「どこに行ったんだよ、あいつはっ」
ピンクに染めた髪に、鼻眼鏡をかけている少女は、悪態をつく。
「コノ辺デ奴ノ反応ハ、消エタ」
超高機能AIが搭載されている『彼』はそう答えた。
「そんな事は、分かってんだよっ。なんで、わざわざ日本に何か来なくちゃならないんだっ」
「奴ノ反応ヲ追ッテキタ、為ダ」
「…正直に言ってもいいか?」
「…ウィ…?」
「うざい。J、このポンコツ、どうにかしろっ」
「こいつは、元々こう言う奴だ」
『J』と呼ばれた男は、少女と『彼』の会話をただ、聞いていた。
日本上空での事である。
とある地下の闇深い所で、異形の者二人は話していた。
「フム、奴が来るか」
「恐らく、例の物を確認するためのこと」
「であろうな…。例の物はココより移動させよう。問題は奴だが…」
「……どうするつもりで…」
「やはり、奴らの真意を知るべきであろうな」
「ならば、ココは諜報部の私にお任せを」
「頼むぞ、『大公』」
「お任せを、『将軍』殿」
『大公』と呼ばれた男は、『将軍』に深く頭を下げる。
地下の闇深い所…。
とある移動要塞で謎の『男』は、『大公』と顔をつきあわせていた。
「わざわざ、ご足労いただき申し訳ない」
「いや、何をおっしゃいますか。『大公』殿に出迎えていただけるとは、こちらとしても思いもよりませんでしたよ」
少し独特のしゃべり方をする『男』は目の前に座る人物『大公』に話しかける。
「ですが、こちらの技術を、そちらの『帝国』の方で買っていただけると言うのであれば、我々はどこへでも参りますぞ。地球の裏でも、それこそ、宇宙の彼方でも」
と男は卑しく笑う。
全身の雰囲気にどこか卑しさを見せる『男』は『大公』に対しても下でに出る。
その『男』の様子に『大公』は訝しく思いながらも『男』の方の話をする。
「貴公は代表では無いと聞いているが」
「我々の組織の代表は科学者でありましてな、こういう交渉事は苦手、なんですよ」
「で、貴公が参られたと言うことだな」
「そう御理解していただき、誠に有難うございます。で、ですな、貴方様の所にある『例のもの』…」
『男』がそう口に出した途端、『大公』は表情を少し変える。
が、何事もなかったかのように『男』の話を聞く。
『男』も表情を変えたことに気がついたが、素知らぬ振りをする。
「我々に、貸してはいただけませんか?」
そう、卑しく切り出した。
「ジェリド大尉、ヤザン大尉。では前線は任せる。私は、連邦政府内の根回しに向かう」
そう言って神経質そうな男…『ジャマイカン・ダニンガン』は数人の護衛と共に、部屋から出ていく。
「ふ〜ん、元気だねぇ。あの、腰巾着。ジャミトフがいなくなって、一番清々してるのはあいつだな」
「フン…」
出ていったジャマイカンを揶揄するように男は言う。
「で、好きにやっていいとよ。どうする?ジェリド・メサ大尉」
「なら、好きにやらせてもらった方がいいだろう。プリベンターの状況…、ヤザン、お前は知ってるのか?」
「さぁな、まだ調べてないんだろ?」
「も、申し訳ございません」
近くにいた兵士に目を向けるヤザンにその兵士は頭を下げる。
「別に良いさ、俺達が知りたいのは、プリベンター全体の状況なんかじゃねぇ。その中の一部。特務部隊『ロンド・ベル』の動向だ」
「特に『カミーユ・ビダン』だっ」
ジェリドは短く鋭く呟く。
その言葉に兵士は姿勢を正し、
「調べて参ります」
と踵を返す。
「別に、急がなくても良いんだぜ、別にな」
ヤザンの声を後ろに聞きながら、兵士は部屋を出ていく。
「別に急がなくてもいい…か」
「そうだろ?どのみち俺達が動けば、奴らも、そしてカミーユも動く。オレらが生きている事、あいつ等も気付いただろうよ」
「あぁ、そうだろうな。絶対にあいつ等は動く。俺達が生きて、動いている限り。そこを叩けばいいだけだ」
「あぁ」
そうジェリドはヤザンの言葉に頷いた。
「初めましてと言うところですね」
優雅に白羽扇を持ちながら男『諸葛亮孔明』は目の前の『男』に向かって言う。
「貴方様に来ていただけるとはこちらとしても思いもよりませんでしたよ」
「何をおっしゃる。協力を申し出たのは、こちらが先。ならばこちらが出向くのは道理ではないですかな?」
「全く、その通りで」
「気になさらずとも結構。どのくらいの情報をあなた方が有しているのか、多少なりとも気になるところですからな」
「なるほど。で、情報だけでよろしいので?そちらの要望があるのでしたら、我々は、情報以上の物が提供できるでしょうな」
「フム。確かに、こちらとしても、あなた方の技術力は高く評価しております。ですが、今、あなた方と組む事は『彼等』にあなた方との協力を知られてしまう恐れもあります」
「なるほど…。だからとて、『彼等』はそう簡単に気付くものですかな?」
「あなた方はご存じない。知っていたとしても直接『彼等』とやりあった仲では無い。だからこそ、我らは慎重にならなくてはならないのですよ。これは、ビックファイア様の御意志でもあるのですからな…。おっと、これは、あなた方には関係の無い事でしたな…」
そういって『諸葛亮孔明』は白羽扇で笑った口元を隠した。
「ホント?」
『あぁ、本当だぜ!』
あたしの言葉にリュウセイは頷く。
コロニー・スペランツァ近郊の産業コロニー宙域で戦闘訓練をしているSRXチームの面々。
近々、『SRX』の起動実験をするために、宇宙に上がっているんだそうだ。
すご〜い。
もうすぐ、生で、『ヴァリアブル・フォーメーション』が見られるのね!!!
スゴく、楽しみぃ〜。
「セニア〜楽しみって、喜んでる場合?」
リューネが、小さく突っ込んでくる。
だってねぇ。
「謎の機体の事、な〜んにも分かってないのに」
リューネがぶつぶつ言ってる〜。
そんなの、調べているあたしが、一番よく分かってるわよぉっっ!!!
けどね、煮詰まってるって言った方が正しいの。
分かる?
「ま、それがセニアらしいけどね。シュウにばれたらどうする気?」
うっ。
だ、大丈夫よっ。
あいつ、出てこないもん。
地上に出てくるわけないし?
「はいはい」
かる〜く、リューネに流された。
なんか、悲しい。
あたし達は今、DCのシュウのオフィスじゃなくって、プリベンター極東支部の方に来ている。
で、ココでリュウセイ達と通信しているんだ。
何故かって言うとね、ヴィレッタがSRXチームの隊長だから。
で、報告を兼ねて通信してきた、リュウセイと話してるって訳。
『エルンオード、見たぜ』
「ホント?」
『あぁ、すっげー、カッコいいな。ヒイロのウィングゼロに似てるけど』
……リュウセイにも言われた。
すっごい、ショック。
『あっ…。悪い。そう言うつもりで言った訳じゃないんだ。今度、逢う時は見せてくれよ。すっげー、マジで楽しみなんだからな』
「ありがと、リュウセイ」
そうして、通信を終了する。
しかし…、誰にも言われてるわねぇ。
さすがに、ヒイロには言われてないけど。
デュオや、トロワや、カトルには言われそうだわ。
そう言えば、五飛は言わなかったわね…。
…って…心で思ってる可能性は…あるわよね。
「な〜に、落ち込んでんの?だいたいさぁ、あぁ言う設計したの、セニア、あんたな訳でしょ?自分の機体には愛着を持つっっ。そうしないと、かわいそうだよ」
ま、リューネの言うとおり、だわ。
設計的には気に入ってるのよ、あれ。
ヒイロの『ウィングゼロ』に似てるって言われるの最初っから覚悟してたし。
……まぁ、リューネの『ヴァルシオーネ』よりは…まぁ、ましよね。
「な〜んか、ムカツク波動を感じたんだけど、気のせい?セニア」
「気のせい、気のせいっっ。さ〜て、データチェックでもしよぉっと」
そうして、DCに向かおうとした時だった。
警報が鳴り響く。
「何?」
「機械獣がこちらに向かってきているようだ」
モニタに映し出されたのは機械獣『ダブラスM2』だった。
「1機だけの様だな」
『俺が行ってきますよ。ヴィレッタさん』
通信に入ってきたのは、甲児君。
今、この極東支部に今後の計画について話し合うために来ていた。
「大丈夫?」
『な〜に行ってんだよ、『ダブラスM2』なんか、ターボスマッシャーパンチで一発だって』
そう言って、甲児君はマジンカイザーと共に飛び出して行った。
双頭の機械獣。
でも、なんで1機だけ…。
ちょっとした疑問が浮かぶ。
「何しに来やがった機械獣!!!」
どことなく、遊んでいる感じがする、甲児君。
無理もないけど。
相手は、かなり弱い、機械獣。
甲児君とマジンカイザーの相手としてはちょっと、力不足。
不意に、ダブラスM2からレーザーが発射される。
「そんな攻撃が通用すると思ってんのか?それでカイザーを倒す気なのかよ」
余裕を機械獣に見せる甲児君。
「こいつでとどめだ、ターボスマッシャーパンチ!!!」
マジンカイザーのターボスマッシャーパンチが『ダブラスM2』を貫通していく。
その勢いで爆発する。
はずだった…。
爆発せずに、貫通後の穴だけしっかりとあいている。
「上手い具合に貫通したって奴?」
本気とも冗談ともつかない言葉が流れていく。
「な、何?」
甲児君が驚愕の声を上げる。
「どうしたの?!」
問い掛けた言葉とモニタが流す映像に言葉を無くす。
『ダブラスM2』が…再生していく。
「冗談だろ?」
「驚いている場合じゃないわ」
「あ、あぁ、そうだな。マジンガー、パワー全開だ!!ファイアーブラスター!!!」
マジンカイザーから強烈な熱線が『ダブラスM2』に浴びせられる。
その強烈な熱線に、今度こそ『ダブラスM2』が倒れるはずだった。
が…、再生していく。
そして、頭が…3つ?に増えた。
……冗談でしょう?
なんで、再生もした上に、変化もするのよ。
「くそっ、さっきより、攻撃力が上がってやがるっ」
甲児君の苦悶の声が聞こえてくる。
「リューネ、あたし達も行った方がいいわ。ヴィレッタも出撃できる?」
「どういう事?」
「生半可な攻撃では倒せない。そう言う事ね」
ヴィレッタの言葉に頷く。
「極東支部内にいる特務のメンバーに招集をかけておく。それまで、持たせなさい」
「了解」
そうして、あたしとリューネは互いの機体と共に外に飛び出す。
さっきから、さほど時間は経っていないはずなのに、状況はどんどん変化していた。
マジンカイザーの前に居るのはその双頭をトカゲなどに模し、二足歩行をしている『ダブラスM2』のはずだった。
だが、頭は、すでに、3つに変化しており、そこにある腕は4本に増えていた。
3つの頭から発せられる、レーザーは強力さを増し、その肉体は強固な鎧を身にまとっているかのように堅くなっていた。
さっきから再生、そして増殖、及び変化していく『ダブラスM2』に対して甲児君は苦戦していた。
最強と讃えられている『マジンカイザー』も同意だった。
「何て事なの?」
「セニア、なんでこんな事になってるの?」
「あたしに聞かないでよ。あたしが知りたい」
エルンオードの検索を使って、『ダブラスM2』を調べてもまだ分かっていない。
不意に、いつもと一つ違うところがある事に、気付く。
謎の金属反応。
『ダブラスM2』が動くたびに、その金属は反応していく。
どういう事?
何が、『ダブラスM2』に起っているの?
「セニア、どうする?」
「…もう少したったら、この極東支部にいるメンバーが集まるわ。それまでまって」
「どういう事だ?」
「再生するんだったら、その隙を与えないぐらいの大きな力で一斉に攻撃する。それ以外に方法が無い。いたずらに、攻撃を与えていったら、相手はどんどん進化して強くなるわ」
自分で言った言葉に驚く。
この『ダブラスM2』は徐々に進化していっている。
時間をかけて…ではなく、短時間で。
「一斉攻撃か…なんか、使徒の時を思い出すぜ」
「あぁ…確かに、言われてみればそうかも」
リューネと甲児君は納得しあう。
あたし、よく分かってないんだけど。
まぁ、シュウに資料見せてもらったから、だいたいは、分かってるんだけどね。
「何やってんだよ!」
忍の声がしたと思ったら、ダンクーガが、出撃してきた。
その後にはヒイロのウィングゼロ、五飛のアルトロンガンダム、ウッソのV2ガンダム、そして大作君のジャイアント・ロボとヴィレッタがのるヒュッケンバインmk-2が続く。
「状況は、さっきより悪くなってるようね。話したとおり、一斉攻撃をかける、準備は?」
ヴィレッタの言葉に全員が頷く。
これで、駄目だったら打つ手が無いけれど…、理論的には問題ないし…。
デュカキスも、問題なしって出てるから、大丈夫。
そして、合図と共に、攻撃が開始される。
「断空砲、行っけええええええええええ!!!」
ダンクーガから断空砲が発射される。
「よし、ロングレンジキャノンでっ」
ウッソはV2バスターのロングレンジキャノンを使う。
「行くぞ、ゼロ…」
ヒイロはツインバスターライフルを使う。
「力のない者がウロウロするなぁっ!!」
五飛がドラゴンハングで攻撃する。
「ロボ、パンチだっ」
大作君の声に、ロボが反応し全力パンチを繰り出す。
「必殺!!!クロスマッシャー!!!!」
リューネはヴァルシオーネのクロスマッシャーで
「こいつでとどめだ!!!!ファイアーブラスター!!」
甲児君はマジンカイザーのファイアーブラスターを。
「もう逃げ場はないわ!チャクラムシュート!!!」
ヴィレッタがヒュッケンバインでチャクラムシューターを繰り出し、
「光を、翼に与えてっ。シャインフェザー!!!」
エルンオードでシャインフェザーを使う。
一斉に攻撃を受ける『ダブラスM2』。
轟音と爆発が起り、辺りには煙が巻き上がる。
「やったのか…」
誰彼とも呟く声が聞こえる。
センサーの反応は……ない。
謎の金属の胎動も反応しない。
「やったようだな」
「あぁ……」
煙が消え去った後に残ったのは、『ダブラスM2』と思われる残骸。
「……また、こんな機械獣が出てくるんでしょうか」
「……考えたくもねぇな」
大作君の言葉に甲児君は言葉少なに答える。
その甲児君の言葉は、その場にいた全員が抱いていた。
「……セニア?」
「……何?これ?」
『ダブラスM2』の残骸をDCのスタッフと調べていた時の事。
妙な金属を見つける。
「とりあえず、回収」
呟きながら、シャーレに乗せて、センサーで金属成分を簡単に分析する。
その結果は…『ダブラスM2』の内部にあった、あの『謎の金属』と同一だった。
「セニア、何?それ」
「…『ダブラスM2』にあった謎の金属反応。なんだろう」
リューネの言葉に首を傾げる。
…あたし達は、まだ知らない。
この『謎の金属』が重大な意味を持ってくる事を…。
「いけませんねぇ〜。やはり、彼等では『あれ』を制御出来ていないようです。あまりにも強大すぎますよ。彼等には。やはりココは、我らで手に入れなければ」
そう呟く、卑屈な男は何かを察知して消える。
「…やっぱり、逃げたみたいだ」
「そうだな」
鼻眼鏡をかけ、髪をピンクに染めている少女はとなりの男に話しかける。
「で、どうするんだい?」
「我らがココに来たのは、『奴』を追ってきての事だ」
「確かに。ココから先はあいつ等に任せればいいか」
と少女はDCのビルの建つ新湾上都市の隣にある『Gアイランド』のシンボル『Gタワー』に目を向ける。
「シャッセールに戻るぞ」
「了解」
そうして、少女と男は消えていった。
次回、スーパーロボット大戦〜星達が伝えたいこと〜
「えっと、どうしたらいいんにゃ?」
「好きなようにやっていいんじゃ無いんですか?」
「そうにゃ。どうせ、マサキはまた迷っていにゃいんだし。オイラ達が好きにやってもいいんにゃ」
「それもそうにゃわね。いよいよ、あたし達も地上にいくのね」
「そうにゃ」
「そうですねぇ。楽しみなんですよねぇ」
「セニア様、きっと驚くにゃ」
「あたしは、知らにゃいわよ」
「まぁ、ともかく、次回、スーパーロボット大戦〜星達が伝えたい事〜第14話、再び、地上へ」
「楽しみにゃ〜」