ク リ ニッ ク の 小 さ な お 客 様 た ち の 楽 し い 情 景 で す

同情ニューロン
       2006/12/14  new
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今年もインフルエンザワクチンの季節がやってきました。

いつもの月よりも、お父様、お母様、おばあちゃまが多く来ていらっしゃ
います。クリニックおなじみさんとしては、子どもの方が先輩で、ご家族が
後輩と言う感じです。

「ママ、がんばって良い子にしてね。終わったら美味しいジュースを買って
あげますよ。」とマコチャン(3才)の、おねえさんっぽい声が聞こえます。
ママのまわりを心配そうにうろうろ動きながら、ママをなだめていました。
自分がいつもしてもらっているように、ママを気遣っているのでした。

カオちゃん(3才)のお母さんの順番でした。
突然「ウェーン!」と大きな泣き声が聞こえました。カオちゃんはカーテンの
向こうにいたのでしたが、たとえようもない大声で泣いたのでした。
なんて優しいのでしょう。「うちだ先生はきっとお注射をする。きっとお母さん
は痛いだろう。だから私もつらくて涙が出るの。」 という気持ちでしょう。
聞いているこちらも思わず胸が痛くなるのでした。





























  最近「同情ニューロン」と言う言葉を知りました。

ロンドン大学のシンガー博士の「サイエンス」に著した論文です。
fMRI(機能的磁気共鳴画像)という装置を用いて、人が苦痛を感じる時
脳がどのように反応しているかを丹念に調べています。
fMRIで脳の活動を記録しながら右手に痛み刺激を与えました。すると古く
から知られているとおり、「視床」や「体性感覚野」など特定の脳部位が反応
しました。これらは痛覚経路です。 しかし痛覚とは関係ないと思われている
「帯状野」と「島皮質」も同時に反応したのです。後日これらの部位は自分
ばかりではなく、他人が苦しんでいる時にも反応する事がわかりました。
 シンガー博士は他人の苦痛を感知する優しい神経「同情ニューロン」と
名づけました。しかし丹念な実験を積み重ねた結果、同情ニューロンが活動
するのは、近親者や恋人の場合だけで、見知らぬ他人には反応しないという
事でした。
  参考図書: 「脳はなにかと言い訳をする」池谷裕二 著  祥伝社 1680円