下請法(下請負代金支払遅延等防止法)について
下請法(下請負代金支払遅延等防止法)の改正法が平成16年4月1日から施行されました。
1.下請法の目的
この法律は,下請代金の支払遅延等を防止することによって,親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめることと,下請事業者の利益を保護して,国民経済の健全な発展に寄与することを目的としています。(下請法1条)
2.下請法の適用範囲
- (1)取引類型
- (ア)製造委託
- (イ)修理委託
- (ウ)情報成果物作成委託
- (エ)役務提供委託
- (2)親事業者と下請事業者の定義(下請法2条)
- (ア)第一類型(製造委託,修理委託,その他の場合(情報成果物作成委託と役務提供委託のうち政令で定めるもので,具体的には,情報成果物のうちプログラム,役務提供では運送,倉庫における物品の保管,情報処理))
- (イ) 第二類型(情報成果物作成委託,役務提供委託のうち第一類型以外のもの)
- (ウ)トンネル会社の規制
- (1) 下請法3条書面の作成と交付義務
- (2) 支払期日
- (3)遅延損害金
- (4)書類の作成・保存義務
下請法は以下の取引類型の親事業者と下請事業者の取引に適用されます。(下請法2条)
親事業者
資本金3億円超
資本金1000万円超~3億円以下
下請事業者
資本金3億円以下又は個人
資本金1000万円以下又は個人
親事業者
資本金5000万円超
1000万円超~5000万円以下
下請事業者
資本金5000万円以下又は個人
資本金1000万円以下又は個人
親事業者が,下請事業者と直接取引をしないで,トンネル会社を使うことにより,下請法の規制を免れることは出来ません。(下請法2条9項)
3. 親事業者の義務
下請代金の支払期日は,給付を受領した日(役務提供委託の場合は,下請事業者が役務を提供した日)から起算して60日以内でなければならない。(下請法2条の2第1項)
検収の有無は考慮されない。
支払期日を定めなかったときは,給付を受領した日が支払期日となる。(下請法2条の2第2項)
60日以上の日を定めたときは,60日を経過した日の前日が支払期日となる。(下請法2条の2第2項)
下請代金とは,下請事業者の給付または役務の提供に対して,親事業者が支払うべき代金をいう。(下請法2条10項)
親事業者が,下請代金を支払期日までに支払わなかったときは,下請事業者に対して,給付を受領した日(役務提供委託の場合は役務を提供した日)から起算して60日を経過した日から,支払をするまでの期間,下請代金に対するその日数に応じて年率14,6%の遅延損害金を支払わなければならない。(下請法4条の2)
親事業者は,下請事業者に対し,製造委託等をしたときは,下請法5条の内容を記載した書類を作成して,保存しなければならない。(下請法5条)
4.親事業者の禁止行為
親事業者は以下の行為をしてはならない。(下請法4条)
- (1)受領拒否の禁止
- (2)支払遅延の禁止
- (3)下請代金の減額の禁止
- (4)返品の禁止
- (5)買い叩きの禁止
- (6)強制的購入・強制的利用の禁止
- (7)報復措置の禁止
- (8)原材料等の代金の早期決済の禁止
- (9)割引困難な手形の交付の禁止
- (10)不当な経済上の利益の提供の要請の禁止
- (11)不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止
下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに,下請事業者が納入した物品の受領を拒否してはならない。
下請代金を,支払期日が過ぎても支払わないことは違法である。
親事業者は,下請代金を理由なく減額してはならない。
親事業者は,下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに,その給付を受領した後に,給付に係る物を引き取らせてはならない。
但し,役務提供委託の場合は,物の給付とか返品の概念がないので,返品の禁止の適用はない。
親事業者は,下請代金の額を,同種同類の給付に対して通常支払われる対価(市価)に比して,不当に著しく低く定めてはならない。
親事業者は,正当な理由がある場合を除き,自己の指定する物を強制的に購入させ,または,役務を強制的に利用させてはならない。
親事業者は,下請事業者が親事業者の行為を公正取引委員会等に報告したことを理由として,不利な取り扱いをしてはならない。
親事業者が下請事業者に原材料等を有償で販売した場合,下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに,当該原材料等を用いて製造した製品の給付に係る下請代金の支払期日よりも早い時期に,当該原材料等の対価を支払わせたり,相殺したりして,下請事業者の利益を不当に害してはならない。
但し,役務提供委託については適用がない。
親事業者は,下請代金の支払につき,一般の金融機関で割り引くことが困難な手形を交付して,下請事業者の利益を不当に害してはならない。
親事業者は,自己のために,金銭,サービス,その他の経済上の利益を下請事業者から提供させて,下請事業者の利益を不当に害してはならない。
下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに,下請事業者の給付の内容を変更させることにより,下請事業者の利益を不当に害してはならない。
また,給付を受領した後に,あるいは,サービスの提供を受けた後に,給付のやり直しをさせてはならない。
5.行政上の対処
中小企業庁長官や公正取引委員会の調査権限が定められています。
6.罰則
下請法の一定の規定に違反した場合に罰則が定められています
以上。
参照文献
川越憲治 編著 下請取引の法務 株式会社商事法務 発行
鈴木 満 著 新下請法マニュアル 株式会社商事法務 発行