建物賃貸借契約に基づく敷金について、第三者から差押えがあった場合の賃貸人の対応方法

2018(平成30)年3月7日

 

 建物賃貸借契約に基づく賃借人の賃貸人に対する敷金返還請求権について、第三者から差押えがあった場合の賃貸人の対応方法について検討します。

 

 「敷金」は、将来の建物明渡時において、賃借人に債務不履行がない限り、賃貸人が全額賃借人に返還することを約束して、賃借人から賃貸人に交付される、停止条件付き返還債務付きの金銭所有権の移転です。

 

 従って、もし賃借人に建物明渡時に債務不履行がある場合は、それらの債務を敷金から控除し、その残金につき敷金返還請求権が発生します。

 

 すなわち、「敷金」は、賃借人の賃貸人に対する賃貸借契約上の債務(賃料債務、補修費債務等)を担保するために預ける預託金なので、賃貸借契約終了時に賃借人の賃貸人に対する下記の債務があれば、それを差し引いて残額があればその残額を賃借人に返還する性質のものです。

 

 「敷金」により担保される賃貸人の賃借人に対する債権は、建物明渡がなされた時にそれまでに生じた以下の債権です。

 

 

 よって、賃借人の賃貸人に対する敷金返還請求権について第三者から差押えがなされたとしても、賃貸人は、建物が明渡されて上記①~⑥などの諸債務額を敷金から控除して残額があれば、賃貸人は差押えした第三者に対しその残額だけを支払うことになります。

 

 もし、敷金に残額がなければ、賃貸人は差押えした第三者に対し敷金を返還する義務はなくなります。

 

参考文献

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