交通事故における重大な損害ないし死亡事故による損害賠償請求をするについて訴訟をすることが相当有利なことについて

平成16年10月21日
平成24年3月19日改訂
平成25年7月17日改訂
平成31年4月27日改訂
令和2年7月1日改訂

 

 交通事故において重大な後遺障害等の被害を受けた,又は,交通事故により死亡した場合の損害賠償請求については,示談交渉より訴訟手続による判決で請求するほうが相当有利であり,適正な被害救済を受けられます。その理由は以下の3つです。

 

1,損害賠償額の算定基準は

(イ)自賠責保険の基準

(ロ)任意保険の基準

(ハ)弁護士算定基準ないし裁判における判決の基準

と3つあります。

 自賠責保険の基準が一番額が低く,任意保険による算定基準がそれよりも多いですが,それよりも裁判所が判断する基準ないし弁護士が算定する基準が一番高額です。

例えば以下の通りの差異があります。

A 死亡事故の場合の慰謝料

   自賠責  約1300万円

   任意保険 約1800万円

   裁判基準 約2500万円前後

    具体的には,死亡した人が,

     一家の支柱の場合 2800万円

     母親・配偶者   2400万円

     その他      2000~2200万円

B 後遺障害1級の後遺障害の場合の後遺障害慰謝料

   自賠責  約1100万円

   任意保険 約1700万円

   裁判基準 約2800万円

 従って任意保険会社と示談してそれにより受領する損害賠償額は訴訟を提起して裁判所が判断する判決の基準の額よりも低額になってしまうことになります。

 それが重度の後遺障害等の被害を被った場合,ないし,死亡事故の場合における損害賠償額の場合その格差は相当程度になり,被害者の適正な被害救済のためには訴訟手続により判決が示す損害賠償額による方が被害者の被った損害を最大限に救済する結果になると思います。

 

2,遅延損害金

 交通事故による損害賠償請求には,損害賠償金の外にそれに対し交通事故の発生日から損害賠償金が満額支払われた時までの期間年5パ-セントの割合より算出される遅延損害金を加算して請求することができます。
(なお,民法が改正され,2020年4月1日から遅延損害金の利率は年3パーセントになります。改正民法404条)

 

 仮に損害賠償金が1億円として交通事故の発生日から損害賠償金の満額が支払われた日までの期間が2年であるとすれば,遅延損害金は1割(0.05×2年=0.1)で,1,000万円となり,賠償金1億円に遅延損害金1,000万円が加算され1億1,000万円が支払われることになります。

 もし後遺障害が重度でありその後遺障害が確定して損害賠償請求をするまで時間がかかり,仮に交通事故発生日から損害賠償金が満額支払われた時までの期間が4年とすれば遅延損害金は2割(0.05×4年=0.2)となり,2,000万円の遅延損害金となり,損害賠償額1億円にプラスして2,000万円の合計1億2,000万円が支払われることになります。

 この点においても訴訟手続によるほうが極めて有利になります。

 ちなみに示談交渉の場合は通常は遅延損害金の支払はされません。

 

3,弁護士費用

 判決においては弁護士費用として損害賠償金の1割の金額を加算して加害者に支払わせることになるのが通常です。 (最高裁判所判決昭和44年2月27日民集23巻2号441頁参照)

 そうしますと弁護士費用の全部又はそのほとんどを加害者側に支払わせることができることになります。

 この点においても訴訟による判決手続の方が極めて有利になります。

 

 以上の3点から交通事故により,重度の後遺障害等により重大な損害を被った場合,又は死亡した場合には訴訟をするほうが被害者の救済にとって相当有利になります。

 また,後遺障害の等級が12級や14級であっても,訴訟手続をとることで有利な判決を得られる可能性があります。

以上

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