アンカー
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Mission - 4

 次の日、蘭は病院へと向かった。
 病院名はオレたちに言わずただ、病院に行って来るとだけ言って。
 それがひどく不安になり、服部と和葉ちゃんの二人が蘭を尾行してくれることになった。
 その病院が蘭にダイブした時にでてきた病院名なのか、確認するためにだ。
「平次君達大丈夫かなぁ?」
「とりあえず、大丈夫だろ。なにかあればすぐに和葉ちゃんがテレパシーで連絡してくれる…」
「快斗の言うとおり、心配しなくても平気。青子ちゃん、それより、園子は…そろそろ来るかな?」
 本当ならオレが蘭の後をついてくべきなのだが、オレにはやることがあった。
 園子の催眠の確認。
 園子は蘭が暴走した時に側に居るはずなのに、オレにあった時に蘭に何かがあったとは一言も言わなかった。
 それが不思議だった。
 だからその場にいたすべての人間に隠蔽処置がかかっているそう考えたのだ。
「園子ちゃん来たよ」
 青子ちゃんが園子を連れてやってくる。
 園子をリビングに通しソファに座るよう促す。
「ったくぅ、人のこと呼び出しといて何?蘭はどうしたの?」
「ちょっとさ、おめぇに聞きたいことあるんだけど、いいか?」
「いいけど…、何?」
 オレは園子をまっすぐに見ながら少しずつ、ゆっくりとしかし確実に…
「蘭のことだよ」
「蘭の事?」
「そ…蘭のこと」
 暗示をかけ始める。
「オレがいない間…蘭に…何があったか教えてほしいんだ」
「新一君がいない間…」
 園子は少しだけ思い出すように考える。
「園子、ゆっくりでもかまわねぇよ…」
 オレの言葉にうなずき少し戸惑いながらも…園子に暗示が効いてきたのか答え始める。
「うーん…あのね…あの娘…暴走したのよ…。理由は分からないんだけど…。でも…宮野さんが…全部やってくれたの。蘭の暴走を止めて…それから蘭の入院先を決めて……」
「宮野って誰?」
「蘭と話していた時一緒にいた人…あれ?…あの人…」
「…蘭が暴走した時いたのか?」
 オレの言葉に園子はうなずく。
「…灰原か…」
 園子に聞こえないようにオレは呟く。
「…ねぇ新一君、あの人…蘭に何か聞いてたよ。…わたし…止めようとしたんだけど…わたし…あの人…何したの?」
「…記憶操作…だよ。園子、おまえの記憶は操作されていたんだ」
「…新一君…蘭大丈夫なの?」
 オレの言葉と思い出した記憶のせいで園子は動揺していく。
「蘭に催眠がかけられているのは分かってる。あいつがオレに何も言わないのはおかしいからな。園子、落ち着いてゆっくり深呼吸して…。蘭が搬送されたのはどこの病院だ?」
 オレはゆっくりと園子にかけられた暗示を解いていく。
「…あのとき…音がすごくて頭の中がガンガンいったの…。それでもすぐにやんで…宮野さんが救急車を呼んで…菊正宗病院に搬送してくれって…。菊正宗病院ってあんまりいい噂聞かないのに…宮野さんが…そこにしてくれって」
「菊正宗病院か…今も蘭そこに行ってる?」
「うん…」
 オレの言葉に園子は力無くうなずく。
「ねぇ、新一君…蘭が退院してきた時、蘭…新一君のことなんにも言わなかったんだよ。あんなに……。蘭…大丈夫?大丈夫だよね」
 不安そうに園子はオレに向かって言ったそのときだった。
「新一、平から連絡で…その病院に入ったって…」
 快斗がそう言いながら入ってくる。
「新一君、お願い、蘭のこと…助けてあげて。蘭、新一君がすごく好きなんだよ。だから…」
「わーってるよ…全部…わかってから…。心配すんじゃねぇよ…」
「…絶対だからね」
 園子を門のところで見送り振り向くとすでに車がでて
「さて、オレたちも菊正宗病院に行こう」
 そう言った快斗と青子ちゃんはすでに乗り込んでいた。
「おまえらも行くきかよ」
「2.3聞きたいことあるし青子のテレパシーの範囲は蘭ちゃん助けるのに便利だよ」
「青子も、蘭ちゃんのこと助けたいの」
「ありがとう…」
 そうしてオレたちは菊正宗病院へと向かった。
「快斗、聞きたい事って何?」
「おまえさぁ…何してたんだ?一年半も日本を離れて。L.Aのオヤジさんの所に行ったにしては連絡なさ過ぎじゃねぇ?」
 いつかは聞かれると思った事…を快斗は聞いてきた。
「工藤財閥の本社にいたんだよ」
「なんのために?」
「父さんの仕事の手伝い。常設秘書って所かな?3ヶ月の期限付きで…」
「それがどうして1年半も…」
 快斗の言葉に苦笑する。
 確かにそうだよな…。
 3ヶ月のつもりが1年半…。
 理由を聞いたらどんな顔するかな?
「…騙されたと言ってもいいな。秘書とは名ばかりの次期跡取り扱い。分刻みでくまれているスケジュールに忙殺されたんだ。寝るのは眠くなった時…飯くうひまもない。おかげで気づいたら1年たってた…。笑っちまうだろ?1年も気づかなかったなんてな…」
 オレの言葉に快斗と青子ちゃんは絶句する。
「一年すぎたときオレは父さんに帰るって言ったんだ。オレは工藤財閥の後を継ごうとは考えてない。オレはアンカーに入るって…蘭の側にずっと居るって父さんと母さんにさそう言ったんだよ。でとある仕事を任されたんだ。オレを後継者から外す条件って言うのかな?…日本における工藤財閥傘下企業利益を半年で前年を上回れ…ってな」
「まじで?」
「あぁ、期間は半年…長いようで短いだろ?せっかく日本に帰って来れたのに蘭に連絡も出来なかった…米花町にいるんだったらまだ話は別だったけど…」
 その間に…蘭に何があったなんて何も知らなかった…。
 連絡先誰にも言う暇がなかったんだから…つけようがねぇよな…。
「…新一…ついたぜ」
 快斗の言葉にオレはうなずく。
「…青子…蘭ちゃんは…」
「…いたよ…近くに和葉ちゃんと平次君もいる…」
 青子ちゃんの言葉にオレたちはその場に急いだのだった。

「久しぶりだね、毛利さん。なかなか通院してこないから心配したんだよ」
「ご心配かけてすみません」
「いや、謝るような事じゃないんだよ」
 そう言ってわたしの主治医の風戸京介先生はにっこりとほほえむ。
 暗示をかける瞬間、目を見つめると聞いたことがある。
 まっすぐに…見て暗示をかけていく。
 菊正宗病院の一室。
 ここは別棟でいわゆる精神病棟。
 怖い。
 奥まで入り込んでくる感覚が怖い。
「…ここ最近変わったことは?」
「昨日か一昨日あたり…暴走してしまったんです」
 勝手に出てきた言葉に風戸先生は静かにうなずき、そして見透かすようにわたしを見つめる。
 どうしていいか分からない中…どこかで灰原さんが入ってきた気配を感じる。
「大丈夫だから落ち着くんだ」
 ゆっくりと風戸先生の声が頭の奥に入り込む。
 気持ち悪い。
 助けて…。
 ふと気づく。
 こんなにも気持ち悪いのに心の奥底はすごく落ち着いてる。
 今まで、こんな事なかった。
 そう、新一がアメリカに行ってからは心の奥底がこんなに落ち着く事なんてなかった。
 新一…。
 助けてくれるのってやっぱり新一だね。
「毛利さん、深呼吸して…落ち着くんだよ」
 ざわざわと頭の記憶にふれられる感覚がする。
 その感覚はやっぱり気持ち悪い。
「…これ以上は…やめて」
 声をだして…その感覚から抵抗する。
「どういう事だい?毛利さん」
 これ以上…進入しないで…。
「毛利さん?」
「やめて、これ以上わたしの記憶にふれないでっっ。新一を傷つけるなんて…許さないっっ」
「何っっうわぁっっ」

 音波の乱れを感じる。
 余波がやってくるのが見えた。
 この前よりは小さいけれど…。
「新一…まさかまた…」
 快斗の言葉にオレはかぶりをふる。
「それは…ないよ…立て続けに2回も暴走はあり得ない」
「それって勘だろ?」
「…さあな」
 そう答えオレは蘭の所に向かう。
「工藤っこっちや」
 服部と和葉ちゃんに声をかけられその方に向かう。
「蘭はここ?」
 オレの言葉に服部と和葉ちゃんはうなずく。
 心療内科…防音になっているから何が起こっているのか分からない。
「さっき…すごい何かが来たで。とっさにシールド張ったから大丈夫やったけど…。ともかく、工藤慎重にいけや」
「あぁ」
 服部の言葉にうなずいた時だった。
『だめっっ』
 突然声が頭の中で響く。
「『な、なんやねん…今の』」
 うわっ。
 頭の中からと直接の音で思わず倒れそうになる。
「今の、平次?」
 和葉ちゃんはオレのうなずいたのを見て服部に問いかけた。
「今の、平次なん?」
「『せやから、何がや!!』」
「へーじっ頭ん中と声とで言わんといてよ」
「『何いうてんねん…ん?』」
 ようやく…気がついたらしい。
 って言うか…服部がテレパシー使ってる!!!!
『みんな…いるの?』
 オレたちの会話を聞いていたのかおずおずとテレパシーを送る。
『蘭…か?』
『新一?…えっえっえーー?何でわたし新一の声が聞こえるの?』
 蘭は聞こえたオレの声にとまどう。
 どうやらテレパシーが使えているのと気づいてないようだった。
『…蘭、それ、テレパシーだよ?』
『テレパシー?』
『あぁ、どういう訳だかわかんねぇけど蘭に使える。それから服部も使えてる。それよりも大丈夫か?』
『わたしは大丈夫…だから…新一は…逃げて…』
『な、何言ってんだよっ!!』
 わけ、わかんねぇよっ。
 第一、逃げろって何から逃げろって言ってんだよっっ。
『わたしはね、新一を守るためにここにいるの…。だから逃げて』
『ふざけるなよ、蘭。オメェは、オレがオメェが犠牲なること喜ぶと思ってんのかよっ』
『だけど…ダメなの…新一を守るためにはこうしないとっ」
 突然更新が切れる。
「工藤、蘭ちゃん何するつもり何や?」
「そんなことオレに聞くな。オレだって知りてぇんだよっっ」
 そう吐き捨てるように言いながらオレは病室の扉を開ける。
 病室の中には椅子に座り込んでいる蘭と向かい側に同じく椅子に座り込んでいる医者。
 そして、その奥には誰かが倒れていた。
「風戸京介…」
 服部が呟く。
「……知っていたか…オレの事を。君が工藤新一君だな。待っていたよ」
「指名手配になっているあんたが…こんな所にいたとは思わなかったぜ」
 風戸京介、殺人罪及び殺人未遂罪(三人刺殺。一人銃殺(未遂)一人刺殺(未遂))で警察を追われている男。
「…見事だよ、毛利さん、君の能力は…。咄嗟にサイコバリアを張ったはいいけれど、防ぎきれなかった。…おかげでまだ立ち上がれない。…宮野くんは…余波を受け…倒れてしまったよ」
 しっかりとオレを見ながら風戸京介は言う。
「悪いが、オレには催眠暗示は効かない。蘭はともかく、オレには催眠の耐性があるからな」
「そうやっていられるのもいつまで持つかな?」
 風戸京介の言葉を聞き流しながらオレは蘭に近寄り頭の中で蘭に声をかける。
『蘭、蘭?』
 テレパシーの確認する。
『新一…?』
『あぁ、聞こえるな』
『うん…大丈夫…新一?』
『何だ?』
『どうして…来たの?』
『オメェを守るのは…オレだから…他の奴らにオメェのこと…触れさせたくないから…。つらい目にあわせたくないから…だから…遅くなってごめん』
『前にも…言ってくれたよね…遅くなってごめんって…。覚えてるよわたし…』
『いつ催眠解けたんだ?やっぱ…暴走した時?』
 オレの質問に蘭はうなずく。
「さて、工藤君、君に聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
 ようやく落ち着いてきたのか風戸京介の呼吸は整っていた。
「聞きたいこと?工藤家の秘密だろ?悪いけど、あんたが考えてるようなものなんてないぜ」
「そうかな?君は知らなくても我々はその存在を知っている。工藤君、彼女がひた隠しにしてるのはなんだい?」
 蘭がひた隠しにしているもの?
 蘭に目線を向けても蘭はただ首をふる。
 何をねらっているのか…。
 それが分からない。
「我々って言ったよな…。あんたもその存在を知らないで誰かに命令されてるんじゃねぇの?」
 しゃべらせるためにオレは身振りをつけて暗示をかけていく。
「そう思うのは君の勝手だが、我々の存在をあの御方の存在を君たちに知られるわけにはいかないんだよ」
 オレと蘭、そしてオレの後に入ってきた服部達…そして遅れてやってきた快斗達に目線を向けながら風戸京介は言う。
「知られたくない?逆に言えば言ったら何かあんたの身に起こるって事だろ?別に言わなくたってかまねぇよ。調べるのなんて簡単だからな。あんたが言う『あの御方』は言わなくてもいいからさ、オレの家の秘密っていう奴教えてよ」
「そのくらいならいいだろう」
 どうやら…暗示が聞いたらしい。
 風戸京介は立ち上がって話し始めた。
「我々が捜しているのはおまえの家にある…ウッ…な……そんな…」
 な…に…。
 風を切った音と何かが壁にめり込む音。
 突然、風戸京介が倒れる。
 頭のちょうどこめかみあたりから血をだして…。
 撃たれたのか?
 あっけにとられているオレ達。
「っっ遅かった…のね」
「佐藤さん、風戸京介はっっ」
「高木君、一歩遅かったわ」
 佐藤刑事と高木刑事の二人は入って来るなり風戸京介に近寄る。
 その直後、アンカーの後輩(現在サード)にあたる円谷光彦、吉田歩美、小嶋元太の三人が入ってくる。
「佐藤刑事、灰原さんはっっ」
「彼女なら、そこよ、円谷君」
 佐藤刑事の言葉に光彦は倒れていた女性…灰原哀に近寄っていく。
「佐藤刑事、どういう事ですか?」
「逮捕状請求して逮捕しに来たのはいいけれど…殺されてしまったのよ…」
 オレの言葉に佐藤刑事はうなだれる。
「新一君、早くここから脱出した方がいいよ」
「どういう事だ歩美?」
「ここ、アンカーによって爆破されることになったの」
「はぁ?」
 歩美の言葉に驚く。
 敵の本拠地などの爆破はアンカーの非能力者の任務に含まれているが…病院を爆破だと?
「患者とかどうするんや?」
「ここにはほとんど患者はいません。爆破をするのはこの別棟です。資料等はすでに警察の方で押収しました」
 服部の言葉に灰原の容態を確認している光彦が答える。
「円谷君、灰原さんの容態はどう?」
「まだ…意識を取り戻してません」
 佐藤刑事の言葉に光彦は平然と応える。
 その意味がオレ達には分からない。
「光彦…どういう事だ?」
 オレが意味を聞いた時だった。
「あと10分で爆破だってっっ」
 歩美の言葉にオレ達は驚く。
「ともかく脱出よ」
 そして佐藤刑事の言葉にうなずいた。

 菊正宗病院の精神病棟から抜け出した数分後、精神病棟は爆破された。
 佐藤刑事の話によるとここはほとんど使われない病棟でアジトにされかねないからとの事で爆破になったらしい。
「光彦、そろそろ話してくれねぇか?オメェと、その灰原哀との関係を」
 灰原を介抱している光彦にオレは問いかける。
「灰原さんは…アンカーのパートナーなんです」
「って…おまえ…まだサードだろ?」
「そうです。でも…約束したんです。僕がアンカーの予備隊員から正隊員になる時僕をセカンドにしてくれると…」
 そう光彦は灰原に目を落とす。
「ん…ここは…?」
 意識を失っていた灰原が気がついた様だった。
「灰原さん、僕です、光彦です。分かりますか?」
「…円谷…くん?ここは…どこ…わたし…」
 意識は取り戻したが混濁状態なのが見て取れる。
「ここは菊正宗病院の敷地内です。灰原さんが追っていた風戸京介は…何者かに殺害されました」
「……そんな……」
 光彦の言葉に灰原は絶句する。
 未だに何が起こってるのか分かってない。
 分かっていないオレ達に佐藤刑事が説明をしてくれた。
「灰原さんはね、私たちとともにとある組織を追っていたの。その組織の全容は全くつかめていなくって…やってることは麻薬の密売・アリとあらゆる商品の密輸出入・人身売買・テロ行為・殺人・盗品売買・窃盗…あげればきりがないけれど、手広く悪事を執り行っていた組織だったの。彼らが、口々にいうのは「あの御方」それだけがキーワードだった。ある日、全容がつかめそうな団体に彼女、灰原さんのパーティが進入したの。所が、パートナーは殺害され、彼女自身も全身にひどい怪我を負ってアンカーに戻ってきたのが工藤君がアメリカにいってちょうど1年後の事よ」
 佐藤刑事は一息いれ話を続ける。
「そして彼女はもう一度行くといってそれっきりに行方不明なった。その直後よ、蘭さんが暴走したって言う話を聞いたのは。お見舞いに行って驚いたわ、彼女が入院したのがこの菊正宗病院の精神病棟。担当医師は風戸京介だったんですもの。灰原さんはね、風戸京介に会うって言って連絡を絶ったの。彼に聞いてものらりくらりと交わすぐらいで…」
「そして…わたしは蘭さんの側から離れなかった。彼女が握っている何かを調べ風戸京介に言うよう洗脳されていたから…」
 続きを灰原が話す。
「ごめんなさい、毛利さん、工藤君。わたしがもっとしっかりしてれば、こんな事にならなかったのに…ごめんなさいっ」
「気にしないで。もう、終わったことなんだから…」
 泣き崩れている灰原を蘭が慰める。
「でも…」
「わたしの方こそごめんなさい。いっぱい迷惑かけちゃって…。気にしなくてもいいんだから、洗脳されてるんだもん、しょうがないよね」
「…灰原…オメェが悪い訳じゃねぇんだから…」
「ありがとう…」
 オレと蘭の言葉に灰原はようやく落ち着いた様だった。
「円谷君も…ありがとう」
「灰原さん…僕は…」
「合格よ、円谷君」
 灰原の言葉に光彦はにこやかにほほえんだ。

「ともかく、まぁ、良かったよな」
「ホンマ、大変やったな。まぁ、良かったやないか」
 服部と快斗の二人に言われる。
 言いたいことは分かってて…だったら二人っきりにさせろっていうんだ!!!
「そんなんさせられんわ」
「そうそう、さんざん泣かせてたんだしさ。少しは新一も我慢したら?」
「あのなぁ、オレだって我慢してたんだぞ!!!!」
「はいはい、ともかくパーティーするんやろ?」
「そうそう、蘭ちゃん祝復活パーティーね」
 快斗と服部が盛り上がってる中、オレは自分の部屋に向かう。
 そして、部屋の前に何故かいたのは、蘭。
「蘭、どうした?」
「…あのね…あんまり新一と話す機会がなかったから…ここにいれば新一来るかなって思って。ほら、パーティーはわたしが主役だからって何もやらなくていいっていわれちゃって…暇なんだ…」
 そういって蘭はほほえむ。
「おいでよ、蘭」
 何となく照れながらオレは蘭を部屋に招き入れた。
「なんか…久しぶり…」
「まぁな…」
 会話が続かない。
「新一、緊張してる?」
「えっ」
 不意に蘭がオレの顔をのぞき込む。
 突然だったからよけいに焦ってしかもその顔が…久しぶりにまっすぐにオレを見る蘭だから…。
「緊張してるよね。わたしもねなんか緊張しちゃってる…。こうやって話すの久しぶり?だよね」
「オレ…緊張してるように見えるか?」
 オレの言葉に蘭はうなずく。
「だよな…。蘭とまともに話すのってマジで久しぶりだし。あのさ…改めて帰ってくるの遅くなってごめん。なかなか側にいられなくってごめん。もう側からいなくなるって事絶対に無いから。ずっと側にいるからさ…」
「絶対…だよ…。もう…やだよ。新一と離れるの」
 涙目でオレを見上げる蘭をそっと抱き寄せる。
「オレだって……蘭がいない生活は耐えらんねぇよ」
「今度行く時はわたしもつれてってよね」
「絶対につれてく…。まぁ、もう行くこともねぇだろうけどな」
「平気なの?」
 オレの言葉に蘭は不安そうに問いかける。
「ずっと蘭の側にいるって宣言しちまったからな」
「そうなの?」
「だからもうずっと蘭の側にいるから…」
「うん…」
 オレの言葉に蘭は素直にうなずいたのだった。




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