さて、みなさま、久方ぶりにこの話の舞台はこのプリベンター極東支部に戻って参りました。

 地上を我が物にせんと動き始めた地下勢力のミケーネ帝国と恐竜帝国。

「我がビッグファイア様の為に」の合い言葉と共に『BF団』の怪しげな動き、それと連動するかの様に復活しようとしている地球連合エリート部隊『ティターンズ』。

 そして、謎の攻撃を地球各地に仕掛ける謎の組織。

 さてココで、今回のこの『スーパーロボット大戦〜星達が伝えたいこと』に大きく関わってくる組織が登場するのです。

 それではみなさまご一緒に、ガンダムファイトレディーゴー!!!

第7話 ドモン・カッシュ

 それは…ある時、突然だった。

 ラ・ギアスで天変地異が起きた頃、それは突然レーダーに反応したのだ。
 宇宙からの飛来物。
 隕石と思われてもおかしくないぐらいの大きさの物体。

 一瞬ではあるがエネルギー反応を捕らえるも、エネルギー反応及び、その物体そのものもレーダーより消滅したのであった。
 その事は、発見したごく一部の者だけの極秘事項となっていた。

 そして、時を同じくして、同様のエネルギー反応を持った物が多数、地球上の各地に飛来したのであった。

「…日本か…」

 黒いマントに包まれた男は傍らの女性に聞こえるぐらいの声でつぶやく。

「情報によれば…『D.C』…『ディバイン・クルセイダーズ』の極東本部に知っている人がいるはずよ…。情報によれば…だけど」
「しかも、その問題の『人物』は…現在『行方不明』らしいな」

 情報を自分達に与えた『人物』に男は軽く皮肉る。

「いるかも知れないって言ってたでしょ?いなくても、行ってみる価値はあると思うわ。私達は『その事』に対して何も知らないのよ。少しでも『あれ』に近づける可能性があるのなら、無視することは出来ないんじゃない?」

 女性の言葉に男は渋々うなずく。

「そう、言い忘れる所だったけど。いい、絶対『プリベンター』には手を出してはダメよ。分かってると思うけど。いいわね」
「分かっている。手をだしたら『失格』だからな」
「絶対よ。約束、して」
「…あぁ、約束する」

 そう答えた男を女性は心配そうに見上げた。

「これです、データは」
「わざわざありがとう、ウッソ」
「いえ、久しぶりにセニアさんに逢うんですから」

 そう言ってウッソはシャクティと見合った。

 あたし達に遅れること2日、ウッソ達はカサレリアからこの極東支部へとやってきた。

「…あたしは元気だよ。そっちはどう?また、迷ったりしてない?」

 で、あたしはウッソ達が持ってきたデータをずーっと、解析していた。

 ウッソ達が持ってきたのは、カサレリアを攻撃した謎の機体。
 地上の金属ではないということから宇宙からということを考え、L4コロニーのサイド1のロンデニオンにいるプリベンター宇宙支部のブライト長官と連絡を取り合ったのだ。

 現時点で自由に動けるのはあたしぐらいだしね。

 今まで知らなかったのだけど、宇宙のプリベンターのメンバーに関する情報がかなり絶望的になっていた。
 みんな、元気でいると思っていたのに。
 木星船団と連絡が取れないわ、火星基地とも連絡が取れない。

 状況が状況なだけに、ブライトさん達が地上に降りてくるのはかなり難しいと言うことだった。

「セニアの様子?うーん、今、正直言って、それどころじゃなーい!!!って怒鳴りそうな気配」

 木星船団が連絡取れなくなることはそんなに珍しい事じゃないらしいんだけど(通信機の故障とかでね)火星基地と連絡が取れなくなることは滅多になかった。
 火星基地は、木星圏と地球のちょうど中間地点に存在し、木星船団ジュピトリスの中継基地をかねている。
 その為、火星の地上で起こる磁気嵐の季節にぶつかるような航行はしないし、火星基地の人々もその時期は、火星上空にある火星の衛星基地フォボスまたはデイモスにてやり過ごすかしているからだ。

 だからこそ、この、火星基地との通信断絶を軽く見ることが出来なかった。

 そんな状況下での地球への謎の戦闘機の攻撃(この接近は宇宙で確認することが出来なかった)及び、数か月ほど前の謎の物体の飛来。
 且つ、ヨーロッパ圏でのティターンズの復活とBF団の謎の行動。

 これらがすべて本格化し出したら、きっと収拾つかなくなるわ。

 膨大なクリストフのデータ集の中にも、カサレリアに飛来した戦闘機のデータは存在しない。
 バルマー戦役時バルマー人は木星を拠点として…って言うから、木星にいたリューネにも聞いては見たけれど、知らないっていうし。

 …一体、あれはどこから来たのよぉ。

「頭、かきむしって考えてるから『絶対』忘れてる。頭の彼方に飛んでるね」
「リューネっっ!!ラ・ギアスの件については忘れてないからね!!!」

 さっきからマサキとエーテル通信機で話しているリューネにあたしは言う。

 ったく…手伝ってくれればいいのに…。
 でも、気になることが…一つない訳じゃないのよね…。

 忘れちゃいけない、ラ・ギアスの事。

 ラ・ギアスで異変が起き始めた時のこと、地球上でなにかあったか確認したら、それが、謎の飛来物の到来した時期。

 どうやら、一部の人の間だけの秘密になってたみたいなんだけど。
 …それが落ちた時期と、ラ・ギアスで起こっている現象が現れた時期と。
 合うんだよね。

 一瞬のデータからは不明だけれど。
 だとしても、…それだけじゃ、ラ・ギアスに天変地異を起こす事なんて出来やしない。

 でも…、多分これが『鍵』?
 機械獣とかよりも?

 ラ・ギアスは魔力によって地球内部に出来た歪曲した空間の世界。
 外部よりの干渉はほぼ皆無になってくる。
 そして、ラ・ギアスは余程のこと(地球が崩壊するとか気候が変わるほどの隕石が落ちるとか)がない限り、外部からの干渉は受け付けないのだ。

 人工的に…可能か不可能かと言えば、…不可能に近い。
 干渉する方法は魔力しかないから(実際にはクリストフがやった…)。

 現在、地球上にラ・ギアスに魔力によって干渉出来る人間がいるか…。

 答えは否。
 強固な魔法結界を施しているからだ(ラ・ギアスに迷い込んだ人はまた別問題)。

 強大なエネルギーをラ・ギアスに干渉させるほどの魔力がどこに存在するの?

 ま…まさかあの緑わかめ…って事ないわよね。
 ルオゾールが生き返って〜なんて事ないもん。
 そんなことあったらサフィーネが分かるって言ってたし。

 じゃあ、何?

「原因の…原因といいましょうか…」

 クリストフが言った言葉を思い出す。

 原因の…原因???!!
 それが…その原因の原因が…ラ・ギアスに干渉するほどの強大な魔力をもった何かなのよ!!!!
 でも…何?それっ。

 だめぇ…わかんなぁい。

「ムーーーーーー」

 机に突っ伏して、顔を上げると、リューネはマサキと楽しそうに話していた。

 …な〜んか…ムカツク。

「………マサキ、そっち、変わったことない?」

 むかついたので、リューネとマサキの会話に割り込む。

「…お前、いきなり入ってくるなよ…」
「なに?寂しいの?」
「もぉっあたしは、マサキに聞きたいことがあるのっ」

 あたしのほぼ逆ギレ気味の様子に、リューネは呆れながら

「わざわざ割り込まないでさぁ、シュウに直接、聞いてみればいいんじゃないの?」
「なんで、クリストフに聞かなきゃならいのよぉ…。って言うか、どうせ、この会話聞いてるんでしょ?マサキの近くで。わざわざあたしが連絡しなくても平気」

 今さらしたらきっと怒るわよ。
 だって、地上についてすぐに連絡いれなかったから。

 連絡しなきゃって思いだしたの、今(しかも、リューネとマサキのやりとりを見て)だもん。
 絶対、クリストフの事よ、小言言うに決まってる。

 せっかく、こっち楽しいのに。
『いや』な気分になんてなりたくないもん。

「と、言うわけだから、マサキ、後、よろしくね」
「ってセニアっ」

 マサキの言葉の途中であたしは通信機を切る。

「…勝手に切って。…もぉ、セニア、あたし、知らないよ?どうなったって」
「いいのいいの。さて、このデータ見て、どう思った?」

 リューネの言葉を軽く流し、ウッソが持ってきてくれたデータを今一度確認する。

「うーん、この機体…。えっと、『シルベルヴィント』?だよね…。マサキのサイバスターに似ててなくもないなって思ったけど」

 リューネが資料を見ながらそう言う。

「真似?してる?」

 そしてあたしの顔を見る。

 リューネの言葉は間違ってないと思う。
 恐らく彼等がデータを取る機会は今まで何度でもあったと思う。
 マサキはバルマー戦役の前に一度地上に出てきてる。
 そして、バルマー戦役時に地上に再びあがって敵…太陽系外から来た『バルマー軍』や『ゼントラーディ軍』、『メルトランディ軍』と戦っている。

 その時に、彼等中に別の人種がいたら…。
 その人物が、『サイバスター』の形状、戦闘法、すべてチェックしていたら…。

『サイバスター』を真似ることは可能だわ。

 他の世界に、どのぐらいの技術があるか全く分からないのだもの。

「でも、あたしが見た中じゃこんなのなかったよ」
「…リューネ…ひとつ質問していい?」
「何、聞かれるか分かるけどね…。オヤジのことでしょ?いいよ、オヤジ、マッドサイエンティストだし、そう考えてもおかしくないよね。第一、娘のあたしも考えてるんだもん」
「…ごめん」

 あたしの言葉にリューネは少しだけ寂しそうに微笑んで言う。

「もう、そんな顔しない。DCの総帥だったオヤジが『AGX-05』の戦闘データを見ていたことがあるから…。『AGX-05』って知ってるよね、マサキがバルマー戦役前に地上に出た時に連邦軍に見つかって付けられたコードナンバー。でも…考え直して気付いた。この機体はオヤジの趣味じゃない!!!!って」

 そう言って力強くリューネはうなずき確信する。

 趣味じゃない…ってどういう事よ。

「んー…オヤジって結構ごっついのが好きなんだよね。シュウが乗ってるグランゾンみたいな。グランゾン製作の許可が下りたのってやっぱりオヤジがあぁいう、ごっつい感じのが好きだからだと思うよ。だからあたしが乗る機体だって、最初すっごいごっついやつだったんだけど、絶対やだってだだこねたらヴァルシオーネ作ってくれたぐらいだしね」

 そう言ってリューネは微笑んだ。

 …どのみち、この時点で結論を出すのは早すぎる。
 まだ何の情報も手に入れてない。

 機体解析も、ウーイッグで起った戦闘の時に撃墜した機体から採取したデータのみ。
 そこにあったのはその機体と同一機の『ガロイカ』とサイバスターに似た指揮官機と思われる『シルベルヴィント』の機体種別信号のみ。

 それ以外のデータは存在しなかった。

 乗組員は不明。
 多分、撃墜時の衝撃で死亡したのと考えられる…。

 判断する材料が少なすぎる。
 この時点で…っていうのに無茶はあるけれど。

 と言う訳で木星圏の状況が知りたいと思って連絡したら連絡がとれないという状況になっているのだ。

「ココで、火星基地と連絡が取れないのは…痛いわよね」
「セニア、やはり火星基地とは連絡が取れないのですか?」

 あたしのつぶやきを聞いていたかのようにタイミングよくリリーナが入ってくる。

「…ヒイロは何も言ってないの?」
「…えぇ、明日、重要な会談がありますから、動揺しないようにと…思っているのだと思います。けど…」
「気になるよね。火星基地にはゼクスがいるんだもんね」

 リューネの言葉にリリーナはうなずく。

 そっか…お兄さんだっけ…、ゼクスは…。

「ノインとゼクスは恐らく無事、火星基地を脱出してるはずよ」

 プリベンターの制服に身を包んだ落ち着いた感じの女性が入ってくる。

「久しぶりね、リリーナ」
「サリィさん、いつ、こちらに?」
「五飛や、ウッソ達と一緒に来たのよ」

 そう言ってその人は穏やかに微笑む。

「セニア、紹介します。五飛さんのパートナーで恋人のサリィ・ポウさんです。リューネは逢ったことありましたよね」

 リリーナの言葉にリューネはうなずき、彼女…サリィさんはあわてる。

「リッ…ドーリアン外務次官、余計なことはおっしゃらないでください」

 そんなサリィさんの様子にリリーナは微笑む。

 …あの、五飛の恋人。
 はぁ、人は見かけによらないっていうけれど、サリィさんぐらいの大人な感じの人じゃないと五飛の相手はつとまらないかも。

 ちゃんと考えてるようで五飛もがーってつっぱしちゃうし。

「もぉ。リリーナ、私がココに来たのは、あなたに話があるからよ。火星基地のゼクスとノインの事。どうせ、あなたのことだから気になって仕方ないのでしょう?ヒイロもヒイロね、無駄に隠す必要はないのに。あなたなら…すべてを受け止めるだけの強さがあるの一番知ってるのあの子のはずなのにね」

 そう言ってサリィさんはため息をつく。

 なんか…ヒイロの甘やかしぶりが目に浮かぶ。

「サリィさん…。教えてください、無事脱出しているということは何を根拠に?」
「恐らくと言う段階で、まだ確実と決まった訳じゃないわ。他の基地の職員がそう、ロンデニオンに連絡してきたらしいから。彼等は脱出したの。二人が先に行くようにと言ったらしいわ。衛星基地フォボスの方でね」
「…何で、先に行くようにって?」
「セニアさん、宇宙のブライト長官から少しは聞いたかしら、木星帝国軍と海賊の話を」

 突然の転換。
 木星帝国軍と海賊?

「聞いてないわ。リューネは知ってる?」

 リューネに問い掛けると首を振る。

「詳しいことは分からないのだけど、火星基地に何度か攻撃を仕掛けてきた連中らしいわ。その連中と宇宙海賊との小競り合いが数回アステロイドベルトで行われいるらしいの。それでね、その小競り合いに地球に帰還予定だった木星船団が巻き込まれたようなの。どうやら、ノインとゼクスの二人はその確認をするために、二人でその場に向かったらしいわ」
「らしい?って火星基地にいた人は、二人が向かった所を見てないの?」

 あたしの言葉にサリィさんは厳しい顔でうなずく。

「火星基地の職員が脱出するのを見届けてからその場に向かうって言ってたようよ」

 サリィの言葉に場は静まりかえる。

「無事と決まってないと言うことはそう言うことなのね」
「えぇ。宇宙海賊が味方であることを祈るしかないわね」

 サリィはそう言った。

「リリーナ、希望を持って」

 ひとつの事実があることを確認しながらあたしはリリーナに告げる。

「木星船団の方にはジュドーとルーがいるはずよ。ジュドーとルーとゼクスとノイン。ちょっと寂しいけど、4人もいれば何とかなるわ。何たって、プリベンターの一員なんだから、4人の実力あなたはもちろん、あたしも知ってる。ね」
「セニア…」

 あたしの言葉に、リリーナはふっと顔を和らげる。

「そうですね。私は信じていなくては…。私にはやるべき事があるのですから。ありがとう、サリィさん、セニア。私は今から明日の会談の為に資料をまとめます」
「あっリリーナ。これ、忘れそうになったけど」

 リリーナの言葉で思い出したかのようにサリィさんはリリーナに紙の束を渡す。

「なんですか…これは…」
「明日の会談の為の資料よ」
「ありがとうございます。サリィさん、わざわざ調べてくださったのですか?」

 とのリリーナの言葉にサリィさんはいたずらっ子のように微笑んで言う。

「それ、ヒイロがまとめたのよ」
「えっ…そうですか」

 そう言ってリリーナは資料を愛しそうになでる。

 借りて見ると、それは細かいながらも、わかりやすく丁寧にまとめ、整理のなされていた資料だった。

「今、思ったけれど、ヒイロはあなたの行動予測していたのかもね」
「え?」
「絶対、誰かにゼクスの事聞くと思ってたのよ。資料まとめに時間がとれないだろうって最初から予測していたのかもね」

 サリィの言葉にリリーナは苦笑いを見せる。

 ホント、よく丁寧に纏められてるわ。
 会談相手のプロフィールから、相手の国の背景、政治形態、軍事関係、経済。
 ほんと、事細かにかかれてるわ。

 で、ひとつ疑問に思った。

「ねぇ、ナショナル・コロニーって?」

「すみません。----博士にお逢いしたいのですが」

 ライトブラウンの髪にスーツタイプのワンピースにジャケットを羽織った、その女性は受付にやってきていた。

「アポイントメントは取っておられますでしょうか」
「…ウルベ・イシカワ少佐から連絡が入ってると思うのですが」
「お待ちください」

 女性の言葉に、受付の女性はアポイントメントを受けたデータを確認する。

「ネオ・ジャパンの方ですね。申し訳ありません、現在、博士は長期休暇を取っております」
「いつ頃戻る予定ですか?」
「……大変申し訳ありません。いつ頃と言う予定も全くなく、現在未定となっております」

 受付の女性の言葉にそのやってきた女性は肩を落とす。

 だが、思い切ったように、ひとつの質問を受付の女性に投げかける。

「あの、、親しい方とかおられませんか?」
「…親しい、人物ですか?」

 受付の女性の妙に歯切れの悪い様子に、ライトブラウンの髪の女性は訝しがる。

「どうかしたんですか?」
「…いえ…」

 その刹那。

「ウーーーーーーーーーーーーーー」

 けたたましいサイレンが建物全体に鳴り響く。

「極東支部、緊急放送に変わります。緊急警備体制に総員ついてください。所属コード不明のMS『Gタイプ』が付近に出現。繰り返します…」
「所属コード不明の点Gタイプですって…」

 女性は嫌な予感を感じながらポケットパソコンをを探し出す。

「外にでては危険ですっっ」

 その声を後ろに聞きながら、彼女は、そのパソコンのモニタを確認すると
『Ready』の文字。

「…バカっ…ドモンのバカっ」

 黒いマントで身を包んだ赤いはちまきを巻いている男はこちらに向かってきている機体『ウィングガンダムゼロ』の姿を認める。

「連邦のGタイプか…。知らんとは思えん。でろぉ!!!ガンダムっっ」

 そう叫んだ次の瞬間、ガンダムと思われるM.Sが極東支部前の海から出現した。

「コアランダーっ」

 男は、コアファイターと同型の物に乗ってその『ガンダム』に向かった。

 館内に鳴り響いた警報の後の放送。
 あたし達は驚き、海上の方に目を向けると、そこに合ったのは『ガンダム』だった。

「…な…なに?」
「…ガンダム…よね」

 攻撃するわけでもなく、その場に…いえ、こちらに戻ってくるように飛んでくる『ウィングゼロ』をにらみつけているように立っている。

 プリベンター極東支部の面々はただこの事態を見守ることしかできない。
 理由は、プリベンターの存在意義が戦闘をするためにある訳じゃないから。

 …でも、あの『ガンダム』すごい…。

「どうしたの?セニア」
「何が?」
「あの、ガンダムみてスゴいって言ってない」

 聞こえたのかしら、あたしがつぶやき。

 まぁ、いいわ。

「セニア?」
「見て、分からない?」
「何が」

 あたしの言葉にリューネは訳が分からないといって首を振る。

「あの形状、素晴らしい設計だと思わないの?間違いないわ。あれは、主に…んん、格闘を主体としている機体…M.Sよ。関節すべてに気を配って製作されてる。どんな風に動くのかしら…。格闘を主体だから…人の動きトレースするの?でも、どうやって?」
「……連邦の機体じゃないよね」

 リューネがあたしのつぶやきを呆れて流しながらサリィさんに訊ねる。

「…もしかすると…」
「…知ってるの?あの機体の出所」
「私も、詳しく知ってる訳じゃないから…上手く言えないのだけど…きっとあれは『ナショナル・コロニー』の機体よ」

 ナショナル・コロニー…?
 リリーナの明日の会談の相手の国!!!

「噂には聞いたことあるけど…どんな所なの?」
「昔の国家形態をそのままコロニーにした…って聞いたことあるけれど、統一連合とは全く別の存在だから」
「別の存在って…独立してるって事?」
「簡単に言えばね」

 リューネとサリィさんの会話を流しながら、あたしは突如現れた『ガンダム』に見ほれる。

 格闘するのに素晴らしい完璧なフォルムね…。

「ヒイロ、ヒイロっ聞こえる?その機体、何でココに来たか、聞いてよっ。あたしもすぐそっちに向かうっっ」

 ウィングゼロに通信を入れてあたしは部屋を飛び出し、すぐさま一階に降りる。

 直通エレベーターがあってよかったわ!!!
 これで各階停止型だったら絶対時間かかるっ。

 あたしが下まで降りた時、それは突如響く。

「そこの連邦のガンダムっっ。聞きたいことがあるっっ」

 謎の『ガンダム』から発せられたのは力強い若い男の声。

 聞きたい事って何?
 私の方が聞きたいっっ。

「この男を知らないか?」

 受付のモニタをヒイロが見ている映像を映すようにする。

 そこに映ったのはセピア色の写真。
 半分にちぎられたそこに映っていたのは若い男の人。
 恐らく…10代あたり…。

 年代は今から10年ほど前。

「…知っている」
「どこにいるっ」

 ヒイロの声に間髪入れず、男の声が響く。

「確かに、オレはこの男が誰か知っている。だが、今、どこにいるかは知らない」

 と、ヒイロは冷たく答え、モニタに映し出されていた写真は消える。

 あたしは謎の『ガンダム』を近くで見るために、外に出る。
 すると…女の人がいた。
 険しい顔で、謎の『ガンダム』をにらみつけている。

「ドモンのバカっ。場所考えてるの?」
「あのぉ。どうしたんですか?」

 あたしの言葉にはじかれたように彼女はあたしの方を見る。

「ごめんなさい。この、極東支部の方ですか?」
「そうですけど…。…えっと…あの『ガンダム』と関係か何か?」
「えぇ」

 彼女がうなずいた瞬間だった。

「ヒイロっっ」

 リリーナが…下に降りてきた。
 リューネとサリィさんが心配顔で後から追ってくる。

「リリーナっ何でココに。上にいればよかったのにっ」
「セニアがいる場所なら安全だと、リューネが言ってました。セニア、あなたは隠れるのにちょうどいい場所をすぐに見つけられると」

 もぉ、リューネのバカっ。

「……リリーナ・ドーリアン?あなたプリベンターの人?もしかして…あの羽のあるガンダムも?…プリベンター?」」

 女性の言葉にあたしはうなずく。

「ごめんなさいっっ。ドモンっ、シャイニングから降りてっっ。それから、そのガンダムに攻撃を仕掛けないでっ。プリベンターなのよっ。ココにクィーン・リリーナもいるわっっ」
「何?」

 その彼女が『シャイニング』と呼んだガンダムがこちらを見る。

「忘れてないわよね、『ガンダムファイト国際条約』補足第1条っ。すべてのガンダムファイターはプリベンターに攻撃を仕掛けてはならない。ドモンっっ」
「…分かった」

 そう答え『シャイニング』と呼ばれたガンダムから、男の人が出てくる。

 年の頃は二十歳前後。
 黒のマントを身につけ、赤いはちまきを巻き付けている。
 降りてきたその『ドモン』を彼女はにらみつけた後、あっけにとられているあたし達に向かってこういった。

「ごめんなさい。私はネオ・ジャパンのスタッフ。レイン・ミカムラと言います。彼はガンダムファイターのドモン・カッシュ。ある人を捜しに来たんです」

 そう彼女…レイン・ミカムラは言う。

「ある人って?」
「…世界十大頭脳の一人でメタ・ネクシャリスト、ディバイン・クルセイダーズの副総裁で、この極東支部の責任者」

 …ってまさか。

「クリストフ…いえ、シュウ・シラカワの事?」
「ご存じなんですか?彼を。さっき聞いたら、長期休暇を取ってるって言われて…」
「レイン、それは本当か」

 突然会話に割り込んできた男…ドモン・カッシュの言葉にレインはうなずく。

「なら、ココには用はない、行くぞレイン」
「待って、シュウ・シラカワとならあたし、連絡とれるけど」

 あたしの言葉にレインとドモンは振り向く。

 このまま見送ったらいつ逢えるか分からない。
 あの『シャイニング(ガンダム)』と言う機体。
 調べたいんだもの。
 もう少し、話をするには引き留めるしかないじゃない。

 それに……クリストフを捜している理由、気になるし。

「本当かっ」
「えぇ、その前に教えて、どうして彼を捜しているの?」

 あたしの言葉にドモンは黙り込む。

「理由を話せないのなら彼とは連絡は取れないわ。探している理由はさっき、見せていたセピア色の写真に写っていた人?」

 あたしの言葉にますますドモンは黙り込む。
 レインはそんなドモンを見て息をひとつ吐く。

「その通りよ、あなたとシラカワ博士との関係は?」
「わたしはセニア・ビルセイア。彼は、従兄に当たるわ。理由もなしに、彼がどこにいるかとかなんて教えられないと思うけど?」
「そうよね…。さっきドモンが出した写真は数か月前に行方不明になった人なの。彼は、シラカワ博士と交流があったらしいから、会いに来てると思ったの」

 数か月前…。
 確実に…クリストフとは会ってないわね。

「だとしたら、シュウのやつとは会ってないじゃん」

 あたしの代わりにリューネが答える。

 …ゾラの事件があってから…後…クリストフは一度も地上には出ていないし、地上と交信してもいない。

 調べてはいるみたいだけど。
 …あれ?
 って事は、彼と連絡取ってる可能性もあるわよね。

 聞いてみる価値はあるわ。

「じゃあ、連絡とってください。そして、この人がどこにいるか、それか行きそうな場所教えて欲しいんです」
「分かった。任せて」

 あたしの言葉にレインはうなずく。

「行くぞ、レイン」
「どこに?」

 突然のドモンの言葉にレインは驚く。

「他の所だ。やつが現れると思われる場所はすべてだ。ウルベからの情報はココだけじゃない」
「分かったわ…ドモン。じゃあ、よろしくお願いします」

 そうして、連絡先を残し、ドモンとレインの二人はこの場を立ち去った。

「ガンダムファイト…。もう、そんな時期なのね」

 ふとつぶやいた、サリィの言葉はあたしには分からないことだった。

次回、スーパーロボット大戦〜星達が伝えたいこと〜
「嵐のようにさっていったわね」
「さっきの二人?」
「って言うか、あんたホントにシュウに連絡した方がいいんじゃないの?」
「だーかーらー大丈夫って言ってるでしょ?今更したって小言言われるだけっっ」
「知らないよう、地上に出てきたって」
「そんなことないない」
「どうだか」
「さてさて次は」
「次はいきなり!!宇宙編っっ」
「その通り」
「で、カミーユとファってどこにいるの?」
「そりゃ宇宙でしょ」
「だからどこに!!!」
「スーパーロボット大戦〜星達が伝えたいこと〜第8話『カミーユ・ビダンとファ・ユイリィ』で明らかに」
「逃げたな」