とある屋敷で少年は一人それを驚愕の表情で見つめていた。
ロンドンの名探偵。
ロンドンっ子は彼のことを「若きシャーロック・ホームズ」と呼ぶ。
国際警察機構のエキスパート。
父の形見となってしまった巨大なロボット『ジャイアント・ロボ』を操る少年。
草間大作。
探偵としての能力に長けた彼はロンドン市内のある邸宅において起こった事件の捜査に彼はやってきたのである。
それは…今、ロンドンと日本の東京をにぎわせている『怪盗シャドウブラック』がその邸宅に在住しているミス・オーキッドの宝物黒ダイアのペンダント『ブラックレイン』を狙っていたからだった。
見事、『怪盗シャドウブラック』の正体を見破った大作は彼と対峙していた。
「見事だ大作くん。いつ、この私が『怪盗シャドウブラック』と分かった」
「もちろん、最初はあなただと分かりませんでした。最初の疑問は…僕とあった時です。「君が草間大作くんか」とあなたはおっしゃいましたね。僕は実は日本でドクター新出と逢っているんですよ。一度だけですが挨拶しているんです。その時には僕の友人である金田一正太郎くんも一緒でしたから…彼の印象の方がドクター新出には強かったと思ったのです。日本では、僕より彼の方がぐっと探偵としての知名度は高いですからね。ですが…彼女を支えた時不意に思ったのです。あなたは、本当に『ドクター新出』なのか…と言うことを…」
「なるほど、確かに君と逢ったことはドクター新出の記録にはなかった。私の負けだ。これはミス・オーキッドに返すべきだな。それに…これは…私が求めていたものとは少し違うらしい」
「え……」
シャドウブラックの言葉に大作は首を傾げる。
「また、君とはいつか逢うだろう。君が国際警察機構にいる限り、いや…君がエキスパートである限り、あの組織を追い続ける私がいる限りと言った方がいいかな?」
「…あなたは…あの組織の何を追っているんですか?」
「君は知っているか?」
「何をです」
言葉を選びながら大作は怪盗シャドウブラックに問いかける。
「いや…いいんだ。では、また逢おう。大作くん!!!」
そう言ってシャドウブラックは闇に消えていく。
そして大作の手元には黒ダイアのペンダント『ブラックレイン』が燦然と輝いていた。
「大作くん…どういう事だね」
恰幅の刑事が大作に問いかける。
「大作くん?」
返答がない大作に今度は若い刑事が問いかける。
「大作くん、どうしたんだい?」
「…目暮警部…高木刑事…、何ですか?」
その声に大作は我に返ったように聞き返す。
「何ですかって…なぁ、高木くん」
「はい…」
そんな大作の様子に目暮警部と高木刑事は顔を見合わせた。
「ともかく、大作くん、ありがとう君のおかげで事件は無事解決」
「いえ…目暮警部と高木刑事に手伝ってもらえたおかげですから…」
大作は目暮警部の言葉に謙遜する。
「いやいや、何を言うんだね。君はエキスパートの一人じゃないか。君の活躍のおかげで、ミス・オーキッドの『ブラックレイン』を取り戻すことが出来た。何も謙遜することはないんだよ」
「…そう…ですね。目暮警部、また何かあったら呼んでください。僕はいつでも駆けつけますよ」
「おぉ、そうさせてもらうよ、すまないな、大作くん」
という目暮警部の言葉に大作は小さくはにかんだ。
「大作くん、お疲れさま」
屋敷から出てきた大作を出迎えたのは銀鈴だった。
現在、大作と銀鈴は国際警察機構ロンドン支部へ出向してきている。
それは、アイルランドで暗躍している謎の組織の正体を確認するためである。
探偵としての能力に長けていた大作は、このロンドンで探偵業を営んでいた。
もちろん、それは警察の人間であることを隠す為でもあったし、警察だけでは得ることの出来ない情報を手に入れるためでもあった。
「銀鈴さん、遅くなりました。約束の時間、大丈夫ですか?中条長官がこちらにいらっしゃると聞いたんですが」
「大丈夫よ、大作くん。中条長官はお客様を出迎え中だから」
と銀鈴は大作を待たせていた車まで連れて行く。
「元気そうだな、大作」
「っ?!五飛さん!!!」
そこにいたのは、ダブリンからロンドンに移動してきた張五飛とサリィ・ポゥだった。
「どうして、五飛さんがココに?それに…そちらの女性は…」
「久しぶりだね、大作くん。君がロンドン支部に出向してから…2年になるのかな?」
車の中から柔和だがその顔にかかっているサングラスのために表情が見えない精悍な男性が降りてくる。
「中条長官、お久しぶりです」
「元気そうだな、大作くん。こちらの女性はサリィ・ポゥさんとおっしゃって張五飛くんと一緒に仕事をしている女性だ。さ、車にのって、詳しい話がしたいんだ」
中条長官の言葉に全員が車に乗り込み、緩やかに車は発進した。
「でも、長官がこちらに来られるとは驚きです。上海支部で何かあったんですか?それとも…『梁山泊』でなにか事件でも」
梁山泊。
国際警察機構の本部である。
たくさんのエキスパートがそろい、『超』能力の持ち主でBF団の十傑集と互角に戦う力を持つ九大天王がいる場所。
かくいう北京支部の長官である中条静夫も九大天王の一人である。
「大作くん、梁山泊はそう簡単に事件が起こるような所じゃないわ。あそこには、精鋭のエキスパートがいるのよ。大丈夫、あなたが心配するようなことは何も起こってないわ。そうですよね、長官」
銀鈴の言葉に苦笑いを浮かべながら中条長官はうなずく。
「確かに、あそこでは…何も起こってないがね」
「え…では、長官がこちらに来た理由は何ですか?」
「銀鈴、まだ話していなかったのか?」
大作の様子に、長官は銀鈴に尋ねる。
「えぇ、…大作くんには推理に集中してほしかったので」
銀鈴の言葉に長官はうなずく。
「その通りだな。では、詳しい話はココでない所がいいだろう」
長官が五飛とサリィに視線を向けると二人はゆっくりとうなずいた。
国際警察機構ロンドン支部
「では、五飛くん、サリィさん、我々に、ダブリンで君たちが見たものを見せてくれないか?レディ・アン長官から話は聞いた。だが、にわかに信じられることではないのでね。この目で見ないことには何ともいかんともしがたい」
ロンドン支部の一室に着いた時、中条長官は車の中では一言も開かなかった口をようやく開ける。
「…ダブリン?ダブリンで何かあったんですか?五飛さん。謎の組織がなんだか分かったんですか?」
大作は五飛に質問を浴びせかける。
「大作くん、少し落ち着いて。今、その答えは目の前に現れるわ。そうですよね、サリィさん」
焦る大作を諭すように落ち着かせた後、銀鈴はサリィに問いかける。
「えぇ、今から、わたしたちが見たものをみなさまに、お見せします。五飛」
サリィの言葉に五飛はビデオをセットする。
「これは、昨日ダブリン郊外で撮影したものだ」
五飛達のとってきたダブリン郊外の様子が映し出される。
隠れる所のない草原、その中の一軒家。
「こんな所、良く撮影出来ましたね」
「秘密兵器があるのよ」
大作の言葉にサリィはニッコリと微笑む。
画面には次の情景が映し出される。
集まるたくさんの車。
降りてくる人々。
部屋の内部で討論している人達。
「この…制服はティターンズの物ね。この分だと謎の組織はティターンズと言うことになるわけだけれど…」
銀鈴がそうつぶやく間にも映像は進んでいく。
画面は神経質そうな男「ジャマイカン・ダニンガン」を映し出す。
「生きているという噂は本当だったんだ…」
そして、カメラは入ってきた3人の男を映し出す。
ジェリド・メサとヤザン・ゲーブル。
そして…。
その男を見た瞬間、ハッと息を飲んだ銀鈴と大作。
眉をひそめた中条長官。
画面でアップになった男は『諸葛亮孔明』だった。
BF団の最高軍師。
その地位は十傑集と同等の物と考えられる人物。
そして、国際警察機構のメンバーにとってはもっともやっかいな人物だ。
「…間違い、ありませんか?」
サリィの静かな声が部屋中に響く。
「…間違いなく、BF団の軍師『諸葛亮孔明』だ…。梁山泊に戻って対策を立てる必要があるな」
「BF団はティターンズの残党を使って何をするつもりなのでしょうか」
大作は諸葛亮孔明が優雅に団扇を扇ぐ姿を見ながら問い掛ける。
「さぁな…。ところで、プリベンターはどうするつもりだ」
「…とりあえず、ドーリアン外務次官を移動させました。その後の事はまだ未定です」
「彼女の政治基盤は…ヨーロッパだったな…」
中条長官はつぶやく。
「彼女はどこに移動させたのですか?」
思案し始めた中条長官に代り銀鈴がサリィに聞く。
「プリベンター極東支部だ」
サリィに代り答えた五飛の言葉に3人は驚く。
「だって、あそこは今、危険じゃないんですか?機械獣や戦闘獣とかがまた出てきたんですよね」
「こっちにいるより安全だ」
五飛は大作の言葉を軽く交わす。
「確かに…極東支部はオーバーテクノロジーの宝庫。機械獣とかが来ても撃退は可能。逆に攻め込まれても、機械獣に手こずる場合も出てくるし、オーバーテクノロジーの結晶であるスーパーロボットがあればむやみやたらに手は出せない…というわけか」
「その通りです」
中条長官の言葉にサリィはうなずいた。
「そして…例のウーイッグの一件か」
「えぇ、そのことも予断なりません。その件でプリベンターは調査に入ることになりました」
サリィの言葉に中条長官はふっと息を吐く。
「皮肉なことだな…。クイーンリリーナが打ち出した政策、「完全平和」。そのことが地球から守る術をなくしている。武器をもって戦う。話し合いでもって闘いを避ける。どちらも過去の人間はやってきたことだ。今は、やるべき事をやるしかない。国際警察機構はプリベンターに協力をしよう。梁山泊へ来てもらうこともあるかもしれない。その件に関しては問題ないかな?」
「協力をしていただけるのですから当然のことです」
「では、以前の様に大作と銀鈴にプリベンターに出向してもらおう。二人とも構わないな」
長官の言葉に銀鈴と大作はうなずいたのだった。
次回、スーパーロボット大戦〜星達が伝えたいこと〜
ヨーロッパ地区の中央、特別地区のカサレリアで平和に暮らしていた、元リガ・ミリティアの面々とわたしたち。
そのわたしたちの住むカサレリアに突然、見慣れない機体がやってくるのです。
そして、わたしたちの住んでいる所を突然攻撃してくるその機体。
ウッソは、その機体からわたしたちを守るためにV2へと走るのです。
次回、「スーパーロボット大戦〜星達が伝えたいこと」第6話、激闘、カサレリア。
見てください。