会社代表者と会社・取締役間の訴訟における会社代表者の特則
2021(令和3)年10月4日
- 第一 会社代表者の原則
- 一 取締役会非設置会社
- 1 取締役各自が、会社の業務に関する対外的な代表権を有します。(会社法349条1項、2項・以下条文のみ表示します。)
- 2 代表取締役を選定した場合には、その代表取締役が代表権を有し、その余の取締役は代表権を失います。(349条1項ただし書、4項)
- 二 取締役会設置会社
- 1 取締役会設置会社では、代表取締役を選定しなければなりません。(362条3項)
- 2 代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為を代表して行います。(349条4項)
- 3 取締役会設置会社には、監査等委員会設置会社も含まれます。(2条11号の2)
- 三 指名委員会等設置会社
- 1 指名委員会等設置会社では、代表執行役が代表権を行使します。(420条1項、3項、349条4項)
- 2 取締役は代表権を有しません。(415条)
- 第二 会社・取締役間の訴訟における会社代表者の特則
- 一 会社を代表して訴訟行為をするのは会社代表者ですが、取締役を当事者とする訴訟(会社・取締役間訴訟)については、いずれが原告又は被告となる場合でも、利益相反性と馴合訴訟の懸念から特別の規制がなされています。
- 二 規制される会社と取締役間の訴訟は、会社法上の訴えだけでなく、会社と取締役間の民事訴訟事件も含みます。
- 三 規制の対象になる取締役は、代表取締役、業務執行取締役、平取締役、社外取締役を問いませんし、元取締役も含まれます。(353条)
そして、取締役の権利義務者と一時取締役の職務を行うべき者(346条1項、2項)、取締役の職務代行者も含まれます。(352条1項) - 四 監査役非設置会社と会社代表
- 1 原則として、取締役が会社を代表します。(349条1項)
- 2 代表取締役を定めたときは、代表取締役が会社を代表します。(349条3項、4項)
- 3 株主総会が当該訴えについて、会社を代表する者を定めた場合は、その者が会社を代表し(353条)、取締役会を設置している場合は、株主総会が代表者を定めていないときは、取締役会で代表者を定めることができます。(364条)
- 五 監査役設置会社と会社代表
- 1 監査役設置会社の場合、会社と取締役間の訴訟は、取締役が代表取締役であるか否かを問わず、監査役が会社を代表します。(386条1項1号)
- 2 業務監査権限を有する監査役を置かない会社では、株主総会決議により、取締役・会社間の訴えにつき会社を代表する者を定めることができ、その者が会社を代表します。(353条)
- 3 会社の相手方が取締役と監査役である場合は、
取締役については監査役が会社を代表し、監査役については代表取締役が会社を代表します。 - 六 指名委員会等設置会社と会社代表
- 1 監査委員が訴訟の当事者である場合は、取締役会が定める者、株主総会が当該訴訟について会社を代表する者を定めた場合は、その者が会社を代表します。(408条1項1号)
- 2 監査委員以外の取締役と会社間の訴訟の場合は、監査委員会が選定する監査委員が会社を代表します。(408条1項2号)
- 七 監査等委員会設置会社と会社代表
- 1 監査等委員が訴訟の当事者である場合は、取締役会が定める者(株主総会が定めた場合はその者)が会社を代表します。(399条の7第1項1号)
- 2 それ以外の場合は、監査等委員会が選定する監査等委員が会社を代表します。(399条の7第1項2号)
参考文献
- ・用語から読み取る会社法・手続法
新谷勝 著
株式会社民事法研究会 発行 - ・会社法実務大系
成和明哲法律事務所 編
株式会社民事法研究会 発行 - ・会社訴訟・仮処分の理論と実務(増補第3版)
新谷勝 著
株式会社民事法研究会 発行 - ・株式会社法 第7版
江頭憲治郎 著
株式会社有斐閣 発行 - ・会社法 第2版
田中亘 著
一般財団法人東京大学出版会 発行