなく,高血圧,高脂血症,糖尿病などの成人病の予防になるといわれています.

明るく楽しく安全に

 体調に合わせマイペース
 運動やスポーツはあまり勝負や技術にこだわらず,明るく楽しく,マイペースでやりましょう.
 身体の調子の悪い時や睡眠不足の時,寒い時や暑い時には無理に運動する必要はありません
 準備運動をして身体をならし,整理運動をして疲労や緊張をとり除くなど,気持ちよく身体を動かせるよう,体調を整えて運動しましょう. 
 自分の体調や体力にあったやり方をすることが大切です.
 工夫して,楽しく運動長続き
 運動は続けることが大切です.
 自分が楽しいと思う運動は続けてやれるものです.
 「歩く」ことはいつでもどこでも一人でもできる便利な運動ですが,「歩く」ことに自然の移り変わりを観察するなどの楽しみが加わればさらに続けやすくなるでしょう.
 ダンスやゲーム性のある運動は楽しいものですし,自然が好きな人は自然の中で楽しめる運動を選ぶなどするとよいでしょう.
 また,家族や友達との心のきずなは運動を楽しく続ける原動力となるでしょうし,楽しい運動は生きがいにもつながっていきます.
 ときには楽しいスポーツも
 余暇時間をつくって,楽しいスポーツをしましょう.何もかも忘れて,いい汗をかくスポーツは心身ともにリフレッシュし,明日への活力を生み出します.
 テニスやバレーボールなどの仲間とするスポーツもいいでしょうし,ジョギング,水泳などの一人でできるスポーツもいいでしょう.
 中高年者では,レクリェーションや趣味としての無理しない程度のスポーツが,安全で楽しく長続きするでしょう.
 また,バランスのとれた体力をつけるために,筋力をつけるような運動や柔軟体操などもとり入れるといいでしょう.

運動を生かす健康づくり

 栄養・休養とのバランスを
 充分な栄養と休養を考えて運動しましょう.
 食事は運動にみあっただけとることが大切です.運動量が増えるとエネルギーや栄養素が不足することがあるので,特にタンパク質,ビタミン,ミネラルは充分にとりましょう.
 睡眠はその日の疲労をとり,明日への活力を生むために欠かせないものです.運動で健康づくりをするには充分な睡眠を心がけたいものです.
 疲れのとれ方は,人によって異なります.毎日身体を動かして疲れがたまる場合には,運動量を減らしたり,休養を増やしたり,食事の量やバランスなどに気をつけましょう.
 禁煙と節酒も忘れずに
 健康づくりの運動を続けていると自分のライフスタイルを見直すことができます.その結果として,たばこや酒の量が減ってくることがいわれています.特に,運動を続けているとたばこを吸わなくてもあまり気にならなくなるといわれています.また,たばこを吸ったり,酒を飲みながら運動するのは身体のためにいいことではありません.
 健康づくりの運動を契機に,たばこ,酒とのつき合い方を見直してみましょう.
 家族のふれあい,友達づくり
 運動やスポーツで汗を流すことは,気分を爽快にし,心を和ませるので,家族とのふれあいを深めたり友達をつくるよい機会となります. 
 近年,ますます忙しくなる日常生活の中で家族が一緒に過ごす時間が少なくなっています.運動を通じて家族のふれあいを深めましょう.  
 また,職場や地域社会で運動の輪を広げることは,体力つくりばかりでなく,精神的ストレスや人間関係の改善にも効果があります.運動を通じて多くの友達をつくりましょう.
 このように運動を通じて家族とふれあい,友達をつくることによって,ひとりひとりの人生を健康でより豊かなものにするだけでなく,家庭生活や社会生活をゆとりある豊かなものにしたいものです.

(財)日本食生活協会:健康づくりのための運動指針(1993)


(2001/2/17) Page Top