『ガッツィー・ジオイド・ガード』通称GGG。
その意味は「勇気ある地球を守るもの」。
彼らは極東特別自治区政府とEOTI機関であるDCと、有志の手によって宇宙開発公団をカモフラージュにして作り出された特殊機関である。
バルマー戦役より2年ほど前に、地球に落下した隕石。
落下の衝撃に巻き込まれた一人の青年。
その青年を助けた謎のロボット。
それらを研究するために、その研究結果から導き出された『結果』から我らが地球を守るために作られた極秘機関。
『EI-02』と呼ばれた物が活動を開始し始めたのがゾラ事件と前後しており、当時のプリベンターはその事を対処するための手段を持ち得なかった。
そのため、プリベンターのトップであるレディ・アン長官はGGGに全てを任せたのであった。
彼らの姿は、プリベンターで活躍していたスーパーロボットと同様に人々に勇気を与えたのだった。
だが、彼らは突如姿を消す。
ゾラ事件より1年後の事である。
特殊捜査、探索を主とするプリベンターでも彼らの行方は要として知る事は出来なかった。
しかし、彼らは我々に伝えた。
『勇気ある誓いと共に、我々は地球に帰還する』と。
そして、その約束通り、彼らは我らの地球へと帰還したのである。
その身を、削って。
だが、彼らは約束を違えなかった。
『勇気ある誓い』は彼らと我々の間にしっかりと流れている誓いなのである。
「それは、お嬢さん、あなたには必要のないものなんですよ」
その声に振り向けば、黒いコートに身を包んだ男が立っていた。
「ギムレット!」
銃を構えたサリィさんが叫ぶけどあたしはすでにその男から出る包帯のようなもので拘束されていた。
叫び声、あげる間もないくらい突然。
「失礼しますよ、お嬢さん。申し遅れましたが、私、バイオネットの研究員ギムレットと申します。皆様方からしたら少々異様な姿かも知れませんが、これがバイオネットで研究員メタルサイボーグと言うことでご了承を」
少し甲高い声であたしに言ってくる。
メタルサイボーグ??
普通のサイボーグとどう違うの?
「サイボーグとは少々違うのですがね?まぁ、意味としては似たようなものでしょう。バイオネット開発のですからね」
「バイオネットが何の用?」
サリィさんの声に今気づいたかのようにギムレットという男はサリィさんの方を向く。
「これはこれはサリィ・ポゥさんではありませんか。プリベンターであるあなたがここにいるということは、噂どおりDCの一角にプリベンターの日本支部があるのは本当のようですな」
「別に隠してるつもりはないわよ」
「その通りで。攻めていっても返り打ちにされるのがオチですからなぁ」
そうギムレットは言う。
「ですが、われわれはあなた方に対抗する手段を手にしたのですよ」
「手段?」
「そうです。恐竜帝国の方々や他の方々に協力をいただいて。この細胞をつかってね」
ギムレットがあたしの目の前に出したのは一片の金属。
完全体のあの金属片。
あたしがあの時拾った金属片は変形して一つの形を作った。
正六角形の集合。
「これが何だかご存じで?」
あたしに聞いてくるギムレット。
「あたしには分からないわ。でもこれがとんでもないものだっていうのだけは分かってるわ」
あたしの言葉に続けるようにレインが叫ぶ。
「それを渡しなさい。あなた方は簡単に考えているかもしれないけどそれはそんなに単純な物ではないのよ」
「知ってますよ」
「知ってるのならそれは所持すべきではないわ。破壊しなさい」
「破壊?何、ご冗談をおっしゃる。もったいないではないですか。このような素晴らしいものは有効に活用せねばなりません。ご存じですか?」
「何をするつもりなの?」
「なぁに、ちょっとした実験をしようかと思いましてね」
その瞬間に、拳銃の発射音とその後の声。
「セニアを放せ。さもなければ次は当てる」
その方を見ればヒイロが銃を構えていた。
「女王の騎士のお出ましですか。プリベンターの対人用銃弾がバイオネットで改造した私に効くと思っているのですか?」
「もう一度言う。セニアを放せ」
「そう言うわけにもいかないんですよ。このお嬢さんはDG細胞を持ってらっしゃる。それを渡していただかないことには私も本部に戻れないんですよ」
「言いたいことはそれだけか。言ったはずだ。次は当てると」
「いけませんねぇ、分かってもらえないと言うことは」
「忠告したはずだよ。ギムレット」
その声が聞こえた瞬間、銃声が頭上をかすめ、腕がゆるんだ隙にあたしは何者かに抱き抱えられていた。
「大丈夫か?」
その翼の様なマントを羽織った人はあたしに言う。
「だ、大丈夫。ありがとう」
そう礼を言えば彼は力強く頷く。
「ルネさんにソルダート・J。オヤオヤ、シャッセールの名物コンビが、わざわざ日本まで。いけませんねぇ」
「久しぶりだねぇ、ギムレット。ホント、わざわざフランスから出向いてきたかいがあるよ。見つけたら射殺可。悪く思うなよ。別に思われても痛くもかゆくも無いけどね」
そう言ったダークピンク色の髪に、鼻にメガネを掛けている女の子は大きいコートを身にまといギムレットに二挺の銃口を突きつけている。
「セニア、大丈夫?」
「サリィさん、あたしは大丈夫よ」
あたしの言葉にサリィさんは頷く。
「J、ありがとう。あなたたちが来て助かったわ」
「ギムレットを追うのは、ルネの意志だ。俺はそれを手助けしているだけに過ぎない」
「そう。それより、連絡は?」
サリィさんの鋭い質問にソルダート・Jは首を振る。
「いや。だが気付いてもらわねば困る」
「確かにね」
ソルダート・Jの言葉にサリィさんは苦笑いして応えた。
「どういう事?」
「すぐに分かるわ」
サリィさんはそう言って誤魔化した。
「あんた、それ何やったんだい?」
ギムレットから跳躍で離れたルネの声が今まで威勢の良かったのに何故か震えている。
ギムレットはというと、機械の触手をはやして手当たり次第にそこら辺の車やロボットの残骸を取り込んでいく。
「すばらしいですねぇ。見事だと思いませんか?まだ、我々バイオネットの人間にしか使えないのですがね?」
どうして、機械の触手が生えて、ユニットを取り込めるの?
「貴様、DG細胞を取り込んだな!!!!」
ドモンがそうギムレットに向かって言う。
「おぉ、わかりますか。さすがカッシュ博士の息子さんだ。いや、キョウジ・カッシュの弟さんと言った方が正しいですかな?」
「何が言いたい」
「いえいえ、このようなすばらしい物を開発してくださった方々への敬意のつもりですよ」
「ふざけるな!!!」
「とは言っても、まだ組み込むまでは行かないんで、はめ込んでるんですよ」
そうギムレットは楽しそうに言う。
「何を言ってるの?そんなこと言ってないで外しなさい。DG細胞に取り込まれても良いって言うの?」
「あぁ、あの凶暴化の事ですか?残念ながら、我々にはそれは効かないと同意なんですよ」
「同意…ですって」
「簡単だろうね。あんた達バイオネットの人間ならば体を改造するくらい。自分の体だろうが他人の体だろうが、お構いなしにね」
「ルネさん、いかがですか?久々に」
「ふざけんじゃないよ!!!誰が好きこのんで改造されたいんだ!!この体だって好きでなった訳じゃない!!!!」
「それはいけませんねぇ。お気に召さないとは。それでは、もっとすばらしい物をお見せしましょう」
とギムレットの言葉に触手はある物をめがけて伸びていく。
そこにあったのは壊れかけている量産型ゲシュペンスト。
まさか、取り込むの?
「あたりです!!!」
驚愕のあまりその場を動けないあたし達を横目にギムレットは量産型ゲシュペンストと融合を果たした。
「いかがですか?皆さん!すばらしいでしょう」
ゲシュペンストと融合を果たしたギムレットは満足そうにその場で笑って触手を動かしている。
「さて、見事なこれになってみたい方はいらっしゃいますか?セニアさんとおっしゃいましたか?お嬢さんはいかがですか?」
はぁ?
なんでいきなりあたしに!!!!
「DG細胞、見事です。あなたもどうです?この感覚、パスキューマシンと融合したときに似てますよ。あとはこれを我々とは全く違うそうバイオネットの人間でない物に。ふつうの人に使ってみたいですねぇ」
そう言いながら手当たり次第に触手を伸ばそうとしている。
「待避したほうが良いかもね」
その様子を見ながらサリィさんは言う。
えぇ、もうちょっと見ていたいんだけど〜。
「J、ルネ、待った?そんなに心配しなくても大丈夫ですよ、サリィさん」
背後から声を掛けてきたダークレッドに染めているウサギ耳な髪型をしている女の人がインカムをつけてそこにいた。
まだ女の子って言う方が良いかもしれないかな?
あたしと同年代って感じ。
「命っっ」
「どうして命がここに?」
サリィさんとルネの言葉に彼女はにっこりと微笑む。
「もうファイナルフュージョンは完了済みだし、たまには現場でサポートと思ってね」
サポート?
サポートってなんのだろう?
疑問に思っていれば、
「来ましたか」
そうギムレットの声が聞こえ、融合ゲシュペンストは体を別の方向に向ける。
「ブロウクンマグナム〜!!!」
ロボットの手が飛んできて融合ゲシュペンストに突撃をしていく。
「うぉ、っっさすが凱さんですね。私の射程外から攻撃をしてくるとは」
ギムレットの声が聞こえれば上から影がかかってくる。
見上げれば太陽に輝く金色の髪に黒いボディ……。
胸にはライオンの顔がかたどられているロボット。
「勇者王。……ジェネシックの調整は終わったのか」
ヒイロの言葉に命さんは頷く。
「サリィ、今のうちにセニアを中に」
ヒイロ、あたし、あのロボット見たいんだけどっっ。
「セニア、いつまでもここにいるわけにはいかないわ。機体に乗り込んでないでここにいるのは邪魔になるのと一緒よ」
確かに、サリィさんの言うとおり。
ドモンとレインも、五飛達もプリベンターのビルに入ってる。
外にいるのはあたしの周囲にいる面々のみ。
ルネとソルダート・Jの二人も移動しようとしている。
「大丈夫、ここはガイに任せて。中に行きましょう」
そこまで言われたんだから仕方ない、中に行くわ。
サリィさん達の言葉に頷いてあたし達はプリベンターのビルに向かう。
「ねぇ、勇者王って?」
「あの機体、ジェネシックガオガイガーとその操縦者の別名だ。」
「気になるんだけど〜〜〜〜」
勇者王って呼ばれる人、見てみたい!!!
ビルの入り口で振り向けばロボットと融合ゲシュペンストが組み合っていた。
「それで私の力を止められると思ってるんですかねぇ?いけませんねぇ。宇宙から帰還した勇者王は弱くなってしまいましたか?いけませんねぇ。噂のジェネシックの力、見てみたかったのですが」
「本気でそう言っているのか?ギムレット。ジェネシックガオガイガーの力、そんなに見たいのなら見せてやるさ!!!!」
ジェネシックガオガイガーは融合ゲシュペンストを蹴り飛ばした。
「すごい、モビルファイターも動きはすごいけれど、あのガオガイガーもすごい。すごいなめらか〜〜〜」
気になる〜。
「バルマー戦役の2年前、メテオ3の落下と前後して謎の隕石が関東地区に落下した」
不意にヒイロが呟く。
「ヒイロ?」
「知りたかったんだろう。勇者王の事を」
え、えぇ。もちろん。
「落下した隕石は小さいものだから隕石とは呼べなかったらしい。だが、その時に謎の生命体がその隕石に含まれていた。それが目覚めたのがゾラ事件の前後」
言葉を止めたヒイロの後をサリィさんが続ける。
「事態を収拾しようと思っても当時プリベンターはゾラに、残存部隊でも連邦軍を動員しても特機の集まりだったゾラに行ってしまった面々にはかなうはずもなく。この件に隕石が落下してから関わってたGGGにすべてを一任することにしたの。そこで先鋒となって戦ったのが彼、獅子王凱。世界十大頭脳の一人獅子王麗雄博士の一人息子でその隕石落下の被害者の一人でもあるわ。ともかく彼の戦いは全世界の人に勇者王と呼ばれるほどに勇気あるものだったわ」
そんなことがあったのね。
あたし達が時空を越えて未来へ行ってる間に。
その後はすぐにラ・ギアスに戻っちゃったから何もわかんないもんね。
「見せていただきましょうか、その威力というものを」
「ギムレット、覚悟しろ。ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ」
ジェネシックガオガイガーは両手を突き出し、融合ゲシュペンストに向かっていく。
「ウィータ!!!!!!!」
ガオガイガーが融合ゲシュペンストを貫く。
「いけません、これはいけませんねぇ。ジェネシックガオガイガーの力を侮っていました」
ゲシュペンストからいつの間に分離したのかギムレットがガオガイガーから離れて言う。
「これは、差し上げましょう。DG細胞は次々と手に入れることが出来るのですからね」
金属のかけらを放って、ギムレットは消える。
それが落ちたあたりは、例の『金属反応』が鋭くでていた。
『ギムレット!!!!!!』
「凱、ギムレットはルネとJが追うそうよ」
気がつけばルネとソルダート・Jの姿はもうない。
『……仕方ない。命、先に戻るぞ』
「了解」
そう通信に頷いて彼女はあたし達の方を振り向く。
「GGG長官大河幸太郎から伝言です。お忙しいところ申し訳ないんですが、プリベンターのメンバーにはGGG本部にまで来てほしいとの事です」
そう、彼女は言った。
次回、スーパーロボット大戦〜星達が伝えたいこと〜
「す、すご〜〜〜い!!!ロボットがしゃべってるぅ〜〜〜」
「………どこまでロボットマニアよ」
「別にあたしはロボットマニアって事じゃないわよ?」
「どこが?どこをどう見てもセニアはリュウセイに負けず劣らずのロボットマニアでしょうが」
「せめて、珍し物好きって言って」
「まぁ、良いけどさぁ。ところで、エーテル通信機使えるようになった?」
「………いきなりなんで」
「さぁて」
「やめてよぉ〜〜〜〜」
「にゃあ〜〜」
「く、クロ?なんでクロが地上にいるの!!!!!」
「ちょっと落ち着いてよ、ただの黒猫」
「あそこにはシロが」
「あれは白猫だってばぁ〜」
「青い鳥が一緒にいる〜〜」
「文鳥じゃないの?」
「マサキの馬鹿〜、クリストフのこと止めてって言ったじゃないのよ〜」
「言ってないと思うけどなぁ」
「そんなぁ〜冗談よね、冗談って言って。クリストフが地上にいるなんて事!!!!」
「次回、次回、スーパーロボット大戦〜星達が伝えたい事〜第17話、会議」
「………………どうしよう」
「自業自得」