不動産登記法に基づく仮登記及び仮登記を命ずる処分
2021(令和3)年2月15日
不動産登記法(以下「法」といいます。)に定める仮登記及び仮登記仮処分を解説します。
- 第一 法第3条に定める権利等の保存、設定、移転、変更、処分の制限、又は消滅(以下「保存等」といいます。)の登記することができる権利等には以下の種類があります。
- ① 所有権
- ② 地上権
- ③ 永小作権
- ④ 地役権
- ⑤ 先取特権
- ⑥ 質権
- ⑦ 抵当権
- ⑧ 賃借権(これは物権ではなく債権です。)
- ⑨ 配偶者居住権(これは物権ではなく債権です。)
- ⑩ 採石権
- 第二 法105条による仮登記には1号仮登記と2号仮登記があります。
- 第1 1号仮登記
法105条1号の仮登記は、法3条各号に掲げる権利について保存等があった場合において、当該保存等に係る登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、法25条9号の申請情報と併せて提供しなければならないものとされているもののうち、登記識別情報又は登記済証、あるいは第三者の許可、同意もしくは承諾を証する情報を提供することができないときに申請することができる仮登記です。 - 第2 2号仮登記
法105条2号の仮登記は、法3条各号に掲げる権利について、実体的要件である物権変動(権利の変動)は生じていないが、物権変動(権利の変動)に関する現在または将来の請求権が存在する場合について仮登記を認めるものです。
例えば、農地法3条の農業委員会の許可が得られない状態での農地の売買契約に基づく農地の所有権移転請求権仮登記が2号仮登記です。 - 第三 仮登記の順位保全の効力
要件が調った段階において、仮登記に基づく本登記がなされた場合、その本登記の対抗力は、仮登記により保全された順位において認められます。(法106条) - 第四 仮登記を命ずる処分
法105条1号または2号の規定による仮登記を、仮登記権利者・仮登記義務者が共同申請するについて仮登記義務者の協力が得られない場合、または法107条1項の規定による仮登記義務者の承諾が得られないために仮登記権利者が単独で申請できない場合は、訴えによる仮登記の申請を命ずることに代えて、仮登記権利者は、裁判所に対し、仮登記を命ずる処分を求めることができます。(法108条1項) - 第五 民事保全法に基づく仮処分
なお、民事保全法に基づく仮処分に関しては、
2021(令和3)年2月9日民事保全法に基づく仮差押えないし仮処分に対し債務者が取り得る手段の1つの起訴命令申立
でご紹介しています。
- ・不動産登記法 第2版
山野目章夫 著
株式会社 商事法務 発行 - ・一問一答 新不動産登記法
清水 響 編著
株式会社 商事法務 発行 - ・仮登記の実務
青山 修 著
新日本法規出版株式会社 発行
これを仮登記の順位保全の効力といいます。
これを仮登記を命ずる処分といいます。
民事保全法に基づく仮処分とは異なります。
参考文献