民事訴訟における弁論主義(対立概念・職権探知主義)
2019(令和元)年8月5日
民事訴訟においては,判決の基礎をなす事実の確定に必要な資料の提出(事実の主張,証拠の申出)を当事者の権能及び責任とする弁論主義をとっています。
弁論主義は,事実の確定に必要な資料の探索を裁判所の職責でもあるとする職権探知主義に対立する概念です。
弁論主義は自明のこととされているため直接の条文はありません。
弁論主義の内容は,通説によれば,次の三つの内容に分解されます。
- ① 法律効果の発生消滅に直接必要な事実(主要事実)は,当事者の弁論に現れない限り,判決の基礎とすることができない。
- ② 裁判所は,当事者間に争いのない主要事実については,当然に判決の基礎としなければならない(自白)。
- ③ 裁判所が調べることができる証拠は,当事者が申し出たものに限られる(職権証拠調べの禁止)。
従って,当事者は,自己に有利な法律効果が発生する主要事実を主張するとともに,その主要事実を証明しなければなりません。
当事者が主要事実を主張しなかったり,主要事実を主張しても,相手方がこれを争う場合にその主要事実の存在の証明が出来なければ判決で自己に有利な法律効果を得ることは出来ません。
〈参考文献〉
高橋宏志 著
重点講義 民事訴訟 上(第2版)
株式会社有斐閣 発行