I'm waiting for you look into my eyes
〜きれいな小石と輝く水面と〜Iron Chain認識あとがき

 高校受験が間近に迫っていた冬のある日、オレは和葉と一緒に勉強をすることにした。
 場所は、何故かオレの部屋。
 なんでや?
 和葉んとこでもえぇやんか?
 そう抗議しても和葉はオレの部屋に上がり込んできた。
 しかも、泊まりでの勉強らしい。
 オカンと、和葉ントこのおばちゃんが許したらしい。
 普通許すか?
 ともかく和葉は、夜食をもってオレの部屋にくる。
「平次、模試の結果どないやった?」
「オレは平気に決まっとるやろ。オレより、お前やっ」
「アタシ?改方は安全圏って出たでっ」
 そう言って和葉はうれしそうに笑って座る。
 全国模試の直前、オレは和葉の勉強を見とった。
 そんなんせんでも和葉の成績やったら平気なんやけど、和葉が勉強教えろって言うからしゃあないやろ。
「ほーそりゃ良かったやないか」
「平次のおかげやでっ」
「当たり前やっ」
「えらっそーに」
 そう言って和葉はオレの頭をこづく。
「何すんねんっ」
「気にせんと。平次、何見てるん?」
 こたつのテーブルの上に広げてある紙をのぞき込みながら言う。
「これってこの前の模試のやつの順位表?」
「そうやっ」
「平次、何でそんなん不満なん?平次、ウチの学校やと一位やったやろ」
「そうや、全国でも一位やと思うてたんやっ」
 今回の模試ははっきり言ってホンマに自信があった。
 オール100とはいかんまでもある程度は行ってるそう思っとった。
 帰ってきた結果はオレの行ってる中学では一位の成績やった。
 そう、間違ったところは一問やった。
 これやったら…一位狙えるやろ。
 思うとった。
 所がや、
 オレは一位や無かった。
「東都新聞主催全国中学模試順位表。一位工藤新一、二位黒羽快斗、三位、中森青子、4位白馬探、5位服部平次……平次5位やったんや…1問しか間違ってへんのにな」
「また、こいつらなんやーーーーーーーーーーー!!!!オレの目の前に立ちふさがる4人の成績上位者やっ。特に、この工藤新一と黒羽快斗の二人っ。こいつはオレが受ける試験には必ず受けてんねんでっ!!!!!!!で絶対オレの1位を阻むんやっ」
 力説するオレに和葉は呆れた顔で見とる。
「アホなこと言うてへんで、平次、改方の推薦、後ちょっとやねんでっ。勉強するでっ」
「アホなことってなぁ、オレにとっては重要やねんどっ」
「それがアホなことやって言うてんのっ」
 そう言って和葉は引かんからオレが引くしかあらへん。
「平次、アタシ、平次に聞きたいことあったんやけど、えぇ?」
「なんや?」
「なんで平次は高校を改方にしたん?」
 和葉は夜食を食いながらオレに聞く。
「なんでって…オヤジとオカンの母校やしなぁ。改方って剣道の名門やねん。どうせやったら名門のところ行ったほうがえぇやろ?剣道の道場の先輩にも改方にせいって誘われとるからな」
 オレは和葉にそう答えた。
「でなんでおまえは改方にしたんや?」
 オレはそう和葉にふる。
 オレはずっと不思議に思うとった。
 和葉が改方に行く理由。
 他のところでもえぇと思うねんけどな。
 まぁ、一緒やったらおもろいやろうし。
 和葉おると退屈せんでえぇしな。
「アタシ?アタシは…っっ。平次一人やとアホなことやりそうで心配やねん」
「アホなことってなんやねんっ」
 そう言うオレに和葉は時トメでにらみつける。
「アンタなぁ、過去の悪行三昧全部言うてほしいん?ちょっと古いけど、4月の話しからしよか?アンタ東京から来た修学旅行にきた高校生に因縁つけてそこら辺引きずり回したとか、修学旅行やって言うて、東京に行ったときにその高校生を呼びだして東京案内させたこと。忘れたとは言わせへんで。それからなぁ、5月の運動会の時には…」
「わーった……和葉っすまん。オレの間違いやっっ」
 オレは和葉の言葉を止め、土下座して謝る。
 何でそんなん昔のこと覚えてんねんっ。
「もう、こんなアホなことばっかしよるから平次から目が離せへんねんで。ホンマ手がかかる弟やねんから」
 そう言って和葉は微笑む。
 和葉は昔からオレを弟扱いする。
 幼なじみ捕まえて弟はないやろ。
 そう言っても
「弟みたいやねんからしゃあないやんか。平次がもうちょっとしっかりしとったら弟扱いやめたるわ」
 ってかわす。
 …………こんな関係止めたなるわ。
 ……やめるってどういうふうにすれば止められんのや?
 ……、やめややめ。
 分からんこと考えとっても意味ない。
 訳分からんことは考えへんようにしよ。
 ふと見ると、和葉がナンや眠たそうにしてた。
「和葉、風邪ひくで」
「あ、平次、ここわからへんのやけど」
 と言う和葉にオレ場所を変えて和葉の隣に座る。。
「あぁ、ここはなぁ」
 ふといいながら和葉を見ると、ホンマに眠たそうにしとる。
「和葉、眠いんか?」
「うん、…ちょっと昨日遅くまで起きててん」
「遅くまでって何やっててん。改方の推薦入試まで後少しやって言うてんのはおまえやねんど」
 オレの言葉に和葉はばつが悪そうに笑う。
「そうやねんけどな……ちょっとやりたいことあってん。せやから、平次、ちょっとだけ眠らせてや」
「眠るって…どこでや」
「ココ以外にどこがあるん?」
 そう言って和葉はオレの部屋を見回す。。
 はーーーーーーーーーー何言っとるんやこのアマは!!
「あのなぁ、和葉」
「あかん?平次」
 眠たそうな目で和葉は言う。
 ドキン
 一瞬オレの中で今まで知らない感情がわき出た。
 な、な、な、なんやねん。
 この感情オレ知らんど。
「平次ぃ、あかん?」
 甘えた声で和葉は言う。
 ちょっと待てや、ナンや知らんけどあかんと違うか?
「しゃーないなぁー、一時間だけやど」
「ホンマ?平次ありがとう」
 そう言って和葉はオレに身体を預けて眠り始めた。
 結局和葉のおねだりにオレは負けてもうたわけや…。 
 一つにまとめあげた髪。
 あどけない寝顔。
 ちっちゃいころから変わってへんなぁ。
 って、和葉ってこんなん小さかったっけ?
 もうちょっと大きくなかったか?
 腕にすっぽりはまってまう。
 完ぺきに、あかん。
 なんや、この気持ちは……。
 いままで、なかったで。
 ホンマに。
 って言うか何でこんなに無邪気な顔してねとんのやこいつは。
 オレの部屋でいてどうなってもええっていうんか?
 ふぅ、こいつオレのこと男として見とらんのやろうか………。
 ナンやわからんけど、複雑な気分やで……。
 
 目が覚めると、平次はアタシの肩の上で眠っていた。
 どうりで肩が重いと思った。
 なんか、無邪気な顔して寝てる。
「なーんで、平次のやつアタシの肩に頭乗っけて寝てるんやろう」
 アタシはこんなに頑張って平次と一緒の学校行こうとしてるのに。
 平次はアタシのことただの幼なじみとしか思ってないのかなぁ………。
 そんなんいややわ。
 高校を改方にしようと思ったのだって、平次とずっと一緒にいたかったからだし。
 平次に変なムシがつくともわからへんし。
 幼なじみやっていうたって、他の高校になったら今までのようにずっと側にいられないだろうし…。
 だから一緒の高校に行こうって思った。
 そんな淡い乙女心わかっとんのかな?
 ………無理か。
 期待するだけ無駄やね。
 平次ってホンマ鈍感やねんもん。
 おばちゃんもおじちゃんもお父ちゃんもお母ちゃんもアタシの気持ち知ってるのに(ばれた)平次だけ気づかないのはかなりの鈍感だって言うことだもん。
 ま、高校も一緒の所だから(まだ受かったとは決まってへんけど)3年かけて振り向かせて見せる!!!
 平次、覚悟しとけよっ。

 それから数ヶ月後。

「和葉、はよ行くでっ」
「ちょっと待って。今行くわっ」
 新しい制服に身を包み、新しい道を通って新しい所へ通う。
 これから3年間、隣には同じ顔。

 ただ、いろいろと問題がおこるとはこの時点では知らないでいるけれど。
 まだこのままで。




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