株式会社の取締役・会計参与・監査役の解任請求訴訟
株式会社の取締役や会計参与や監査役(以下まとめて「役員」といいます。)の職務の執行に関し不正の行為(例えば会社財産を役員が私的に費消した場合など)又は法令若しくは定款に違反する重大な事実(役員の故意行為だけでなく過失も含みますが重大な違反である必要があります。)があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会で否決されたとき、又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が会社法323条の規定によりその効力を生じない場合、公開会社では、総株主の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合はその割合)以上の議決権を6ヶ月(これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間)前から引き続き有する株主は、当該株主総会の日から30日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求できます。(会社法854条1項)
なお、非公開会社にあっては、6ヶ月前から引き続き株式を有することは要件ではなく、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主であれば上記の要件で役員解任請求訴訟を提起できます。(会社法854条2項)
被告は、当該株式会社及び当該役員を被告とする必要がある固有必要的共同訴訟です。 (会社法855条)
裁判所の管轄は、当該株式会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の専属管轄となります。(会社法856条)
役員解任請求訴訟を提起した場合は、原告である株主は当該役員の職務執行停止または職務代行者選任の仮処分を申し立てるのが通常だと思います。
役員解任請求訴訟の判決確定までには長い期間を要し、それまで不正行為を行う役員に職務をさせておくわけにはいかないからです。
役員解任の判決が確定すると、当然に当該役員の解任の効果が発生し、裁判所書記官は職権で当該役員の解任の登記を嘱託します。(会社法937条1項1号ヌ)
しかし、役員解任請求訴訟の被告になった当該役員が、解任訴訟の係属中に任期満了で退任し、次の株主総会で再選されればその再任は有効であり、特別の事情がないかぎり役員解任請求訴訟の訴えの利益は消滅すると考えられます。