配偶者や元配偶者及び元恋人からの暴力に対する対策
(ドメスティック・バイオレンス防止法,ストーカー行為規制法について)
2004.12.16作成
2014(平成26)年1月18日改訂
2017(平成29)年12月22日改訂
- 第1 ドメスティック・バイオレンス防止法,正式には配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律は,平成13年10月13日から施行され,平成16年12月2日から改正法が施行されました。
- 第2 ストーカー行為規制法
- ① 同法2条で,規制対象行為である「つきまとい等」として,
- ア 住居等の付近をみだりにうろつくこと。
- イ SNSのメッセージ送信等,ブログ等の個人のページにコメント等を送ること。
も規制対象行為になりました。 - ② 同法2条で,性的羞恥心を害する電磁的記録等の送りつけ等を規制対象行為として確認的に明記しました。
- ③ 同法5条で,
- ア 警告を経ずに禁止命令等を行うことも可能になりました。
- イ 緊急の場合には,禁止命令等の事前手続として必要な聴聞を事後化する ことも可能になりました。
- ④ 同法5条で禁止命令等の有効期間を設け,1年ごとの更新制にしました。
- ⑤ 同法6条でストーカー行為等に係る情報提供の禁止を定めました。
- ⑥ 同法18条から20条により
- ア ストーカー行為罪を非親告罪化しました。
- イ ストーカー行為罪(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)・禁止命令等違反罪(2年以下の懲役又は200万円以下の罰金)と罰則を強化しました。
更に平成20年1月11日及び平成26年1月3日に各改正法が施行されました。
保護対象は,従来は正式に婚姻している夫婦か婚姻届は出していないが事実上の夫婦である必要がありましたが,改正で事実婚や離婚した元配偶者だけでなく,生活の本拠を共にする交際当事者,及び元生活の本拠地を共にする交際当事者からの保護命令の申立も認められるようになりました。
すなわち、生活の本拠を共にする交際又は元交際(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除く。)をしている関係にある相手からの暴力及びその被害者についても、ドメスティック・バイオレンス防止法の規定が準用されます。(28条の2)
ただ,単なる恋人や元恋人は含まれません。
恋人や元恋人が別れた女性などの本人やその家族につきまとってくる場合や暴力をふるう場合は,ストーカー行為規制法や面談強要禁止の仮処分等の民事保全法や一般の民法の不法行為法により保護が図られます。
ドメスティック・バイオレンス防止法の改正により,裁判所は,被害者の申立により,暴力をふるう配偶者や元配偶者に対して,申し立てた被害者のみならず被害者の同伴する子供にも6カ月間の接近禁止命令を出すことが出来るようになりました。
これは再度の申立が可能です。
更に,被害者の親族等への接近禁止命令も出せるようになりました。
期間は6カ月です。
また,退去命令(暴力をふるう配偶者に,被害者と共に住む住居から退去することを命じるもの)の期間が,改正前は2週間であったのが,期間が長くなり,2ヶ月間の退去命令が出せるようになりました。
そして,従前は再度の退去命令申立は出来なかったのですが,やむを得ない事情があり必要と認められる場合には,退去命令についても再度の申立が出来るようになりました。
また,電話等禁止命令で,被害者に対する面会の要求,監視の告知,乱暴な言動,無言電話・緊急時以外の連続する電話・FAX・メール送信,汚物等の送付,名誉を害する告知,性的羞恥心の侵害のすべての行為を禁止する命令も出来るようになりました。
また「暴力」は,身体的暴力のみならず,それに準ずる「心身に有害な影響を及ぼす言動」も含まれると改正されました(ただし,「保護命令」の申立ては,身体上に対する暴力又は生命等に対する脅迫のみが対象となります)。
この裁判所が発した保護命令に違反した場合は,1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
但し,ドメスティック・バイオレンス防止法の保護命令では、緊急やむを得ない場合の電話をかけることを禁止することはできません。
他方,住民基本台帳法の一部が改正され,被害者の申し出により,住民基本台帳の閲覧や住民票の写し等の交付,戸籍の附票の写しの交付について制限出来るようになりました。
また,ドメスティック・バイオレンス防止法の保護命令の外に,ストーカー行為規制法では,つきまとい行為があった場合警察(公安委員会)で禁止命令等を出すことができます。これは配偶者についてもできます。
このストーカー行為規制法の禁止命令等では電話をかけることも禁止することができます。
この禁止命令等に違反した場合は,2年以下の懲役又は200万円以下の罰金が科されます。
2013(平成25)年6月にストーカー規制法が改正され,メール送信も規制の対象とするとともに,被害者自ら公安委員会に対して禁止命令等を申し立てることができることとし,また警察本部長等・公安委員会は,警告・禁止命令等について申し出をした者に結果を通知しなければならないと改正されました。
更に2016年に改正され,2017年6月14日に全面施行されました。
この改正により,
スト-カ-行為について、スト-カ-行為規制法の刑罰が適用されるためには、「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情」の充足の目的が行為者に認められる必要があります。
さらに,配偶者や元夫や元恋人の暴力に対しては,暴行罪や傷害罪,監禁罪等の犯罪として刑事告訴することもできます。
また,民事保全法により面談強要禁止の仮処分をとることもできます。
詳しくは弁護士(会)または婦人相談所(ドメスティック・バイオレンス防止センター),警察に相談してください。
参考文献
長谷川京子・山脇絵里子著
改訂 ストーカー 被害に悩むあなたにできること(リスクと法的対処)
日本加除出版株式会社 発行