こ の ペ ー ジ は ク リ ニッ ク の お 客 様 た ち と の 出 会 い  か ら 生 ま れ ま す
 

  記憶
    2008/3/31 new
  
 
 初めていらしたおばあちゃまです。 90才に近い方でした。インフルエンザワクチンを
受けにいらしたのでした。 初めてなのですが、どうしても知っているような気がします。
いつなのかなー、どこなのかなー、........。順番の数人前からじっと記憶をたどりました。
  そうでした。あの方です。思い出しました。まだ4、5才の頃、集団で末広町を駆け回っ
て遊んでいたころです。中屋金物屋さんが提供して、引き上げの方々がマーケットをやっ
ていた場所、そこから東へずーっとくだり、うなぎの新よしさんまでがテリトリーでした。
日の明るい間は末広町を駆けめぐって、おにごっこやいちだん飛びをしていました。
5,6人であったり、多い時は10人以上の子どもが群れて遊んでいたのでした。
車は殆ど通っていません。今思えば石油がとだえていたのでしょう。たまに通る車は、信じ
られない事ですが木炭を炊いていました。なかなかエンジンがかからなかったような気が
します。
 さて夏のある日、中屋さんのところで道路の向かいをめざして飛び出しました。
すると誰かが思い切り私のお尻を引っぱたいて、それからギュッと抱きかかえたのでした。
「えっ、なぜ?」とひるみました。すると目の前をトラックが走りすぎたのでした。
「ちゃんと見ないとだめでしょう!」と大声で叱られました。本当にたまには車が通るのでした。
  今目の前にいらっしゃるのは、あの時のあの方でした。
お話しても覚えてはいらしゃらないでしょう。でもやっぱりあの方です。

 あの頃、おとなは、自分の子どもも、よその子どもも、悪い事をしていたらきちんと叱って
くれました。 お尻が痛かったこと、抱きしめられて息が苦しかったことが、昨日のように
浮かんできたのでした。