人間関係ショートショート
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−たまには変化球−

 私は昔,上司から「お前はいつも直球勝負だな,たまには変化球でも投げてみろよ」とよく言われたものです.この意味,わかります? そう言われた時の状況を説明すると,大体が会議の後なんだよな.いまはね,なんと「味のあるお言葉」...なんだと思う.
 勘のいい方,お分かりかも..そう,直球とは,いわゆる「正論」のこと.正しいことを主張することがなぜいけない? 思うよね〜.私も,言われる度に,全然,納得いかんかったもの.私は「会議というものは,互いの意見をぶつけ合い,そこから結論を導き出す場.そこにおいては,トコトン話し合うべきだ」なんて思っていたわけ.だから,意見が食い違うと,よく相手に食ってかかったものだった.そして,相手にその論拠を問い詰めたり,自分の意見に裏付けを列挙してみたり...(いま思い返せば,なんと浅はかなことをしていたか...^^;)
 いくら主張が正しいからといっても,相手の逃げ場をなくしちゃいかんよね.これじゃ,どけだけ正しいことを言ったとしても,誰にも聞いてはもらえないんだ.それに,会議という場において,そういうことをすれば,周りの人だって全然リラックスできないし,逆に引いちゃうよね.コミュニケーションとしては最悪の状況だよ.他の人が正しいから賛同しようとしても,「場の雰囲気」ってもの考えて中立に立っちゃうよね.結局,正しくても孤立.これじゃ,民主主義の採決,とれないよ.
 直球で,ズドッと攻める.たまにやるから効くわけで,日頃は十分に相手の立場を思いやり,あの手この手で議事をかき混ぜてみる.そういう変化球が必要だってことだったんだよね.「こういう場合は...,ああいう場合は...,そして結論,こんなんでどうでしょう..」なんてとこ.まどろっこしいかもしれないね.白黒急ぐのがなぜ悪い?..まだ思うかな?
 じゃあ質問.この世の中に,「正しい」,「正しくない」の基準,どれだけあるんだろう? 正論っていったって,ある側面においての正論なんじゃないだろうか? 一つの条件設定,シチェエーション変えただけで,全然違った結論になることないのかな? 対立した人は,その設定条件が違ってただけってことないのかな? 喩えがよくないかもしれないけれど「タバコは喫煙場所で吸ってください」,これ正論.でも,周りを見渡して喫煙場所が全くなかった場合,そして傍にニコチン中毒の人がいた場合.頭ごなしに「ここで吸うな!」と言うのが正論?
 これ,会議に限らず,日常の会話でもいえることだよね.いくら自分が正しいと思っても,まず,そこでひと呼吸.相手の事情もよく考え,逃げ場も用意し,そこまでしたら怖がらず,自分の気持ち,伝えてみましょ.
 
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