「まぁ、お前なら心配はない。では、頼む」

 そう言ってプリベンター本部長であるレディ・アンは通信を切る。

 現在、この地球上で唯一、危機を脱する手段を持っているプリベンター(特別諜報部隊)の本部は現在、ベルギーはブリュッセルに存在していた。

「レディ、今いいかしら?」

 本部長室の扉が開きサリィ・ポウが顔を見せる。

「どうした、サリィ」
「向かう前に、挨拶でもしていこうと思ったの。リリーナさんは無事に向かったのかしら?」
「問題はないだろう。彼が一緒だ」
「ならいいんだけど…」

 レディ・アンの言葉にサリィはほっと息を吐く。

「ところで、本当なのかしら」
「それを確かめに行くのだろう」
「そうだけど…未だに信じられないのよ」

 そう言ってサリィは顔をゆがませる。

「気持ちは分かる。だが、それが本当のことかどうかを確認するのが先決だ。せっかく平和になったこの地球圏を我々はなんとしてでも守らなくてはならないのだ。分かっているな」
「えぇ…」

 サリィは力強くうなずく。

「張五飛、失礼します」

 きびきびした声と共に、五飛が礼儀正しく本部長室へと入ってきた。

「五飛、準備は終わったの?」

 サリィの声に五飛はうなずく。

「なら、二人とも頼む。、事実確認がとれ次第、早急に本部へと連絡してくれ。事は一刻を争う」
「了解」
「任務、了解」

 レディの声にサリィと五飛はうなずいた。

第3話 極東支部防衛

「…まさか、ガンダムで迎えに来られるとは思ってもみませんでしたわ」
「……オレも、ガンダムで迎えに行くとは思ってもみなかった」

 高速で飛んでいるウィングゼロのコックピットで少年…ヒイロは少女…リリーナを抱きかかえるように座っていた。

「あの会議場からあなたのガンダムが見えた時は何事かと思いましたけど」

 リリーナは香港の国際会議場の窓から見えたウィングゼロの姿をみてクスリと笑う。

「あれは…オレの失態だ…」
「まぁ、あなたがそんなこと言うなんて」

 リリーナの言葉にヒイロは憮然とした。

 リリーナは会議終了後、彼女にプリベンターとしてボディーガードをつとめていたデュオと財界の要人として出席していたカトル、そしてドロシーと共にヒイロのいる元へと向かったのだ。

 窓から見えたとリリーナが言った時のデュオからのからかわれ方とドロシーからのバカにされ方にヒイロはそのときの行動を思いっきり後悔し、リリーナを連れ去るかのようにその場から飛び立ったのである。

 元々、ヒイロはリリーナを迎えに行くようレディ・アンから命令を受けていた。
 それ以上に彼はリリーナ専用のボディーガードではあったのだが。
 リリーナの引っ越しに手間取ったために、急遽、非常勤のデュオをコロニーから呼びつけリリーナの護衛に当たらせヒイロはリリーナの代りに引っ越しの支度をしていたのだ。
 彼女の政治的本拠地である北欧地区が危険な為である。

 このところ、欧州ではきな臭い噂が後を絶たなかった。

 先頃、東ヨーロッパ行政区(ウーイッグ付近)において謎の機体との戦闘。
 そして、アイルランドのダブリンにまとわりつく謎の組織。
 その組織はリリーナの支持基盤である北欧はおろかヨーロッパ全土にその幅を広げているとまで噂されていた。

 政府要人、元地球圏女王であるが以上に襲撃を受けており、プリベンター本部長とリリーナをかなりに心配するヒイロとの間で協議がされ、リリーナの実家がある日本に移ることになったのである。
 そして、会議場にいるであろう彼女の身を案じたヒイロは思わずウィングゼロで迎えに来てかつ、望遠で彼女の姿を見てしまったが為に、リリーナに見つかったのである。

「…通信か…」

 入ってきた通信にヒイロは通信機のスイッチをオンにする。

「…よぉ、ヒイロ。元気そうだなぁ」

 通信モニタに現れたのはさっき別れたばかりのデュオ。
 顔は、引きつっている。

「お前が、お嬢さんをかっさらってこっちは大騒ぎだぜ」
「レディ・アンには了解を取ってある」
「私のリリーナさまを連れ出すとはどういう了見ですっ。ヒイロ・ユイ」

 デュオとの通信に突然割り込んできたのはドロシー・カタロニア。

 彼女は現在、ロームフェラ財団の若き当主として公私に渡り、リリーナを補佐している。

「別に、お前のではないだろう」
「それでも、リリーナ様があなたのような人に連れて行かれるとは思っても見ませんでしたわっ」

 涙ながらにヒステリーをあげ訴えるドロシーにヒイロは小さくため息をついた。

「やぁ、ヒイロ。さっきは挨拶出来なくてごめんね。こっちの方は心配しなくてもいいからさ。これから僕とデュオはドロシーを家に送ってからコロニーに帰らなくちゃならないから、ゆっくり話すのは後になってしまうね」
「相変わらず、デュオに迷惑をかけてるようだな」
「やだなぁ、ヒイロほどじゃないよ」

「……切るぞ」

 カトルの言葉にヒイロはスイッチに手が伸びる。

「あぁ、ごめん、ヒイロ。まぁ、ともかく、気をつけて。極東支部の方はブリュッセルほどじゃないにしろ危険なんだろう?機械獣とかが出てきて」
「特に問題はない。それよりいいのか、シャトルの時間に間に合うのか?」
「大丈夫だよ。じゃあ、リリーナさんによろしくね」

 そう言ってカトルは通信を切る。

 ため息をついて、ヒイロは肩をふるわせているリリーナをにらむ。

「何故笑う」
「だって…ドロシーに詰め寄られた時のあなたの顔、おもしろいんですもの」

 リリーナの言葉にヒイロは憮然とする。

 …一生の不覚だ…。

 そうつぶやいて、ヒイロはもう一度ため息をついた。

「…こうやって笑っていられるなんて…あの時は思いもしなかったわね…」
「あぁ…」

 リリーナはモニタに広がる景色を見てそうつぶやく。

「ヒイロに命を狙われて、私、生きた心地がしなかったのよ」

 あの時、招待状を破り、さり際につぶやいた言葉をリリーナは思い出しながら、つぶやく。

「…だからあれはっ」
「分かってるわ、ヒイロ。あれも、冗談だって言えるようになったぐらい、今は平和に、あなたも安心出来るようになったのだわ…。あの時に比べれば、だけど…」

 そう言って、リリーナは顔を曇らせる。

「…会議で何があった」

 迎えに行った時の望遠で見たリリーナの表情。

 会議の内容が思わしくないのか、笑顔を絶やさずに心がけている彼女がいつになく険しい表情を浮かべていたのをヒイロは見逃しはしなかった。

「人々が、あなたが…本当に、安らげる世界がくるのは…いつのことなのかしら…。あの時と状況は違うけれど、あまり変わっていないように思えるの」

 バルマー戦役時、そして、ゾラ事件(α外伝の話)で、地球圏を混乱に巻き込んだ原因は退けることが出来た。

 だが、まだ地球圏には戦争を起こそうととする彼らの生き残りは多い。

 真っ先に、武装解除(モビルスーツ等の廃棄)を行う予定だったプリベンターは残党処理に追われていたが為に未だ、廃棄出来ずにいる。

 それでなくても「新たなる敵の驚異にさらされるであろう」、と、ゾラ事件においてR-1が復元(合体機能なし)されていた事からも容易に想像は出来ていた。
 ただ、いつになるのかは全く不明だった。

 ……ウーイッグで事件が起こるまでは。

 その事件をきっかけに、統一連合政府及び、コロニーは武装化を再び考え始めたのである。
 ずっと、完全平和の道を模索していたのにもかかわらずである。

「今回の会議では武装化に待ったをかけることが出来たのか?」
「えぇ…」
「なら、あきらめる必要はないはずだ。お前はお前が出来ることをやればいい…。あまり多くを考えるな。出来る範囲で考えろ」
「……ヒイロ…」

 リリーナはヒイロの言葉にためらいがちに静かにうなずく。

「リリーナ、平和を望む心が必要なのだろう?お前は平和であることを望んでいる。なら、平和であることを望むよう働きかければいい。そうすれば、戦争の気配は濃くならない…。オレは、そう考えている」

 リリーナが以前に言った言葉を受けて、ヒイロはそう言った。

「…ありがとう、ヒイロ。あなたにそう言ってもらえると…なんだかとても心強いわ。そうね、あなたの言うとおりよね。でもねヒイロ、覚えていて。私はあなたがそばにいることで、それを願うことが出来るの。ヒイロ、これからも、私の側にいてください。お願い出来るかしら…」

 リリーナの言葉にヒイロは面食らいながらも応える。

「…リリーナ……。了解した」
「本当ね」
「何故、疑う」
「あら、ヒイロあなた忘れているの?何度あなたが私の前から姿を消したのかしら。そのたびにあなたを捜す私の身にもなって」

 突然、行方をくらませるヒイロ。
 それを捜し出す、リリーナ。
 仲間内では有名なことだし、そのことでよくデュオもからかっていた。

 それは今でも変わらない。

「リリーナ、オレは、お前の側にいるし、お前の前から消えるつもりはない。お前は、オレが守ると決めたのだから」
「…ありがとう…ヒイロ」

 そう言ってリリーナはヒイロに体を預けた。

 その時だった。
 突然、緊急通信がつなったのだ。

「何事です?」
「極東支部からだ」

 ヒイロはそう言いながら、通信のスイッチを入れる。

「こちら、極東支部、ヒイロ・ユイ応答せよ」
「こちら、ヒイロ・ユイ。ヴィレッタか?」

 通信のモニタに映ったのはプリベンター極東支部長でSRXチームの総責任者であるヴィレッタ・パディムだった。

「何があった」
「今、どこにいる?」

「今、神奈川上空だ、もう東京湾上に出る。極東支部に何があったのか?」
「メカザウルス達の襲来だ。獣戦機隊や、甲児達は今、出払っている。急いで戻ってこれるか?」

 ウィングのモニタが東京湾に攻めてきている戦闘獣・機械獣・メカザウルスの群れを確認する。

「今、確認した」
「ヒイロ、ドーリアン外務次官はどうなされている?」
「一緒だ」

 ヒイロの言葉にヴィレッタは黙り込む。

 そのヴィレッタの様子にリリーナはヒイロに告げる。

「ヒイロ、私には構わず、戦闘に入ってください」
「リリーナ」
「ドーリアン外務次官何をおっしゃっているんですか」

 ヴィレッタとヒイロはリリーナに非難の声を上げる。

「今は、極東支部を防衛する方が大事。違いますか?」
「だが、乗り手には相当の負荷がかかる。それを承知で言っているのか?」
「もちろんです。それくらいは耐えて見せます。それよりも、私をおろしている最中に、あなたがねらい打ちをされたらどうするつもりですか?それを黙って見ているしか出来ないのなら、このまま乗り続けます」

 リリーナは気丈にもヒイロにそして支部で聞いているヴィレッタに告げる。

「ともかく、今は、極東支部を防衛することを優先してください」
「本当に、よろしいのですか?ドーリアン外務次官」
「えぇ」

 ヴィレッタの言葉にリリーナは力強くうなずく。

「本当にいいのか?」
「あら、ヒイロ、あなた忘れているの?以前、私はあの「エヴァンゲリオン」にも乗ったことがあるのよ?それで戦闘を体験しているわ」
「エヴァと、Wガンダムは違う」
「いいえ、要は一緒です」

 頑として譲らないリリーナにヒイロはため息をつく。

「ゼロが作動したらどうする」
「カトルから聞いたことがあります。ゼロシステムはあなたがコードを入力しない限り自動で作動することはないと。違ったかしら」
「あっている」

 リリーナの言葉にヒイロは嘆息する。

「ならあなたがコードを入力しなければ問題ないのでは?」
「何があっても知らないからな」

 あきらめたヒイロの言葉にリリーナはにっこりと微笑んだ。

「ヴィレッタ、これより極東支部防衛に入る。甲児達や獣戦機隊はどこにいる?」

 ヒイロの言葉にヴィレッタは甲児達の居場所を告げる。

「獣戦機隊は千葉方面だ。恐らくすぐに戻ってこれると思うが、向こうの方で戦闘が長引くとこちらに戻ってくる可能性が低くなる。甲児達は小笠原海上に「弓博士」からの依頼で謎の熱源の調査に向かった。戻ってくるまでに多少の時間はかかると思うが、それまで持ちこたえてくれ。軍の方でゲシュペンストが2体、私もヒュッケバイン(共に量産型)で出る」
「了解した」

 ヴィレッタの言葉にまず、ゲシュペンストMk-3が出て支部の周辺を固める。
 そしてすぐにヴィレッタの乗るヒュッケバインMk-2が前線に出てくる。

「ヒイロ、あまり無茶・無理はするな」
「分かっている」

 極東支部を狙っている戦闘獣はズガール2体・ジャラガ2体・オベリウス1体そしてメカザウルスの恐竜ジェット機が3体・バド5体。
 彼らは陣形を組んでおり、オベリウス・ズガール・ジャラガの周りをバドと恐竜ジェット機が囲むようにいた。

 数が多く、機動力も高いのが多いため、苦戦は必死。
 決して4体で守りきれる物ではない。

 いくらヴィレッタやヒイロがエース級のパイロットだとしてもだ。

 だが、やるしかなかない。

 ヒイロは、リリーナに負担がかからないよう最小限の動きでバドや恐竜ジェット機の後ろから攻撃してくるズガールの攻撃を交わしていく。

「照準セット。ツインバスターライフルで障害を取り除く」

 機動力、攻撃力共に高い恐竜ジェット機を攻撃する。

「リリーナ、大丈夫か?」
「ヒイロ、私は気にしないで。私のことは気にしないで、私が無理を言っているのだから…」
「余裕を見つけたらすぐさま降ろす。それで構わないな?」
「あなたの判断に任せます。今更だけど、わがまま言ってごめんなさい。私、あなたの側にいたかっただけだから…」
「気にするな、リリーナ。目の届かない所に行かれるよりましだ」

 リリーナの顔を見ずにヒイロはそう答えた。

「もう逃げ場はないわ、チャクラムシュート」

 ヒイロがツインバスターライフルで恐竜ジェット機を落としている頃、ヴィレッタはバドを落としていた。
 そして、ヴィレッタも最小限の動きでジャラガの攻撃を交わす。

「何とかなりそうだな。獣戦機隊も甲児達もこちらに向かってきているようだし…」
「後は、ズガール・ジャラガ、オベリウスか…」

 モニタで残りの機械獣をチェックした時だった。

『キィィィィィィィィィィィィィィン』

 高い音が耳鳴りの様に聞こえてくる。

「ヴィ、ヴィレッタ隊長。な、何ですか?この音は」

 音を察知した兵がヴィレッタに問いかける。

「分からない、ヒイロ。何か分かるか?」
「いや、こちらでも把握出来ていない」

 顔をしかめながら、ヒイロはヴィレッタの問いに答える。

 ゼロシステムを使えば何が起こったのか、何が起こっているのか、何が起こるのか、使いこなせているヒイロには見えるはず。
 だが、リリーナが搭乗しているためにヒイロはゼロシステムを未だ稼働させていない。

 金属音にも似た高音のノイズが消えた時だった。

「なっ、何??」

 ヴィレッタが驚愕の声を上げる。

 バド5体に恐竜ジェット機3体。
 ズガール・ジャラガ・オベリウスを守るように出現した。

「……増援。しかも、先ほどと同じ陣形。…これでは振り出しだ」

 ヴィレッタが苦虫をかみつぶした様な顔でつぶやく。

「どうする、ヒイロ」
「………このまま、防衛を続けるしかない」

 このまま持てばいいが…。

 ヒイロはヴィレッタの言葉に応えた後、小さくつぶやく。

 今、この場で確実に戦うことが出来るのはヒイロのウィングガンダムゼロとヴィレッタが搭乗しているヒュッケバインMk-2のみである。
 一般兵が乗っているゲシュペンストは防戦一方な為に戦力としては考えづらい。

 対する混合地下部隊は13機、しかも陣形を組んでいる。

 どう見ても、不利だった。

「ヒイロ、私に構わず、ゼロシステムを稼働させてください」

 その現状に考え込んだヒイロにリリーナはそう告げる。

「何を言っている。自分が言ったことが何だか分かっているのか?」
「もちろんです」

 決意に満ちあふれた声でリリーナはヒイロに答える。

「無茶なことを言っているのは十分、分かっているの。でも、でもヒイロっ私が自分で乗り続けると言ったのです。あなたは、このガンダムのパイロット。この極東支部を守らなければ後から支障が出るでしょう。そうならないためにも、私のことなど気にせずに、ゼロシステムを稼働させ、この機体本来の力を出してください。そうしなければ、この極東支部は守れません」

 そう言ってリリーナはうつむく。

 ゼロシステム。

 その場の『状況』を瞬時に計算し、最適と思われる行動をシミュレートし、脳に直接、伝達するシステム。
『パイロットが勝利するためにもっとも最適である行動をあらかじめパイロットに見せる』システムである。

 しかし、勝利するためには個人の感情や倫理観を無視するため、パイロットの目的と『最適な行動』にずれが生じた場合、精神が拒否反応を起こし、深刻な影響を与えるのである。

 そのシステム故に、脳内に刺激を与えるだけでなく、機体の動作により発生する衝撃や加速などの情報を緩和させるため、限界を超えた環境下での機体制御を可能とさせるのである。

 これを克服するには、ゼロシステムが見せる未来に従うか、個人の欲求を求める強靱な意志を持つしかないため、使いこなすのが非常に困難で、通常の人間では、システムに取り込まれてしまうおそれがあるのだ。

「ゼロシステムを稼働させるつもりはない」

 ヒイロはリリーナにそう告げる。

 ゼロシステムを稼働させたら、リリーナもその影響を受ける。
 ヒイロ自身でさえ一度は取り込まれたシステムである。
 リリーナが取り込まれないとも限らない。

 ましてや、現在の状況は彼女が望んでいない、「戦争」の最中である(たとえ、それが人工知能で動いているメカザウルスの群れだとしても)。
 一歩間違えれば死に至る状況で、彼女にかかるストレスは相当なものになっているはずだ。

 彼女に搭乗を許してしまっている今、これ以上彼女に負担をかけたくない。

 そうヒイロは考えていた。

「ヒイロ」
「安心しろ、リリーナ。これ以上、やつらの好きにはさせない」

 リリーナにそう告げた時だった。

「機体4機、高速で接近っ」

 そう極東支部の管制官が言おうとした時だった。

「だらしがねぇなぁ」

 声を上げたのはイーグルファイターに乗る藤原忍。

「だらしがないって言い方するんじゃないよっ」

 その忍をいさめたのはランドクーガーの結城沙羅。

「はっ、たらたらやってんのがわりぃんだろ?」

「この場合は忍が悪いんじゃないの?」

 沙羅の言葉に反論した忍に言ったのはランドライガーに乗る式部雅人。

「ところで、忍どうするんだ?」

 そして冷静に忍に問いかけたのはビックモスに乗っている司馬亮。

 獣戦機隊が、ようやく極東支部にたどり着いたのである。

「んなもん、決まってんだろ?合体だよっ。D・A・N・C・O・U・G・A!やってやるぜっっ」

 忍が合体キーワードを入力すると4体の獣戦機は合体しダンクーガとなった。

「遅かったな」
「仕方ねぇだろっ。千葉での戦闘が長引いたんだよっこれでも、急いで戻ってきたつもりだっ」

 ヒイロの言葉に忍は反論する。

 それを無視するかのように亮は

「戦況はあまり良くないみたいだな」
「うむ下手したら増援がでる可能性が高い」
「どういう事だ?」

 ヴィレッタの言葉に忍は顔をしかめる。

「バド、恐竜ジェット機を落とした後、音が発せられ、増援が来た。今度もそうなる可能性がある」
「けど、ならないかもしれねぇ。違うか?」

 ヴィレッタの言葉に忍は楽観的にそう答える。

「…甘いな」
「何?」
「音がどこからでているのか分からない。その音の元を見つけ破壊しない限り増援がくる可能性の方が高い」

 ヒイロは冷静に忍に話しかける。

「だったら、その元を見つければいいだろう?」
「どうやってだ…」
「…そ…それは…ともかく、ココは攻撃するほかないねぇだろう。周りのバドと恐竜ジェット機から倒すしか手はないはずだっ」
「確かに、オベリウスを攻撃しようにもズガールやジャラガがズガールやジャラガを攻撃しようにもバドや恐竜ジェットが援護防御をするからな」
「だが、何とかしないと持たないぞ」

 ヴィレッタの声に全員、悲壮な表情でうなずく。

「ヴィレッタ、4機、こっちに向かっているぞ」

 突然、亮が言葉を発した。

「セニア、状況はどうだ?」

 鉄也君があたしに問いかける。

「問題ないわよ。さっきの信号は間違いなく増援の信号ね。そこからパターンを検索すると、だいたいどれが信号出してるのかまるわかりなのよっ」

 先に光子力研究所に戻ると言ったさやかとジュンと別れあたし達はヴィレッタからの救援の信号をもらった極東支部に向かっていた。

 東京湾の入り口付近。
 奥の方に見えるのは機械獣(もういいや機械獣で)の群れ。

「獣戦機隊にヒュッケバインが3機それからヒイロか?」

 甲児君が明るく声をかける。

「遅くなってごめんなさい。増援信号の解析にとまどったの。おかげでどれが信号を発しているのかが分かったわ」
「……セニア?なのかい、そのウィングゼロに似ているような機体に乗ってるのわ」

 と雅人に言われる。

 って皆に言われるよぉ。

「それより助かった。セニア、どれが出している?」
「えぇ、あの中心に構えているオベリウスよ。オベリウスをピンポイントで攻撃するほか方法はないわ」
「だが、やつらは援護防御を使う」
「道を造って接近して倒すか、MAP兵器で攻撃するって言うのしかないわね」

 あたしの言葉にヒイロはうなずく。

「まぁ、エルンオードもグレートもヴァルシオーネも、MAP兵器持ってるし、ヒイロのウィングも持ってたよね」

「あいにくだが、今、ツインバスターライフルのMAP兵器は使えない」
「…何で?」
「事情がある」

 リューネの言葉にヒイロはそう濁す。

「よし、ヴァルシオーネのサイコブラスターで援護防御してくるズガールやジャラガを攻撃する。この際、もうバドや恐竜ジェット機は無視しよう。リューネの援護は甲児に頼む。ヒイロ、獣戦機隊、鉄也はその後オベリウスを一斉攻撃。セニア、あなたはどうする?私はあなたのその機体がどの程度の能力を持っているのか知らないんだが…」
「大丈夫よ、ヴィレッタ。心配することはないわ。あたしもオベリウスを攻撃します。鉄也君、あなたもリューネの援護に向かって。援護しながらじゃつらいかもしれないけれど、オベリウスの攻撃もよろしくね。リューネと甲児君もよ」

「了解っ」

 そう言ってリューネ、甲児君、鉄也君の3人は敵機の中心へと飛び込んでいく。

 かなり大胆な攻撃よね。
 でもこれってマジンカイザーとグレートマジンガーがいるからこそ出来る戦法だわ。

「必殺、サイコブラスター!!!!」

 ヴァルシオーネRのサイコブラスターがズガールやジャラガを攻撃する。

 グレートマジンガーとマジンカイザーがその後、攻撃していく。

 そして守りを失ったオベリウスを遠距離から攻撃していく。

「亮、断空砲フォーメーションだっ」
「OK、忍っ」

 ダンクーガが断空砲フォーメーションをつかって攻撃する。

「ロック完了、ツインバスターライフルで障害を取り除く」

 ウィングゼロがツインバスターライフルを使用する。

「いっくわよぉ、エンジェル・ウィスパー!!!」

 そしてエルンオードのエンジェル・ウィスパーで攻撃する。

「ついでだ、これでもくらいやがれっ。ファイアーブラスター!!!!」

 とどめのマジンカイザーのファイアーブラスター。

 そしてようやくオベリウスを倒すことが出来た。
 後は、残った敵の一掃。

「何とか、防衛出来たようね。ご苦労様」
「じゃあ、オレたちはいったん研究所に戻ります。何かあった時は呼んでください」

 そう言って甲児君と鉄也君はあわただしく帰っていった。

「ところで、セニア、どうしてあなたはココに?」

 格納庫でヴィレッタは不思議そうにエルンオードから降りたあたしに問いかける。

「それより、先に、シュウ・シラカワのオフィスってどうなっています?」
「シュウ・シラカワ博士のオフィス???」
「何だってまたあんな所に」

 と忍。

 あんな所…か…。
 確かに、あんな所だよね。

「ちょっと、用事があるんです。詳しい話はそこでするのは大丈夫よね」
「構わないけれど…あそこは…」

 そう言ってヴィレッタ達は何とも言えない表情で顔を見合わせた。

「セニア、シュウのオフィスで何かするの?」
「うん、まあね」

 リューネの言葉に応えたあたしに困惑した表情をヴィレッタ達は見せるのだった。

次回、スーパーロボット大戦〜星達が伝えたいこと〜

「ココで終わりか」
「ハァ?意気地がねぇなぁ。ぱーっと進めちまいな」
「そう言うこと言うものではないわ」
「そうだよ、忍っ。相手の都合ってのも考えなっ」
「済まない、リリーナ」
「いえ、気にしないでヒイロ」
「……オレも謝んなきゃまずい?」
「まずいっっ」
「リリーナさん、すまねぇっ」
「って…何でリリーナさんに謝るんだよぉっっ」
「気にするなってな、沙羅」
「……次回、スーパーロボット大戦〜星達が伝えたいこと〜っ」
「おっおい、勝手に進めんじゃねぇよ、沙羅っ」
「忍には関係ないだろっ」
「第4話亡霊」
「五飛さんが出てくるんですよね」
「そうだ…」
「忍のせいで、言われちゃったじゃないかぁっっ」
「な〜んでオレのせいになるんだよっっ」

「ねぇ、次回予告言うのってあたしのセリフじゃないのぉっ???ふぇ〜ん」
「それが運命じゃ…ってねあきらめなセニア」
「グスン」