「ど、どーしてこんな事に…」
 俺の大声に反応して泣き出した子供たち(ヒナタ・サクラ・ナルト)をどうにかあやして泣き止ませ、落ち着いたところで聞いてみる。
 日当たりの良い、南向きの広い部屋には、子供用の口に入れても危なくないようなおもちゃが散乱し、九人の子供が思い思いに遊んでいる。
 よく見ると、同い年の筈の彼らは微妙に年齢が違うらしいけれど、それはどうやら月齢の問題らしい。
 とにかく。
 本来十二歳のこいつらがこんなになっている理由を聞かないといけない。
「んー。詳しい事は俺も解りません。居合わせた訳じゃないんでね」
 そう言いつつも説明してくれた内容によると。


 今日、七班・八班・十班は合同演習だったそうだ。
 カカシ先生が上忍の任務で留守だった為、一人で六人…より二人で九人の方が良いとの判断だったらしい。
 それ自体は何の問題もない。アカデミーから一緒の所為か、この三班の子供達は何のかの言いながらも仲が良いのだ。今回も、騒々しさはともかく、演習はスムーズに行われていたらしい。
 だが、そこで事件が起きた。
 他里の上忍が数名、演習場近くの森に入り込んだらしい。
 子供達に待機を命じ、アスマ先生と紅先生は現場に向かった。…そちらの方は、人数も多く、少々梃子摺ったそうだけれど、二人は取り立てて怪我もなく、演習場に戻ってきたらしい。
 だが。
 そこにはいつもの子供達の姿はなく、現在のこの状態…つまり、乳幼児の姿の子供達が泣いていた────────


「…原因は」
 内容の不可解さに首を傾げながら問う。状況・チャクラの種類・血液検査・遺伝子情報等でこの子供達の正体は確定したそうだけれど。こうなった原因が不明では。
「…禁術の類ですね。衣類に付着していた薬物や後に残ったチャクラの痕跡からの判断になりますが」
「…誰がこんな事を」
「…さぁ。それを今、アスマと紅、暗部で探っています。実は俺もそっちの方に参加する予定だったんですけどね」
 三代目が我侭を言うから。
 苦笑気味にそう言って愚図りだしたナルトを手であやす。その周囲には、いつの間にか子供達がぴったりとくっ付いている。

 慣れてるなぁ…

 …じゃなくて!
 こうなった原因も判らず、解術の方法も判らないんじゃ大変じゃないか!何で依りによってカカシ先生を探査から外して子守なんかさせてるんだよ!
 …そりゃ、これだけ子供達に懐かれて、しかも子守慣れしてる様子を見たら納得いかない訳じゃないけれど。
 それでもどこか間違ってる気がするよ…。
「…シカマルの説明によりますとね」
「あ。はい」
 困ったような顔に身構える。この、小さくなったシカマルからどうやって話を聞きだしたのか、なんて事はきっと些細に違いない。
「変な術の標的なナルトだったようです」
 ぽそりと告げられる事実。…ナルトが狙われた?
「変な術が作動して、ナルトが縮み始めた…と。それに気付いたサスケとサクラが咄嗟に結界を張ってナルトを庇い、他の子供達もそれに順じたそうです」
「…サスケたちが」
「その所為で、子供達全員が幼児化してしまったようですね。…でなければナルトは死んでいたでしょう。事実、標的だけあってナルトが一番状態が酷い」
 カカシ先生のアンダーを握るサクラが不安そうに見上げている。その頭をくしゃりと撫でて、膝の上に。
「…それは、退行し過ぎて、と言うことでしょうか?」
 恐る恐る尋ねる。…全員で庇ってこうなったのなら。ナルト一人で術を受けていたらもしかしたら…。
「そうです。…胎児では保護しようがありません」
「…そう、ですね…」
 自分で確認しておいて怖くなる。
 子供達が揃っていて、そしてナルトを護ってくれて本当に良かった。仲間だと思ってくれてて本当に良かった。




 …が、それはそれとして。
「…か、カカシ先生…」
「はい、何ですか?」
「俺、自信ないです。乳幼児なんて触った事もないし…」
 そう。
 例えこの赤ん坊達がアイツらだとしたって。こんな小さな子供相手なんて無理だ。…女性ならなんとかなるかもしれないが。
「そうでしょうねぇ」
 苦笑と共に吐き出される言葉に安堵しかける。
「二十歳以上の上忍・中忍は子守なんてしなかった筈ですから」
 そうだろう、そうだろう…て。え?
「今でこそ子守任務なんて当り前ですけど。昔は忍に我が子を預けるなんてなかったですから」
 さらりと言われた内容に愕然とする。今は割と当り前に依頼される子守。それが昔はなかったなんて。
 …受付も担当してるのに知らなかった。
 確かに、思い返せば子守なんてしてる仲間はいなかったな。
「そうなんですか?」
「えぇ。時代の所為でしょうね」
「…はあ…」
「とにかく、他に頼める人もいませんし。ま!慣れてくださ〜いね」
「…はあ」
 にっこり笑うカカシ先生を眺めつつ、よく判らないまま、それでも任務拒否の道が遮断された事だけは判った。


粗品。10万打キリリク。…更に、続きます。

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